ロシア外務省、EUの経済制裁パッケージは「自滅的」

欧州連合(EU)による第6次対ロシア制裁パッケージに対し、ロシア外務省は昨日、この制裁措置が「自滅的なものだ」として強く批判する声明を出したようです。意訳すれば、「外貨収入が入って来なくなるから困る」、といった意味でしょうか。いずれにせよ、自分から「困っている」と申告するスタイル、個人的には嫌いではありません。本当にわかりやすい反応だからです。

【参考】「撃沈されるモスクワ艦」

(【出所】ウクライナ政府高官のTelegram投稿。なお、画像と本文は関係ありません。)

自分から「困っている」と申告するスタイル、個人的には嫌いではありません。

ロシアのメディア『タス通信』(英語版)に昨日掲載された次の記事によると、欧州連合(EU)によるロシアに対する新たな制裁パッケージを巡って、ロシア外務省は「自滅的なものだ」などとしてEUを批判したのだそうです。

Sixth package of sanctions against Russia will be self-destructive for EU — MFA

It was noted that a partial rejection of Russian oil, as well as a ban on insurance of Russian merchant ships, would trigger further price increases, destabilize energy markets and disrupt supply chains<<…続きを読む>>
―――2022/06/02 21:36付 タス通信英語版より

普段だとタス通信が配信する記事は比較的短いものが多いのですが、この記事については700単語を超えます。タス通信としてはやや「異例(?)」の長さのものだといえるかもしれません。

それはともかく、タス通信によると、EUが決定した第6次対ロシア制裁パッケージを巡って、ロシア政府外務省は木曜日に、次のような趣旨の声明を出したのだそうです。

明らかに、この反ロシア制裁パッケージの構成要素は、『ロシアに対する依存との戦い』という一方的なスローガンに基づいて合意された制限措置であり、EUに対し自滅効果をもたらす。EU本部が加盟国に対し、この『決定的な』連帯デモンストレーションを強要するのに1ヵ月を要したのも不思議はない」。

そのうえでロシア外務省は、ロシア産の原油の部分的な禁輸措置に加え、ロシアの商業船に対する保険引受の禁止措置については、物価の上昇やエネルギー市場の不安定化、サプライチェーンの混乱などをもたらすだろう、などと指摘。

「ロシアの財の禁輸措置はとくに農産物の供給に影響を与え、このような行動は最終的に逆の結果をもたらす」などとして、EUの経済・エネルギーの安全保障を損ない、さらには世界の食糧危機を加速させることにもつながる、などと述べたのだとか。

やはり、部分的なものであるとはいえ、欧州がロシア産の原油に対する禁輸措置などを決めたことは、ロシア経済にとってはそれほど都合が悪い、ということなのでしょう。なぜなら、外貨収入などがさらに減少する可能性が出て来るからでしょう。

いずれにせよ、「この措置には本当に困る」という反応を見せるあたり、じつにわかりやすい国だと思わざるを得ない次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. カズ より:

    結果として、中国とインドが足元を見てロシア産のエネルギーを買い叩けば、もともと中印が購入予定だった物量が玉突きでその他の諸国に行き渡ることになり、エネルギー危機は回避され、ロシアの一人負けになりそうな気もするんですけどね。

    1. はにわファクトリー より:

      ちょうどこんな記事も

      OPECプラス、増産拡大で合意 日量64.8万バレル
      日経 2022-6-2
      https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR02CYT0S2A600C2000000/

      『ウクライナ危機の長期化は中東勢にも誤算だったはずだ。長びくほど、中東産油国はロシアから得るものが小さくなり、米国などからの風当たりは強まる
      『原油価格の急落を招くような大幅な増産は、どの産油国も望まないのが本音だ』

      イスタンブール記者にかき消されてしまわないようカイロ記者も張り切って欲しいものです。

      1. カズ より:

        >『原油価格の急落を招くような大幅な増産は、どの産油国も望まないのが本音だ』

        産油国にしても獲得できる富(とみ)は、量×単価が絶対値。値崩れの懸念が無いと踏んだからこその増産なのでしょうね。

        喫緊の逼迫はともかくとして、全体としては”足りないものは余り余るものは足りなくなる”としたものなのだと思っています。

        *情報をありがとうございました。

      2. はにわファクトリー より:

        ロシアから得るものはもうない
         → 落伍者ふるい落とし戦略
         → 心安らかな安楽死へ

        記事はそういう風に読めました。

    2. 名無しのPCパーツ より:

      インドや中国に振り分ける場合、パイプラインを新しく引くわけにいかないから
      当然石油タンカーになるでしょうが、いきなり調達するのは難しい。
      さらに輸送ルートもだいぶ長くなるから輸送費用も馬鹿にならないって問題もある。

      1. カズ より:

        >パイプラインを新しく引くわけにいかないから当然石油タンカーになる

        そこで、「ロシアの商業船に対する保険引受の禁止措置」の発動なわけですね。

        つながりました。

    3. 団塊 より:

       インド、中華人民共和国が消費する石油は少な過ぎなんじゃありませんか、ヨーロッパの消費量に比べたら。

  2. 重箱 より:

    ロシアの言うところの「EUの自滅」は「現在のEUのネルギー生産国であるロシアへの過度な依存」という点については妥当な線だと思います。
    EUは燃料としての天然ガスの4割をロシアからの輸入にたよっているそうですが、その供給がロシアに対する経済制裁への報復としてストップすると、その影響は冬場での個人宅の暖房に限っても半端ではないでしょう。

    地球の温暖化に対する前世界規模の政策も核分裂系の原子力発電の復活を視野に入れるべきかも知れません。

    参照: 【英国政府のブリーフィングで、ロシアのウクライナ侵攻による今冬の停電を警告】
    https://cafe-dc.com/politics/uk-government-briefings-warn-of-power-cuts-this-winter-due-to-russias-war-in-ukraine/

  3. 雪だんご より:

    いわゆる「効いてる効いてる」って奴ですね。

    とはいえ、自国民および外国に居るシンパには「こんな物効いていないんだ、良いな?」と
    すごんで見せる必要があるだろうから、やらない訳にもいかないんでしょうね。

  4. 引っ掛かったオタク@そおいえば終末時計ていまどんなでしょうね? より:

    露国内では今回の事態推移から既に「プーチンは宥和的で弱腰だ」などの言説が飛んでいるとのオハナシが流れていますが、もっと強硬に振れるのか? 予断を許さぬ況かしらん??
    WW3来る???

  5. 引きこもり中年 より:

    独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、自分でも外れて欲しいので)
    ロシアやウクライナから離れた場所にあり、かつ食糧価格高騰に苦しむ国や人のなかから、「ウクライナはさっさと無条件降伏しろ。そのためにはロシアは核兵器を使用しても構わない」という声があがるのではないでしょうか。(もちろん、言い方は工夫すると思います)
    駄文にて失礼しました。

  6. 匿名 より:

     ロシア産原油の生産量は回復しインド中国が輸入量を増やすほかその他アジア仕向けも増える一方、一枚岩でないEU内ではロシア産石油の輸入禁止に反対するチェコ、ハンガリー、ブルガリアが制裁適用除外とされ、国内石油製品価格の高騰に苦しむアメリカは5月に入り石油・石油製品の輸出禁止の可能性に言及し、実行されればEUの石油・石油製品代替輸入先確保は、数量的にも価格的にもさらに困難さを増す。天然ガスに至ってはEU主要国ですらがロシアの対抗措置を回避して輸入を続けている。
     制裁は打つ側にも痛みを伴う。ロシアの言ってることはおかしくもなんともない。

    1. 団塊 より:

       アメリカは、売電大統領がトランプ大統領の政策を反古にしてアメリカの石油採掘を激減させたのをやめれば良いだけ!

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