ISDAのDC、「ロシアのクレジットイベント」認定
ロシアについて昨日、CDSのCE該当が認定されました。これによりCDSの定義上は、ロシア国債のデフォルトが正式に決定された格好です。ただし、このCE認定を理由として、ロシアがさらに窮地に陥る、という話ではありません。ロシアはすでに国際的な市場での起債を禁止される措置を喰らっているからです。
CDSとは?
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれる金融商品が存在します。
これは金融派生商品の一種で、なんらかの「トリガー・イベント」が発生することにより、契約当事者間で資金の授受が行われるデリバティブです。
ここで、いくつかのポイントがあります。
まず、CDS契約は多くの場合、金融商品取引業者間で締結されますが、CDSにおいて参照される組織は、CDS契約における当事者ではない、という点です。
たとえば、「三井住友銀行と三菱UFJ銀行がトヨタ自動車を参照組織とするCDSを売買する」、といった事例が考えられますが、この場合、契約当事者はあくまでも三井住友銀行と三菱UFJ銀行であって、参照組織であるトヨタ自動車は契約当事者ではありません。
多くの場合、自社の信用リスクが第三者によって売買されているという事実を知りません。
また、トヨタ自動車に「もしものこと」が発生した場合、プロテクション保有者(たとえば三井住友銀行)はプロテクション提供者(たとえば三菱UFJ銀行)から金銭などの提供を受けるのですが、ここでいう「もしものこと」が「クレジット・イベント」(Credit Event, CE)です。
このCEには、事業法人の場合には一般的に①破産(Bankruptcy)、②支払不能(Failure to Pay)、③債務再編(Restructuring)の3つで構成されます(ついでにこの「CEが3つある」CDSのことを「3CE」と呼び、CEのうち③の条項がないCDSを「2CE」と呼びます)。
そして、参照組織についてCEのいずれかが発生した場合には、「トリガー」が引かれます。つまり、CDSの契約当事者の申し立てに基づき、ISDA(国際スワップ・デリバティブ協会)が組織する決定委員会(DC)が、ある事象がCEに該当するかどうかを決定します。
つまり、ISDAのDCが「CEに該当した」と決定したならば、そのときにCDSが発動される、というわけです。このあたり、CDSの仕組みやDCの概要などに関しては、『ロシア国鉄のCDSが発動:ソブリン債もCE申し立て』でもわかりやすい解説をしたつもりですので、よろしければご参照ください。
DCがfailure to payに該当と認定=12社が賛成、1社が反対
こうしたなか、ロイターによると、ロシア国債を巡って、DCは1日付でロシアがCEのうち、「支払不能」、すなわち “Failure to Pay” に該当したと認定したそうです。
Teetering on default, Russia misses $1.9 mln payment, committee determines
―――2022/06/02 8:47 GMT+9付 ロイターより
具体的には、4月4日に元利払い期日が到来していたロシア政府発行のドル建てユーロ債券を巡り、猶予期間内の5月2日までに元利払いが行われなかったと認定された、などとしており、ロイターの記事に掲載されているDCのリンク(※PDFファイル)でも確認できます。
ちなみにDCメンバーのうち「NO」と投票したのはシティバンクのみで、そのほかの12社(バンカメ、バークレイズ、BNPパリバ、クレディスイス、ドイッチェバンク、ゴールドマン・サックス、JPモルガンチェース、みずほ証券、アライアンス・バーンスタイン、シタデル・アメリカ、エリオット・マネジメント、PIMCO)は「YES」でした。
実務上、今後はCDSの清算価格の決定手続に移るのだと思いますが、それにしても国連常任理事国でもあるロシアのソブリンのCE認定は、じつに象徴的です。
(※余談ですが、ここでいう「ユーロ債」とは、「ユーロ建ての債券」、という意味ではありません。一般に「オフショア債券」と呼ばれる、発行国以外の市場で発行されている債券のことを広く指す、金融界の俗語です。)
ロシアはすでに制裁を喰らっている
この点、今回のCDSのCE認定を理由としてロシアが今後、国際的な金融市場から締め出される、という話ではありません。ロシア自身がすでに2月末の時点で、G7諸国などから国際的な金融市場での起債を禁止される措置を喰らっているからです。
また、国際的な資金市場から締め出す動きに留まらず、ロシアに対してはすでに国際社会からさまざまな戦略物資の禁輸措置も発動されています。
このあたり、ロシアがいまでも西側諸国への資源・エネルギーの輸出で巨額の外貨収入を得ていることは間違いないにせよ、つい先日は欧州連合(EU)がロシアに対する追加制裁として、石油の禁輸、最大手「ズベルバンク」のSWIFTNetからの遮断などの措置を講じる方針を示すなど、ロシア包囲網は徐々に狭まっています。
その意味では、ロシアから戦争遂行能力を奪うための国際社会の努力は続いており、今回のDCの決定も、ロシアが国際的な金融市場から排除される過程で生じるイベントのひとつ、と考えるのが正確な理解ではないかと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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>ロシア包囲網は徐々に狭まっています
先日、(頭のいい人が集まって喋る)ダボス会議で、キッシンジャーが「ウクライナは領土回復を諦めて停戦すべきだ」と発言してから、西側諸国内でロシアとの停戦を主張する声が立て続けに上がったのと、声が上がったことへの指摘が出始めました。90過ぎたお爺さんの影響力に驚きです。
停戦の主張はNYTなど。
そういう声が上がり始めたことを指摘する声は、軍事や国際政治の専門家など。
長期化するに連れ、支援国が自由民主主義国の国家連合であることの弱点が表れてくるなと実感する、今日このごろです。
ゼレンスキーは開戦当初からそれを心配していましたね。
プーチンや中共にとってはwelcomeでしょう。
取られた領土をあきらめるだけでロシアが停戦に応じるか疑問。
いろいろな条件をつけてくると思う。
「指摘」の主旨は、意見が割れること自体がロシアを利する、です。
ずいぶん昔ニュースで
頻繁にお名前耳にした
キッシンジャー氏が
まだご存命に驚きました。
さすがに今回の発言には
曚老・呆けたとの声もありますが
今の傍若無人中国につながった
当時のキッシンジャー外交は
歴史の再評価を受けるべき
時期かもしれません。
なお、
キッシンジャー氏の発言に
ならずもの国家とは友愛結ぶ
鳩ポッポさんみたいなものが
小躍りすのは単に捨て置けば
いいのですが、
日本のトップである、
岸だんじゃー さんが
変に影響受けないかは心配です。
左の人たち、意外とキッシンジャーのような力の権化のような人たちを憧れているところがあるようです。数年前ですが、小沢一郎を共産党が絶賛してました。
キッシーは心配ないでしょう。
話を聞ける相手からしか影響を受けないと思います。多分。