岸田首相がコミット:「原発再稼働」の多くのメリット

報道によると、訪英中の岸田文雄首相が現地時間の木曜日、ロンドンの金融街で演説し、エネルギー輸入を減らすために原発を再稼働する考えを示しました。これが事実なら、まことに歓迎すべき話です。電力の安定供給、製造業の国内回帰、貿易赤字の削減、そしてロシアの戦争遂行能力の低減などに寄与するからです。「是非とも実現していただきたい」。本件に関し、言いたいことはそれだけです。

サマリー

原発再稼働がもたらすメリット
  • 鉱物性燃料の輸入抑制を通じ貿易赤字の削減に寄与する
  • 日本の鉱物性燃料輸入が減少すれば世界的にエネルギー価格が安定する
  • 電力供給の不安定さが解消され製造業の国内回帰を促進する
  • ロシア産のエネルギー輸入を削減しロシアの戦争遂行能力を低下させる

鉱物性燃料のせいで慢性的な貿易赤字国に!

現在の日本経済にとっての最大の「ボトルネック」は、民主党政権だった2011年に発生した東日本大震災と主要原発の稼働停止などの影響により、電力の安定供給に支障を来していることと、鉱物性燃料(石油、石炭、天然ガスなど)の輸入のコストがかさんでいることです。

これについては、統計資料からも一目瞭然です。ここではわかりやすく、①貿易収支と鉱物性燃料の輸入額を同じグラフに示したもの(図表1)、②もし鉱物性燃料の輸入額が2011年以降、実際の半額だったと仮定した場合の貿易収支(図表2)を眺めてみましょう。

図表1 鉱物性燃料の輸入額と貿易収支

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

図表2 2011年以降の鉱物性燃料が半額だった場合の貿易収支

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

これで見ると、もしも「鉱物性燃料」の輸入高が2011年以降、現実の半額だったと仮定したならば、貿易収支は基本的に現在でも黒字であることがわかります。原発が停止した状況で日本が莫大な鉱物性燃料を輸入し続けている状況が、いかに日本経済にとってコスト負担を押し上げているかという証拠でしょう。

そういえば、今年3月には首都圏で深刻な電力危機が生じました。3月にしては異例の寒波に襲われたことに加え、悪天候で太陽光の発電量が激減し、さらには地震で火力発電所が停止したためです(※どうでも良い話ですが、著者自身も寒さのなか、厚着をして暖房を切るなど、ささやかな協力をしました)。

地震で火力発電所12基が一時停止、電力融通も実施

―――2022年3月17日 18:11付 日本経済新聞電子版より

ちょっと火力発電所が停止するだけで電力危機が訪れるというのは、とくに東日本大震災以降、電力を筆頭に、日本経済がカツカツの状況で回っているという証拠にほかなりません。こうした不安定な電力環境で、せっかくの円安という好機が到来しているにも関わらず、日本の製造業の「国内回帰」が順調に進むとも思えないのです。

ロシアを間接的に支援してしまっている日本

ただ、問題はそれだけではありません。日本が鉱物性燃料を大量に輸入していることが、間接的にロシア経済を支援してしまっている、という問題点もあります。図表3は、鉱物性燃料のロシアからの輸入額【左軸】と、鉱物性燃料全体に占めるロシア産のシェア【右軸】です。

図表3 鉱物性燃料のロシアからの輸入状況

(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)

日本のロシアからの鉱物性燃料輸入高については、ロシアによるクリミア半島の併合が行われた2014年をピークに減少していますが、それでも無視し得る状況近かった前世紀と比べれば、1兆円近い金額を輸入し続けている状況は、やはり好ましくありません。

ちなみに日露両国の貿易高は、2021年において、日本から見た輸出が8624億円、輸入が1兆5431億円ですが、もしもロシアからの鉱物性燃料の輸入がストップすれば、それだけで輸入額の3分の2が消し飛ぶ計算です。

日露貿易の状況
  • 2021年においてロシアは日本にとって第19番目の輸出相手国であり、輸出額は8624億円で、これは日本の全世界に対する輸出額(83兆0928億円)の1.04%である。また、ロシアへの輸出額のうち「輸送用機器」(自動車等)の輸出額は4633億円で、輸出額全体の53.72%を占めている。
  • ロシアは日本にとって第13番目の輸入相手国であり、輸入額は1兆5431億円で、これは日本の全世界に対する輸入額(84兆5679億円)の1.82%である。また、ロシアからの輸入額のうち「鉱物性燃料」(石油、石炭、天然ガス等)の輸入額は9463億円で、輸入額全体の61.32%を占めている。

これをロシアから見れば、昨年実績で6807億円の貿易黒字が失われるということを意味しており、その分、ロシア経済の体力を弱め、ロシアの戦争遂行能力を低下させることに寄与するならば、これは間違いなく歓迎すべき話です。

もちろん、「原発を再稼働しさえすれば、ロシアからの鉱物性燃料の輸入がただちにゼロになる」、というほど物事は単純なものではありません。

しかし、少なくとも貿易収支の改善、エネルギー安保の確保、電力の安定供給、さらには世界的なエネルギー価格の安定という観点からは、原発の再稼働が望ましいことはいうまでもありません。

ロシア産のエネルギー輸入を減らさなければならない欧州にとっても、歓迎すべき話です。日本が鉱物性燃料の輸入を減らすことは、その分、欧州が輸入できる分量が増えるという可能性があるからです。

岸田首相が原発再稼働にコミット!

こうしたなか、昨日はこんな「速報」がありました。

Japan to use nuclear to cut dependence on Russian energy -PM Kishida

―――2022/05/05 19:47 PM GMT+9付 ロイターより

これによると、訪英中の岸田文雄首相は現地時間の木曜日、ロンドンの金融街で演説し、「自国および他国のロシアのエネルギーへの依存を減らすために原子炉を使用する」と述べた、というのです。これが本当ならば、何がその理由であれ、個人的には岸田首相のことを少し見直します。

是非とも実現していただきたい」。

本件に関し、言いたいことは、それだけです。

読者コメント一覧

  1. G より:

    海外にいかないと思い切った発言出来ないのはなんだかなとは思いますが。

    まあ、海外で言ったこと日和らずやってくれたら評価したいです。いろいろ揺り戻しくるでしょうけど。

  2. めたぼん より:

    朗報ですね。
    岸田首相はダメダメだと思ってましたが少し見直しました。
    私としては入国規制の緩和にも注目してます。
    防疫の観点から批判はありましょうが、円安の今、即効性のある経済対策となりますので。

  3. マスオ より:

    > 岸田首相が原発再稼働にコミット!
    私も一言。「さっさとやれ」

    1. 元ジェネラリスト より:

      相乗りさせてください。

      「いいからやれ」

      1. 匿名 より:

         私も相乗り。遅すぎです。トロ過ぎ。

    2. マスオ より:

      レスも頂いたのでもう一言w
      「さっさとやれ」「評価はそれからだ」

      1. トホホ より:

        待ったなし

    3. 匿名 より:

      結果にコミットして岸田さんもライザッ○並みに大変身してくれないかなあ。

  4. 元一般市民 より:

    なんと市場(株価)が反応していますね。電力会社は軒並み上昇、東電にいたっては8%以上騰がっています。但し、原油はほとんど反応していませんが・・・
    私もマスオさん同様、「さっさとやれ!」

  5. 閑居小人 より:

    日本に帰国しても、ブレないことを願っています。。。早くやれ‼
    サハリン1・2も撤退しろ!

  6. KY より:

     >ロシアを間接的に支援してしまっている日本

     反原発派は言うまでもないですね。

  7. sqsq より:

    ロシア軍のチェルノブイリ原発占領により原発の新たなリスクが出てきたと思う。
    ひとたび戦争になれば何でもあり。原発を占領されて、「水抜くぞ」と脅されたらどうするか。

    1. 世相マンボウ . より:

      私は原発に関しては
      再稼働賛成・・というか、
      原発風評被害拡散活動を叫ぶ
      全国のごね得活動家と
      日本に対しての韓流脱糞派
      なんかを相手にせずに
      日本の多数派国民良識層を中心に
      冷静な議論が進むことを願うものです。

      その点で
      sqsqさんのご懸念も理解でき、
      有事の際に敵方の手先となって
      なにをしでかすかわからない
      日本で甘やかしている
      そんなこんなの人たちを
      きちんと押さえる仕組みも必要で
      まずは公安警察さんに頑張ってほしい
      と思います。

  8. カズ より:

    ってことは、広島ガスのエネルギー代替の 目途がたったのかな?   

  9. パーヨクのエ作員 より:

    いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    核分裂発電を推進して人間による長期間の管理が必要な「核分裂発電後の高レベル放射性廃棄物」を作り出す事は傲慢と思わないのは当方にとっては不思議以外の何者でもないのですがね。

    皆様学校で平家物語の序文習ったでしょう?
    この世は「盛者必衰の理」が有るって。

    この世をばわがよと思う望月の欠けたることをなしと思えば

    藤原道長の有名な一句ですが実際はお察しの通りですが、人間全体もそうでないと考え無いのですかね。

    社会での成立条件を重視する当方としては、22世紀に民主主義が存続する可能性は現状では皆無と仮定しますし、人間が億の単位で生存する可能性も高いとは言えないと思うのですよ。まあ、思考実験上での仮説ですが。

    故に核分裂発電後の高レベル放射性廃棄物を

    「他にお任せ(笑)」
    とか「先立つモノが無いので放置」

    というのはヒトとしてあまりに「みっともない」のではないかと思うのですよ。

    よって核融合反応で発電する方法に移行を加速するのがはるかにマシと思うのでお金をそっちに投資するのが前向きな思考と思うのですがどうでしょうかね(笑)。

    以上です。駄文失礼しました。

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