二度あることは何とやら…岸田首相が韓国代表団と面会

「二度あることは三度ある」なのか、それとも「三度目の正直」なのか。日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が昨年7月時点で、「脇の甘い首相なら、韓国が国際法違反の状況を是正していないのに日韓首脳会談に応じるかもしれない」と警告したことが脳裏をよぎります。本日、岸田首相や松野官房長官らは、政策協議代表団の「表敬を受ける」のだそうですが、はて、これをどう考えるのが良いのでしょうか。

脇の甘い首相なら、韓国の特殊性に騙される

当ウェブサイトでは優れた韓国観察者である鈴置高史氏の名言をいくつか繰り返し引用しています。

そのなかでもとくに頻繁に引用するのが、『鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及』でも紹介した、「韓国の特殊性」という表現です。

平気で約束を破り、堂々と他人を裏切る韓国と首脳会談を開こうとする国はまず出てこない。何を取りきめようが、すぐに反故にされるからです。日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」。

この文章は鈴置氏が7月16日付『デイリー新潮』の『文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力』で提示したなのですが、読めば読むほど、至言と言わざるを得ません。

ただ、このデイリー新潮の論考のなかで、もうひとつ重要なポイントがあるとしたら、「脇の甘い首相」という表現です。

鈴置論考が執筆された時点では、東京五輪開会式直前のタイミングで、韓国側では「文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が訪日し、菅義偉総理と面会するのではないか」といった報道がしきりに流れていたのですが、これについて鈴置氏はこんなことを述べていたのです。

日本政府は国際法違反状態の是正を強く求めているので、誰がなろうが『是正』なしで首脳会談に応じるのは難しい。菅首相が降板して脇の甘い人が首相になれば、変わるかもしれませんが」。

なぜこんな話題を思い出したのかといえば、実際に昨年秋に菅総理が降板し、首相が交代したからです。

権限も具体策もなしに手ぶらで訪日した政策協議団

逆に言えば、韓国が国際法違反の状態を是正することなしに、現在の首相が韓国の大統領と面会するならば、それは鈴置氏のいう「脇の甘い首相」、ということでもあるのでしょう。

おりしも『韓国協議団は面会重ねるも…諸懸案の具体策が一切なし』でも報告したとおり、現在、韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)次期大統領が日本に「韓日政策協議代表団」を派遣しています。

こうしたなか、松野博一内閣官房長官は本日午前の記者会見で、これから協議代表団の表敬を受ける予定であると明らかにしました。

松野博一官房長官

(【出所】首相官邸HP)

いちおう、松野長官は「1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係を発展させていく」、「日韓関係改善のため、新政権と緊密に協力していきたい」とする見解を繰り返した格好ですが、どうも不安になってしまいます。

なぜなら、山積する日韓諸懸案を巡って、「政策協議代表団」から具体的な解決提案がなにひとつ公表されておらず、しかも、彼ら自身は「我々に権限はない」と述べているからです(『期待大きければ失望も大きい:韓国の協議団は裏目に?』等参照)。

要するに、彼らは日本を「手ぶら」で訪れたのです。

こうした状況で、安易に面会に応じてしまうこと自体、何らかの「手土産」を韓国側が期待する要因にもなりかねませんし、もしも日本側からの「手土産」がなければ、韓国側としても日本に「逆ギレ」してくるかもしれません。

たとえば、「尹錫悦氏の大統領就任式に岸田首相自身が参加し、そのまま日韓首脳会談を実施する」、といった手土産を政策協議団が韓国に持ち帰ることができれば、彼らとしては大変に大きな「成果」であることは間違いないでしょう。

(※もっとも、『菅総理「日韓関係健全化のきっかけ要求」の本当の意味』などでも述べたとおり、菅総理の時代にも、諸懸案解決の具体策をいっさい持たずに訪日した韓国政府特使の表敬を受けたという事例はあるのですが…。)

「二度あることは何とやら」…?

ちなみに岸田首相は外相時代の2015年、軍艦島などの世界遺産登録、自称元慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を謳った慰安婦合意の2回、韓国側に騙された人物でもあります。

俗に「2回失敗したけれども3回目に成功する」ことを「三度目の正直」、「2回失敗した人は3回目も失敗する」ことを「二度あることは三度ある」といいます。

岸田首相の場合は、果たしてどちらなのでしょうか?

その結果は、意外と早くわかるかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    二回騙された当事者の外相だったのに、三回目騙されたら、ただの無能だと思うんですが。。。

    1. 無学な老人 より:

      「他人の話をよく聞くこと」が取り柄の首相だそうですから、三度目もありそうな気がします。

  2. ジロウ より:

    こんなに国益を無視して外面重視の岸田や自民党には、政権を任せることなどありえません。皆さま、ちゃんと選挙行って、岸田に答えを叩きつけましょう。

  3. taku より:

    何の具体的方策もなしに来た「政策協議団」を受け入れた理由、岸田首相が面会した理由を、きちんと国民に説明してもらいたい、ですね。これで韓国は「国際法違反はうやむやにできた」「日韓関係改善には双方の努力が必要だ」と勘違いし、解決は更に遠のくでしょう。参院石川補選の結果を受け、どうせ選挙には負けない、とタカをくくったのでしょうか。とりあえず、できることは来るべき参院選挙では、自民党に投票しないことだけですかね。いままでの「我が国の一貫した立場」はどうなってしまうんだろう。心配なこと、このうえありません。

  4. 引きこもり中年 より:

    そもそも論ですが、自分の面子や感情で、自分の間違いを認めたくない人間は、同じ間違いを何度でも繰り返す、ということでしょうか。

  5. 立ち寄り人 より:

    毎日の更新御疲れ様です。協議する権限のない交渉団なんてと思っていたけど、また捏造発表する為に会合するのでしょう。官房長官の「何も進展はなかった」との記者会見が見えそう。

  6. がんじぃ より:

    これで、あの人の退陣が近づいてきましたかね?

  7. しきしま より:

    むしろ会ってしっかり引導を渡すべきと思います。もちろん会談内容は全世界に公開で。
    手土産を貰えなかった韓国が逆ギレしようがこっちの知ったことではありません。
    そういう逆ギレは韓国の崩壊を早めることになるのでかえって好都合です。
    たとえば政府が親日的政策を取ろうとすると韓国国民が大反対、韓国政府は「助けてください」が言えなくなります。

  8. 雑木林の一愚人 より:

    岸田さん、「急迫する国際情勢に鑑みて日韓の関係改善は待ったなし」とか言ってしまったようです。ならば、韓国の常套手段で「日本が一歩も譲歩してくれないなら、韓国の民意を得られず、政権は失脚してまた左派政権に戻ってしまう。それでもいいのか?」と居直った反転攻勢に出てくることでしょう。鈴置さんの言われる通り、米国は、信用できない韓国をむしろ当てにする方が危ういとして、きちんと行動で示すまでは突き放すという方針でいます。岸田さん、やはり学習していないようですね。

  9. 犬HK より:

    岸田坊ちゃんはどこまでお人好しなんでしょうね。
    わざわざ訪問してくれたのだから、などという日本人的な気遣いなんて無用な相手だと、まだ理解できていないんでしょうか。

    「日本の一貫した立場に基づき、新政権と緊密に意思疎通していく」という立場だとしていますが、緊密に意思疎通できる政権などあの国には存在しません。
    意思疎通できないから今に至るんでしょうに、ヤレヤレです。

  10. ちょっと待って より:

    自分は会う位いいと思うが。
    話をしてダメだと思ったら1ミリも譲らなければいいだけ。
    凄くイヤな事だけど韓国は隣にある国だから個人の日本人が世話になる事もあるかもしれない。岸田首相の肩には日本人1億2500万人の命と財産がのっている。
    初めから会いもしないというのは、いかがなものかと思う。
    話をする事で韓国の実情というものが察せられるという事もあると思うし、向こうも小手先で日本の怒りを何とかできないという事がわかると思うし。

    1. 匿名 より:

      その相手は、何の権限も無い、この御一行様だったのでしょうかね?
      新しい大統領では無いですか?
      日本の総理は軽い立場になってしまいましたね!

  11. マスオ より:

    一番いいのは、会わずにこちらの一貫した立場を伝える事。
    しかし、会うのならば、こちらの一貫した立場を伝えて、言質を取られず、毅然と対応する事が大事だと思う。

    本来であれば、会ったら会ったで、ちゃんと対応すればいいだけの事だけど、何が不安って、騙された前科があるうえで、また騙されに行くんじゃないかと言う、信頼のなさだと思う。

    まぁ、会うこと自体がリスクであることを理解せずにノコノコと出て行くのもどうかと思いますが。きっとこの後、無い事無い事書かれるだろうな。。。

  12. 元一般市民 より:

    そういえば・・・
    確か岸田氏は、東大文一を二度落ちて、早稲田に行ったんでしたっけ。
    つまり、二度あることは三度あるから、三度目の正直には挑戦しなかった人物ですよね。
    お~いっ、岸田ぁ、二度あることは三度あるぞぉ、挑戦するなよぉぉぉ・・・

  13. 一之介 より:

    学習できない愚かな人物は
    二度あることは何度でもある。
    こまったものです。

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