内閣支持率高位安定:立民は「補選負け過ぎ」に危機感

夏の参院選で立憲民主党が惨敗するのでしょうか。最新世論調査の結果で見ると、内閣支持率、自民党への支持率、そして「青木率」が軒並み高位安定する一方、週末の参院選で立憲民主党候補者が自民党候補者に「トリプルスコア」で敗れたことを受け、時事通信によれば、立憲民主党内で「危機意識が強まり」、「泉健太氏を選挙の顔として不安視する声が出ている」のだそうです。

内閣支持率は軒並み50%超:菅政権と比べると高位安定

当ウェブサイトでは数年前から、6つの世論調査(読売新聞、朝日新聞、共同通信、時事通信の4社、および産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)を「定点観測」しているのですが、現時点までに今月分のすべての調査が出揃っています(図表1)。

図表1 内閣支持率(2021年4月、カッコ内は前回比)
メディアと調査日支持率不支持率
読売新聞(4/1~3)59.0%(+2.0)29.0%(+1.0)
時事通信(4/8~11)52.6%(+2.4)20.2%(▲0.9)
産経・FNN(4/16~17)65.9%(+0.1)26.7%(▲1.2)
共同通信(4/16~17)58.7%(▲1.4)23.1%(+1.2)
朝日新聞(4/16~17)55.0%(+5.0)29.0%(+4.0)
日経・テレ東(4/22~24)64.0%(+13.0)27.0%(±0)

(【出所】各社報道より著者作成)

内閣支持率は最も低い時事通信のものでも50%を超え、自民党政権に低く出る傾向が強い朝日新聞の調査でも55%、最も高い産経・FNNのものについては65.9%と、有権者の3分の2近くが岸田内閣を支持しているという状況です。

内閣発足から半年でこの状況、菅義偉内閣と比べて非常に堅調です。図表2は2020年9月からの菅内閣の支持率と、2021年10月以降の現時点までにおける岸田内閣の支持率の推移を比べたものですが、明らかに岸田内閣の支持率は高位安定しています。

図表2 内閣支持率比較

(【出所】各社報道より著者作成)

今年7月には参議院議員通常選挙を控えていますが、少なくとも内閣支持率だけで判断する限りは、参院選を前にした「岸田おろし」が発生する可能性は非常に低いと考えて良いでしょう。

政党支持率では自民一強が鮮明に!

それだけではありません。政党支持率でも、自民党の一強状況が続いています(図表3)。

図表3 政党支持率(2022年4月)
メディアと調査日自民立憲維新
読売新聞(4/1~3)41.0%(+1.0)5.0%(±0)5.0%(▲2.0)
時事通信(4/8~11)30.2%(+3.5)3.3%(▲1.0)3.8%(±0)
産経・FNN(4/16~17)37.3%(+0.2)7.5%(+0.9)6.5%(▲0.1)
日経・テレ東(4/22~24)48.0%7.0%7.0%

(【出所】各社報道より著者作成)

ここに列挙した4つの調査で見る限り、最大政党である自民党が二ケタ台の支持率を誇っており、日経・テレ東に至っては半数近くが自民党を支持しています。

この点、青木幹雄・元参議院議員が提示した、いわゆる「青木率」と呼ばれる指標があります。

これは、内閣支持率と最大与党に対する支持率を足して50%を割り込むと内閣が退陣する(かもしれない)、とされる経験則のようなものですが、この「青木率」は最も低い時事通信のもので82.8%であるほか、読売新聞で100%、産経・FNNで103.2%、日経・テレ東に至っては112%です。

政権運営は、いまのところ、極めて安定していると考えて良いでしょう。

参院石川補選で立憲民主党「負けすぎ」

ところで、立憲民主党といえば最大野党でもあるのですが、図表3でもわかるとおり、どの調査でも支持率が軒並みヒトケタ台に苦しんでおり、かつ、いくつかのメディアの調査では日本維新の会に支持率で逆転されています。

こうしたなか、週末には参院の石川選挙区で補選が行われたのですが、自民党前職(※公明推薦)の宮本周司氏が189,503票を獲得して圧勝。立憲民主党の小山田経子氏が59,906票に留まり、大敗を喫しました(ほかに共産が18,158票、NHK党が9,430票)。

いわば、自民党候補が立憲民主党候補に対し、「ダブルスコア」ならぬ「トリプルスコア」という差をつけて圧勝した格好ですが、これを受けて時事通信には今朝、同党が「参院選に向けて危機感を強めている」とする報道がありました。

立民、参院選へ危機感 補選大敗、立て直し急務

―――2022年04月26日07時05分付 時事通信より

時事通信によると、「夏の参院選に向け『選挙の顔』としての泉健太代表を不安視する見方」も出ており、「態勢の立て直しが急務」、などとしています。なぜなら、時事通信によれば、今回の補選は昨年11月に就任した泉氏にとっての「初陣」だったからです。

このあたり、立憲民主党への支持率の低迷は泉氏が代表に就任する以前からクッキリしていたという事情もあり、泉氏に敗戦の全責任を負わせるのが適切なのかという点については、若干疑問ではあります。

ただ、時事通信は立憲民主党関係者から、「負け過ぎだ」、「自民党に代わる選択肢として有権者に見られていない」との声が上がっているなどと指摘。そのうえで、同党幹部のひとりは泉健太氏の知名度不足を指摘し、参院選告示日と見込まれる6月22日まで2ヵ月を切るなかで頭を抱えている、などとしています。

立憲民主党の現状は彼ら自身の行動の結果

このあたり、個人的に自民党政権に全幅の信頼を置くつもりはありませんし、また、最近になって存在感を強めている日本維新の会を巡っても、手放しに絶賛するつもりはありません。

しかし、立憲民主党がこれらの政党のなかでもとくに支持率の低迷に苦しんでいる理由は、おそらくは「泉健太氏が代表だから」というだけの問題ではなく、立憲民主党のこれまでの行動が有権者から適切に評価された結果ではないか、という気がします。

旧民進党時代、代表だった村田蓮舫氏(※ツイッター上の名称は「謝蓮舫」、戸籍名は「斎藤蓮舫」だそうです)が外国籍を保持していたという問題の説明から逃げ回っていたことの悪印象が強すぎたためでしょうか、2017年の衆院選では候補者の公認を見送るという前代未聞の事態に追い込まれました。

また、旧民進党の出身者が多数参加している立憲民主党を巡っては、「コロナより桜が大事」とする姿勢で国会質疑を潰してしまっていること、あるいは年初からも「アベノマスク問題」や「もりかけ問題」の追及を始めてしまうなどの国会質疑がSNS上でも話題となっています。

さすがにこのインターネット時代において、いくらメディアが「報道しない自由」で守ってくれているとはいえ、これまでの「揚げ足取り」「追及」姿勢を貫くことには少々の無理があります。

そういえば、ロシアによるウクライナ侵略が始まって以降も、やはり立憲民主党は「追及型」の姿勢を崩しませんでした(『参院選意識?立憲、予算審議で「追及型」の布陣=産経』等参照)。

昨年10月の衆院選にしたって、結局はこうした「追及型政治」に対する有権者の回答だったのではないかと思います(『「もりかけ桜」スキャンダル追及に対する有権者の答え』等参照)。

このように考えていくならば、今夏の参院選の結果次第では(あるいはその前の時点で)、立憲民主党が再び組織再編(泉健太代表の退陣、または枝野幸男氏らの離党など)が発生する可能性については検討しておいても良いかもしれません。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    キッシーが今強いのは間違いなく、ウクライナ問題へかなりコミットできたことやね(おそらく、日本外交でこんなに大胆にどこかの国の肩を持ったのは戦後初めて、今までは風見鶏が良いところだった)
    それにひきかえ、他のアジア諸国、例えば、韓国、中国、インドは完全に日本に外交で敗北した
    しかし、本来なら日本国民ははっきりしたリーダーシップを取る安倍さんみたいなタイプが好み
    だから、キッシーはウクライナ戦争が終わればかなり窮地に立つと思うよ

  2. 元ジェネラリスト より:

    >「夏の参院選に向け『選挙の顔』としての泉健太代表を不安視する見方」も出ており、「態勢の立て直しが急務」

    党内のうるさ型におもねてばかりで正論を言えず(言わず?)、元民主党の松井孝治から「菅直人殴っちゃえばいいんだよ」などと激励までされていた泉健太代表。
    ここまで党のために尽くした(?)のに、梯子を外されるということですか。
    理念がない上に結果も出せないんじゃ、しょうがないですけどねー。

    大学出てすぐに福山哲郎氏の秘書になって政界入りだそうです。ある意味、親分の尻拭いになってるのかも。
    ちっちぇえ話だなぁ。

  3. 通りすがり より:

    「変えよう」とか厚かましいキャッチフレーズで国民を騙そうとしても無駄。
    社会人経験も碌すっぽないばかりか他人に頭を下げたこともなく、無駄に歳だけ食った輩が先生呼ばわりされて勘違いしていい気になっているだけの烏合の衆が、ゴミの如き発言、しかも支離滅裂な批判のみで国家を停滞させ、国民の脚を引っ張ってきたことをまともな国民は絶対に許さない。
    各地の有権者には次の参院選では立件共産党構成員を根絶やしにするつもりで挑んで欲しい。
    そしてそんな連中を報道しない自由を濫用して擁護するマスゴミ各社にも鉄槌を。

  4. 引きこもり中年 より:

    素朴な疑問ですけど、立憲民主党は、リスクをとって岸田総理を批判するために、日韓関係の見直しくらいを、言い出してもおかしくないと思うのですが。というより、そのくらいのこと言わないと、立て直しは困難だと思うのですが。

  5. のぶくん より:

    岸田さんを叩いて高市さんが出てくると嫌なマスコミが岸田さんを守っているので、岸田さんはもう少し色々できるはずなのですが、本当に大したことしないですね、本当はするべき時に何もしないのも罪は重いのですが、マスコミに嫌われないような、国民に嫌われないような、財務省に嫌われないような状態でいつまで行くのでしょうか

  6. 世相マンボウ_ より:

    立憲民主党は、批判ばかりで
    自分たちの目指す道や
    それを実現する政策がみじんもない
    との世間の評価をよく聞きますが、
    私はそんなことはないと思います。
    とはいっても、あんな政党の
    肩など持テるわけではありません。

    韓流政党である立憲民主党は
    初鹿高井陳君などなど歴代が
    民団の総会での演説で
    参加者の大声援で感動を呼んだ
    演説の主旨のように
    『ふつうにまじめな日本人を押しのけて
     ”自分たち”の住みよい日本にする』
    という不偏不倒の確たる政策が存在しています。

    ただそれを正直に表立って表明しては
    CLPやモロモロの画策で腐心して騙してきた
    日本の無党派層にバレてしまうので
    表明できないというジレンマに落ちいって
    みえるだけのことだと見透かされています。

    党名ロンダリングを繰り返しても
    半島とウッシッシをした
    あの民主党政権の流れを組む
    韓流政党立憲民主党さんなのですから
    その隠そうとする実態と
    今表立って唱える空疎な主張とで
    苦境に陥っていることには
    自業自得で同情の余地はないものの
    まあたいへんですわなあ(笑)と
    思慮して差し上げます。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

引きこもり中年 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告