「ポンコツ」鈴木俊一財相、今度は「悪い円安」と失言

20年ぶりの円安水準で日本経済にも復活の希望が見えてきました。現在の日本にとっては、輸出競争力の上昇、輸入代替効果の促進を通じ、円安は日本に良い影響をもたらすからです。それだけではありません。日本は世界最大の債権国であり、円換算した外貨資産の価値が上昇するという効果も得られます。それなのに、日本の財政の責任者が、これについて「悪い円安」などと発言したようです。相変わらずの「ポンコツ」ぶりです。

円安進む:1ドル=126円台に!

為替相場が本日、20年ぶりの円安水準となる1ドル=126円台に乗せています。

金融政策発表などの手掛かりがあったわけでもないのに円安が進むというのは珍しい現象ですし、また、一部メディアでは「近いうちに1ドル=130円台もあり得る」などとする観測報道もあるようです。

さて、こうした円安については、日本経済にとっていかなる影響をもたらすのでしょうか。

これに関しては、影響は単純ではありませんが、ただ、一般論として述べるならば、日本は総じて円安にはかなりの耐性がある国です。

自国通貨の価値が下落した場合には、外国通貨の価値が上昇しますので、外国に対する純債権国の場合は、外貨の債権ポジションから評価益が、債務ポジションからは評価損が生じます。

日本の場合、昨年12月末時点で金融機関が全世界に対し「最終リスク」ベースで5兆ドル近い与信を持っており、また、財務省も1月末時点で1兆3859億ドルという、途方もない金額の外貨準備を保有しているため、基本的に円安は日本に良い影響をもたらします。

日本の課題は電力の安定供給

ただし、先日の『せっかくの円安なのに日本経済の復活を邪魔するのは?』などでも指摘したとおり、現在の日本は貿易赤字基調にあります。民主党政権時代に発生した東日本大震災などの影響もあり、原発がほとんど稼働しておらず、石油などの輸入コストが上昇せざるを得ないからです。

逆にいえば、日本経済の課題は「電力の安定供給」にあります。

この点が解決するならば、円安は輸入品物価の上昇を通じて国産品への代替効果をもたらしますし、また、輸出競争力の強化を通じて産業も復活する効果が期待されます。逆にいえば、電力の安定供給こそが、日本経済のボトルネックである、という意味でもあるのです。

いずれにせよ、最近多くのメディアが「悪い円安」を盛んに報じていますが、こうした「輸入代替効果」「輸出競争力上昇」などの初歩的な論点を無視しているという意味では、日本のメディアの不勉強ぶりは相変わらずだと思わざるを得ません。

鈴木財相「悪い円安と言える」=日経

こうしたなかで、なかなか信じられない記事を発見しました。

鈴木俊一財相が15日の閣議後会見で、現在の日本の円安を「悪い円安」と述べたのだそうです。

財務相「悪い円安と言える」 G20に出席の意向

―――2022年4月15日 10:30付 日本経済新聞電子版より

日経によれば、鈴木氏は「為替の安定が重要だ。特に急速な変動は望ましくない」としたうえで、「価格に十分転嫁できないとか、賃金がその伸びを補うほど伸びていないことについては、悪い円安と言えるのではないか」、などと述べたのだそうです。

そもそも「国際収支のトリレンマ」という経済学の鉄則に照らし、日本は資本移動の自由と金融政策の独立性を重視している以上、為替相場の安定については放棄せざるを得ません。逆にいえば、政府・通貨当局が特定の為替相場に誘導しようとする行為は、基本的には慎まねばなりません。

もちろん、「急速な変動は望ましくない」とするのは日本政府の一貫した立場ではありますが、それと同時に、財相という立場にある者が、何らかの「望ましい為替相場の水準」に言及するのは、NGです。それだけで為替相場が反応する可能性もあるからです。

また、「国際収支のトリレンマ」に照らすならば、日本政府は為替相場が不安定であることを当然の前提において、政策を組みたてる必要があります。

たとえば「為替相場が急激に動いて国民生活に影響が生じる」という状況にあるのならば、それに対しては「為替相場に介入して望ましい水準に誘導する」のではなく、財政政策、とくに「ガソリン税の引き下げ」「輸入小麦の政府売渡価格の改定」といった「財政政策」で対応するのが鉄則です。

鈴木財相の発言を眺めていると、「ガソリン税」「小麦売渡価格」といった財政政策に及ぶものはあまり見当たりませんが、このことも、この人物が自身の頭で経済学を理解しようとしておらず、財務官僚の言いなりになっているという証拠でしょう。

とくにガソリン税に関する「トリガー条項」の凍結解除にかたくなに踏み切ろうとしないあたり、「国民生活より税収が大事」、「日本経済より財務省の省益が大事」という姿勢の表れと言わざるを得ないのです。

鈴木財相の「ポンコツ」ぶり

そういえば、鈴木財相の「ポンコツ」ぶりの例は、ほかにもあります。2月26日にG6が対ロシア制裁を表明した際、日本が半日遅れるという醜態をさらしました(『日本政府、対ロシア追加制裁への参加を半日遅れで表明』等参照)。

一部メディアでは政権は「時差のために対応が遅れた」といった言い訳をした、などと報じられているようですが、これが事実ならば、言い訳にしてはレベルが低すぎます。時差は欧州と米国の間にもあるからですし、日本の金融当局もバーゼルなどに担当官を常駐させていて、情報をリアルタイムに掴んでいるはずだからです。

このあたり、岸田文雄首相がポンコツだと指摘する人もいますが、個人的には本件については、むしろ鈴木財相の責任が極めて重大ではないかと考えている次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 愛知県東部在住 より:

    「ポンコツ」鈴木俊一財相 >

    もしかすると、「3年間で1412万円のガソリン代を計上」してしまったという過去があるだけに、ガソリン価格の上昇要因に関しては人並み以上に敏感にならざるを得なかったのかもしれませんね。(笑)

    https://news.line.me/issue/government/59a58d3d15c1

  2. 理系初老 より:

    鈴木財相=ポンコツは疑う余地もありませんが、10.000¥ウクライナに寄付するぞドヤ、事務方天引き手続きよろしくのシェーシェーもてぎ幹事長、彼は廃車でしょ。

  3. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    時差を言い訳にしてロシア制裁が半日も遅れたのは世界に言い訳できない
    遅れたのを大義名分として日本が経済制裁されて、日本政府の資産も日本企業の資産も全部没収される可能性が充分にあるのに
    岸田首相はそんな簡単な国際情勢すら理解していない馬鹿

  4. 元一般市民 より:

    鈴木氏がポンコツなのは100%同意なのですが、「悪い円安」発言は失言では無いと思います。但し、「悪い」の理由は、輸入価格が転嫁できないとか、賃金が上がらないとかが理由ではなく、資本主義に逆らう岸田氏の姿勢が原因だと、と思っています。円の動きは、岸田氏就任以降、おかしくなっている様見受けられます。

  5. 普通の日本人 より:

    記憶違いでなければこの方の奥様は、麻生氏と縁戚だったはず。
    日本の政治家は世襲がおおく、もしかして貴族階級が出来つつあるのでは?
    他の政治家も相関図を確認することが必要のなってきている?
    ちょっと気になりましたので記してみました。

    1. sqsq より:

      義理の弟じゃなかったかな?

      >もしかして貴族階級が出来つつあるのでは?

      政治家というのは貴族とは正反対の職業。
      藤山愛一郎が経済界から政界に入るとき「絹のハンカチを雑巾にするのか」と言われたそうだ。

  6. sqsq より:

    円安を輸出入とからめて語る経済評論家が多いけど、日本企業の海外拠点の利益は円換算で膨れ上がるはず。損失だったらそれも膨れ上がるけど。

  7. はるちゃん より:

    日経新聞がしきりに今回の円安は悪い円安だという記事を書いています。
    それを読んだ鈴木財相が今回の円安は悪い円安だと洗脳されたのでは無いでしょうか?
    その発言を日経新聞が鈴木財相も今回の円安は悪い円安だと言っているという記事を書いているのでしょう。
    隣の国にとっては円安は困った事態ですので、日経新聞が助け舟を出したのだと思います。
    黒田さんには日本のため日経の圧力に負けずに頑張って頂きたいと思います。

  8. カズ より:

    >為替相場が急激に動いて国民生活に影響が生じる

    グローバル企業に向け、外貨で保有してる資金を部分的に円に替え、賞与としての社会〔従業員〕還元を促せばいいのかと。

    円安の進行は抑制され、日本社会は潤い、企業の懐中は微塵も痛まない。

    ???

  9. 引っ掛かったオタク@←コレが思考停止レッテラーか!? より:

    テメーのシノギしか視てないファストリのアホみたいなコト云いよるなポンコツ蔵相
    まあ総じて宏池会お公家様ズがポンコツってコトで

  10. ビトウ より:

     コメント失礼します。

     鈴木俊一…1953年生まれか。高度経済成長期、池田勇人内閣の直撃世代ですね。1ドル360円の超円安をすっかり忘れている様子。正確な数字は当時知らなくても、なんで自分の若い頃はあんなに日本がイケイケだったのか原因は調べておいて欲しいものです。

    https://kou.benesse.co.jp/nigate/social/a13x0120.html

     円安は外国の商品購入代金が増えるデメリットが有る反面、

    ・外国に商品を安く売れる
    ・日本市場への円の供給量が増えている
     
     メリットも有りインフレ(商品よりお金が多い)を達成し易くなる。
     お金が増えて輸入品が高くなると国産の需要が高まり、国産品の品質や供給が向上する。国産品が売れれば会社は儲かり設備投資をしたり、従業員確保の為に賃金を上げたりせざるを得なくなる。起業で一発当てようとする人も増える。経済成長に自由競争で豊かさ(選択肢が増える。贅沢がし易くなる)が増す。
     この辺の話は主様はじめ、もっと詳しい人が分かり易く説明してくれるでしょう。

  11. クロワッサン より:

    >このあたり、岸田文雄首相がポンコツだと指摘する人もいますが、個人的には本件については、むしろ鈴木財相の責任が極めて重大ではないかと考えている次第です。

    なんとなーく「鈴木善幸」氏を連想したのでググってみたら、なんと息子なんですね。

    1. 匿名 より:

      顔がそっくり。
      by 58歳

  12. 匿名 より:

    本記事より
    「一部メディアでは政権は「時差のために対応が遅れた」といった言い訳をした、などと報じられているようですが」

    「佐渡金山の登録支援:このタイミングで議連発足の意味」より
    https://shinjukuacc.com/20220323-03/
    「「本文中、岸田首相が「時差の都合を言い訳にしている」と記載している箇所がありましたが、これについては情報ソースが確認できませんでしたので、該当する記述を修正しています。」

    実は、報道している情報ソースが確認出来ていたのでしょうか?
    それならば、そのソースの提示をお願いします。

    自分が確認した限り、時差によるためと報道をしているところは見当たりません。
    「日本政府、対ロシア追加制裁への参加を半日遅れで表明」のコメントで、仮説の一つとして述べられているくらいしか、見掛けていません。
    他の場所でも、同じように書き込んだコメントはあるのかも知れませんが。

  13. 匿名 より:

    日本、制裁で欧米を後追い 岸田首相は否定
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2022022801064

    時差の問題については、外務省がそう釈明しているという報道はあるようですね。
    とはいえ、リアルタイムに情報を掴むことが出来るということと、リアルタイムに情報を処理出来るという問題は別問題に思えます。
    また、足並みが揃えられるように事前に情報が共有されていたのかは分かりません。

    欧米という枠組みが先行した件については、元々彼らの認識として、日本が首を突っ込んでくるという認識もあまり無かった可能性は無いでしょうか?
    ウクライナとロシアという地方の問題において、日本とロシアが密接に関わるかというと、端から見れば距離は遠いし、交流も薄い。文化圏も異なる。なので彼らの頭の中で、足並みを揃える対象として、日本は輪の中にそもそも組み込まれていなかったというのは、可能性として有り得そうな気がしています。
    G7という括りで考えなければ、自由主義陣営かつ欧米文化圏かつ太平洋の主要国であるオーストラリアも足並みを揃えていないことですし。

    こう考えると、元々事前に情報が共有されていなかった可能性は、それなりに有り得そうに思えます。
    そんな中では、欧米間で会合が開かれるという情報は掴めても、その結果がいつどのように出てくるのかは予想のしようが無い。日本としては、結果が出てからでないと、判断の下しようが無い。

    結果、日本時間としては深夜に出た結果を見て、政権はそこから判断せざるを得なかった。欧米の発表から半日後の追随となった。
    この仮定で考えると、時差によるものという理由は「各国から歓迎の声が上がっていること」「特に負の影響も見当たらないこと」「岸田総理は遅れたとは認識していないと述べたこと」というそれぞれの話に辻褄は合うように思えます。
    つまりは、日本がリアルタイムに情報を処理出来なくても仕方ないし、それは欧米諸国にとっても理解出来るものであったと。
    となると、この件については金融庁や外務省、岸田政権の失態なのか疑問に思います。

    あと、制裁参加の発表が欧米と同時でなければ絶対にいけなかった。みたいな理由って自分には特に思い付かないのですが。何があるんでしょう?

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