せっかくの円安なのに日本経済の復活を邪魔するのは?
日銀の連続指値オペの影響もあり、円安がさらに進行しました。日本のように巨額の外貨準備や対外債権を抱える国にとって、円安は国富の上昇を意味しますし、また、円安の進行は日本の輸出産業にとって非常に良い影響をもたらします。ただし、現在は再生可能エネルギー買取制度や原発停止の影響、さらには無茶な増税路線を続けて日本経済を疲弊させた「ポンコツ官庁」である財務省が、日本経済の足を引っ張っている状況にあります。
日銀「連続指値オペ」
昨日は日銀が「連続指値オペ」を開始しました。
連続指値オペの実施について【※PDF】
―――2022/03/28付 日本銀行ウェブサイトより
この「連続指値オペ」は、日本国債の回号(今回は10年363~365回債)を指定し、その目標利回り水準(365回債に関しては0.25%)を達成するまで無制限に買入を行う、というものです。ここもとで上昇しつつある10年債などの利回りを抑え込むことが目的で、2月14日に続き今年2回目です。
ただし、このオペの結果、外為市場では日本円の対米ドル相場(USDJPY)が大きく動き、一時1ドル=125円台にまで円安・ドル高が進む展開が見られました。
国際決済銀行(BIS)のデータ “US dollar exchange rates (daily, vertical time axis)” 【※CSVファイル、大容量注意】によると、1ドル=125円を超えるのは2015年6月8日以来、約6年9ヵ月ぶりのことです。
また、1ドル=125円台の基調が定着すれば、それは2002年以来、じつに20年ぶりのことでしょう。
円安と円高、それぞれどういう影響があるのか
基本的に、為替相場に関しては、円高になれば外国からの輸入力が上昇する一方で輸出競争力が削がれますが、円安になれば輸入品物価の上昇という悪影響に対し、輸出競争力が上昇するというプラスの効果が得られます。
現在の日本では、原発の停止や再生可能エネルギー買取制度などに伴い、電力コストが異常に高止まりしているという状況にありますが、これらの問題さえ解決すれば、産業競争力的には非常に強い状況が復活しているといえます。
また、一般に自国通貨安になれば、外国に外貨で貸しているおカネの価値が症状する一方で、外国から外貨で借りているおカネを返済する負担が上昇します。
しかし、BISの国際与信統計(CBS)によると、日本の金融機関は外国に対し、4兆8598億ドル相当を貸し付けているのに対し、外国から借りている債務は1兆1953億ドルに過ぎず、円安は日本の国富を大きく増やす効果をもたらします。
もっと言えば、政府が潤沢に保有している外貨準備についても、かなりの含み益が生じているものと考えて良く(著者の資産だと160兆円を超えています)、それを売り払えば、「国の借金」とやらの圧縮につながるだけでなく、消費税の年間の税収(20兆円)を遥かに上回る利益が実現します。
正直、外貨準備を処分すれば、消費税と地方消費税の税率を1年間ゼロ%にすることだってできるでしょう。その意味では、「原発の再稼働」さえ実現すれば、円安は全体として、日本経済に大変に大きな恩恵をもたらします。
韓国が「戦々恐々」
そして、円安に戦々恐々としている国が、韓国かもしれません。
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)には日曜日、こんな記事が掲載されていました。
円安で韓国の輸出競争力低下? 産業界が緊張
―――2022.03.27 11:16付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースによると、急速に円安が進んだことで、「主力輸出品が(韓国と)一部重なる日本の円安により、韓国の輸出競争力が低下するのではないか」との懸念から、「韓国の産業界に緊張が走っている」のだそうです。
ただし、聯合ニュースは「最近の円安についてはそれほど韓国の脅威にならないとの意見が多い」として、次のようにも述べます。
「円安と原油価格の上昇が同時に進んでいるため、エネルギーのほぼ全量を輸入に頼る日本の経済にとってむしろマイナスに作用するとの見方からだ」。
このあたり、聯合ニュースの指摘は非常に正鵠を射ています。現在の日本は原子力発電所を停止していることに加え、再生可能エネルギーの買取制度によって、電力料金が高止まりしてしまっており、せっかくの円安メリットを十分に生かすことができません。
やはり、この30年間、財務省が続けた無茶な増税路線により日本経済が疲弊していることに加え、民主党政権禍による原発停止の影響、2000年代~2010年代の円高などで、日本の産業が韓国を含めた海外に流出してしまった影響は、すぐには元に戻せないのです。
原発再稼働、産業の復活、そして財務省の排除が必要
しかし、聯合ニュースはこうも述べます。
「ただ、円安が今年後半まで長期化することになれば韓国の一部業種にとって被害が及ぶとの懸念の声が上がる。日本企業と競合する石油化学、鉄鋼、機械、自動車などの業種は円安が競争力の低下につながるからだ」。
この点に関しても、聯合ニュースの指摘は非常に正確です。
結局のところ、日本はしっかりと基準を定めて原発を再稼働し、産業の強みをひとつずつ取り戻していくより方法はありません。
その意味では、日本再建はまだまだ道半ばであり、「国民の敵」にして「ポンコツ官庁」でもある財務省の影響力をどうやって日本から排除していくかについては、しっかりと議論していかねばならないと思う次第です。
こうした議論をまとめておくと、次のとおりです。
日本経済の課題
- 産業構造が似ている韓国との輸出競合
- 安価で安定した電力供給
- 無茶な増税を繰り返してきた財務省
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
日本の緩和継続は米国のテーパリングを支える大きな米国支援になってる事も見逃してはいけない要素だと思います。
ハッキリ言って国際社会に本当の意味での味方いないと思うし、こういう事を考えると、日本は政策よりもまず憲法改正をしないとどうしようもないという結論になってしまいますが・・・
>>>「原発の再稼働」さえ実現すれば、円安は全体として、日本経済に大変に大きな恩恵をもたらします。>>>戦々恐々としている国が、韓国>>>
おっしゃる通りと思います。これは理系にとっても非常に分かりやすいお考えです。
以下は私見です:
原発の寿命がつきる前に、高安全性小型原子炉を5基くらい東京湾に設置しましょう。福島の排水に文句を言い、停電にブーたれる東京都民よ、受益者負担しなさい。なお、私がもし東京都民であってもこれを主張しますので、念のため。
現在稼働中の原発は、日本国内ではたった10基のみという状態のようです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5bc4783bf44bce3d63d3e5da8de99da54f6b927d
羮に懲りて膾を吹く、まさにこれですね。
>原発の停止や再生可能エネルギー買取制度などに伴い、電力コストが異常に高止まり
再生可能エネルギー買取制度は、買取原資を発電施設所有者も含めた利用者全般から広く薄く集める仕組みだったと思うのですが、当該発電量の買取に伴って電力会社が要さなくなった発電費用は電力会社の丸儲けだったりするのかな・・??
*チョッと疑問です。
電力会社が必要とする発電設備は再生可能エネルギーがあっても変わらないのでは?
火力発電所の稼働を控えた分だけ燃料代が浮いてるような気がするんですけどね。
燃料費は電気代で相殺されるのでは?
日経やNHKは、円安だ、大変だ、と騒いでいます。
隣の国の声を代弁しているのでしょうね。
私は黒田さん支持です。