AIIBのプロジェクトに人民元建てのものは〇件ある
遅まきながら、中国が主導する国際開発銀行である「AIIB」の2021年12月時点の決算が出て来ました。本業による融資と思しき金額は150億ドルを超えるなど、一見すると融資残高は順調に伸びているようにも見えます。ただ、冷静に中味をチェックしてみると、いろいろとおかしな点が見えてきます。さて、ここでクイズです。AIIBのプロジェクト案件中、人民元建てのものは、いったい何件あるでしょうか?
目次
AIIBと「バス理論」
「バスに乗り遅れるな」論とAIIBの現況
当ウェブサイトで定期的にウォッチしている話題のひとつに、「アジアインフラ投資銀行(AIIB)の現況」、というものがあります。
このAIIBは、中国が主導するかたちで2015年12月に発足した国際開発銀行です。AIIBに対しては日本と米国が現在に至るまで参加していませんが、この「不参加」という判断が正しかったのかどうかを検証する意味でも、AIIBの現況整理は有益です。
というのも、わが国では2015年ごろから断続的に、「日本がAIIBに参加しなければ、国際的なインフラ金融の世界から除け者になってしまう」、「バスに乗り遅れるな!」といった主張が、さまざまな方面から上がっていたからです。
AIIBに関しては、発足当初から「習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席が提唱する『一帯一路』構想のファイナンスに使われる」、「人民元の国際化のツールとしても活用される」、といった観測に加え、「これからは中国がインフラ金融の世界で存在感を示す」、といった主張もありました。
こうした「世界の潮流」に日本が乗り遅れたら、「日本はアジアを筆頭とするインフラ金融の世界で完全に爪はじきにされる」、「国際的な金融の世界でも孤立する」、といった、今になってみたらかなり議論が飛躍した主張もあったのです。
さらには、当時は「もし日本がAIIBに参加すると表明すれば、中国は日本に対しAIIBの理事や副総裁などのポストを提供するのではないか」、といった観測観測もありましたし、「日本がAIIBに出資すれば、逆に事業活動の監視というメリットもあるのではないか」、といった主張もあったようです。
日本がAIIBに参加すべきでない理由
これに対し、著者自身、日米が主導するかたちで1969年に発足したアジア開発銀行(ADB)を筆頭に、さまざまな機関を通じ、日本はすでにインフラ金融の世界では圧倒的な地位を確立していると考えています。つまり、AIIBにわざわざ参加する必要性はないはずです。
それだけではありません。
AIIBは中国が単独で拒否権を持っている点、組織的な意思決定体系が不透明である点などを踏まえると、中国が金融を通じて世界を支配するのを手伝うことにつながるのではないか、といった懸念すらありました。
こうしたAIIBの構造的なガバナンスの問題が解決できない以上、日本はこの手の組織に参加すべきではない、というのが、現時点における一貫した著者自身の立場でもあります。
では、この「バスに乗り遅れるな」論、「AIIBから距離を置くべき」論、結論的にはどちらが正しかったのでしょうか?
コロナ特需で延びたものの…
結論からいえば、AIIBの融資自体は遅まきながら少しずつ伸びて来たものの、依然としてADBの地位を脅かすような規模ではありません。
いや、AIIBの融資は2020年後半の「コロナ特需」で急増したという面があるのですが、こうしたコロナ特需が発生していなければ、いまでも「鳴かず飛ばず」であった可能性すらあります。
考えてみれば当然の話で、国際インフラ金融の世界は、与信管理の考え方を含め、ノウハウの塊だからです。
新参者であるAIIBが2015年に事業を開始して、いきなりADBを脅かすほどの存在になるというのは、ちょっと考え辛い点です。
というよりも、『詳説・国際与信統計日本と世界の金融のつながりを読む』などでも報告してきたとおり、じつは日本の金融機関は国際与信などの面においても、世界でもトップレベルの存在感を示しています。
具体的には、国際決済銀行(BIS)の国際与信統計というデータに基づけば、2021年12月末時点で、日本の金融機関の海外に対する与信残高は「最終リスクベース」で見て4兆9064億ドル(1ドル=120円で換算すれば、約588.77兆円)という金額に達しています。
日本が主導する国際インフラ金融といえばADBが有名ですが、じつは日本国内にもメガバンクや上位地銀などを含め、民間金融機関が海外金融の世界でもかなりの存在感を示していますし、また、国際協力銀行(JBIC)などの政府系金融機関などの融資スキームも充実しています。
このように考えると、「新参者」であるAIIBがノコノコとこの世界に参入してきて、今すぐに日本の存在感を脅かすという可能性は、現実には極めて低いというのが実情ではないかと思う次第です。
クイズ
AIIBのプロジェクト案件のなかに、人民元建てのものはいったい何件含まれているでしょうか?(正解は本稿末尾で!)
AIIBの最新状況レビュー
前年同期比で71.52%も伸びた融資
もっとも、AIIBがいつまでも「鳴かず飛ばず」なのかといえば、そういうわけでもありません。AIIBの最近の財務諸表などを眺めていると、融資残高は着実に増えてきているからです(これらについてはAIIBの財務諸表の開示ページで確認することができます)。
コロナ禍の際に新規プロジェクトを大量に獲得した影響などが出てきたのでしょうか?
おりしも、つい先日、AIIBの2021年12月末時点における財務諸表が公表されましたが、これによっても、本業による融資と思しき財務諸表項目が着実に伸びていることは確認できます(図表1)。
図表1 AIIBの資産の状況
項目 | 2021年12月 | 2020年12月との比較 |
---|---|---|
本業の融資と思しき金額(①+②) | 150.4億ドル | +62.7億ドル(+71.52%) |
うち償却原価法適用貸出(①) | 122.5億ドル | +39.7億ドル(+47.97%) |
うち償却原価法適用債券(②) | 25.0億ドル | +20.3億ドル(+431.98%) |
余資の運用と思しき金額(③+④+⑤) | 244.2億ドル | +18.6億ドル(+8.23%) |
うち定期預金(③) | 117.5億ドル | ▲14.6億ドル(▲11.05%) |
うち売買目的投資(④) | 105.7億ドル | +39.1億ドル(+58.83%) |
その他の資産 | 7.7億ドル | +0.3億ドル(+3.42%) |
資産合計 | 402.4億ドル | +81.6億ドル(+25.42%) |
(【出所】AIIBの2021年12月末時点における財務諸表をもとに著者作成)
これによると、「本業によると思しき融資」、つまり「償却原価法が適用される貸出金」と「償却原価法が適用される債券」の総額については150.4億ドルで、前年同期比で一気に62.7億ドルも伸びました。伸び率でいえば71.52%です。
また、総資産については前年同期比で81.6億ドル増えていますが、これはAIIBが借入金を増やしたためと考えられます。実際、負債の部、資本の部などを眺めてみると、払込済資本についてはほとんど動いていませんが、借入金については前年同期比で76.7億ドル増えています(図表2)。
図表2 AIIBの出資金と借入金
項目 | 2021年12月 | 2020年12月との比較 |
---|---|---|
借入金(A) | 192.7億ドル | +76.7億ドル(+66.17%) |
払込済資本(B) | 193.6億ドル | +0.1億ドル(+0.03%) |
資金調達合計(A+B) | 386.2億ドル | +76.8億ドル(+24.81%) |
(【出所】AIIBの2021年12月末時点における財務諸表をもとに著者作成)
急増するAIIBの与信
ところで、この「本業によると思しき融資」の部分をグラフ化してみると、ここ数ヵ月で急増していることも確認できます(図表3)。
図表3 AIIBの融資実行額
(【出所】AIIBの過年度の財務諸表などをもとに著者作成)
ではなぜ、ここまで急激に融資が伸びているのでしょうか。
これについてはおそらく、新規プロジェクトが2020年から2021年にかけて急速に増えたこととも関連していると考えられます。実際、AIIBの「プロジェクト一覧」のページによれば、現時点で掲載されているプロジェクトは承認済みのものが169件存在し、承認された融資総額は340.18億ドルに達しています。
しかも、このうちプロジェクト案件名に “COVID” が入っているものを抜き出すと、とくに2020年においては承認された99.46億ドルのうち3分の2に相当する62.10億ドル分がコロナ関連であり、コロナ特需がAIIBの融資を押し上げたことは明らかでしょう(図表4)。
図表4 AIIBのプロジェクト承認状況
年 | 件数(うちコロナ) | 金額(うちコロナ) |
---|---|---|
2016 | 8件(0件) | 16.94億ドル(0.00億ドル) |
2017 | 15件(0件) | 25.03億ドル(0.00億ドル) |
2018 | 12件(0件) | 33.03億ドル(0.00億ドル) |
2019 | 28件(0件) | 46.47億ドル(0.00億ドル) |
2020 | 44件(21件) | 99.46億ドル(62.10億ドル) |
2021 | 50件(12件) | 96.71億ドル(23.01億ドル) |
2022 | 12件(1件) | 22.54億ドル(5.00億ドル) |
合計 | 169件(34件) | 340.18億ドル(90.11億ドル) |
(【出所】AIIBのプロジェクト一覧のページを参考に著者作成)
そして、一般にプロジェクトの承認から融資の実行まではタイムラグを伴うことから、AIIBの融資の伸びは当面続くと考えられます。
この点、「ライバル」(?)であるADBの場合、プロジェクトの承認件数は2020年が414件、2021年が291件であり、ケタが違います。ただ、AIIBがプロジェクト件数を急速に積み上げていることについては留意する必要がありそうです。
出資総額最大の国は中国
さて、AIIBに対する出資の履行状況についても確認しておきましょう。
2022年3月23日時点において、AIIBに出資している国の総数は87ヵ国(うちリージョナルが46ヵ国、ノンリージョナルが41ヵ国)であり、これとは別に参加を予定している国が16ヵ国あるそうですので、AIIBのいう「メンバー国」は105ヵ国だそうです。
これに対し、ADBのメンバー国は68ヵ国(うちリージョナルが49ヵ国、ノンリージョナルが19ヵ国)ですので、現時点において加盟国数だけで見れば、AIIBがADBを大きく凌駕している格好です。
なお、具体的な出資国としては、中国が最大ですが、2番目にインド、3番目にロシアがそれぞれ入っており、4位にはノンリージョナル国であるはずのドイツがランクインしていることが確認できます(図表5)。
図表5 AIIBの出資国の状況
国 | 出資約束額 | 出資割合/議決権割合 |
---|---|---|
1位:中国(R) | 297.80億ドル | 30.72%/26.59% |
2位:インド(R) | 83.67億ドル | 8.63%/7.60% |
3位:ロシア(R) | 65.36億ドル | 6.74%/5.98% |
4位:ドイツ(N) | 44.84億ドル | 4.63%/4.16% |
5位:韓国(R) | 37.39億ドル | 3.86%/3.50% |
6位:豪州(R) | 36.91億ドル | 3.81%/3.46% |
7位:フランス(N) | 33.76億ドル | 3.48%/3.18% |
8位:インドネシア(R) | 33.61億ドル | 3.47%/3.17% |
9位:英国(N) | 30.55億ドル | 3.15%/2.90% |
10位:トルコ(R) | 26.10億ドル | 2.69%/2.50% |
その他(77ヵ国) | 279.31億ドル | 28.82%/36.96% |
合計(87ヵ国) | 969.30億ドル | 100.00%/100.00% |
(【出所】AIIBの “Members and Prospective Members of the Bank” のページを著者が手集計。Rはリージョナル、Nはノンリージョナル)
資金量で見ると日本の上位地銀並み
すなわち、AIIBは全体で1000億ドル近い出資金を集めた格好です(ただし、現時点におけるAIIBに対する払込額は、出資約束額の5分の1程度です)。
また、「1000億ドル」といえば、1ドル=120円で換算すれば12兆円という金額であり、金融に疎い人からすれば「とてつもない金額」であるように思えますが、現実に12兆円程度の資金量であれば、日本の上位地銀とあまり変わりません。
3メガバンクの場合、銀行の単体決算ベースで総資産を合計すれば670兆円であり、AIIBの出資約束額の55倍を超えます(連結ベースにすれば資産総額はさらに膨らむと考えられます)。AIIB自身がここまで小規模であるのに、いったいどうやって「アジアのインフラ金融を牛耳る」つもりなのでしょうか?
また、先ほどの図表3だと、AIIBの融資額が急成長しているように見えましたが、出資約束額と融資実行額を比較してみると、また違った姿が見えてくるかもしれません(図表6)。
図表6 AIIBの出資約束額と融資実行額の推移
(【出所】AIIBの過年度の財務諸表などを参考に著者作成)
AIIBが発足して、今年で7年が経過しますが、出資約束額に対して融資額が非常に少ないというのは、それだけ「融資キャパシティを余らせている」という意味でもあります。
ちなみに実行済みの融資額(150億ドル)を1ドル=120円で換算すれば、1.8兆円であり、貸出金の規模でいえば、日本の最大手信金よりも少ないことも見逃せません。
いずれにせよ、AIIBの融資規模がこれからさらに増えて行くことは確実ではありますが、最近、プロジェクトの新規承認のスピードも鈍りつつあるなかで、AIIBが短期的にADBを駆逐してアジアのインフラ金融を牛耳るという状況にはないことは間違いないでしょう。
人民元建てプロジェクト件数は〇件
最後にひとつ、大変に重要な点を指摘しておきましょう。
AIIBが発足する少し前、「中国がAIIBによる融資と決裁に使う通貨に人民元を加えるよう加盟国に働き掛ける」見通しだ、とする報道がありました。ロイターの次の記事などがそれです。
AIIB融資、人民元の利用を中国が働き掛けへ=香港紙
―――2015年4月15日12:07付 ロイターより
ただ、現実において、AIIBの財務諸表はすべて米ドルで表記されていますし、また、AIIBの「プロジェクト一覧」のページで確認しても、現時点で承認されている169件のプロジェクトのうち、167件が米ドル建てです(※残り2件はユーロ建て)。人民元建ての融資は、ただの1件もありません。
「AIIBの発足で人民元の国際化が加速する」、「日本は今のうちにAIIBに参加してその利益を享受すべきだ」、などと唱えていた人たち(その多くは作家やジャーナリストなど、明らかに金融の素人)は、この現状についていったいどう考えていらっしゃるのでしょうか?
不思議だといわざるを得ないと思う次第です。
【補足】AIIBとウクライナ
ここから先は、余談です。AIIBは2022年3月3日付で、『ウクライナにおける戦争についての声名』を出しています。
AIIB Statement on war in Ukraine
―――2022/03/03付 AIIBウェブサイトより
AIIBは声明文のなかで、「AIIBは国際条約に基づいて設立された多国籍機関」であり、「国際法の遵守は我々の中核部分に存在している」などと主張。そのうえで、AIIBの財務健全性を維持する観点から、「ロシアとベラルーシにかかるすべての活動を保留する」、などと述べたそうです。
やはり、中国が単独で拒否権を持っているとはいえ、出資者には英国、フランス、ドイツなどの欧州諸国も参加しているという事情のため、このような声明を出さざるを得なかったのでしょうか?
ただし、AIIBの最新のウェブサイト情報上、ロシアに関する案件は次の2件しかありません。
- Russian Railways COVID-19 Emergency Response Project(2020年承認、承認額は3億ドル)
- Infrastructure Development Program (Previously: Russian Federation Transport Sector Investment Loan)(2019年承認、承認額は5億ドル)
ベラルーシの案件に至ってはゼロです。
いずれにせよ、もともとAIIBの融資案件数がADBと比べて非常に少ないという事情もあってか、今回のロシアのウクライナ侵攻がAIIBの事業に与える影響は非常に小さいと考えて良いでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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新宿会計士殿、毎日論稿のUP有難う御座います。
「AIIBのプロジェクトに人民元建てのものは〇件ある」との表題を最初は「〇(丸)」をゼロと読んでしまいました。論稿を拝読しているうちに、正解は後で、とあったので、「〇(丸)」であって、ゼロではなかったのだ、と分かりました。最後に「人民元建ての融資は、ただの1件もありません。」とありました。
やっぱりゼロだったんだ~!
出資国にはドルでお金を出させて、融資には人民元を使い、集めたドルは中国共産党の懐に入る仕組みなのかと勘繰っていたのですが、割と真面目にやってたんですね。
だからといって日本も参加した方が良いとは絶対に思いませんが。
参加国にドルで出資させた上
人民元で融資をして
返済はドル
と予想していた
AIIBから融資を受ける側から見れば、人民元建てでどれほど多額の融資を受けたとしても、建設資材その他すべてを中国からしか買えなくなります。というのも、新宿会計士様がいつも指摘しているように、人民元のオフショア市場は規模が小さく、他通貨への両替は容易ではありませんし、人民元でモノを売ってくれる国など中国以外にはありません。つまり、人民元建てで受けた融資は、事実上中国相手にしか使えないということになります。ならば、自国通貨を人民元にリンクさせるなど、完全に人民元経済圏に移行する決断を下した国以外は、あえて人民元建て融資を申し込む理由がありません(*)。従って、AIIBによる人民元建て融資件数がゼロであるのも当然というほかはないでしょう。
(*) おそらくですが、人民元では「隠し資産」にもならないでしょう。つまり、「中抜き」
しても、何ら旨味がないということでもあります。
「バスに乗り遅れるな」論は、日独伊三国同盟締結前あるいは大政翼賛会結成前にも声高に叫ばれていたとどこかで読んだ記憶があります。慌てて飛び乗った結果については、皆様よくご存じの通りです。まあ、個人的にはAIIB積極参加派の方々は、どこぞの国から工作資金をたんまり貰っているか、中国相手のビジネス経験皆無で「数字」に幻惑されているかのいずれかだろうと思ってましたので、今頃どの面下げているのか見てみたいものだと感じています。もしかすると、30年ほど前に、滅多矢鱈に中国進出を煽りまくった人たちと顔ぶれは同じかもしれませんが。
AIIB……ああ、そう言えばそんな物もありましたね。
「バスに乗り遅れるな!」論者たちが数年前から口を閉ざしているから、
ほとんど忘れていました。
こういう人達に「ねえ今どんな気持ち?」と聞かれても(無視できない権力を
突きつけない限り)答える訳がないですが、それは同時に
日本の言論の自由と思想の自由の高さの証明……と言えなくもないかな?
自由が無い国でいい加減な事を言ったら、”責任を取らされる”確率は上でしょうし……