統計で読む「カネを借りて株を買う」韓国の家計の行動

FRBのテーパリングは韓国経済になにをもたらすのか

「韓国の資産バブルはFRBの金融緩和のせいだ」とする当ウェブサイトなりの仮説の正しさが、間接的に裏付けられた格好となりました。韓国銀行が先週金曜日までに公表した最新版の資金循環統計によれば、家計債務の伸び率がやや鈍化し、また、家計金融資産に占める「株式・投信」の割合がやや下落しているからです。ただし、FRBの金融政策正常化はこれから本格化します。そうなった場合に韓国経済に何が生じるかについては、金融評論家という立場からは興味深いと思う次第です。

韓国資産バブルFRB主犯説

不動産市場から「韓国資産バブル」を解説する鈴置論考』などでも取り上げたとおり、以前から当ウェブサイトでは、「現在の韓国では資産バブルが生じている」、「それらの資産バブルを生みだした『主犯』は米FRBだ」とする仮説を立てています。

これは、米FRBがコロナ禍で金融緩和に踏み切るなか、米国で溢れ出した資金が韓国ウォンを含めた新興市場諸国(EM)通貨にも流れ込み、韓国当局がウォン高を抑制するために外貨買い・ウォン売りの為替介入を繰り返した、とする仮説です(いわゆる「韓国資産バブルFRB主犯説」)。

韓国資産バブルFRB主犯説
  • ①FRB等、主要国中央銀行による金融緩和
  • ②為替市場で韓国ウォンを含めたEM(※)通貨高
  • ③韓国の通貨当局が「ウォン高になり過ぎれば輸出業者が困る」と判断
  • ④韓国のウォン売り・ドル買い介入(→外貨準備の増加)
  • ⑤市中のウォン流通量が増大(→マネタリーベースの増加)
  • ⑥金融機関の家計向けローンが増大(→家計債務の増大)
  • ⑦カネを借りた家計がリスク資産(株式、不動産、暗号資産など)に投資
  • ⑧韓国ウォンがビットコイン取引通貨の第3位に浮上

(【出所】著者作成。なお、「EM」とは “Emerging Markets” 、つまり「新興市場諸国」のこと)

上記⑥、⑦の一部は資金循環統計で説明できる

上記①~⑧の詳しいロジックについては上記記事を含めて過去に何度も説明してきたとおりなのですが、ここで改めて、⑥、⑦の部分について考えておきましょう。

FRBが旺盛な金融緩和に舵を切ったのはコロナ禍が始まった2020年3月以降のことですが、すでにこれを手仕舞い(テーパリング)する動きが出ており、先月はFRBがFF金利を0.25%引き上げています。

つまり、この「FRB主犯説」が正しければ、2020年3月以降、韓国の家計債務が大きく伸び、また、家計が保有するリスク資産の割合も増えているはずです。

こうしたなか、当ウェブサイトでしばしば取り上げている経済統計のひとつに、資金循環統計があります。

日本の資金循環統計の分析については『家計金融資産が2000兆円突破』を含めてしばしば取り上げているとおりですが、じつは、この資金循環統計は、日本以外の国でも共通の様式によって作成されています。

そして、韓国の資金循環統計については韓国銀行が作成しているのですが、韓国銀行は先週金曜日までに、その最新版である2021年12月末時点の統計を公表していました。

家計債務の伸びは鈍化も依然高水準

これで韓国の家計債務、家計資産を眺めてみると、興味深いことがいくつか判明します。

そのひとつは、韓国の家計債務の「前年同月比」での伸び率が非常に大きかったという点でしょう。図表1は、韓国の家計債務の総額を左軸で、その前年同月比の伸び率(%)を右軸で、それぞれ示したものです。

図表1 韓国の家計債務の状況

(【出所】韓国銀行)

これで見ると、韓国の家計債務は過去10年以上にわたり、毎年コンスタントに4%以上の伸びを続けていたことがわかりますが、とくに2021年6月時点の伸び率が前年同月比11.3%とピークを付けていたことがわかります。

その意味では、「FRB主犯説」の⑥の部分については、時期もピッタリであり、これで裏付けが取れたかたちだと結論付けて良いでしょう。そして、これが2021年12月において鈍化しているのも事実ですが、それでも前年同期比の伸び率は9.4%と依然高水準です。

家計に占めるリスク資産の比率がコロナ禍で急上昇した

その一方で、もうひとつ取り上げておきたいのが、韓国の家計資産です。図表2は、韓国の家計金融資産に占める資産の割合の推移をグラフ化したものです。

図表2 韓国の家計資産のおもな内訳

(【出所】韓国銀行)

これによると、2021年12月末時点における韓国の家計資産の内訳は、「現金預金」が43.44%、「保険・年金資産」が30.43%で、「株式・投資信託」が23.01%です。

しかし、それ以上に目を引くのは、2020年3月時点で16.25%だった「株式・投資信託」の割合が、2021年6月時点で23.89%とピークを付けている、という点ではないでしょうか。そして、2021年12月においてはこれが23.01%へと小幅低下しています。

このあたり、「FRB主犯説」の⑦の部分についても、ほぼ裏付けが取れたかたちだと考えて良いでしょう。やはり時期的なものがピタリと当たっているからです。

「借金をして株を買う」経済が逆回転したら…!?

ただし、韓国の家計資産に占めるリスク資産の割合については、もっと派手に増えていなければおかしいではないか、などと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、この点については資金循環統計を使った分析では限界があります。

資金循環統計に掲載されるのは、あくまでも「金融資産」に限られており、不動産や暗号資産、書画骨董、宝石、自動車といった資産については、資金循環統計には計上されてこないからです。

ただ、限られたデータではありますが、やはり「借金をして株を買う」という韓国の家計部門に固有の投資行動については、資金循環統計上、ハッキリとその動きが確認できた格好です。

そして、2021年12月において、図表1では家計債務の伸びが明らかに鈍化したこと、図表2では家計資産に占める株式・投信の割合が減少に転じたことが、それぞれ確認できると思います。

いずれにせよ、FRBによる金融政策の正常化は緒に就いたばかりですが、「FRB主犯説」の①~⑧までの流れが猛烈に逆回転し始めたときに、韓国でいったい何が発生するのかについては、金融評論家という立場からは純粋に興味深いと感じる次第です。

読者コメント一覧

  1. sqsq より:

    コロナ前2,000だったKOSPIはその後の金融緩和で3,200まで上昇し現在2,700くらい。
    韓国に限らずFRBの金融引き締めでしばらく株は下がるだろう。借金して株を買うというのは信用取引のことだ。株価が下がれば、担保価値が下がり追証が発生する。追証が払えなければ株を売るしかない。それがさらに株価を下げる。

  2. カズ より:

    金融機関による”不良債権の糊塗を目的とした無理な追加融資”の顛末も気になっています。

    *借りる方も借りる方なら、貸す方も貸す方です。(双方、徳政令頼みか・・?)

  3. M1A2 より:

     売りが売りを呼ぶ阿鼻叫喚の地獄絵図になるんじゃないですかね。ウリだけに

    1. タナカ珈琲。 より:

      M1A2様。

      クスッと笑えました。

      座布団2枚です。

  4. しおん より:

    一方日本では、去年の倒産件数が57年ぶりの低水準となってますが、これはコロナ融資で「ゾンビ企業」を増産したのではないかと思っています。

    ゾンビ企業が生き延びたおかげで他のまっとうな経営の企業の収益を悪化させ、全体ではさらに不景気が加速されるようにならないか心配です。

  5. ちょろんぼ より:

    借金で株を買い、もしそれが失敗したら?
    問題はありません。
    新しい大統領が選出された事により、大規模な徳政が実施できます。
    するでしょう。
    武漢コロナウィルス問題によるK防疫失敗を無かった事にするか
    その痛みを和らげる為です。
    借金が棒引きになるので、新たに株を買う資金が沸いてでます。
    武田信玄も父親を領国から追い出す事により、徳政を行い領民の気を引いた実績があります。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      徳政は癖になるから止めた方が良い

  6. 引きこもり中年 より:

    毎度、バカバカしいお話を。
    韓国では「日本でNTT株が下がった時に、日本政府を訴えた人がいたそうなので、韓国でも株が下がったら、政府を訴える」と言っている人がいたんだって。(もしそうなれば、日本も韓国を非難しづらいでしょう)
    おあとが、よろしいようで。

  7. 匿名 より:

    「韓国KOSPIベア」というETFがあります。
    日本でいう日経平均に相当する韓国の株式指数KOSPIが下がると価格が上がる上場投信なのですが、新宿会計士様の「FRB主犯説」に感化され目を付けたのが昨年7月頃でした。当時はKOSPI3,200に対し本ETFは5,700円あたりをウロウロしてました。絶対に上がると思い1,000口で一発勝負!と意気込みましたが、平均取扱口数が多くても4,000口程度なので、いざというときに売れ抜けられないとまずいと思い、結果的にスルーしました。
    そのETF、本日あたり7,100円を超えてますが取扱高は152口です。もう少し盛り上がってもいいと思うのですが。

    1. 世相マンボウ . より:

      韓国KOSPIベアETFは
      私もWめしウマ狙って考えました。

      ただ、まともな国ならいざ知らず
      三権分立どころか政権が主導して
      最高裁が国際法違反を冒すような国ですから
      韓流リスクを懸念して見送りました。

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