日本政府が北朝鮮問題で「ロシアの」個人・団体を制裁

北朝鮮のミサイル発射を受け、日本政府は本日、4つのロシアの団体、3人のロシアの個人などを対象とした資産凍結措置などを発表しました。一種の二次的制裁(セカンダリー・サンクション)、というわけでしょう。おりしも国際社会のロシア包囲網が強まるなか、北朝鮮のミサイル開発能力が制限される効果が得られるのだとしたら、これは歓迎すべきことといえるかもしれません。

北朝鮮ミサイル問題で「ロシアの個人・団体を」対象に

北朝鮮が3月24日に弾道ミサイルを発射したことを受け、日本政府は本日、4つの団体と9人の個人 に対し、資産凍結措置などを新たに発動すると決定しました。これは主要国が講じた措置に追随するもので、詳細については外務省や財務省のウェブサイトなどで確認することができます。

ただ、この具体的なリストを眺めていて気付くのは、今回の資産凍結措置が適用される4団体はすべてロシアの法人であり、また、個人のうちの3人がロシア人である、という事実です。これに加えて、残り6人の個人についても、ロシアに居住する北朝鮮人が2人、中国に居住する北朝鮮人が4人です。

今回のリストは「北朝鮮の核その他の大量破壊兵器及び弾道ミサイル関連計画等に関与する個人・団体」ですので、このリストを見ると、ロシアが北朝鮮に対する国際的な経済制裁回避の拠点となっている(あるいは日本政府がそう見ている)という実態が浮かんでくる、というわけです。

北朝鮮の核・ミサイル開発に関連し、ここまでまとまった数のロシアの個人・団体が制裁の対象となったのも異例でしょう。

ロシア政府代表部次席大使「二次制裁は安保理の効力を弱める」

そして、今回の日本政府の措置については、ロシアの『タス通信』(英語版)も報じています。

Japan imposes sanctions against 4 Russian companies, 3 citizens, allegedly over DPRK

―――2022/04/01 11:59付 タス通信英語版より

タス通信は、日本政府の今回の措置については、米国が発動した措置に続くものだとしつつ、制裁対象とされた個人や団体が北朝鮮による「違法なミサイルシステムの構成要素」の調達に関与していたとする米国政府の発表を紹介しています。

タス通信はまた、国連ロシア政府代表部のアナ・エフスティグネエフ次席大使が、「米国やその同盟国が北朝鮮に関する二次的制裁を発動すると、国連安全保障理事会内で合意されたはずの制限を弱体化させる」、などと述べた、としていますが、このあたりも、ロシアがそう主張するロジックが、いまひとつわかりません。

ロシアが北朝鮮の核・ミサイル開発の拠点となっていると日米などが判断した以上、国連安保理決議に従い、セカンダリー・サンクションを発動するのは当たり前の話でしょう。

ロシア制裁は北朝鮮を道連れに?

ただ、この手の話題を眺めていて改めて留意しなければならないのは、2017年12月の国連安保理決議に基づく国際的な経済制裁にも関わらず、北朝鮮が意外としぶとく核・ミサイル開発を続けていたこと自体、やはりロシアや中国が隠然と支援していたからではないか、という疑いでしょう。

そして、こうした仮説が正しかったとすれば、ウクライナ侵攻に伴う西側諸国の対ロシア制裁が厳しさを増してくれば、ロシアとしても北朝鮮を支援し続けることは難しくなる、という「思わぬ効果」が得られるかもしれません。あるいは、その影響は少しずつ生じ始めている可能性もあります。

たとえば、ルーブル安の影響もあり、ロシアに出稼ぎに出てきている北朝鮮労働者の「上納金」負担が増している可能性がある、という仮説については、『意外としぶとい?ルーブル「紙屑化」の可能性を考える』などでも紹介しました。

ロシアが天然ガスのルーブル決済を導入した、などと報じられているなかで、外為市場ではいったんロシアルーブルの対米ドル相場(USDRUB)が100ルーブルを割り込む通貨高となっているようですが、外為市場が不安定な状況は継続しているとも考えられます。

このあたり、国際社会の対ロシア制裁が北朝鮮の核・ミサイル開発能力をも制限する効果が得られるのだとしたら、これはこれで歓迎すべきことと言えるかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. G より:

    北朝鮮が今ミサイルを活発に打ってるのは、ロシア問題から欧米日本の目をなるべく逸らしたいという意図もあるように思えます。
    北朝鮮がロシアから支援を受けている手間一蓮托生なのでしょう。北朝鮮にしても注目されてアメリカに相手にしてもらわないといけないので利害は一致する。

    まあでも北朝鮮の動きは、日本は釣れてもアメリカはなかなか釣れませんね。

    これから間違いなく北朝鮮の動きは活発化します。核施設の稼働も地下核実験もやってきますね。

    ただ、もしロシアと北朝鮮が一蓮托生なら一括処理が可能になって有利かも知れません。

    ふと、もしかして韓国がロシア制裁に及び腰なのって北朝鮮とロシアが仲良いのに関係してますかね。

    1. カズ より:

      韓国はロシアからロケット技術(弾道弾?)を学んでいましたね。
      それだけじゃなく、米露と ”二股GSOMIA” を締結していますね。

  2. Naga より:

    こういう制裁については、必ず抜けがあって効果がないからやめた方が良いという人がでてきますが、効果があまりない場合でもやるべきだと思います。
    制裁があれば少しでも取引し難いし、何よりそれが国家の意志ですから。

  3. 攻撃型原潜#$%&〇X より:

    モスクワは北朝鮮から遠いのであまり危険を感じていないようですが、北京は北朝鮮との国境からそれほど離れておらず(平壌-東京1290kmより平壌-北京813kmの方が近くない? ミサイルなら数分で到達)、中国がその隣国に核ミサイル技術を持たせるよう支援するのは、あまりピンときません。北朝鮮がICBMを持とうが何を発射しようが、中国は北朝鮮を完全に自分のコントロール下に置き続ける自信があるのだろうか。中国は飼い犬に手を嚙まれることをあまり心配をしていないのですかね。

  4. ぼっつ より:

    政府レベルでは、文政権とはうまく行っていないように見えますが、今の韓国の個人や企業と北朝鮮の関係はどうなんでしょうね?

    この対ロシア制裁が可能なら、韓国の個人や企業の金融資産に対する制裁も、日本は出来るのでしょうか。

  5. ちょろんぼ より:

    日本の某団体が無いのが不思議です。
    中・露は技術協力はするも、銭を要求します。
    銭はどこから? 日本の某団体からではないでしょうか?
    でも、できないですよね。
    某軍艦と日本の哨戒機問題ともリンクする問題です。

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