露タス通信が米露断交論を報じる

ロシアのタス通信に日本時間の昨晩時点で「米露断交」という表現が出てきたようです。もちろん、実際にロシアが米国との「断交」を決めた、という意味ではなく、あくまでもロシア国内のメディアからそのような議論が出てきた、というレベルのものです。ただ、その一方で、ロシアの外務副大臣は米国に対し、「ウクライナへの武器供与をやめよ」とも言いだしたようです。

え?タス通信に「米露断交」?

ロシアのメディア『タス通信』(英語版)を眺めていると、日本時間の昨晩時点で「米露断交」というキーワードが出て来ました。

Press review: Russia sees ties with US on verge of breakdown and bans Facebook, Instagram

―――2022/03/22 19:00付 タス通信英語版より

リンク先の記事はいくつかのメディアの報道を羅列して紹介するものだそうですが、そのトップ・ストーリーで、ロシア紙『ベドモスチВедомости』の記事のレビューが取り上げられています。

“Vedomosti: Russia believes relations with US on verge of breakdown” 、つまり「ベドモスチは『ロシアは米国との関係が崩壊寸前』と報じた」、といったニュアンスでしょうか。

内容は、こうです。

  • 米国のジョー・バイデン大統領がウラジミル・プーチン大統領を「殺人的独裁者」、「ウクライナの人々に不道徳な戦争を仕掛けている純粋な凶悪犯」などと批判した過激な発言を巡り、ロシアの外務省はジョン・サリバン駐露米国大使を召還して抗議文を手渡した
  • ベドモスチはまた、ロシア政府は「ロシアに対する敵対的な行動は強力な対応を招く」と警告した、と述べている

…。

悪化が止まらない米露関係

もっとも、ベドモスチによれば、専門家は米露双方がコミュニケーションのチャネルを維持することが必要だとの認識のもと、米国の経済制裁が戦争によるものと同等の被害をロシアにもたらしているにせよ、現在の状況がいかに厳しいものであっても、米露断交が直ちに生じる可能性は高くない、などと述べたそうです。

ただ、国営のタス通信で、他紙の記事を引用する形であっても、「米露断交」に言及されたというのは、なかなかに新鮮な衝撃でもあります。

実際、米露関係は悪化の一途をたどっているようであり、昨日はこんな記事も出ていました。

В МИД РФ призвали США остановить эскалацию отношений с Россией

―――2022/03/22 16:20付 タス通信より

翻訳エンジンの力も借りつつ、内容を解読してみると、記事タイトルは「ロシア外務省は、ロシアとの関係を損ねるような行動を停止するよう、米国に促した」といったところでしょう。

タス通信によると、ロシアのセルゲイ・リャブコフ副外相は火曜日、記者団に対し、「米国政府はロシアとの関係を損ねることを放棄し、ウクライナに武器を送り込むのを辞めなければならない」と述べたのだそうです。

そのうえで、米国によるウクライナへの武器供与を「遺憾だ」としつつも、「ロシア連邦によるウクライナでの特別軍事作戦の目的を達成するために動くという我々の決意には何の影響も及ぼさないだろう」、などとも述べた、としています。

本当に言いたいのは「ウクライナへの武器供与で困っている」、では?

ちなみに「特別軍事作戦」とは、ロシア政府の今回のウクライナ侵攻に関する公式な呼称です。タス通信などを眺めていても、決して「ロシアのウクライナ侵攻」とは書かれていませんし、首都・キーウ近郊で戦闘が発生している、といった情報も、ほとんど出ていません。

これに加え、この「ウクライナでのロシアの特殊作戦」については、改めてこんな解説も掲載されています。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月24日、ドンバス共和国の指導者からの支援要請に応えて、ウクライナでの特別軍事作戦を発表した。彼は、モスクワの計画にはウクライナ領土の占領は含まれておらず、目標は国の非軍事化と非ナチ化であると強調した。ただ、米国、EU、英国などの多くの国が、ロシアの個人および法人に対し制裁を科すと発表した。また、多くの外国企業がロシア連邦内での事業活動を一時停止すると発表した」。

まさに、「大本営発表」そのものですね。

いずれにせよ、タス通信の報道を眺めていると、ロシアが行っているのはあくまでも「特別な軍事作戦」であり、米国がウクライナに武器を供与していることは間違いないにせよ、それらは「特別軍事作戦の遂行」に影響を与えることはない、というのがロシアの言い分でしょう。

ある意味では、本当にわかりやすい国だと思わざるを得ません。米国のウクライナへの武器供与などのせいで、ロシア軍によるキーウ攻略が遅れに遅れ、彼らの言う「特別軍事作戦」の遂行に支障を来している、と自分自身で述べているようなものだからです。

下手をすると、本当にロシアの敗戦は近いのかもしれませんが、もしそうだとしても、戦闘が続くウクライナでの人々の無事を、まずは最優先で祈りたいと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 理系初老 より:

    おはようございます。
    某テレビで橋下氏と激論したグレンコアンドリー氏の論説「停戦しても露軍必ず再侵攻」が本日サンケイデジタル3面に掲載されていました。テレビ局に出まくる目立ちたがり元大阪市長ではなく、グレンコ氏の論説を掲載したことを良しとしたい。

    1. F6F より:

      理系初老様

      「停戦しても露軍必ず再侵攻」と言うのはその通りでしょうね。
      中立化と武装解除されたウクライナは外堀と内堀を埋められ、総構を破却された大坂城のようなもの。

      すぐ夏の陣になるのでしょう。

      1. がみ より:

        理系初老様 F6F様

        半年ウクライナがもちこたえ、武器・食糧をウクライナ側に支援し続ける事が可能なら、東欧・ロシア名物冬将軍が降臨します。

        その場合はロジスティクスが遠大で元々食糧庫に備蓄の少ないロシアが兵糧攻めに逆になるのでは?

    2. 引っ掛かったオタク より:

      所詮橋下氏は地方の首長までのヒト、といったトコロでしょうや
      弁護士出らしく、一国の法治の枠内での斬った張ったならソコソコ場馴れしていたのでしょうが、国力を背景に国益がせめぎ会う鉄火場では通用しなさそうです

  2. 雪だんご より:

    私はミリオタではないのでアメリカがどんな武器を提供しているかはよく分かりませんが、
    少なくともロシアが
    「ウクライナが持ってる武器だけだったらもっとスムーズに侵攻できたのに!」
    と思っている事は確かな様ですね。当たり前と言えば当たり前か。

    かたや世界中から支援されているウクライナ。
    かたやレーションすら賞味期限切れらしいロシア。

    例え勝ってもロシアは軍人も民間人も貧困にあえぎそうですね。

    1. はにわファクトリー より:

      雪だんご さま

      アメリカがウクライナに供与した8種類の兵器は
       List of Weapons sent by USA to help Ukraine Against Russia In 2022
      でYoutube 動画検索すると見つかります。

      台湾が無人機を含む兵器多数をウクライナに供与したというニュースも出ました。本当なら台湾海峡の今後に強く影響しそうです。

      1. 元ジェネラリスト より:

        >台湾が無人機を含む兵器多数をウクライナに供与
        >台湾海峡の今後に強く影響


        今ならウクライナは断らないですね。
        不謹慎な見方ですが、その台湾の投資は大きなリターンを得られる可能性がある気がしました。

      2. 雪だんご より:

        >アメリカがウクライナに供与した8種類の兵器は
        > List of Weapons sent by USA to help Ukraine Against Russia In 2022
        >でYoutube 動画検索すると見つかります。

        ありがとうございます。マシンガン、各種携行ミサイル、
        防護服、グレネードランチャー、ショットガン……
        何となくイメージしていた物が割と当たっていました。

        映像で見るだけで物凄いごつさ……
        平和のありがたさが身に沁みますが、
        今のウクライナにはこっちこそありがたいんでしょうね。

    2. 農民 より:

       ウクライナは開戦よりだいぶ前から、例えば小銃の更新を従前のロシアAK系からアメリカAR-15系に変更したりしていました。戦闘機などのように高額で象徴的なものは政治的要素が強すぎて、アメリカ自身も軽々しくは売りませんが、様々な面で西側化が既に進んでいました。(元空母ワリャーグはまぁ…だいぶ前だしスクラップ扱いだし。)
       また、ウクライナ軍のトルコ製ドローン”バイラクタルTB2″がロシア戦車を撃破してまわっているという記事も目立ちます。こちらはトルコが主に近隣にセールスしたもの。トルコ-ロシア関係は良好かと思ったら複雑怪奇です。前述のワリャーグの回航にはトルコ-中国の絡みもあり。そしてロシアは中国に装備品の援助を要請したとかなんとかも……
       戦争というものは前後にわたって勝った負けた正義だなんだかでは片付けられない現実と複雑さがあります。

      1. がみ より:

        私の非ヒューマニストの部分が出てしまうのですが、今次紛争で両者並びにベラルーシやチェチェンと中華人民共和国にもとことん疲弊して貰うのがベターかと。

        特にロシアと中華人民共和国には多いに疲弊していただきたい。

        さもないと、西側が築き上げてきた米ドルを基軸(それがベストかは別にして)通貨とした経済体系が瓦解しかねません。

        より大きく世界が混沌に投げ込まれる位なら、初期当事国同士でとことん泥にまみれていただくしかない。

        中露が今回勝ち組になる結果の方が暗澹たる未来の始まりのなりかねません。

      2. 雪だんご より:

        >戦争というものは前後にわたって勝った負けた正義だなんだかでは
        >片付けられない現実と複雑さがあります。

        世界中の国が「世界は変わる!」と確信して動いている感がありますね。
        複雑怪奇すぎて敵味方ですら分けにくい、物凄い時代です。
        願わくば日本にとって良い方向に変わって欲しい物です。

  3. 205seven より:

    タス通信は通信社を装っておりますが、ロシアの情報工作機関であり、メディアではありません。よってタス通信を「メディア」と表現するのは間違っています。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      人民日報みたいなものか

      1. 引っ掛かったオタク より:

        新華社通信だと思っておりました

    2. 匿名 より:

      欧米メディアをフェイクニュースと決めつけ、そんなロシアメディアのプロパガンダを正しいと信じて疑わないクソコメ主もあるんだよなあ。
      P the passingとかアッキーとか。

      1. へちまはたわしのみに非ず より:

        匿名 氏

        一コメント者を穏当でない表現で蔑むべきではありません。
        思想の如何によらず侮辱は不当である上、昨今ネット上の中傷の厳罰化さえ省みない無謀な行いです。
        P the passing氏と議論を交わした者として匿名氏のコメントの誹謗中傷は不当であり、併せて侮辱のおそれある表現に抗議します。

    3. 世相マンボウ . より:

      タス通信をメディアと報道する違和感に同感です。

      ま、暗殺組織KGBの工作員あがりを
      大統領にしてしまったという時点で
      今のロシアの誤りの道は始まっていたのでしょう。

      そんなプーチンの広報担当役を務めるような、
      ウクライナ大統領に『悔改めるべきだ』と
      今月始め自身のツイッターで書き込んだ
      ミスター民主党御大将と支持者が呼んだ
      鳩ポッポさんのとんでもなさが
      浮き彫りになってます。

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