「尹錫悦氏で日韓関係改善」と米国が要求できない理由
韓国メディア『中央日報』によると、「尹錫悦大統領」が実現した場合、韓国の側で日韓関係「改善」に向けた動きが出て来るだろう、などとする記事が米WPに掲載されたのだそうです。ただ、米国自身が日韓問題において中立を装うのは、大変無責任です。なぜなら、米国自身も2015年12月の日韓慰安婦合意の「当事者」だからです。
韓国大統領選と日韓関係の3つの落としどころ
早いもので、本日は韓国の大統領選の当日です。
ただ、当ウェブサイトとしては、昨日の『また出てきた、日韓諸懸案の「包括的解決」という主張』でも述べたとおり、基本的には有力候補2人のうち、どちらが韓国の次期大統領に選ばれたとしても、日韓関係の基調は大きく変わることはないと考えています。
その理由は簡単で、韓国が作り出した日韓諸懸案の数々については、結局のところ、「①韓国が自力で解決する」、「②日本が韓国に譲歩する」、「③日韓関係が行き詰まる」、のいずれかしか「落としどころ」がないからです。
もちろん、「保守派(?)」とされる尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏が勝利すれば、現在の文在寅(ぶん・ざいいん)政権と比べて韓国国内で米韓関係を修復しようとする動きが出て来る可能性は高いですし、これに伴い米国が「日米韓3ヵ国連携」を進める立場から、日本に対韓譲歩圧力を加えて来るかもしれません。
また、現在の日本の政権を握っているのが岸田文雄首相である、という点も、かなりの不安要因ではあります。
なにせ、岸田首相は安倍晋三総理のもとで外相を務めていた2015年当時、韓国に2回も騙された張本人だからであり、かつ、なにかと「決められない人物」でもあります(たとえば『岸田政権「北京に政府代表を派遣しない」とやっと表明』等参照)。
ただ、それと同時に、尹錫悦氏が述べる「韓日関係の包括的解決」のためには、日本の首相にはかなりの政治的な指導力・求心力が必要ですし、安倍総理、あるいは菅義偉総理の路線を否定することは、自民党内の保守派からの強力な反発を喰らいかねません。
また、竹島問題、自称元徴用工・慰安婦問題、火器管制レーダー照射事件、国会議長による上皇陛下への侮辱発言などの諸懸案のいっさいを「不問」に付し、日本が韓国の求めるままに「謝罪」して手打ちにする、という選択肢は、なかなかあり得ない話でしょう。
米メディア「尹錫悦大統領なら日韓関係に重要な変化」
ただし、米メディアはそうは見ていないようです。
韓国メディア『中央日報』(日本語版)には昨日、こんな記事が出ていました。
米WP「尹錫悦大統領候補、日本との関係で重要な変化が見えるだろう」
―――2022.03.08 15:33付 中央日報日本語版より
中央日報によると、米ワシントンポスト(WP)電子版が現地時間7日、もしも尹錫悦氏が次期韓国大統領に選ばれた場合は「日本との関係に対する重要な変化が見える可能性がある」と述べたのだそうです。
このあたり、『自由で開かれたインド太平洋巡る米国版と日本版の違い』などでも概観したとおり、米ワシントンでは「日韓関係『改善』が米国の国益になる」、などと信じている人がまだかなりいるようであり、WPの記事もワシントンにおけるこうした空気を象徴しているように思えてなりません。
慰安婦合意の意義
正直、米国に対しては「米韓同盟がうまく行っていないからといって、そのコストを日本に押し付けないでほしい」、と言いたい気持ちでいっぱいでもあります。
もっとも、米国は日韓問題を巡り、「中立」を装っていますが、米国は日韓問題における「第三者」ではなく、「当事者」です。そして、実際の日本は、米国に対して「約束を守らないのは韓国だから、日韓関係『改善』は韓国に対して言ってくれ」、と突っぱねることができます。
その根拠が、2015年12月の日韓慰安婦合意です。
結果論ですが、この合意には、日韓関係だけでなく、日米関係に対しても、非常に重要な意義がありました。それは、米国自身がこの慰安婦合意の「当事者」になった、という点です。
いわば、もしも韓国がこの約束を破ったときには、米国にも一種の「連帯責任」を取らなければならなくなった、ということですし、あるいは日本が米国に対し、「日韓関係に口出しをするな」と要求することができるようになった、ということでもあるからです。
これに加え、慰安婦合意では慰安婦問題を含めた歴史問題が基本的には「韓国自身が解決すべき韓国の国内問題」に変わりましたし、また、韓国が慰安婦合意をいとも簡単に反故にしたことで、「韓国との約束はあっけなく」破られるという前例を、国際社会と日本国民に嫌というほど見せつけた、という側面もあるでしょう。
日本にとっての、慰安婦合意の3つの効果
- 米国に対し、日韓関係に口出ししないように要求することができるようになった
- 慰安婦問題が韓国の国内問題に変化した
- 韓国との約束はあっけなく破られるという前例を国際社会や日本国民に見せつけた
(【出所】著者作成)
その意味で、「米国自身が日韓歴史問題における当事者である」という自覚を、米国メディアももう少し持つべきでしょうし、実際、米国務省も慰安婦合意を韓国が破ったことを認識しています(『アジア系女性記者に報道官「米国は慰安婦合意を歓迎」』等参照)。
いずれにせよ、選挙結果は新大統領は早ければ本日中にも判明します。
ただ、誰が次期大統領に就任したとしても、日本が韓国にとっての都合の良い国になる、ということはないと考えて良いと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
>「米国自身が日韓歴史問題における当事者である」という自覚を、米国メディアももう少し持つべきでしょう
同感ですが、米民主党にそんな自覚は無いでしょう、相変わらず「瓶の蓋」という認識なのでは。米国メディアも、殆ど民主党寄りですから、共和党寄りの少数のメディアを除き、そんな自覚なんて持ちそうにない。
むしろ逆に、米副大統領が仲介の労までとってやったのに、それでも纏められないのは、中小国を御す能力が日本に不足していから、と思っているカモ知れない。
「核無き世界」を口にしながら、臨界前核実験を繰り返したオバマ元大統領の子分なんだから、言う事とヤル事が違うのは当たり前。というか、これは米民主党の御家芸なのかな。
理屈の上ではソウナンデスが、アメリカさんのジャイヤニズムが発動されるとカンケー失くなりマスからねェ
トランプ安倍と比較してもバイデン岸田では関係強くは見えないですし、岸田氏単体で視てカウンターパートとしては立てていない様にミエチマイます
トランプ安倍の関係性が異常なだけで
日本の首相は(というより日本政府そのものが)アメリカ大統領(というよりアメリカ政府)に蛇蠍のごとく嫌われているのが普通の状態。と認識した方が良い
トランプは自分自身、米韓首脳会談で韓国と韓国人の非常識さ、
異常性を身に染みて理解しているから。
後に韓国人を「terrible people」と評していた。
バイデンもオバマ政権の副大統領だった頃に、韓国が日韓の
過去の歴史問題からくる不信を理由に挙げて日米韓の協調を
拒否しているのを、本音は恐中で対中包囲網のボイコットを
している事を見抜いて釘を指すくらいには、韓国の事を
分かっている。
米WPの記事は米WPというところでは無く何という記者が書いたのか、というところが重要ではないですかね。韓国系の記者が結構いるみたいですから。
韓国って日本に何かしてほしい時マスコミを利用しますよね。
自国のばかりではなく朝日新聞とかTBSとかも使って。
そういうの、もうバレバレなんですよ。昔はすぐ親韓議員が阿吽の呼吸で忖度していましたがもうそんなマッチポンプ、ウンザリなんですよ(“゚д゚)、ペッ
このWPの記事は、Min Joo Kim (ミン・ジュ・キム 南北朝鮮を担当するソウルの女性記者)が書いて、それにMichelle Ye Hee Lee (ミシェル・イ・ヒ・リー 日本と韓国を担当するワシントン・ポストの女性東京支局長)も署名をしてWPの本社に送信したもののようです。
彼女たちは二人とも韓国系で、自分たちの記事を取り上げるように中央日報に連絡したのでしょう。
WPの日韓関係の記事は、韓国系の人間が仕切っていると見た方がよいですね。WP本社の編集会議でも記事の内容に関して何のチェックもやっていないでしょう。
このような記事を目にした時、我々は「またWP内の韓国系の勢力が日韓関係改善の世論作りという、無駄な努力をやっているよ」と思えばいいと思います。ただ、彼女達および中央日報は尹錫悦氏を応援しているように見えます。
どちらが大統領になっても、現在の日韓問題の解決策を持ってくるまで、首脳会談はできないのですから。
今までのパターンだとアメリカは「今更韓国に優しくしてやる理由はない」と言う態度を
続けそうですね。本音では日本を以前の様な”韓国の世話係”に戻したいのでしょうが、
韓国の度重なるトラブルとその解決能力の無さで、日本に押し付けられる理由がない。
そしてこのウクライナとロシアの戦争でどこもかしこも大忙し。しかも韓国はこの件で
ロシアが怖くて中々動かず、罰を喰らいそうになってようやく動く始末。
アメリカはもう「韓国は米軍基地を置いておけばそれでいい、それ以外の面倒は見ない」
と言う態度であり、日本に「日韓関係を修復しろ」と圧力をかけてくる確率は低い
(ゼロではない)と見ています。
米国が日韓政府間合意の「当事者」であるのは、「日韓慰安婦合意」に限ったことではありません。
日韓両政府が国交を樹立した1965年6月の「日韓基本条約」とその附属協定である「日韓請求権協定」についても、米国は「当事者」です。
朝鮮戦争により荒廃した韓国の復興を支援してきた米国が、ベトナム戦争への介入強化により韓国に対する支援が重荷になり、1961年6月に訪米した池田勇人首相に当時のジョン・F・ケネディ大統領(民主党)が日韓国交正常化を依頼し、韓国に対する支援を日本政府に肩代わりさせようとしたのが、日韓国交樹立の最大の要因になったからです。
(「1965年体制について考える その成立から動揺へ 木村 幹」6頁参照)
したがって、「日韓基本条約」や「日韓請求権協定」の「当事者」である米国政府は、現在、最大の懸案になっている「自称元徴用工問題」や「自称元日本軍性奴隷問題」については、日韓政府間で「日韓請求権協定」の解釈に関する紛争が生じた場合の解決手続きを定めた同協定第3条に従って解決するよう、韓国政府を強く説得する責任があります。また、「日韓両政府が同意すれば、米国は喜んで日韓請求権協定第3条の『第三国』になり、公正・公平な判定をする用意がある。」と付言すべきです。
(韓国政府は、言を左右にして受け入れないと思いますが。)