佐渡金山の世界遺産登録推進は「遺憾」=文在寅大統領

韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領が各通信社による合同書面インタビューに答え、日本の佐渡金山の世界遺産登録推進を「遺憾だ」と述べたそうです。また、日韓諸懸案解決のためには、「被害者が受け入れられる解決策」が必要だとしたうえで、「歴史の前で誠意ある姿勢と心が最も重要だ」と述べたのだとか。ここでむしろ興味深いのは、発言そのものではなく、こうした発言のひとつひとつが、日本国内でどう受け止められるのか、という点でしょう。

2022/02/16 10:15追記

本文につき一部修正しております。

文在寅政権下の日韓関係

韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)政権が2017年5月に発足して以来、日韓関係は基本的に「悪化」の一途でした。

2018年10月と11月の自称元徴用工判決もさることながら、文在寅政権による慰安婦合意破り、韓国海軍駆逐艦による海自P1哨戒機への火器管制レーダー照射、さらには日本の対韓輸出管理適正化措置に対するGSOMIA破棄騒動…。

こうした韓国の行動のひとつひとつが、日本の経済界、防衛関係者、外交関係者など、さまざまなレベルにおいて韓国に対する信頼を損ねるとともに、私たち一般の日本国民の間で、韓国に対し不信感を持つ人を激増させたのではないかと思います。

ただ、当ウェブサイトでは何度となく申し上げてきましたが、文在寅氏という個人が、「反日的な」政治家なのかと言われれば、そこは微妙でしょう。というよりも、文在寅政権の5年近くに達する行動から判断して、同政権の政策目標からは、日韓関係そのものが、スッポリ抜けていた可能性が濃厚です。

文在寅氏自身が、最後の最後まで、北朝鮮との関係改善を推進していたことは、その典型例です。

そして、日韓関係も、文在寅氏にとっては「北朝鮮との関係をどう改善するか」という変数のひとつに過ぎなかったと考えられます。

たとえば、2019年7月に日本政府が対韓輸出管理適正化措置を発表した直後、韓国側は日韓GSOMIA破棄を打ち出すなど、日本に対するファイティング・ポーズを取り始めましたが、同年11月頃に入ると、不思議なことに、今度は突如として安倍晋三総理への「擦り寄り」を始めたのです。

また、安倍総理が2020年9月に辞職すると、その後継者となった菅義偉総理に対しても、やはり文在寅氏は日韓首脳会談を強引に迫るなど、不思議なほどに日本との「対話路線」を取ろうとしました。

こうした不可解な動きも、時期的に判断して、「米朝の対話が完全に停滞したため、日本との関係『改善』を通じて、南北交渉を再開しようとしていた」、という仮説を置くと、非常にすっきりと説明が付きます。

日本「関係正常化のきっかけは韓国が作らねばならない」

もっとも、日本の側は、安倍、菅両総理がいずれも、「日韓関係を正常化するきっかけは韓国が作らなければならない」とする姿勢に終始しており(『菅総理「日韓関係健全化のきっかけ要求」の本当の意味』等参照)、結果的に韓国が望む形での日韓首脳会談は、現在に至るまで行われていません。

また、菅総理が昨年10月に辞職し、後継者となった岸田文雄・現首相も、とりあえず現在のところは、日韓関係に関しては安倍、菅両総理の路線を維持しています(※それがいつまで続くのかはわかりませんが…)。

岸田首相を眺めていると、決断力がなく、問題を先送りするという特徴があるのではないか、という懸念もないわけではありませんが、日韓関係に関する限り、そこまで心配する必要はないのかもしれません。

結局は文在寅政権下の韓国の日本に対する姿勢が、日本社会の各方面で強い反発を招いており、さすがに岸田首相であっても、韓国に融和的な姿勢を取ることができないからです。

岸田首相が安倍、菅両総理の対韓路線をそのまま継承したのも、また、佐渡金山の世界遺産登録推薦を決断した(『やるなら徹底的に:佐渡金山登録を巡る3つのポイント』等参照)のも、(自民党からの圧力もありますが)結局のところ、韓国への譲歩そのものが政治的リソースを必要とするからです。

もう少しざっくばらんな言い方をするならば、韓国に譲歩するにしても、それなりの政治的指導力がなければならない、ということでもありますが、この点については後述します。

文在寅氏のインタビュー

こうしたなか、その文在寅政権が、あと3ヵ月で終焉を迎えます。

文在寅氏が日韓関係などについて、どう考えているのかを巡り、興味深い報道がありました。共同通信、時事通信、韓国・聯合ニュースなどの合同書面インタビューで、日本政府が佐渡金山の世界遺産登録を目指していることに対し、文在寅氏が「遺憾だ」などと述べた、というのです。

ここでは、4つほどリンクを示しておきたいと思います。

文大統領が佐渡金山に初言及「遺憾」 一方で韓日対話の必要性強調 

―――2022.02.10 10:39付 聯合ニュース日本語版より

文氏、首相に対話呼び掛け 佐渡金山推薦は「憂慮」 任期末控え書面会見

―――2022/2/10 11:16付 産経ニュースより【共同通信配信】

佐渡金山推薦に遺憾 懸案解決へ日本も誠意を―韓国大統領

―――2022年02月10日12時03分付 時事通信より

文在寅大統領、日本の佐渡金山世界遺産登録推進に「懸念される残念なこと」

―――2022.02.10 12:03付 中央日報日本語版より

これらのメディアによると、文在寅氏が佐渡金山の世界遺産登録に言及したのは初めてのことで、次のような趣旨のことを述べたのだとか。

  • (日韓間懸案に関し)外交的に解決するため粘り強く努力してきたが、接点を見いだせておらず残念だ
  • 問題解決のためには、被害者が受け入れられる解決策でなければならず、歴史の前で誠意ある姿勢と心が最も重要だ
  • (佐渡金山の世界遺産登録推進は)歴史問題の解決と未来志向的な関係の発展を模索すべき時に憂慮すべきことだ
  • 日本の首相とのコミュニケーション(の窓)は常に開かれている

…。

さまざまな意味で、現在の日韓関係を象徴しているような発言です。

そもそも自称元徴用工・慰安婦問題を含めた歴史問題は、韓国による根も葉もない言いがかりですし、また、自称元徴用工判決については、2019年に日本側が申し入れた外交交渉や第三国仲裁などの手続を無視したのは韓国の側です。

その最高責任者でもあった文在寅氏が、「誠意ある姿勢」だ、「心」だと述べたところで、説得力はまったくありません。

文在寅氏こそが、日韓関係を大きく変えた

もっとも、冷静になって考えてみれば、現在のような日韓関係を「悪化」と呼ぶのが適切なのかについては、個人的には疑問でもあります。韓国側が根も葉もない「問題」を創り出し、それに対し日本が「大人の対応」とやらで謝罪して見せる、といったこれまでの関係が、健全なものだったのかといわれれば、それもまた微妙でしょう。

いずれにせよ、文在寅政権を経験したことで、少なくとも日韓関係に関しては、大きく変容しました。

韓国の側が事実無根の「歴史問題」で日本を責める、という構図はあまり変わらないのですが、日本がこれに対し、安易な妥協をしなくなったことに関しては、間違いなく一歩前進です。

この点、文在寅氏の後継者として、「保守派」(?)の尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏が選ばれた場合、日韓関係を修復しようとする動きが日韓双方で出てくる可能性はあり、この点については十分な警戒が必要でしょう。

ただ、自称元徴用工判決問題などを巡り、韓国の「保守系」とされるメディア、知識人らですら、自分の国が日本に対して不法行為を働いているという点から目を背けていたことなどを思い出すと、日韓関係が「文在寅以前」に戻る可能性はさほど高くないと考えられます。

この点、日韓関係を巡っては、結局、「落としどころ」は次の3つしかありません。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

(【出所】著者作成)

上記②の選択肢を韓国、場合によっては米国が日本に求めてくる可能性は高いのですが、肝心の日本社会が、上記②の選択肢を受け入れることができない、という点は忘れてはなりません。先ほども申し上げたとおり、日本が韓国に譲歩するという行動そのものが、日本の政権にかなりの政治力を要求するからです。

もっといえば、自称元徴用工判決、火器管制レーダー照射、GSOMIA破棄など、さまざまな騒動を通じ、日本国民の多くが韓国の行動を深く知るところとなったことで、下手に日本が一方的に譲歩したとしても、それが日韓関係の「改善」につながるとは限らないことを意味しています。

とくに、自称元徴用工問題に関し、韓国の国際法違反判決をそのまま放置していれば、日本企業にとっては当然守られるべき法的権益が失われるということであり、この点をあいまいにしたままで下手な妥協などはできないことは間違いないといえるでしょう。

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