北のミサイル問題は制裁強化や友好国との連携で対処を

北朝鮮に対する制裁は、緩和するのではなく、強化するのが正解です。北朝鮮のミサイル発射を受け、米国政府は国連等に対し、北朝鮮制裁の強化を提案するそうですが、これに日本政府はすぐ賛意を示しました。正しい姿勢です。ただ、それだけでは不十分です。米国、豪州、インド、カナダ、英国、台湾、ASEAN諸国といった日本にとっての友好国と連携し、北朝鮮への圧力をさらに強めなければなりません。

北朝鮮のミサイルは日本にとってかなり深刻

北朝鮮が11日に「弾道ミサイルの可能性があるもの」を発射した事案は、私たち日本人いんとっては、かなり深刻な状況にあります。

岸田文雄首相は同日、この発射事案に対し、「北朝鮮の弾道ミサイル発射について国連安全保障理事会で対応が協議されているなかで、北朝鮮が継続してミサイルを発射しているということは極めて遺憾なことだ」とする声明を発表しています。

北朝鮮による弾道ミサイルの可能性があるものの発射事案等についての会見

―――2022/01/11付 首相官邸HPより

また、林芳正外相も同日の会見で、「一連の北朝鮮の行動は、日本と地域及び国際社会の平和と安全を脅かすもの」として、「強く非難する」と述べています。

林外務大臣会見記録(令和4年1月11日(火曜日)16時03分 於:本省会見室)

―――2022/01/11付 外務省HPより

「段階的非核化」≒「行動対行動」の誤り

ただ、こんな話が出てくると、たいていの場合、「果たして北朝鮮に対し経済制裁で核・ミサイル放棄を迫るのはアプローチとして間違っているのではないか」、といった主張が、どこからともなく出て来ます。

日本の場合だと、日本共産党あたりの「行動対行動」理論がその典型例でしょう。

「行動対行動」が原則/朝鮮半島非核化 井上氏が指摘

―――2018年6月20日付 しんぶん赤旗より

日本共産党の「行動対行動」とは、おそらくは「段階的非核化」――たとえば「北朝鮮が核実験場を閉鎖したら制裁を部分緩和する」、など――を指しているものと思われます。なぜなら、日本共産党は「行動対行動を通じて信頼醸成を図るべき」、などと述べているからです。

北朝鮮という約束破りのウソツキ国家との「信頼醸成」とは、悪い冗談かなにかでしょうか。

無辜の日本人を拉致して返そうとしない、非核化を約束して援助を受けながら陰で核開発を続けてきた、など、北朝鮮のウソ、約束破りは、枚挙にいとまがありません。そもそも「信頼」を裏切る行動を取ってきたのは、ほかならぬ北朝鮮自身だからです。

また、北朝鮮はこれまで、「段階的非核化」と称し、これ見よがしに核実験場を爆破して見せたりしてきましたが、それで核・ミサイル開発をやめたということはありませんでした。こうした実績を踏まえるならば、やはり北朝鮮に対しては経済制裁で締めあげるのが基本形でしょう。

北朝鮮は制裁で困っている

こうしたなか、なぜ北朝鮮がミサイル発射を繰り返すのか、少し疑問に感じる方もいるかもしれません。

試験で恐縮ですが、北朝鮮がミサイル発射を繰り返す理由のひとつは、国際社会に対し、「経済制裁は効いていない」との誤解を与えるためにあるのだと思います。言い換えれば、「本当は経済制裁にとても困っている」という内情が、ミサイル発射という行為を通じて露呈している、というわけです。

こうしたなか、北朝鮮制裁という意味では、北朝鮮の物価水準が奇妙なほどに安定しているという調査結果を受け、「経済制裁は効いていない」、などと主張する人もいます。

ただし、この「北朝鮮の物価ミステリー」については昨年の『北朝鮮の奇妙な物価安定の理由は「紙幣不足」だった?』などでも触れたとおり、経済学的には、単純な「紙幣不足」などの貨幣現象で十分に説明がつくものでもあります。

もちろん、北朝鮮に対しては、2017年12月の国連安保理制裁などに反し、カネや物資が違法に搬入されている可能性は十分にありますが、やはり大元の北朝鮮貿易が経済制裁で締めあげられている効果は、確実に生じていると考えるべきでしょう。

抜け穴を塞ぎ、制裁のさらなる厳格化を!

ただ、北朝鮮制裁を巡っては、もう少し「抜け穴を塞ぐ」という努力は必要ですし、当ウェブサイトでも「制裁の抜け道を塞ぐ」、「(むしろ)制裁を厳格化する」などの対策が必要だ、などと申し上げてきたつもりです。

こうしたなか、米国からは北朝鮮のミサイル発射を受け、追加制裁を国連安保理に提案する、といった話も出て来ました。

US Proposes More UN Sanctions on North Korea Following Missile Tests

―――2022/01/12 23:06付 VOAより

ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は現地時間12日の記事で、北朝鮮の今回のミサイル発射を受け、米国政府としては国連や国際社会に対し、北朝鮮制裁の追加を提案する見通しだ、などとしています。

また、米国はすでに独自制裁として、ミサイル開発に関与した北朝鮮の個人数名を対象とした金融制裁などを強化していますが、これに対し、これまで北朝鮮への制裁緩和を主張してきた中国とロシアからの現時点での反応はない、などとしています。

一方で、日本もこの米国の追加制裁提案について、松野博一官房長官が13日、「支持する」と述べたそうです。

米の対北追加制裁提案、松野長官「支持」

―――2022/1/13 18:37付 産経ニュースより

北朝鮮の核・ミサイル問題は、わが国の安全保障に直結する大問題でもあります。

日本は残念ながら、現時点では国連安保理の理事国ではありませんが、米国の方針を即座に支持するのは正しい姿勢でしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

いずれにせよ、日本はこれまでと同様、あるいはこれまで以上に、米国、豪州、インドなどの「クアッド諸国」、あるいはカナダ、英国など「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想に賛同する国々、さらにはASEAN諸国や台湾などの友好国との連携を深め、北朝鮮問題への圧力をさらに強化すべきです。

拉致された日本人の奪還は、私たち日本人すべてにとって、他人事ではなく、「自分の問題」と位置付けるべきでしょうし、可能ならばあと一歩踏み込んで、「どうやれば日本人を強制的に奪還するために北朝鮮に軍事侵攻することができるか」を、国民的な議論にすべきだと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. ねこよん より:

    米露では定期的にスパイ交換が行われているそうです。
    逮捕されたスパイを人質交換の形で取り返すそうですが、自民は選択を間違えたのかも知れませんね。

  2. 匿名 より:

    >日本はこれまでと同様、あるいはこれまで以上に、米国、豪州、インドなどの「クアッド諸国」、あるいはカナダ、英国など「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想に賛同する国々、さらにはASEAN諸国や台湾などの友好国との連携を深め、北朝鮮問題への圧力をさらに強化すべきです。

    韓国を外してるのは,わざとかな?

  3. がみ より:

    今回のミサイルで不思議なのは、北のミサイル発射の速度・軌道等のデータ分析を中華人民共和国も発表していること。

    持ち上げヨイショする国でもなく中北の極超音速ミサイル技術を誇示する意味もあんまりなく…

    もしかすると、中共は北京五輪前で世界刺激しないようにミサイル発射慎めって命令してたのに北が勝手に射ったので激怒中なのかも知れない。

    なんとなくますます南北終戦宣言は遠のく一方ですね。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      怒っているのは演技で
      韓国日本に対する圧力として
      中国の命令で北朝鮮にミサイル打たせている
      と思っていた

    2. 隊長 より:

       中国は北朝鮮のケツモチと思われており、かつ中国も歴史上のしがらみからそれを自認してるからこそ、オリンピック直前のミサイル発射は彼らのメンツに泥を塗る行為であり、北朝鮮に対する警告の意味があるのではないかと思います。

  4. 宇宙戦士バルディオス より:

     主いわく、
    >試験で恐縮ですが、北朝鮮がミサイル発射を繰り返す理由のひとつは、国際社会に対し、「経済制裁は効いていない」との誤解を与えるためにあるのだと思います。言い換えれば、「本当は経済制裁にとても困っている」という内情が、ミサイル発射という行為を通じて露呈している、というわけです。
     私の見るところ、他にも大きな目的があります。
     北朝鮮国内の人権問題は、中国以上の大きなものがあります。敵対階層に対する貧困の強要、最高権力者による恣意的な処刑、政治犯に対する虐待など、世界最悪のディストピアが北朝鮮です。こういう国内問題から国際社会の目を逸らすには、もっと大きな問題を作り出すのが手っ取り早い方法です。ミサイル発射をするたびに、国際社会は北朝鮮の独裁や人権蹂躙を忘れて、そっちに注目するのですから、文字通りのアドバルーンです。断言しますが、これからも北朝鮮はゼニにならないミサイルを打ち上げ続けるでしょう。それによって、国際社会は北朝鮮の蛮行から目を逸らすのですから。

  5. パーヨクのエ作員 より:

    いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    管理人様>「どうやれば日本人を強制的に奪還するために北朝鮮に軍事侵攻することができるか」を、国民的な議論にすべきだと思う次第です。

    この文章に誰も反応がないので当方が独り言です。

    当方は安全保障に関して自力救済を尊重する立場より管理人様の上記意見に対して大いに賛同します。

    実は「日本人がやる気になれば」管理人様が言う意見を実現する名分が現状で存在します。

    国連敵国条項です。

    国連憲章が発効したのは1945年10月で1948年の韓国、北朝鮮の成立前ですので当然大日本帝国の領域として半島両国家の領土全体は敵国条項の適用範囲です。

    敵国条項は未だ正式に廃止されていないのでアメリカ等に大量殺戮をもたらす核兵器開発及び所持は敵国条項53条違反としてアメリカが認定した上で国連加盟国の権利として日本やアメリカを含む有志国での制裁次いでに管理人様記述の内容を実現すれば良いのです。

    当方のアプローチ以外にもより良い方法はおそらく多数存在すると思いますが、日本の主権を不法に侵害する国家を放置せず「序列が下の存在としてレッテリング」して日本として普通の国がやることを実施して欲しいものです。
    半島両国家には「日本より序列は下である」事を第三者からレッテルを貼ることでしか関係の変更は期待できないので。

    誰にも興味を与えない妄言は以上です。
    つまらない内容ですのでこのコメントを管理人様がご一読後削除頂ければありがたいです。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告