テレビ凋落:大晦日視聴率は2局だけで16ポイント減

昨年の大晦日は、全体の10%前後の家庭が新たにテレビ視聴を取りやめた可能性が出て来ました。NHKと日テレの2局だけで、大晦日の看板番組の視聴率が16ポイント減った一方で、他局が丸々、視聴率を増やした、という証拠はありません。それどころか、どうも2021年の大晦日は「地上波テレビを視聴する家庭」自体が減っているフシがあるのです。

日テレ首位陥落

NHKの紅白歌合戦視聴率が史上最低?何か問題でも?』では、オールドメディア(とりわけ新聞、テレビ)の現状とともに、昨年末のNHKの『紅白歌合戦』の視聴率が歴代最低水準に低迷した、とする話題を取り上げました。

その「続報」でしょうか、こんな話題もありました。

日テレ12年連続民放1位逃す「笑う大晦日」視聴率が前年比10ポイント減

―――2022/1/2 20:35付 Yahoo!ニュースより【日刊スポーツ配信】

大晦日視聴率 日テレ「笑ってはいけない」休止で民放トップ陥落 テレ朝系「ザワつく!」が首位に

―――2022/1/3 05:59付 Yahoo!ニュースより【デイリースポーツ配信】

リンク先は年初に『Yahoo!ニュース』に掲載された記事(※いずれも配信元はスポーツ紙)で、大晦日に放送される『紅白歌合戦』の裏番組の視聴率について、2020年まで11年連続で民放1位を守っていた日本テレビが、昨年はその地位をテレビ朝日に譲った、とするものです。

具体的には、世帯視聴率トップが12.1%だったテレビ朝日系の番組で、フジテレビ系の番組が7.4%であり、日本テレビ系の番組は7.2%と、17.6%を記録した2020年の番組からは世帯視聴率が10ポイント以上下がったのだとか。

日テレとNHKであわせて16ポイントの減少

ただ、ここでふと気になるのが、「テレビを付けない人が増えたのではないか」、という点です。

日テレが昨年と比べ、10ポイント以上、視聴率を減らしたことは事実ですが、後述するとおり、他局がその10ポイント分を丸々分捕ったわけではないからです。

そして、先日も話題に取り上げたとおり、『紅白歌合戦』の視聴率は34.3%で、前年比6ポイント下がったのだそうですが、言い換えれば、日本テレビとNHKで合わせてトータルの視聴率は16ポイントも下落した、ということでもあります。

もちろん、先日から申し上げているとおり、この「視聴率」自体、なにかと問題が多い指標ではあります(たとえば、調査しているのがビデオリサーチ1社であること、その正確性を同社以外の第三者が検証しているフシはないこと、など)。

ただ、その視聴率というベースで比較してみても、テレビを視聴しない家庭が増えていることは間違いなさそうです。「視聴率」というものを信頼するのであれば、2021年の大晦日は、日本全国の家庭のうちの、少なくとも10%前後が、テレビを視聴するのをやめてしまった、ということでもあるからです。

もしかすると、Netflixだの、アマゾンプライムだのといったネット動画なのかもしれませんし、もしかしたら少し早目の初もうでに出かけたのかもしれません(もっとも、コロナ禍かつ寒中で、全世帯の16%の人がテレビを消して外出したと考えるのも、少し無理がありますが…)。

メディアアナリスト「テレビ離れ」

こうしたなか、同じく『Yahoo!ニュース』には1月2日付で、こんな記事が出ていました。

占有率最高でも世帯視聴率40%割れの不思議~『第72回紅白歌合戦』は“テレビ離れ”の象徴!?~

―――2022/1/2 7:12付 Yahoo!ニュースより

執筆者は「次世代メディア研究所」の代表で「メディアアナリスト」の鈴木祐司氏です。

世間では『紅白歌合戦』の視聴率が下がったことに注目が集まっていますが、鈴木氏によると、「世帯占有率」はむしろ上昇しており、過去5年間で最高となったのだそうです。これについて鈴木氏は次のように指摘します。

テレビを見ている人たちの中では、『紅白』視聴の割合が格段に高まった。ところが大晦日の夜テレビをつけず、他のことをする人が増えたために視聴率が下がってしまったというのが真実のようだ」。

ここでいう「他のこと」とは、いったい何なのかはよくわかりません。

ただ、ビデオリサーチの視聴率調査などが正しければ、テレビを消した人が多かったということが、統計的な調査から明らかになった、ということです。

鈴木氏は次のように続けます。

コロナの新規感染者数はやや落ち着いたが、感染力が強いとされるオミクロン株の市中感染が始まっていた。1日あたりの新規感染者数が史上最高という国が欧米で幾つか出て、海外旅行はほぼストップしていた。/帰省する人も、20年よりは多いが例年の6割前後にとどまった。さらに年末年始は各地で大雪となり、東京でも寒さが厳しく外出する人の数は抑え込まれていた」。

つまり、コロナ禍、オミクロン株、厳しい寒さ、などの諸々の条件が整っていたにもかかわらず、昨年よりも視聴率が落ち込んだ、ということです。

また、リンク先記事には12月31日時点における各局の個人視聴率の合計グラフが掲載されているのですが、これで見ても、やはり2020年と比べ、2021年の合計視聴率は、19時以降の時間帯で見れば、10%前後ずつ落ち込んでいることが確認できます。

いったん顧客が離れたら…

普段から当ウェブサイトで申し上げている内容の繰り返しで恐縮ですが、やはり、地上波テレビは時代の流れとは合致していないのかもしれません。これは、飛行機の機内エンターテイメントのたとえで考えたら、大変によくわかります。

大昔(たとえば1990年代など)だと、飛行機の国際線に搭乗していると、機内で映画の上映が行われていたのを思い出します。「乗客が全員、その同じ映画を視聴する」、というわけです。

ただ、今度は乗客の座席の前に小型のモニターが設置され、乗客はおのおの好きな映画を視聴することができるようになり、さらにはそれらの映画を、好きなタイミングで開始できるようになり、最近だと機内WiFiが一般化し、乗客は自分自身のスマートフォンで好きなコンテンツを楽しむこともできるようになりました。

地上波テレビは、いわば、「乗客が全員、同じ映画を視聴する」という状態で進化から取り残されてしまっているのです。

得てして、古い技術は、いったん廃れ始めたらあっという間に顧客が離れていきます。電卓が普及してソロバンが売れなくなったこと、PCが普及してワープロが売れなくなったことなどを思い起こす必要もないでしょう。

2021年の地上波テレビの視聴率自体、こうした「地殻変動」の前兆なのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 七味 より:

    「視聴率」なら頑張れば盛り返せるんじゃないかな?

    視聴率ってテレビ持ってる世帯なり個人を母数にしてたと思うから、テレビを持たない人が増えて母数自体が減れば、視聴者数を維持するだけで視聴者率は上がると思うのです♪

    ただ、母数が減っていく中で、視聴率の数字を維持することに、どんなけ意味があるのかは、よくわかんないけど・・・( ゚∀゚)アハハハハハ

    かといって、母数の減少を避けるためにチューナーレステレビを母数に入れると視聴率は下がっちゃうだろうし、悩ましいところなのです♪

  2. iwamurasta より:

    今年の正月は、箱根駅伝を見て、高校ラグビー・サッカーを見て過ごしました。ただ、新しい刺激を求めてというよりむしろ、そういう毎年変わらぬテレビ番組を見て、激変する激動の時代の中に、過去を思いだし、古き良きスタイルの正月を懐かしむというような、ノルタルジックな感傷を持ちました。音楽愛好家が、あえてレコードで音楽を聴くようなものでしょうか。
    質が低下した番組多くなったと聞きます。テレビがなくなることはしばらくはないでしょうが、このままだと、レトロメディアやノスタルジーメディアと呼ばれる日も、そう遠くはないかもしれないと思った次第です。

    1. sqsq より:

      ラジオがなくならないのだからテレビもなくならないでしょう。
      今ラジオは床屋で聞くだけ。
      テレビはどうなるのかな。

    2. 簿記3級 より:

      人間慣れた習慣を変えることは難しいので正月に親族一同集まり、紅白とゆく年ゆる年を見るという体験を数十年続けてきた世代は容易にテレビは手放せそうにないでしょうね。

      彼らの伝統的な正月には1960年以来3種の神器であるテレビの設置が必要不可欠なのです。

      ノスタルジックへの寄り戻し、新しいスタイルの正月への反発は起こりつつも穏やかでも確実に時代は変化していきそうですね。

      むしろ高度成長期に出現したテレビのインパクトが凄かったというべきか、今後はどんな体験型のお正月が生まれることか楽しみであります。

  3. sqsq より:

    民放の場合スポンサーがつかなければ番組はない。番組の制作費はスポンサーが負担しているのだから。視聴率の低下は広告効果の低下だからスポンサーは番組提供、またはスポット広告を躊躇する。広告予算の中でテレビに配分していたものを他の媒体に回すことを考えるだろう。
    そうするとますます視聴率が下がる。

    1. Iwamurasta より:

      完全に負のスパイラルに陥っているように見えますよね。抜け出すには抜本的な改革が望まれますが、放送免許等により既得利権を守られてきた古い業界に、そのような期待を持つのは、厳しそうですね。落ちていく速度を緩めるのがせいぜい出来る事なのかもしれません。

  4. カズ より:

    (私事ですが)
    基本的に個人商店の決算日は大晦日なんですよね。
    脱サラしてから、棚卸でTVどころではありません。

    *アンテナが無いからかな? NHKは来ません。

  5. トシ より:

    https://news.yahoo.co.jp/articles/2fa25f9da5eee91ab831809125cca9a643ea78f0

    >「到達人数」が約4286・0万人に達した
    >「平均視聴人数」は約598・6万人

    ▼到達人数 個人全体4才以上における1分以上の番組視聴を「見た」と定義し、その番組をどれだけの人が視聴したのか(到達したのか)を推計した値。

    ▼平均視聴人数 全国32地区の個人全体4才以上の視聴率を拡大推計マスタ(※)に掛け合わせて推計。

    到達人数、平均視聴人数なんて初めて聞いたはw

    日テレも視聴率で惨敗したからといってこんな発表するかねぇw

    日テレはあまりに惨めで哀れであり、もう長くはない!

  6. サムライアベンジャー より:

     昨年は、ワンセグ搭載機種が、スマホから消えたので、終わりの始まりでしょう。テレビ局って、どこか傲慢なんですよね。

  7. ふゆみなと より:

    ネトフリやアマプラもだけど、Youtubeの年越し生配信とかもそれなりに見てた人いるんじゃないかな。
    自分は別の動画見てたけど、お勧めに年越し生配信がちらほら上がってたし、自分は超有名どころさんの動画はほとんど見てないのでどれくらいの視聴者数があったのかはわからないけど、「とある界隈には人気」ぐらいの人でも数千人の視聴者が付いてたみたいだし。

  8. 福岡在住者 より:

    大晦日はネットで、韓国ドラマ(笑)の「愛の迷宮-トンネル-」を見ていました。
    大晦日の地上波TVは、個人の趣味としては昔から興ざめするものばかりでしたね。 NHK紅白歌合戦は小学校3年・4年の時、少しだけ見ましたが、この時点で見切りを付けました。 その後、同時刻の民放放送は馬鹿笑い番組(出演者だけが大口開けて手を叩いて笑っているポーズをする番組)やスポーツモドキの暴力番組があったりして・・・。 ウンザリの日ですね。 

    最近はBSの番組を見ることが多いです。この場合、圧倒的にNHKですが・・・(笑) 

  9. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    それでも大晦日のゴールデンでは紅白が一番マシな内容だった

  10. WindKnight.jp より:

    ただ、なんだかんだといって、年末年始は NHK の録画率が上がるのよね。
    紅白歌合戦は、ともかく、”ゆく年くる年”、
    “ウィーンフィルニューイヤーコンサート”、”あたらしいテレビ”、
    今期だと、”ドキュメント72時間”、”不滅のあなたへ”、とか。
    民放で録画したのは、”孤独のグルメ”と”シルベスターコンサート”くらいかな。

    特に”あたらしいテレビ”は、お薦めです。
    色々な出演者が「地上波なんて見ていない」とぶっちゃけてますので。

  11. 匿名 より:

    ゲームの影響もあると思いますよ
    家族でゲームをしている間、テレビはまったく見れないわけですから
    今や家族の団らんは紅白じゃなくどう森や桃鉄なんですよ

    1. 矢塚 より:

      ゲームで一緒に過ごすのは「友人」の比重が高い気がします。

      「他のこと」の一例として
      我が家(6名)の年越し状況(皆でそばを食べた後)
      50台後半 男  動画生放送でチャット
      50台前半 女  ゲーム内チャット
      高校性  男  ゲームとボイスチャット
      中学生  女  ゲーム内チャット
      中学生  女  ゲーム内チャット
      20台前半 女  寝てた
      一人一台以上のパソコンを持っている家庭はあまりないかもしれないので参考になるか分かりませんが、年越しは6人中5人が家にいながら「友人と」でした。
      我が家の団欒はテレビやゲーム無しに会話をしていますね。

  12. がみ より:

    実はテレビ離れは日本だけではないんです。

    中国ですら引っ越しの際にテレビは運ばず棄てていくものだそうで…
    もちろんブラウン管のじゃなくて液晶テレビです。
    引っ越し先で買えばいいくらいに安価になった事も理由のようです。

    テレビ局制作のコンテンツが絶対的に不足し、中国に限らず欧米・インド・中東・南米でも同じ番組の再放送が同じ週に何回もある状態でBSや有料チャンネルを御覧の方々には思いあたる事があるでしょう。

    核家族化が進み価格も下がったので1人1台化がジワジワ進み団らんの場の主役でもなくなり個人持ち端末で充分になりつつあること。

    また有機ELに代わる次世代テレビとして開発されているミニLEDやマイクロELD(有機ELを笑っちゃう程画質は良くなる)ですが、これまでの技術発展と逆に

    「小型化するのが難しくコストがかかる」

    というジレンマに陥っています。
    今現在80インチ以下にするのは至難の技で、大きくても小さくても安価には製造販売出来ません。

    使い勝手から考えても自宅の壁に100インチ以上のテレビが複数あったら邪魔くさいでしょ?

    従来の概念でのテレビという存在自体が終焉期なのかも知れませんね。

    紙媒体から始まりラジオになりテレビになり、より高精細な画面になる…
    そりゃ綺麗ですが、無意識に脳が処理する情報量は劇的に増大する一方です。
    人間の生理的視力・脳の情報量を物理的に超えてしまいそうな勢いでもあります。

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