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NHKはイラネッチケー「逆転勝訴」で自滅の道を行く

「イラネッチケー訴訟」を巡り、最高裁の堺徹判事が愚かな判決を下したことで、NHKがテレビ業界を道連れに、自滅の道を歩み始めました。せっかく「テレビを設置してもNHKと契約しなくて済む」という合法的な道ができるチャンスを、この堺徹判事がぶっ壊してくれたため、テレビ業界の衰退がこれから加速すると考えられるからです。「NHK利権を守るための判決」が「NHKを含めたテレビ業界をぶっ壊す」のだとしたら、皮肉としては最高に強烈です。

利権の3つの特徴

当ウェブサイトの定義で恐縮ですが、「利権」とは、「不当な利得を固定化させる仕組み」のことであり、一般に、「理不尽」であり、「外から壊すのが難しい」ものの、「利権を持っているものの怠惰や強欲で簡単に壊れることもある」、という3つの特徴があります。

利権の3つの特徴
  • ①利権は得てして理不尽なものである。
  • ②利権はいったん確立すると、外からそれを壊すのが難しいという特徴を持つ。
  • ③ただし、利権を持っている者の怠惰や強欲で利権が自壊することもある。

(【出所】著者作成)

NHK利権

NHKは自由経済競争に反した組織

利権にはさまざまなものがありますが、そのなかでもとくにわかりやすいものが、NHKでしょう。

NHKを巡っては、当ウェブサイトでもこれまでずいぶんと議論してきたとおり、そもそも、「自由経済競争」とは無関係な組織です。

日本は自由・民主主義国ですので、本来ならば、企業は自由経済競争を戦わなければならず、消費者から受け入れられれば存続し、そうでなければ市場から退出する(=倒産する)、というメカニズムの結果として、常に選別され続けなければなりません。

経済学の専門用語でいえば、これは「消費者にその企業を倒産させる権利がある」、と表現したりすることもあります。少しわかり辛いかもしれませんが、テレビ業界にも、基本的には同じ原則が成り立ちます。

といっても、テレビ業界の場合、地上波テレビ局の数がとても少なく、また、とくに在京民放(の親会社)はまだまだ経営的に余裕があるため、「私たち消費者がテレビ局を倒産させる」といっても、ピンと来ない方も多いかもしれません。

(※もっとも、『フジテレビが実施する希望退職募集は「悪手中の悪手」』などでも取り上げたとおり、一部の局では希望退職の募集に手を染めているようですが…。)

フジテレビが50歳以上の従業員を対象に希望退職を実施するそうですが、結論的にいえば、悪手中の悪手でしょう。希望退職は「辞めてほしい人が辞めず、辞めてほしくない人が辞める」というものだからです。そして、以前の『コロナ禍でのテレビ局経営:在京5局はすべて減収減益』でも述べたとおり、在京民放キー局も経営状況は悲喜こもごもですが、総じてテレビ事業は減収が続いているようです。在京キー局の親会社の売上高当ウェブサイトでは以前の『コロナ禍でのテレビ局経営:在京5局はすべて減収減益』で、在京民放5社(の持株会...
フジテレビが実施する希望退職募集は「悪手中の悪手」 - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、民放の場合だと、結局のところ、テレビCMを流し、スポンサーから広告収入を得るというのが基本的なビジネスモデルですので、私たち消費者が一丸となり、特定の局だけ「絶対に視聴しない」ことを繰り返せば、理論上はその局を倒産させることが可能です。

そういえば、過去には一般視聴者から「反・韓流デモ」を起こされたテレビ局もありましたが、これに対し、同局の番組で出演者が「嫌なら見るな」と発言し、一時的にではありますが、本当に多くの視聴者がその局を見なくなった、という話もあります。

これなど、「そのテレビ局の番組がつまらなければ、視聴者としてはその局を視聴しないことで、その局の経営を苦境に陥れる権利を持っている」という典型例でしょう。

TVがなくならない限り、NHKは倒産しない

ところが、私たち消費者には、基本的に放送局のうち、NHK「だけ」を「倒産させる」、という権利が与えられていません。

民放の場合、視聴者がいなくなればCM収入が入らなくなり、理屈のうえでは「倒産する」という事態も発生するのですが、NHKの場合、この世にテレビを設置する家庭が十分な数存在している限りは、極端な話、視聴者がゼロであっても絶対に倒産しません。

その理由は、放送法第64条第1項本文という条文にあります。

放送法第64条第1項本文

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

要するに、テレビを設置したら、NHKと受信契約を締結する義務が生じるのです。そして、NHKの事実上の「言い値」を受信料として支払わなければなりません。

極端な話、NHKの番組がどんなにつまらなくても、あるいはNHKの番組がどんなに偏向していても、私たち消費者には「NHKの番組を見ないことでNHKの経営に打撃を与える」という選択肢が与えられていないのです。

もしもNHKと契約するのが嫌なら、「合法的にNHKと契約しない」ためには、基本的には「テレビを買わない」という選択をするしかありません(「テレビを買ったにもかかわらず、わざと契約しない」という選択肢もないわけではありませんが、この場合は放送法違反です)。

つまり、理屈のうえでは、私たち消費者が一丸となり、テレビを買わないようにした結果、NHKと契約をしないという家庭が増えれば、NHKも経営に行き詰まるときがくるかもしれませんが、その場合はおそらく民放のうち数社を道連れにするかもしれません。

いずれにせよ、放送法第64条第1項本文は、私たち視聴者の側にとっては「テレビを設置したらNHKから金をとられる」という理不尽さの根拠条文でありますが、NHKの側から見れば、「寝ていても必ず受信料収入が入って来る」という意味では、笑いが止まらない条文でもあります。

まさに、利権そのものでしょう。

公共放送を騙るNHK、矛盾だらけの超高給取り

ではなぜ、NHKにはこんな利権が与えられているのでしょうか。

いちおう、NHKの側のロジックに立てば、NHKは「公共放送」だから、という説明が成り立ちそうです。実際、彼らは「公共放送」と名乗っていて、その公共放送については次のように定義しているようです。

公共放送とは

営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送
―――NHK『公共放送とは何か』より

何だか、キツネにつままれた気分になりそうです。

受信料「減収」でも417億円の黒字を確保したNHK』などでも取り上げましたが、「営利を目的とせず」、などと言いながら、NHKは2021年3月期において、職員1人あたり1600万円近い人件費を計上しています(図表1)。

図表1 NHKの人件費(2021年3月期)
区分 金額 前期比増減
職員給与(①) 1090億4925万円 ▲20億円(▲1.80%)
役員報酬(②) 3億8693万円 ▲0億円(▲1.52%)
退職手当(③) 325億1377万円 +38億円(+11.66%)
厚生保健費(④) 211億6687万円 +3億円(+1.29%)
①~④合計 1631億1681万円 +21億円(+1.28%)
①、③、④合計 1627億2989万円 +21億円(+1.29%)
NHKの職員数(⑤) 10,343人
(①+③+④)÷⑤ 1573万3335円 +187,797円(+1.21%)

(【出所】NHK『令和2年度 財務諸表』P65より著者作成)

上記①~④のうち、②については役員報酬であるため、「職員」に対する人件費はざっくり①+③+④と考えられます。これをNHKの職員数(⑤)で割ると、単純計算の職員1人あたり人件費は1573万3335円です。

民間平均給与の2.4倍

ちなみにこの金額には、「600万円の隠れ人件費」、すなわち「NHK職員は豪勢な社宅に格安の賃料で入居可能である」という点が一部メディアで指摘されているのですが(『NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか』等参照)、それを考慮していないのにこの金額ですから、本当にため息が出るくらいの高給取りです。

先日の『NHK職員に対する住宅手当に潜む「隠れ人件費」問題』では、NHK職員に対して月額5万円の住宅補助が出ているとする内部告発や、広尾の物件に2万円で住んでいる職員もいるらしいとする記事を紹介しました。これについて、もう少し踏み込んで補足しておきたいと思います。NHKの人件費問題事情は伏せますが、個人的にはこの数日、大変に忙しく、あらためて振り返ると、ここ数日の記事については誤字・脱字も多く、また、いくつか議論したい論点がすっぽり抜け落ちていたりもします。そのひとつが、先日の『NHK職員に...
NHKの「隠れ人件費」600万円のケースもあるのか - 新宿会計士の政治経済評論

もっとも、ここでいう「人件費」には給与・賞与だけでなく、法定福利費、福利厚生費なども含んでいますが、純然たる給与の部分(つまり①の金額)に限定したとしても、やはり1人あたりで1054万3290円と、1000万円の大台を超えます。

図表2のように並べてみると、NHKの給与水準の突出ぶりは明らかでしょう。

図表2 平均給与比較(2020年12月ないし2021年3月基準)
区分 平均給与 出所
任天堂株式会社 9,710,405円 有報ベース
トヨタ自動車株式会社 8,583,267円 有報ベース
NHK 10,543,290円 図表1①を職員数⑤で割る
民間平均給与 4,331,278円 国税庁

(【出所】著者作成)

「職員給与」部分に限定しても、なんとNHK職員は民間平均給与の2.4倍という破格の超高給取りです。このように民間企業の給与水準をはるかに凌駕する高給を支給している事実は、NHKが「公共性」を騙る資格を有しているのか、本当に疑問に感じる点でもあります。

利権の3番目の特徴とNHK

NHKを巡る疑問はいくつもある

もっとも、「NHKは公共放送に値するのか」という問題点は、NHKを巡る数ある疑念のひとつに過ぎません。

そもそも著者自身、ここまでインターネット化が進んだ現代社会において、地上波テレビに特化した「公共放送」なるものが必要なのかは大変に疑問でもありますし、百歩譲って「公共放送は必要だ」という議論が成り立つにせよ、現在のNHKに「公共放送」を名乗る資格があるとも思えません。

ほんの一例を挙げれば、災害報道と称して被災地に入り、災害復旧救援活動を妨害しているという意味では、新聞社、民放とともにNHKも同罪でしょう。あるいは、最近だと皇室報道で、親王殿下や内親王殿下を「XXさま」などと不適切な敬称を付して報じる事例もあります。

そして、「NHKの放送を見ない人からも受信料を徴収する」という在り方など、経済合理性に照らしても、社会正義に照らしても、やはり是認できるものではありません。どこかの共産主義国家ではないのですから、視聴者には「NHKを倒産させる権利」が必要でしょう。

当ウェブサイトでもこれまで議論してきた諸論点をまとめておきましょう。

NHKを巡る諸論点
  • ①現代の日本社会に公共放送というものは必要なのか
  • ②公共放送が必要だったとしても、現在のNHKにそれを担う資格があるのか
  • ③「見ない人からも徴収する」などの受信料制度は妥当なのか
  • ④1兆円超の金融資産、莫大な不動産などは、NHKの経営に必要なのか
  • ⑤少なく見積もって職員1人あたり1550万円超という人件費水準は妥当なのか

(【出所】著者作成)

「報道」で政治を支配するNHK

ではなぜ、国会でNHK改革が議論されないのでしょうか。

このあたり、大変に不思議な気がします。

2019年7月の参議院議員通常選挙で、当時の「NHKから国民を守る党」が比例区で1人を当選させるとともに、得票率で2%を超え、政党助成法上の政党要件を満たしたことを思い出すならば、NHKの在り方に疑問を持つ有権者が一定割合は存在していることは間違いありません。

(※その後、同党はコロコロ党名を変える、党首自身がさまざまな選挙に出るなどする一方、「本業」であるはずの「NHKをぶっ壊す」ことにはまったく貢献していないため、最近では有権者から見放されつつあるようですが、これも当然の話でしょう。)

ただ、「N国党」などを例外として、既存の政党がNHK改革に及び腰な理由は、「NHK自身もメディアの一角を占めているため、NHKが自身の存在に否定的な政治家を『報道の力』で葬り去ることができるからだ」、というのが現時点での著者自身の仮説です。

このあたり、たかが役人に過ぎない(しかもそれほど頭が良いとも思えない)財務官僚らが、政治家をも上回る実質的な政治権力を保持していることと、事情はよく似ているかもしれません。

財務官僚の場合は、国税庁と主計局という、いわば国のサイフの「入口」と「出口」を一手に支配しているため、並の国会議員をはるかに凌駕する政治的な権力を持っているというのは有名な話ですが、財務官僚がカネの力で政治を支配しているのと同様、NHKは「報道」の力で政治に影響力を持っているのです。

財務省は「財政再建」「増税」という誤った原理主義で日本経済をぶっ壊してきましたし、NHKも自身の利権を守ることに汲々として、NHK自身が騙る「公共放送」とやらの役割をまったく果たしてきていません。どちらも罪作りな組織だと思う次第です。

NHKの強欲が利権をぶっ壊す!

さて、冒頭で述べた「利権の3つの特徴」、NHKについては前2者、すなわち「理不尽であること」、「外から壊すのが難しい」という2つの特徴を見事に満たしていることがわかります。

ただ、それと同時に、個人的な予測で恐縮ですが、NHKは3番目の特徴「利権を持っている者の怠惰や強欲で利権が自壊する」をも実現させようとしているように思えてなりません。

そう考える理由は、NHKが強欲だからです。

いくつかその事例はあるのですが、ここで思い出しておきたいのが、ちょうど1年半前の『民放各社こそ「NHKに初勝訴」を全面的に歓迎すべき』などでも触れた、「イラネッチケー訴訟」です。

先ほどの『NHKは日本に必要か~最新財務諸表分析から考察する』に続き、もうひとつ、NHKに関する話題です。「イラネッチケー」というフィルタを使ってNHKを視聴することができない状態になったテレビを設置しても、NHKと受信契約を締結する必要はない、とする判決が、金曜日に東京地裁で出てきました。この問題でNHKに勝訴した事例は初めてだそうです。この判決は今後、テレビ業界にいったいどういう影響をもたらすのでしょうか?NHK訴訟朗報!NHKに勝訴当ウェブサイトでは1日のうちに似たような話題をいくつも...
民放各社こそ「NHKに初勝訴」を全面的に歓迎すべき - 新宿会計士の政治経済評論

これは、「イラネッチケー」と呼ばれるフィルタを使用し、NHKを映らない状態にしたテレビを設置した女性がNHKを相手取って契約義務不存在の訴訟を起こし、一審で勝訴した、という件です。

ただ、この訴訟でNHKは女性に対し控訴したのですが、これについては『イラネッチケー控訴:テレビ業界をNHKがぶっ壊す!』でも議論したとおり、当ウェブサイトとしては、NHKの強欲が結果的にテレビ業界を衰退させかねない、と考えています。

先日の『NHKは日本に必要か~最新財務諸表分析から考察する』などでも報告しましたが、NHKは企業集団内に都心部の優良不動産物件やコンテンツ利用権、さらには1兆円を超える金融資産などを抱え込み、職員に不当に高額な人件費を負担する組織です。こうしたなか、『民放各社こそ「NHKに初勝訴」を全面的に歓迎すべき』で報告した「イラネッチケー」問題に、続報が出てきました。NHKは「イラネッチケーを組み込んだ視聴者」を控訴する方針を示したのだそうです。NHK「国民の敵」説NHKは日本に必要なのか?当ウェブサ...
イラネッチケー控訴:テレビ業界をNHKがぶっ壊す! - 新宿会計士の政治経済評論

冷静に考えてみればわかりますが、「イラネッチケーを組み込んだ人は受信料を払わなくて良い」という社会にしておけば、「どうしてもNHKにカネを払いたくない」という人は、イラネッチケーを組み込むことで受信料を払わないという選択を取ることができるからです。

その場合、NHKと受信契約を結ばなくて済む程度に、手間をかけてしっかりとした工事をする必要がありますし、一般人はそこまでの手間をかけてまでイラネッチケーを組み込もうと思わないからです。

つまり、「イラネッチケーを組み込む」というひと手間を掛ける人はNHKと受信しなくても良い、という点で、社会的な合意が取れれば、結果的に「イラネッチケーを組み込むなどの手間をかけていない人は、テレビを設置すれば、NHKと受信契約を結ばなければならない」という合意ができる、という意味でもあります。

しかし、NHKは「イラネッチケー」自体を排除する方向に舵を切りました。

「イラネッチケー」敗訴:テレビ業界潰すNHKの強欲』でも取り上げたとおり、結果的に控訴審では原告が敗訴しましたが、もしも最高裁でNHKが勝訴することになれば、「イラネッチケーを組み込んでもNHKと契約する義務が免除されない」ということになります。

昨年7月の『イラネッチケー控訴:テレビ業界をNHKがぶっ壊す!』で予想した内容の途中経過報告です。例の「イラネッチケー」控訴審を巡り、東京高裁の広谷章雄裁判長は、イラネッチケーを装着したテレビに受信契約義務が生じないとした東京地裁判決を破棄しました。この広谷章雄裁判長の支離滅裂さもさることながら、より一層深刻なのは、長い目で見てこの判決がNHKとテレビ業界全体にとって自滅行為となる可能性が高いという点でしょう。驚きの判決イラネッチケー控訴審、衝撃の敗訴昨日は、久しぶりに驚きました。「イラネッ...
「イラネッチケー」敗訴:テレビ業界潰すNHKの強欲 - 新宿会計士の政治経済評論

「どうしてもNHKに受信料を払いたくない」という人は、テレビ自体を捨ててしまうことになりかねません。

堺徹・最高裁判事の愚かな判決

その結果はどうだったのでしょうか。

先週末にまでに報じられたとおり、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は2日付で女性側の上告を退ける決定をしたのだそうです。

NHKの逆転勝訴確定 映らぬテレビに契約義務―最高裁

―――2021年12月03日17時25分付 時事通信より

世間ではこれに対し、落胆する声も聞こえてくるのですが、個人的には「あぁ、最高裁もやらかしてしまったな」という感想しか持ちません。

先ほど申し上げましたが、イラネッチケーは「絶対にNHKに受信料を払いたくない」という人に対し、「テレビを設置したけれどもNHKに受信料を支払わなくて済む」ための合法的な道となる可能性がありました。愚かなことに、その抜け道を最高裁自身が閉ざしたわけです。

(※この堺徹裁判長という人物は、まさに後世からは「テレビ業界を殺した人物」と評価されるかもしれません。)

これに対する著者自身の現時点における主観的な予想を申し上げるならば、NHKは「短期的には」自分の利権を守ることに成功したものの、「長期的には」テレビ業界全体を道連れにして自滅する道を選んだと考えています。

今後、NHKに対して合法的に受信料を払わなくて済む方法は、とりあえずは「テレビを設置しないこと」であり、「テレビを設置しない」という選択を取る人が増えれば増えるほど、今度はNHKだけでなく、民放を含めたテレビ業界全体に対し、視聴者離れをもたらすからです。

最高に強烈な皮肉

すでに、その兆候は出始めています。

紙媒体の新聞から10代が離れた』などでも触れてきたとおり、どうもさまざまな調査からは、若年層ほど紙媒体の新聞、地上波テレビから情報を得る割合が低く、インターネットから情報を得る割合が高い、という統計的事実が出始めています。

「テレビ利権」はいまだに根強いが、果たしてその将来は?以前の『新聞を「情報源」とする割合は10代以下でヒトケタ台』では、総務省の調査結果を速報的に紹介したものの、記事のなかに盛大な事実誤認が含まれており、その訂正に追われるあまり、続きについて紹介しそびれてしまいました。ただ、ネット上でちょっと興味深い記事を発見したという事情もあるため、あらためて「メディア利権」についての先行きについて、考えてみたいと思います。総務省の調査当ウェブサイトにおける盛大な事実誤認のお詫び以前の『新聞を「情報源」とす...
紙媒体の新聞から10代が離れた - 新宿会計士の政治経済評論

また、『衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ』でも申し上げましたが、テレビや新聞などの「オールドメディア」の社会的影響力は、現時点においても衰退が激しく、今後、この傾向が進むことはあっても戻ることはないと考えて良いでしょう。

今回の総選挙、最大の勝者は、おそらくは議席を4倍近くに伸ばした日本維新の会であり、また、事前に惨敗を予想する意見も見られた自民党も、議席数は15議席減で済んだという意味では、「勝者」といえるかもしれません。一方の敗者はいったい誰なのか。「立憲共産党」と揶揄された野党共闘にも関わらず13議席減らした立憲民主党もさることながら、やはり最大の敗者は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアではないかと思うのです。2021/11/01 10:15追記図表に注記を追加しています。オールドメディアさん、予測はどうでしたか?...
衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ - 新宿会計士の政治経済評論

このように考えていくと、NHKの強欲は、結果としてテレビ業界からの視聴者離れを加速させ、テレビの社会的影響力を低下させることで、NHKの「権力」(?)の源泉だった「報道を通じた政治家に対する生殺与奪の権」を失っていくことにつながると考えられます。

官僚、オールドメディア、野党議員の「三位一体」による悪しき腐敗の利権構造は、インターネットの台頭により、真ん中のオールドメディアの部分が打ち崩されようとしています。

イラネッチケー訴訟で勝利したことが、NHKの、いや、テレビ業界の衰退を早めることにつながるのだとしたら、皮肉としては最高に強烈だと思うのですが、いかがでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (37)

  • いくらテレビが無いと言っても、NHK訪問員はスマホはお持ちですか~、車にカーナビは付いてますか~と食い下がってくる。
    あの人たちはテレビがあろうとなかろうと訪問してくるので参ってしまう。
    あの人たちNHKの職員じゃなく、下請けなんだよね。
    つれなく追い返しても可哀そうな気持ちになるが、こっちも付き合ってられないので仕方ない。
    ところで、テレビが無い証明ってどうするんだろ。
    まさに悪魔の証明ですね。

    • 上がり込んで調べるのは捜査令状とって来るしかないと思うのですが、どうなんでしょうか?

    • もし訴えられたとしても、家にテレビがあることを証明しなければならないのはNHK側だと思います。国民大多数が「ウチにはテレビがない」と主張すれば調査、訴訟費用のためにNHKは潰れるかもしれません。いや、受信料が高くなるだけだから逆効果になる可能性が高いですね。

  • >映らぬテレビに契約義務―最高裁

    字面だけだと放送法に反する判決のようにも思えるんだけど、どんな理屈で契約義務を認めたのかな?

    ①自分でイラネッチケーつけたなら外すことも簡単
    ②アンテナがあれば「受信」してるから、その後の処理は関係ない

    やっぱり①かな??
    それはそうと、今回判断下した最高裁も「利権」の一角なのかな?

    なんにせよ、こんな判決がでたからには、放送法の改正を急いで欲しいけど・・・・・
    政治家も取り込んで、受信してもしなくても「契約しなければならない」みたいなナナメ上な改正をされちゃいそうで怖いのです(笑)

    あと、テレビの出荷台数は10年前に比べると大きく減ってるけど、このところは安定してるんですね♪

    薄型テレビの動向
    https://www.cross-fd.co.jp/kaden_database/tv/

    • > 字面だけだと放送法に反する判決のようにも思えるんだけど
      私も思いました。「裁判官の国語能力大丈夫か!?」と。

      > どんな理屈で契約義務を認めたのかな?
      私も疑問に思って、雑談所に上げたら、龍さまが回答くださいました。
      判決内容を詳しく読んでないが、って言う前提だったと思いますが、だいたい以下のような感じだったと思います。
      ---
      東京で1,2チャンネルが映らないように細工をしたとしても、名古屋にそのテレビを持っていけば、3チャンネルのNHKを受信することができる。
      ---
      確かに、ワンセグやカーナビが「受信設備の設置」と認められている以上、テレビ自体を移動する、というのは、法律的には「あり」のような気がします。

      私も、法改正しかないように思います。

      ちなみにですが、
      > 今回判断下した最高裁も「利権」の一角なのかな?
      ですが、あくまで『噂』ですが、NHKに不利な判決を出した裁判官は、出世できないそうですw NHKに不利な判決を出した裁判官を私は知らないですがw

      私的には、国政選挙の時は、立候補者全員に「NHK改革について」みたいなアンケートを取って欲しいです。

      • マスオ様

        返信ありがとなのです♪

        >名古屋にそのテレビを持っていけば、3チャンネルのNHKを受信することができる。

        この理屈だと、日本製のテレヒを持っていれば国外にいても契約義務があることになりますね♪

        NHKには、国内のちっちゃな市場ではなく、国外にたくさんいる未契約者を相手に受信料を徴収して貰いたいのです♪

  • NHKが来るので単身赴任を機にテレビは買いませんでした。一時期PCのワンセグで見ようと考えましたが、インターネットの方が面白いので結局使わずに箱に入ったままです。まぁ、テレビは正直いらないです。何にも困りません。

  • 公務員の給与が民間の水準を参照しているようにHNKは民放の給与水準を参照しているのではないか? ヤフーファイナンスの中に上場企業の平均年収ランキングがあり、TBS 15,010千円(8位)、日テレ13,840千円(13位)、テレ東12,890千円(18位)などとなっている。
    今後民放はテレビ離れを反映してランキングを落とすだろうが、NHKには競争原理が働かないで高止まりする可能性がある。NHKには会計検査院が入るはずだが給与水準に対する言及はあるのだろうか。

    • なるほど
      NHKは民放と同水準の給与ということかもね

  • 我が家の経験ですが、参考までに。
    私の愛したトリニトロンが映らなくなったのを契機にNHKとの契約を解除してTV無しの生活を6年程過ごしています。ネットが有れば十分なので。
    1年程前にカミさんの乗っている車にカーナビが付いておりTVが見れるので契約せいと訪問してきました。煩わしいのでディラーにてTVが映らないようにしてもらいました。もちろん費用がかかります。
    再度訪問してきた際に、私が在宅していたので対応し、確認したいので見せろと言われ、裁判してよ私は嘘を言っていないので。それでも見せろと言われるので、ちょっと切れちゃいまして「しつこいと警察呼ぶぞ」ですごすご帰っていき、それから来ていませんね。
    この事でカーナビも売れなくなると思いました。ワンセグスマホももう発売されてないそうです。経済的影響も大きいですな。
    長文で申し訳ない。

  • TVという電気製品の技術仕様をNHK放送技研が牛耳っている「業界構造」も極めて奇妙です。「お茶の間電気製品の帝王」とも呼ばれていたTVは、NHK放送技研と電波行政による社会コントロールの道具でもありました。ただし過去形です。TVはとっくに成熟製品であり、余計な「社会的機能」を盛りこむ以外に付加価値を創造することができない。すなわち金にならない・儲からない・電波行政のわがままに付き合わされ続ける「めんどくさい電気製品」に成り下がっています。電機業界はTVを真面目に作ろうとは思っていないのです。これが当方がNHK放送技研の存在は疎まれており速やかに解体すべしと考える理由です。

  • 地裁:工具などでイラネッチケーを外せる、あるいは市販のブースター追加でNHK放送が受信可(NHK側の主張)→上記の方法を視聴者が行うことは無理→原告側勝訴(NHK上告)

    高裁:入手が容易なブースターが市販されており、それを取り付ければNHK放送を受信可(NHK側の主張)→NHK側勝訴(原告側上告)

    最高裁:原告側の上告退け

    これらの判決から、TVにNHKを受信できなくするような加工を施すという時点で、受信料(受信契約)逃れの悪意があり、NHKを見る見ないに関わらず受信料を公平負担すべきという観点から逸脱している(認めると世が混乱する)と判断したのでしょうねぇ…。

    放送法第64条第1項「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」に主眼を置きすぎですね。
    「ただし、放送の受信を目的としない受信設備~(一部略)~を設置した者については、この限りでない。」
    ここが軽んじられすぎですよ、堺糞裁判長。

    • テレビを持っていなくても、入手が容易なテレビが市販されており、それを取り付ければNHK放送を受信可とも言える将来に向けて画期的な判決ですね。

    • 論理構築観るにアサヒファイアーアームスM40発禁事件を思い起こさせまする
      アレ以降櫻井某には胡散臭い印象が消えませぬ

    • イラネッチケー+ブースターのような、裏の裏をかくようなトリッキーなこと(しかも明らかに画質が落ちる)をしてまでNHKを見たい人ががいるとは思えないのだか・・・

    • 犬HK様

      説明ありがとなのです♪

      ところで、裁判長が軽んじた、ただし書きだけど・・・・

      「放送の受信を目的としない受信設備」ってとこが、受信設備の性質の意味で、設置者の意図は関係ないってことなのかな?

      それとも、「放送」ってのが協会の放送に限らないから、民放の番組が受信できれば、「放送の受信を目的としない」とは言えないってことなのかな?

      どっちにせよ、こんな無茶な解釈するなら、すっきりとさせるためにも改正すべきなんじゃないかと思うのです♪

      • 随分と前の判決で、設置者の意図ではなく、設備の機能のことであると結論が出て、反論の余地はないはずです。

  • このまま衰退していけばいいんですけどね。。。
    NHK自身もそんなことは百も承知で、恐らく次の手を考えてそうです。

    『インターネット回線を引いたものは、NHKと契約しなければならない』
    ここに最終的に持っていきたいんだろうと思います。
    怖い怖い。(ノД\lll)コワイヨー

  • 地デジ対応・クーポンで購入した液晶テレビが10年を越え寿命を迎え始めています。
    4kとうたわれてもyoutubeなどで体験し余り必要を感じません。現在の液晶テレビの寿命とともに「テレビや~めた。
    」という層が増えそうですね。

    我が家はババ様がTV BGMなので壊れても買い替えパターンか....

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