中国の中止要求に「参加人数増」で答えた日台サミット

本稿は、ちょっとした雑感メモです。日台関係の深化が止まりません。先週は神戸で日台地方議員による「日台サミット」が開催され、TPPをはじめとする国際組織への台湾の参加を支持することなどを盛り込んだ「神戸宣言」が採択されたそうです。しかも、一部報道によれば、今回のサミット、中国が「開催中止」を求めたためか、却って500人を超える参加者が集まったとの情報もあります。

歴史の流れと外交関係

人間、大きな歴史の流れの転換点のなかにいると、意外と自分が現在、その転換点にいるということを認識することができないものなのかもしれません。

ただ、『近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた』などでも議論しましたが、現在は日本の外交が大きな転換点に立っています。いうまでもなく、伝統的な「近隣国重視型外交」に別れを告げ、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を引っ提げ、基本的価値を共有する相手国との関係を強化する方向に舵を切りつつあるからです。

こうしたなか、日本の近隣国といえば、中国共産党一党独裁の軍事主義国家である中国を筆頭に、みんしゅ主義を装いながらも権威主義的な国・ロシア、みずから法治を放棄しつつある韓国、前近代的な圧政を続ける北朝鮮のように、いずれも日本とは価値を共有し辛い国が多いように思えてなりません。

このように考えていくならば、基本的価値を共有する国を1ヵ国でも多く味方につけて行かねばならない日本にとっては、外交環境は大変に厳しいと考えざるを得ません。

台湾は日本にとって価値を共有する「国」

ただ、こうしたなかであるからこそ、やはり価値を共有する国が大切です。

そんな「国」のひとつが、台湾です。

外務省が刊行する『令和3年版外交青書』の55ページ目には、台湾について、こんな表現が出て来ます。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」。

この点、台湾は公式には「国」ではないとされているため、外務省の表現も台湾を「国」扱いしないよう、慎重に記載されていますし、また、FOIPには敢えて台湾を含めていませんが、文脈から考えて台湾が潜在的なFOIPに含まれていることは明白でしょう。

それだけではなく、近年、日本が徐々に台湾との交流を拡大していることは間違いありません。

こうした状況を象徴するものでしょうか、台湾メディア『中央通訊』の日本語版、すなわち『フォーカス台湾』に数日前、こんな記事が掲載されていました。

日台交流サミット、「神戸宣言」採択 国際組織への台湾の参加支持呼び掛け

―――2021/11/13 17:47付 中央通訊日本語版より

中央通訊によると、神戸で12日、日台両国の地方議員による「日台交流サミット」が開かれ、「環太平洋経済協定(TPP)をはじめとする国際組織への台湾の参加」を支持することなどを盛り込んだ「神戸宣言」が採択された、としています。

この点、新型コロナの影響もあり、今回のサミットには台湾側の議員は参加できなかったものの、斎藤元彦兵庫県知事や久元喜造神戸市長、参議院議員の片山さつき氏、今井絵理子氏など510人が会場に集まったのだとか。

510人というのも、なかなかの人数です。

中国が圧力を掛けたら参加者が増えた!?

しかも、この記事の数日前に、同じく中央通訊に出ていたこんな記事によると、中国がサミットの中止を求めたことで、却って参加者数が増えたのだとか。

中国から中止要求の日台交流サミット、過去最多の約500人が参加へ

―――2021/11/10 16:09付 中央通訊日本語版より

そういえば、以前の『ワクチン台湾提供が「6月4日」に実現したことの意味』では、「天安門事件」の祈念日でもある今年6月4日に、日本から台湾への支援ワクチンが到着したという「事件」もありました。

このあたり、中国が日本に対し、「台湾との関係を深めるな」と警告したら、却って日本が台湾との関係を深めているという事例が相次いでいるのも興味深いところだと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、素人が舞い上がってしまうので)
    個人的な予感ですが、中国共産党と朝日新聞は、岸田総理が(日台サミットへの超法規的措置をしないまでも)日台サミットへの強い懸念を示さなかったことへの不満を表明するでしょう。
     駄文にて失礼しました。

  2. だんな より:

    今月議員外交で台湾は、モテモテです。
    朝日新聞から
    欧州議員団、初の台湾公式訪問 蔡総統、オードリー・タン氏と会談へ
    https://search.yahoo.co.jp/amp/s/www.asahi.com/amp/articles/ASPC3416KPC3UHBI00Y.html%3Fusqp%3Dmq331AQIKAGwASCAAgM%253D
    CNNから
    米議員団が軍用機で台湾訪問 中国は「挑発行為」と非難
    https://news.yahoo.co.jp/articles/be1b315403492417e293da5de04b4ad4c811b658
    >中国国防省は声明で、米国による「重大な内政干渉」を非難し、台湾海峡の緊張を高める「挑発行為」をやめるよう求めた。

    大量の空軍機が、防空識別圏に侵入する方が、よっぽど緊張を高めています。

    台湾も蔡総統が、倒れるとどっち側になるか不安定だと思いますが、蔡総統にしてみれば、心強かっただろうと思います。
    日本に蔡総統ファンクラブは無いんですかね。
    アメリカには、文在寅不安クラブが、あるらしいですが。

    1. 美術好きのおばさん より:

      だんなさま

      ちょっと古いのですが…
      「霧島英文さん!」がいると思います。

  3. はにわファクトリー より:

    台湾国防部が「認知戦」「網路戦」という単語を編み出したようです。ニュース記事のふりをした誤情報やSNS投稿を通じた偽トレンド工作を言っています。これら社会的脅威への対抗法は集合知によるファクトチェック活動以外に当方は思い当たりません。

  4. 名古屋の住人 より:

    既にご存知かもしれませんが、本件は行橋市の小坪市議のブログに詳細事項が記載されています。

    https://samurai20.jp/2021/11/taiwan-21/

    1. M1A2 より:

      名古屋の住人様

       「明石タピオカ焼き」とかいうパワーワードの方が気になってしまいました。

  5. sqsq より:

    敵の敵は味方。

    台湾とは仲良く(フリでも)しましょう。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      韓国が中国、北朝鮮とベッタリになる前は
      昔は日本も韓国とも仲良くするフリをしていたのだよね

      1. 門外漢 より:

        バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 様
        日韓が友好的(フリ)だったのは、虎がタバコを吸ってた時代でしょう。

  6. 匿名 より:

    中国や韓国がいちゃもんをつけると、すぐさま「馬鹿な大人の対応」をしていた過去を思うと感慨深いものがあります。

    この事は、政治家が日本の国益を事を考えて外交をするようになった等と思い違いをしてはなりません。今までは、国益を考えて行動しようと思っても、マスコミの総攻撃で政治生命を絶たれるので、怖くて身動きが取れなかっただけです。

    しかし、ネットの発達によって、マスコミの影響力が下がり選挙でもその影響力が激減して、マスコミを恐れる必要がなくなって来たのが今回の理由だと思います。

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