X

もりかけ問題がもたらす野党・メディアのテーパリング

立憲議員「コロナ対策を頑張った立憲に来ると思っていました」

「総理、嫌でしょうが『桜を見る会』について質問させていただきます。時間が余ればコロナ対策もやります」。これは、2020年3月4日に立憲民主党の福山哲郎幹事長(参議院議員)が参院予算委員会で発言した内容であり、立憲民主党にとって「コロナよりもスキャンダル追及が大事だ」ということを象徴する発言でもあると思います。こうしたなか、衆院選も終わりましたので、本稿では「元祖スキャンダル」である「もりかけ問題」を振り返ってみたいと思います。

2021/11/03 08:50追記

肝心の部分に誤植がありましたので訂正しています。

もりかけ問題の思い出

もりかけ問題を「定義」する

俗に、「もりかけ問題」というものがあります。

わかりやすく定義しておきましょう。

安倍晋三が内閣総理大臣としての地位を悪用し、個人的な友人が経営する学校法人に対して何らかの違法な便宜を提供していた疑い」。

たとえば「もりかけ」の「もり」の側、「森友学園問題」に関しては、大阪の学校法人「森友学園」に対し、大阪府豊中市にある国有地を、安倍晋三総理大臣(あるいは昭恵夫人)の口利きで非常に低廉な価格で譲渡していたとされる問題がその典型例でしょう。

また、「かけ」の側、「加計学園問題」に関しては、岡山県にある学校法人「加計学園」が、法律で新設が禁じられているはずの獣医学部を違法に新設しようとし、それを安倍総理が口利きをした、などというイメージも持たれているようです。

ただ、これらに関しては、事実関係を調べていくと、どうもこうした姿が正確なものではないように思えてなりません。

たとえば、森友に対する国有地の譲渡については、もともと、ゴミが埋設されている可能性が高いなど、「いわくつきの土地」でもあり、その国有地の値引き交渉については、純粋に近畿財務局と森友学園側のやり取りに過ぎず、そこに安倍総理(あるいは昭恵夫人)が介在する余地はありません。

また、加計学園の獣医学部開設プロセスを巡っては、違法性はただの1点もなく、むしろ「獣医学部の新設の申請を受け付けない」とする文部科学省の行政自体が学校教育法などの法律に違反していた可能性が非常に濃厚です。

「もりかけ」は筋の悪い問題

そして、この「もりかけ問題」、さまざまな意味において、「筋の悪い問題」だったことは間違いありません。

そもそも加計学園の獣医学部開設を「総理の意向」などとする怪文書をメディアに持ち込んだ、文部科学省の元事務次官は、違法な天下りの斡旋を取り仕切っていたほか、新宿の繁華街にあるいかがわしい店に出入りし、児童との不健全な交際などの疑惑が持たれている人物でもあります。

調べれば調べるほど、この問題を「追及している側」の方が怪しい、という代物なのです。

しかも、大変におそろしいことに、この問題を巡って追及していたオールドメディアの側は、魔女裁判よろしく、「疑われた方が無実を証明しなければならない」というスタンスを取っていました。

たとえば、朝日新聞あたりは「もりかけ」問題の「真相究明」などを求める社説を頻繁に掲載しています。ここではほんの2つほど取り上げておきましょう。

(社説)立法府の責任 加計・森友を忘れるな

―――2018年7月17日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

(社説)森友問題 真実知りたいに応えよ

―――2020年3月20日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

いわく、「政権・与党のおごりが際立っている」。

いわく、「加計・森友問題をめぐる野党の審議要求はたなざらしである」。

いわく、「いまだ解明されていない森友問題の真相に迫る新たな動きにつなげねばならない」。

「おごりが際立っている」のは、自称文筆家である吉田清治の虚偽証言に基づく報道記事を長年放置し続け、2014年8月5日にその記事を「虚偽」として取り消したにもかかわらず、英語版ウェブサイトには「noindex」タグで検索除けをしていた朝日新聞社の側にこそ成り立つ表現ではないでしょうか。

「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断

―――2014年8月5日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

「もりかけ」はオールドメディア&野党の断末魔の象徴

もっとも、考えようによっては、この「もりかけ問題」は、新聞・テレビを中心とするオールドメディアが社会的影響力を急速に喪失するなかで出てきた、一種の「断末魔」のようなものといえるのかもしれません。

著者自身の手元メモによれば、「森友学園問題」が出てきたのは2017年2月、「加計学園問題」が出てきたのは2017年5月で、どちらも朝日新聞の報道が出所です。そして、これをじつに4年半(!)も引っ張ったというのも、なかなか凄いことだと思います。

そして、この断末魔に見事におつき合いしてしまったのが、旧民進党や現在の立憲民主党を含めた特定野党の方々だった、というわけでしょう。

実際、『発表しない方がマシだった?立憲民主党の政権「公約」』でも述べたとおり、2021年9月に立憲民主党が発表した「公約」(…なのかなぁ?)の「第1弾」、すなわち「『枝野幸男内閣』が初閣議で直ちに決定する7項目」にも、この「もりかけ」問題が含まれていたほどです。

「枝野幸男内閣」が初閣議で直ちに決定する7項目
  1. 2021年度補正予算の編成
  2. 新型コロナウイルス感染症対策司令塔の設置
  3. 2022年度予算編成の見直し
  4. 日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命
  5. ウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料の公開
  6. 「赤木ファイル」関連文書の開示
  7. 森友・加計・『桜』問題真相解明チームの設置

(【出所】立憲民主党HP『枝野代表が「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」7項目を発表 福山幹事長会見』)

ちなみに「桜」は「桜を見る会」のことだそうです。

先日の『急速に劣化進む特定野党:意外と脆かった「野党利権」』でも触れましたが、野党、とりわけ最大野党である立憲民主党の劣化が激し過ぎます。いや、「劣化」というよりも単にメディアのメッキが剥げ落ちただけなのかもしれませんが、それにしても、彼らが何か発表するたびに、ネットでは一般人が全力で嫌悪感を表明しているようなのです。なかでも噴飯物は「初閣議の7項目」と「市民連合との6項目」でしょう。自民党総裁選で、野党が埋没する来週、自民党総裁選が始まる菅義偉総理大臣が自民党総裁選に出馬しないと明らかにし...
発表しない方がマシだった?立憲民主党の政権「公約」 - 新宿会計士の政治経済評論

公示前勢力が109議席だった立憲民主党は、今回の選挙で勢力が13議席減って96議席にとどまりましたが、逆に、こんな「公約」でよく96議席も取れたものだと思います。逆にいえば、いまだに「もりかけ・桜」に騙される有権者がそれだけいる、という意味でしょうか。

もりかけで運命狂わされた野党

永遠の迷言「時間余ればコロナもやります」

もっとも、今回の選挙だけでなく、2017年10月の衆院選でも、やはり野党やオールドメディアは「もりかけ問題」をテーマに戦い、そして敗北していることを思い起こすならば、本当に学習しない人たちだ、という言い方をしても良いのかもしれません。

なにより立憲民主党を象徴するのが、2020年3月4日に福山哲郎幹事長(参議院議員)が参院予算委員会で質問に立った際の、次のように発言でしょう。

総理、嫌でしょうが『桜を見る会』について質問させていただきます。時間が余ればコロナ対策もやります。

これ、半永久的に記録に残して良い論点ではないでしょうか。

正直、国政にまったく影響がない「もりかけ」「桜」スキャンダルの追及にあけくれ、新型コロナウィルスの感染が拡大していく局面において、立憲民主党はまったくの役立たずだっただけでなく、むしろ政府・与党の足を徹底的に引っ張りました。

そういえば、立憲民主党はこの1年の「最大の成果」を「菅義偉政権を退陣に追い込んだこと」だと認識しておられるようですが(『この1年の成果は「政権退陣させたこと」=立憲民主党』等参照)、言い換えれば、自分たちが何ら対案も示さず、ひたすら政府を妨害し続けたということを、間接的に認めているのでしょう。

ここ数日、立憲民主党関係者の「奇行」が目立つためでしょうか、当ウェブサイトでもどうしても、立憲民主党の話題を取り上げる機会が増えているように思えます。枝野氏自身は自民党総裁選で立憲民主党がメディア報道から埋没することを恐れていらっしゃるフシもあるので、当ウェブサイトも弱小サイトながら、ささやかではありますが、立憲民主党について取り上げるのに協力したいと思う次第です。謝村田齊藤蓮舫さんにご協力いただきたいこのところ、立憲民主党関係者の「奇行」が目立ち始めたようです。たとえば、『野党議員「予約も...
この1年の成果は「政権退陣させたこと」=立憲民主党 - 新宿会計士の政治経済評論

立憲民主党議員「コロナ対策頑張った立憲」

こうしたなか、選挙後には立憲民主党の塩村あやか参議院議員がこんな内容のツイートを発信したようです。

塩村あやか参議院議員(立憲)

だから、立憲が理念を真っ直ぐに目指すべき国を語ることが大切でしたね。与党の出鱈目政治により離れた票が、コロナ対策を頑張った立憲に来ると思っていましたが、予想以上に理念が伝わっていない現実を受け止めなくては。
―――2021/11/01 13:05付 ツイッターより

はて。

「コロナ対策」で立憲民主党が頑張っていた事実はあるのでしょうか。

いや、「頑張った」のはワクチン承認を妨害し、日本における接種を2~3ヵ月遅らせたことで、結果的に菅義偉総理大臣を退陣に追い込んだことくらいでしょうか?

なにより、立憲民主党の「徹底的に国政を妨害する」という理念が国民に対し、十分に伝わったからこそ、この結果だったのではないかと思うのですが…。

野党とメディアのテーパリング

いずれにせよ、「もりかけ問題」は結果として、日本国民に対し、オールドメディアと特定野党への不信感を強めさせるという以上の結果はもたらさなかったように思えます。

そして、オールドメディアが「もりかけ問題」で4年半、大騒ぎし過ぎたせいで、立憲民主党を含めた特定野党はその「もりかけ問題」こそが「国政の重要課題」で「国民の最大の関心事」だと勘違いしてしまい、結果的に徐々に「立憲民主党テーパリング」コースを辿っているのかもしれません。

ちなみに「テーパリング」とは、もともとは当時のFRB議長だったベン・バーナンキ氏が、QE(量的緩和政策)を段階的に縮小するという意味で2013年ごろに使い始めた用語ですが、それから8年が経過し、最近だとコロナ禍を受けた量的緩和政策の手仕舞いという意味で、再び用いられています。

金融緩和政策が中央銀行のテーパリングの対象となる一方、政治・経済の世界では、立憲民主党などの利権野党、あるいは新聞・テレビなどのオールドメディアの社会的影響力は、私たち有権者・消費者にとっての「テーパリング」対象となるのかもしれない、などと思う今日この頃です。

「#枝野辞めるな」

さて、その立憲民主党に関しては、選挙前に枝野氏の後ろ姿と「変えよう」というキャッチフレーズが掲載されたポスターを公表しましたが、その結果が『党代表を「変えよう」』だった、というのは、立憲民主党の体を張ったギャグとしてはなかなか上出来かもしれません。

『メディア利権と野党利権は衆院選を機に崩れ始めたのか』などでも触れたとおり、立憲民主党の枝野幸男代表の進退問題が出て来たようです。報道によると、枝野氏は2日午後の党執行役員会で、衆院選敗北の責任を取って辞任すると述べたのだとか。個人的にはやや意外感もある一方で、幹部が菅直人内閣と比較的メンバーが重なっていることも指摘される立憲民主党の「立憲共産党」路線が変わるのかどうかについては、現時点ではよくわかりません。枝野氏、やっと辞意表明報道等によれば、枝野幸男・立憲民主党代表が2日午後の党執行役員...
党代表を「変えよう」=立憲民主 - 新宿会計士の政治経済評論

こうしたなか、昨日はツイッターで「#枝野辞めるな」というトレンドが湧いていたようです。

いったい誰がこんなことをつぶやいたのかと思って調べてみたら、「メディア報道を信じるなら、いまごろ政権交代が発生していたはずなのに…」、といった書き込みに加え、こんな心ない、そしてけしからん書き込みもあったようです。

立憲「フュー」議席109

共産「ジョン!」議席12

維新「……」議席11

 

立憲共産「はぁーーッ!!!」議席106

維新「……」議席41

ちょっと!これを書いた人、いったい、誰ですか!

あとで職員室に来なさい!!

新宿会計士:

View Comments (37)

  • 防衛とか姿勢が合ってないのに、無理にフュージョンするから・・・

  • 日本のほとんど全てのオールドメディアは今回の選挙結果を残念がっていますね。それに対し、英国のトラス外相 から岸田首相 へお祝いのメッセージ(出典:駐日英国大使館)。
    「英国は今後も、特に以下の分野で日本とのパートナーシップを深めていきたいと考えています。テックとデジタル。安全保障と防衛。貿易・投資。」
    岸田首相はCOPで英国に行き、少なくとも米国と英国の首脳と会うでしょう。これを大々的に記事にしないメディアがいるとすれば、まさしく反省しないサル以下。いやおサルさんにごめんなさい。

  • 「モリカケ?」「。。。。あぁアレまだやってんの?」
    これが一般人の素直な感想。
    立憲民主党とオールドメディアは「民衆は無知」だと思ってる。
    いつまでもやってろ。票と発行部数失うだけだから。

  • 既に新聞を読まなくなって久しいですが、「モリ・カケ」ってなんでしたっけ。蕎麦?

  • 人間基本的には自分が一番かわいいものです。
    自分の食い扶持が増減する様な事態には敏感にならざるを得ません。
    消費税減税を中心にメディアと野党が攻めたてたならばかなり状況が変わったのではないでしょうか。

    しかし「日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命」って…その6人の方々は嬉しいでしょう。
    国民の生活にはあまり関係ないです。

  • 消費税減税や給付金の再支給など、経済を論点にすれば立憲共産とも躍進したと思うのですが。
    労働貴族にはお金のありがたみが分からないのでしょうね。

  • 昨日のプライムニュースは、維新VS立憲共産党でした。
    維新の馬場さんは、明確に「立憲共産党は野合で、それが国民の判断」と言ってました。
    立憲は、小選挙区制は二大政党制がマッチしているという事を根拠にしてますが、別に小選挙区に拘束されるわけでもありません。選挙制度を中選挙区にすれば良い話。
    立憲は、第一野党だから、二大政党制になれば得で、やはり説得力が無いんですよね。
    市民連合のコメントです
    https://shiminrengo.com/archives/4631
    市民連合の本名は「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」です。

    •  昨日のプライムニュースで、「甘利明氏など自民党の大物を小選挙区落選に追い込んだことは、野党共闘の成果だ」と言っていましたが、立憲の大物を落選に追い込んだのも、野党共闘の成果(?)ではないでしょうか。(もっとも、「個々の選挙区で事情が違う」と言われれば、それまでですが)
       駄文にて失礼しました。

      •  すみません。追加です。
         昨日のプライムニュースで、立憲共産党が、「選挙結果を科学的に分析して結論を出す」と言ってましたが、そもそも選挙とは、個々の有権者が自分の思惑で投票するもので、推測による仮定は出せても、(どれだけ時間をかけても)科学的な分析結果は出せないものではないでしょうか。
         駄文にて失礼しました。

        • そう言えば、共産主義も科学扱いだったような。

          『科学を掲げて押し通すな!』と左派系記者が述べたような。

          • 「科学を振りかざすな」でしたね。
            共産主義が生まれた頃はそれが時代の最新理論で、科学を援用していた部分もあったので、科学的と呼ぶことに一理ありました。
            今となっては、エセ科学と屁理屈の寄せ集め主義になってますけどね。

    • 皆様
      共産党は、「やってることは正しいから責任は無い」という話です。
      やってることは正しくて、国民の支持を得られないのは、おかしいというと、逆切れする始末。
      共産党が政権を取ると、こうなる良い見本でした。

      • 「やってる事は正しいから粛清しちゃった〜 ん?親友の彼? 殺っちゃったけど正しいから責任転嫁無いよね〜」

        スターリン

  • 「もりかけ問題」、政治家がタイホされるような犯罪の証拠がでず、立件できなかった。
    そんなれべるじゃ堂々巡りするだけ。そんなことに時間かけても何の解決にもならないわけで。
    ホントに時間の無駄。それをコロナより重大、とかあたおか(あたまおかしい)ですね。
    もし、本件を受けて犯罪化したいのなら、そのように用件を変えた法律を作ればよいわけで。
    法律を作る/改正する仕事をするのが政治家でしょう。
    でもそんなことをしても日本では、というか、ほとんどの国では過去に遡って遡及できないので、すでに過去の「もりかけ問題」には適用できません。おっと某国では遡及できるみたいですけどね。
    立件共産党がどこに落としどころを持っているのかが謎ですね。

    つーか、日本国を邪魔してスポイルすることだけが彼らの目的なんだと思いますけどね、かれらの正体は。

1 2 3