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メディア利権と野党利権は衆院選を機に崩れ始めたのか

いさぎよい自民党関係者、往生際が悪い立憲民主党関係者

野党も官僚もマスメディアも、結局のところは「利権」という問題に結びつきます。当ウェブサイトの持論ですが、日本を悪くしてきたのがこの3者でもあります。ただ、日曜日の衆院選の結果、現在はこの3つの利権のうち、メディア利権と野党利権が同時に崩れようとしているように見受けられます。利権というのは見かけはしっかりしていても、崩れ始めると意外とあっけなかったりするものですが、さて、日本の利権はどう動くのでしょうか。

利権の問題

利権を持つ官僚機構という問題点

当ウェブサイトでは最近、「隠れたテーマ」として追いかけている問題がひとつあります。

それが、「利権」です。

利権とは、いわば「不当な利得を得るための既得権益」のようなものですが、それと同時に、利権には一般に、次の3つの特徴があります。

利権の3つの特徴
  • ①利権は得てして理不尽なものである。
  • ②利権はいったん確立すると、外からそれを壊すのが難しいという特徴を持つ。
  • ③ただし、利権を持っている者の怠惰や強欲で利権が自壊することもある。

(【出所】著者作成)

なぜこんなことを申し上げるのかといえば、現在の日本には、代表的な利権団体が大きく3種類存在するというのが著者自身の見立てだからです。

それは、「官僚、メディア、野党議員」です。

官僚機構といえば、形式的には私たち日本国民が選んだ政治家の下で国家行政の実務を取り仕切る昨日のことをさしますが、現実には、官僚機構こそが法律の解釈を決め、日本において独占的な権力を持っている張本人でもあります。

増税こそ財務省の「省是」

とりわけその中心にあるのは、増税自体が一種の利権と化した、「増税利権」の権化・財務省でしょう。

財務省が財政再建と増税を「省是」としているということは、先月の総選挙前には、財務省の事務次官という立場にある者が、月刊誌に対し、「財政再建の必要性」を訴える内容を勝手に寄稿したという「事件」からも明らかです。

与野党論争「ばらまき合戦」と批判 矢野財務次官、異例の寄稿

―――2021年10月08日16時29分付 時事通信より

時事通信などの報道によれば、財務省の矢野康治事務次官は、月刊誌に対して「財政再建の必要性を訴える内容」を寄稿したのだそうですが、これが事実なら、岸田首相は直ちに矢野次官を懲戒解雇しなければなりません。

その理由は簡単で、財務官僚ごときが本来ならば政治的中立性を破ることなど許されないからです。

しかし、矢野次官が懲戒解雇されたという話は聞きません。やはり財務官僚が圧倒的に強い政治権力を実質的に握っているがために、岸田文雄首相を含めた政治家ですら、財務官僚に忖度(そんたく)しなければならないのが現在の日本の実情、ということなのでしょう。

国民から選挙で選ばれたわけでもない財務官僚ごときが増税という「省是」を掲げて国民経済をゆるしていること自体が、本当に、情けない話です。

野党とオールドメディアの権力

ただ、こうした「利権」を握っている勢力は、財務官僚を含めた官僚機構だけではありません。

新聞、テレビを中心とするオールドメディア、あるいは野党議員なども、立派な「既得権益層」なのです。

このうちオールドメディアの側は、記者クラブ制度で官僚機構から情報を独占的に受け取り、地上波テレビ局は電波利権で新規参入の脅威から守られ、NHKは放送法の規定で受信料利権を守られ、新聞社は再販売価格維持制度や消費税等の軽減税率といった制度に守られています。

しかも、こうしたオールドメディアが公正な報道をするのならば、まだ救いがあるのですが、そのメディアたちはたいていの場合、かなり歪んだ情報を発信します。

たとえば、普段から当ウェブサイトでは「コロナ禍はメディア禍だ」と主張していますが、その理由は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアが、コロナの恐怖をあおるような報道に終始し、重症者数、入院者数、新規死亡者数などを含めた客観的・総合的な「数字」から、頑なに目を背けているからです。

そして、こうしたオールドメディアと癒着しているのが、官僚機構だけでなく、野党議員勢力でもあるのです。

衆参両院でも、与党と比べて野党の方が、多くの質問時間を与えられていますし、とくに「最大野党」ともなれば、その質問時間の配分権を持つなど、不当に大きな権力を握ります。

野党が法の根拠もなく、霞が関から多忙な役人を呼び出して「ヒアリング大会」を行っているのも、結局は国会議員としての絶大な権限を不当に歪めて使っているだけの話でしょう。

これがどう変わっていくのか、あるいはどうにも変わらないのか――。

利権というものは、しっかりしているように見えて、崩れ去るときには案外あっけないものなのです。そして、現在は少しだけ、その兆候が出ていることは間違いありません。

選挙結果・総評

自民も立憲民主も議席減だが…

昨日の『衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ』でも速報的に議論したとおり、日曜日に投開票が行われた衆議院議員総選挙での「最大の敗者」とは、そのオールドメディアそのものだった、というのが、当ウェブサイトなりの暫定的な感想です。

今回の総選挙、最大の勝者は、おそらくは議席を4倍近くに伸ばした日本維新の会であり、また、事前に惨敗を予想する意見も見られた自民党も、議席数は15議席減で済んだという意味では、「勝者」といえるかもしれません。一方の敗者はいったい誰なのか。「立憲共産党」と揶揄された野党共闘にも関わらず13議席減らした立憲民主党もさることながら、やはり最大の敗者は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアではないかと思うのです。2021/11/01 10:15追記図表に注記を追加しています。オールドメディアさん、予測はどうでしたか?...
衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ - 新宿会計士の政治経済評論

まずは、報道ベースではありますが、事実として各政党の勢力がどう変わったかについて、確認しておきましょう(図表)。

図表 各政党の獲得議席
政党 公示前→選挙結果 増減
自民党 276→261 ▲15(5%減)
公明党 29→32 +3(10%増)
立憲民主党 109→96 ▲13(12%減)
日本維新の会 11→41 +30(273%増)
日本共産党 12→10 ▲2(17%減)
国民民主党 8→11 +3(38%増)
れいわ新選組 1→3 +2(200%増)
NHK党 1→0 ▲1(100%減)
社民党 1→1 ±0(―)
無所属 12→10 ▲2(17%減)
合計 460→465 +5(1%増)

(【出所】各社報道をベースに著者作成。増減率は「公示前勢力」に対するもの)

立憲民主党は総じて苦戦

これで見ると明らかですが、公示前と比べ、自民党は15議席、立憲民主党は13議席減らしたものの、減らした議席数が両政党に占める意味合いは、大きく異なります。公示前勢力と比べた「増減率」でいえば、自民党は5%減であるのに対し、立憲民主党は12%減だからです。

また、立憲民主党は公示前勢力が109議席でしたが、前回、つまり2017年10月の選挙で獲得した議席数(55議席)と比べれば、たしかに大躍進ではあります。

しかし、前回の選挙では旧民進党が「希望の党」と立憲民主党に分裂していたため、希望の党(50議席)や旧民進党系の無所属(10議席)の獲得議席合計・つまり115議席と比べれば、今回、立憲民主党が獲得した96議席というのは、大きな後退といえなくもありません。

もっとも、比較すべき前回の議席数を「115議席」と置くのであれば、今回の議席数については「希望の党」の実質的な後継政党である国民民主党が獲得した11議席と合わせて107議席と比較すべきかもしれませんが、そうだとしても今回は微減、というわけです。

旧民進党系議員の獲得議席
  • 前回…115議席(内訳:立憲民主党55議席、希望の党50議席、旧民進党系の無所属10議席)
  • 今回…107議席(内訳:立憲民主党96議席、国民民主党11議席)

このように考えると、やはり広い意味での「旧民主党勢力」は議席を減らしたと見るのが正解でしょうし、立憲民主党を中心とする4党(日本共産党、社民党、れいわ新選組)の政策合意も、議席を増やしたのが「れいわ」だけだったという事実に照らすと、事実上、野党政策合意は有権者に支持されなかったと見るべきです。

ちなみにこの野党政策合意に参加していなかった国民民主党は8議席を11議席へと少しだけ伸ばし、立憲民主党とは距離を置いている日本維新の会に至っては、議席数を一挙に4倍近くにまで伸ばしていることからも、野党政策合意が有権者に刺さらなかったことは明らかでしょう。

メディアの支援を受けながら議席が伸びなかった立憲民主党

いずれにせよ、選挙前に当ウェブサイトでもずいぶんと論点として取り上げたとおり、新聞、テレビなどのオールドメディアの予想に基づけば、今回の選挙では、立憲民主党が、下手をすると30議席以上議席を積み増して大勝するはずでした。

たとえば『選挙前の情勢世論調査、選挙の公正を歪めていないか?』でも報告したとおり、選挙直前のタイミングだと、一部メディアは自民党が単独過半数(233議席)の維持すら微妙な情勢であるのに対し、立憲民主党は140議席台をうかがう勢いであり、日本共産党も公示前の12議席を積み増す、などと報じていたのです。

選挙前の情勢分析に関するメディア記事がひっきりなしに出て来ます。そして、著者自身、どうもメディア各社から目を付けられたらしく、平日の真昼間から、読売新聞、共同通信、フジテレビなどからジャンジャン電話が掛かって来ます。端的に言って迷惑です。そして、驚くことに、メディア各社は選挙直前であるにも関わらず、平気で選挙情勢を記事にしているようですよ。平日の世論調査の迷惑電話、規制できませんかね?当ウェブサイトでは現在進行中の選挙についての話題にはできるだけ触れないという方針を取っているのですが、ただ、...
選挙前の情勢世論調査、選挙の公正を歪めていないか? - 新宿会計士の政治経済評論

ところが、ふたを開けてみたら、立憲民主党、日本共産党はともに議席を減らしたのに対し、自民党は多少議席を減らしたにせよ、単独過半数については維持していますし、公明党と合わせれば「絶対安定多数」、つまりすべての委員会の委員長ポストを独占するだけの議席(261議席)を大きく上回っています。

また、自公の獲得議席は293議席であり、改憲の発議が可能となる3分の2(310議席)という水準には満たないにせよ、11議席の国民民主党に加え、今回、勢力を41議席に伸ばした日本維新の会の議席と合わせれば345議席に達します。

あるいは、与党にいながらにして改憲に否定的とされる公明党を抜いたとしても、自民、維新、国民の3党で議席が313議席に達しましたので、公明党抜きにしても、この3党で合意すれば、衆議院側では改憲の発議が可能となった、ということです。

(※もっとも、参議院側で連立与党などが3分の2を占めていない現状を考えるならば、今すぐ改憲の発議をすること自体は現実的ではありませんが…。)

立憲民主党の何が問題なのか:「人罪の宝庫」

さて、選挙が終了した現在、個人的な立場を述べることは問題ありませんので、敢えて申し上げるならば、当ウェブサイトとしては日本維新の会も国民民主党も、どこか胡散臭いところがあると考えていますし、全幅の信頼を置くべきなのかは微妙だとは思う反面、それでも立憲民主党と比べれば、はるかにマシだと考えています。

立憲民主党の奇行ぶり、あるいは(人材ではなく)「人罪」の宝庫ぶりといえば、今年に入ってから取り上げた話題のほんの一部を振り返っても、次のとおり、いくらでも出て来ます。

  • メディアが立憲民主党の行動を「審議拒否」と報じたことを巡り、村田蓮舫・代表代行や安住淳・国対委員長らが「メディアが『審議拒否』を『常套句』のように報じている」と立腹(『審議拒否」報道に立憲・村田氏ら「常套句」と逆ギレ』等参照)
    村田蓮舫さん、安住さん、「審議拒否」は紛れもない事実ですよ!「野党の仕事とは、国会で揚げ足取りをするだけの簡単なものです。これで何千万円もの年収が保証されます」――。こう聞くと、納得できないと思う人も多いでしょう。こうしたなか、政府が国会に提出した法案のなかに字句のミスなどが発見されたことに関連し、立憲民主党が再び審議拒否に入るようです。これについて村田氏や安住氏が「審議拒否と報じるな」と逆ギレしているようですが、彼らがやっていることは審議拒否以外の何物でもありません。法案ミスは「あってはなら...
    「審議拒否」報道に立憲・村田氏ら「常套句」と逆ギレ - 新宿会計士の政治経済評論
  • 立憲民主党を筆頭とする野党議員の質問通告の遅れが官僚の長時間労働の原因となっているとの指摘に対し、安住淳氏が「陳腐な話」としたうえで「むしろ政府に問題がある」と逆ギレ(『「逆ギレの立憲民主党」質問通告遅れを政府に責任転嫁』等参照)
    立憲民主党といえば、先週の『「審議拒否」報道に立憲・村田氏ら「常套句」と逆ギレ』でも報告したとおり、「悪い意味で」話題に事欠かない政党です。その立憲民主党の安住淳・国対委員長は28日、NHKの番組で野党の質問通告の遅れについても、「陳腐な話」などと逆ギレしたそうです。立憲民主党がこういう体たらくであれば、自民党政権は安泰なのでしょうか。こうしたなか、個人的に注目しているのは、菅総理の訪米直後に「解散風」が吹くのかどうか、という論点です。審議拒否を「常套句」と逆ギレした立憲民主党現在の日本の最大...
    「逆ギレの立憲民主党」質問通告遅れを政府に責任転嫁 - 新宿会計士の政治経済評論
  • 安住淳氏が国民民主党、日本共産党の国対委員長とともに、「コロナ第4波が到来したならば内閣総辞職に値する」との認識で一致したと発表(『野党3党「コロナ第4波到来なら内閣総辞職に値する」』等参照)
    内閣総辞職でコロナ蔓延を政治的に止められるわけないでしょうに…先日よりお伝えしているとおり、最大野党である立憲民主党の奇行が続いています。こうしたなか、昨日は野党3党の国対委員長が「感染拡大抑止に失敗し、コロナ第4波が到来し、国民へのワクチン接種なども円滑に進まないなどの事態が生じた場合は内閣総辞職に値する」、との認識で一致したそうです。立憲民主党の奇行が相次ぐ最大野党である立憲民主党の奇行が続いています。先日の『「審議拒否」報道に立憲・村田氏ら「常套句」と逆ギレ』でも紹介したとおり、メディア...
    野党3党「コロナ第4波到来なら内閣総辞職に値する」 - 新宿会計士の政治経済評論
  • 枝野幸男代表が記者会見で、「菅義偉内閣が退陣し、立憲民主党を少数与党とする『枝野幸男内閣』を暫定的に組閣したうえで、次期衆院選まで危機管理に当たるべきだ」と述べた(『さすがに無理がある、民意を否定する「枝野内閣」構想』等参照)
    最大野党・立憲民主党の枝野幸男代表は昨日、「菅義偉内閣は退陣させるけど衆院選は実施せず、現行の衆院勢力のまま立憲民主党を少数与党とする『枝野内閣』を暫定的に組閣し、次期衆院選までの間の危機管理に当たるべきだ」、とする見解を述べたのだそうです。民意を堂々と否定する発言には恐れ入りますが、それと同時に一事が万事、自身の言動に一切責任を負わない立場というのもうらやましい限りです(※皮肉です)。衆院選まで暫定の「枝野幸男内閣」を主張どうして、こういう発想になるのでしょうか。産経ニュースの報道によると、...
    さすがに無理がある、民意を否定する「枝野内閣」構想 - 新宿会計士の政治経済評論
  • 福山哲郎幹事長が京都市内の中心部に近い交差点の車道側に立ち、鳴らされたクラクションを「応援のメッセージ」と述べてツイートする(『福山哲郎氏、交差点で演説しクラクションを鳴らされる』等参照)
    どうして立憲民主党の政治家は法律を守らないのか昨日の『「立憲民主党への政権交代」が発生し得ない理由とは?』で立憲民主党の奇行の数々について取り上げたばかりであるにも関わらず、もうひとつ、看過できない話題が出て来ました。立憲民主党の幹事長ともあろう人物が、交差点の車道側で堂々と街頭演説し、クラクションなどの受けたのだそうです。これをいったいどう考えるべきでしょうか。福山哲郎氏、交差点で街頭演説しクラクションなどを受ける最初に、衝撃的な姿を紹介しておきましょう。福山哲郎・立憲民主党今朝は、京都で...
    福山哲郎氏、交差点で演説しクラクションを鳴らされる - 新宿会計士の政治経済評論

オールドメディアの多くは、こうした立憲民主党の奇行に頑なに触れないようにしているフシがありますし、また、選挙前に日本共産党と取り交わした閣外協力などを含めた政策協定に関しても、メディアが公平に報じたとはいいがたいのではないでしょうか。

メディアと野党の問題点

各論①オールドメディアの動向

さて、冒頭の「利権」にも関連し、本稿ではあと2つほど、今回の選挙について考えておきたい視点があります。

ひとつめは、冒頭でも触れた、オールドメディアの問題点です。

同党の獲得議席数を巡り、個人的にもっとも腑に落ちる説明は、「あれだけマスメディアの支援を受けておきながら、また、野党の候補者調整などを経ておきながら、前回を下回る議席しか獲得できなかったこと」という点に尽きると思います。

このことは、2009年の「政権交代選挙」と比べると明らかです。

2009年8月の衆議院議員総選挙では、自民党が119議席しか獲得できずに惨敗する一方、民主党は308議席を制し、政権交代が発生しました。

そして、これについては日曜日の『オールドメディアが選挙結果歪めた2009年との違い』でも報告したとおり、オールドメディアによる偏向した報道が政権交代の原動力となったことは、さまざまな調査、さまざまな客観的事実からも明らかであると考えて良いでしょう。

本日は第49回衆議院議員総選挙の投開票が行われます。著者自身は個人的に支持している政党、支持している候補者がいますので、本日、投票に行ってくるつもりですが、有権者の皆さまも是非、投票に行っていただきたいと思います。こうしたなか、選挙そのものに関する論評は本稿では控えますが、その一方で、新聞、テレビに代表されるオールドメディアが選挙を歪めてきたことの罪については、指摘しておかねばならないでしょう。オールドメディアの罪有権者は必ず選挙に行ってくださいね!本日は、衆院選の投票日です。個人的に気になる...
オールドメディアが選挙結果歪めた2009年との違い - 新宿会計士の政治経済評論

今年はこの2009年からちょうど12年目の節目でもあるのですが、「さすがに12年前の悪夢については繰り返されることはないだろう」とは考えていたものの、やはりオールドメディアに騙される有権者がそれなりに出現するかもしれない、という点については、当ウェブサイトなりに懸念していた点です。

というのも、『紙媒体の新聞から10代が離れた』などでも論じたとおり、最近の総務省などの調査では、新聞の若年層に対する世論支配力がかなり消滅している反面、テレビに関しては、まだ社会的影響力を保っていると想定されたからです。

「テレビ利権」はいまだに根強いが、果たしてその将来は?以前の『新聞を「情報源」とする割合は10代以下でヒトケタ台』では、総務省の調査結果を速報的に紹介したものの、記事のなかに盛大な事実誤認が含まれており、その訂正に追われるあまり、続きについて紹介しそびれてしまいました。ただ、ネット上でちょっと興味深い記事を発見したという事情もあるため、あらためて「メディア利権」についての先行きについて、考えてみたいと思います。総務省の調査当ウェブサイトにおける盛大な事実誤認のお詫び以前の『新聞を「情報源」とす...
紙媒体の新聞から10代が離れた - 新宿会計士の政治経済評論

実際、菅義偉総理大臣が先月、内閣総辞職に追い込まれたのも、メディアが実施する世論調査で内閣支持率が急落したことなどが原因のひとつであるとも思いますし、こうした点なども踏まえると、個人的には、「まだまだオールドメディアの世論支配力は強い」という思いがあります。

ただ、実際にふたを開けてみたら、衆院選ではたしかに自民党は議席を減らしたものの、メディアが事前に大騒ぎした「単独過半数を失う」というレベルまでの大敗を喫したわけではなく、むしろ15議席の減少に留めたことは、大変に健闘したと考えて良いでしょう。

なにより、公示前勢力に対する「率」で見れば、失った議席の割合は自民党以上に立憲民主党のほうがはるかに大きく、その意味ではメディアの情報統制力は、少なくとも2009年当時と比べ、かなり大きく低下していることが確認できたという点で、個人的には大変に満足しています。

オールドメディアは「主観的意見」の押し付けが酷すぎる

余談ですが、あらためて当ウェブサイトの問題意識を提示しておくならば、日本のオールドメディアには「主観的意見」の押し付けが酷すぎる、という問題点があります。

そもそも論ですが、「マスメディア」「マスコミ」と呼ばれる媒体に対し、本来求められる社会的役割とは、第一義的に、客観的な社会的事実を一般の人々に対して広く知らしめることでしょう。

とくにインターネットが存在しなかった時代だと、毎日、不特定多数の人々に対し、同時に情報を伝える手段としては、新聞、テレビ、ラジオなどの手段が最も効率的なものでした。

オールドメディア各社は、こうした自分たちの業界の役割を、過信してしまっていたのかもしれません。

当ウェブサイトでいつも申し上げているとおり、情報には「客観的な事実」と「主観的な意見」があります。

わかりやすい例でいえば、「自民党は261議席を獲得した」というのは「客観的な事実」ですが、これを次の(A)(B)のように書き換えたら、主観的意見です。

  1. 自民党の新勢力は261議席に留まった。これは有権者の自民党に対する不信の証拠だ。
  2. 自民党の新勢力は261議席に達した。これは有権者の自民党に対する信頼の証拠だ。

(A)(B)に共通しているのは「自民党の新勢力は261議席」という部分ですが、これを有権者の自民党に対する不信の証拠と見るのか、信頼の証拠と見るのかは、それぞれの文脈に応じ、それぞれの人が解釈する主観的な意見に過ぎません。

それなのに、オールドメディア側は、(A)(B)のような主観的な意見、願望、酷い場合には妄想を垂れ流すようになったのです。

その意味で、昨日も議論したとおり、今回の総選挙の「最大の敗者」とは、まさに新聞、テレビを中心とするオールドメディア産業そのものです。

いずれにせよ、とくに日本のオールドメディア各社は、記者クラブ、電波利用権、再販売価格維持制度、消費税の軽減税率、NHKの受信料利権などのさまざまな利権を作り、それらの利権を死守しようとしていますが、こうした特権をいつまでも許容しておくべきなのかは疑問です。

そして、さまざまな情報から判断する限り、こうした「オールドメディア利権」の解体に関する議論は、これから社会的に、私たちが思っている以上のスピードで進んでいくに違いありません。

各論②立憲民主党の自浄作用

さて、本稿は以上で締めても良いと思ったのですが、もうひとつ、紹介しておきたい考え方があります。

それは、立憲民主党側の自浄作用という論点です。

立憲民主党は選挙前、日本共産党や社民党、れいわ新選組との「野党共闘路線」を進めましたし、そのことで労組からも「日本共産党との閣外協力はあり得ない」と牽制されたりもしています(『連合新会長が立憲民主に「共産と閣外協力あり得ない」』等参照)。

総選挙が近づくなか、少し興味深い現象が発生しているようです。解散総選挙を目前にしたこのタイミングで、連合の新会長に就任した芳野友子氏が7日、連合の新体制に関する発表会見で、立憲民主党に対し「日本共産党との閣外協力はあり得ない」と述べたのです。現時点で、連合が具体的に立憲民主党に対する支持を撤回するのかどうかはわかりませんが…。立憲民主党はスキャンダル追及政党なのか衆院の解散・総選挙が近づくにつれ、世の中では選挙を意識した話題が増えてきたように思えます。こうしたなか、最大野党である立憲民主党の小...
連合新会長が立憲民主に「共産と閣外協力あり得ない」 - 新宿会計士の政治経済評論

言い換えれば、今回、立憲民主党は、選挙協力による候補者調整やマスメディアを味方につけた報道戦術などのマジックにも関わらず、議席を前回よりも落としたという言い方もできるわけであり、その意味では、枝野幸男代表、福山哲郎幹事長らの責任問題を回避することはできるのかが気になります。

つまり、立憲民主党の党内に自浄作用はあるのかどうか、です。

まず、代表自身がどうなのかについて判断するうえで参考になるのが、昨日のこんな報道です。

立民・枝野氏、2日までに代表職の進退判断

―――2021/11/1 12:36付 産経ニュースより

立憲民主党の福山幹事長が辞任検討

―――2021.11.1 12:16付 共同通信より

産経ニュースによると、枝野代表は1日午前、「代表職の進退について2日までに判断する」との考えを示したのだそうです。また、共同通信によると、同じく福山哲郎幹事長も「辞任を検討している」のだとか。

甘利明幹事長や麻生総理の場合は自民党総裁辞任を即決した

ただ、即日決断しない往生際の悪さ、自民党とは大きな違いがあります。

今回、甘利明・自民党幹事長は小選挙区で落選し、比例で復活しましたが、産経ニュースの報道によると、選挙の開票の最中には、すでに岸田文雄首相に対し辞意を表明していたそうです。

<独自>自民・甘利氏、幹事長辞任の意向を伝達

―――2021/11/1 01:05付 産経ニュースより

立憲民主党の福山幹事長は参議院議員でもあるため、今回の総選挙に出馬したわけではなく、また、甘利幹事長とは立場も違いますが、それでも甘利氏のここまで早い決断は、福山氏のそれとは本当に対照的でもあります。

そういえば、麻生太郎総理大臣の場合も、2009年8月31日、総選挙で敗北した直後にただちに記者会見を行い、「自民党は国民の皆さんの審判を厳粛に受け止める」、「必ず体勢を立て直して政権を奪還する」と述べ、潔く辞任すると表明しています。

こうした「負けを認める潔さ」が自民党の自民党たるゆえんであり、その潔さのなさが、立憲民主党の立憲民主党たるゆえんなのかもしれません。

ただ、そうなってくると、気になるのが2点あります。

1つ目は、枝野氏が引責辞任するのかどうか。

2つ目は、もしも引責辞任しなかった場合に、立憲民主党に何が起こるか、です。

ついでに言えば、日本共産党が議席を減らした際も、志位和夫委員長に引責辞任を求める声が日本共産党内で高まる、といった話題は寡聞にして存じ上げません。それどころか、昨日は産経ニュースに、志位氏が明確に自己の責任を否定したとする話題が報じられています。

共産・志位氏、辞任せず 衆院選退潮も責任論を否定

―――2021/11/1 19:57付 産経ニュースより

余談ですが、日本共産党という組織では、幹部は本当にまったくと言ってよいほど責任を取らないのですが、これを報じた産経ニュースを例外とすれば、日本共産党の幹部の身の処し方をオールドメディアが積極的に報じている様子もありません。

いずれにせよ、もしも枝野氏が辞任せずに居座るのだとしたら、立憲民主党の日本共産党化(つまり「立憲共産党」化)が進んでいる証拠と見るべきでしょうか。

立憲民主党は与党側からも「立憲共産党」などと揶揄されているとおり、少々、日本共産党に近付きすぎたきらいがあります。負けても引責辞任しないというのは、日本共産党、あるいは社民党などによく見られるパターンでもありますが、もしも辞任しなければ、立憲民主党の「立憲共産党化」がさらに進むのかもしれません。

いずれにせよ、枝野氏に代わって、フレッシュな代表が就任することになれば、それはそれで有権者に対するアピールにはなるかもしれませんが、現在の立憲民主党幹部の「代わり映えのなさ」に思いを致すならば、その可能性がどれほど高いのかは疑問でもあります。

世代交代論は出て来るのか

これに対し、自民党の側は、なかなか迅速です。

自民党は2009年の総選挙で敗北すると、すぐに麻生総理が自民党総裁を辞任し、自民党は体勢を立て直して翌・2010年の参院選を戦い、当時の民主党を過半数割れに追い込むほどに健闘しました。

立憲民主党・枝野氏に麻生総理と同じことができるものなのか、注目したいところです。

ただ、本稿で気になるのは、むしろ枝野氏が辞任しなかった場合に、立憲民主党内でどんな反応が生じるか、という点でしょう。

正直、今回の総選挙の結果は、民意が「立憲共産党」(あえてこう書かせていただきます)路線に「NO」を突きつけた、という意味であるようにしか見えませんが、枝野氏が辞任しなければ、立憲民主党が民意を真摯に受け止めていない証拠として、来年・2022年の参院選も危ぶまれるかもしれません。

そうなると、改選を迎える参議院側を中心に、「枝野おろし」という流れが生じる可能性は、どのくらいあるのでしょうか。あるいは、「枝野おろし」ではなく、政党交付金の算定基準日である1月1日に間に合うように、年内に立憲民主党を割るという動きが出てくるのでしょうか。

個人的には、「枝野氏が権力にしがみつく」、「枝野氏や福山氏は辞めるが、代わり映えのしない人罪が代表の座に就く」、といった展開を予想している次第です。

いずれにせよ、立憲民主党が変わることに対してはあまり期待せず、むしろ今回の衆院選を契機に、メディア利権と野党利権が同時に崩れ始めたのかどうかを見極めるほうに専念したいとも考えている今日この頃です。

新宿会計士:

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  • 今回オールドメディアの衰退を論じるのに、情勢判断と出口調査の大外しについての議論は欠かせないと思います。とうとう、彼らの武器である世論調査機能も錆びついてしまったのです。

    出口調査の結果は「自民単独過半数は微妙」でした。各社230台の数字をあげ、NHKに至っては210台から250台前半のとんでもなく広い幅で示したのにその幅を逸脱する結果が出てしまったのです。

    選挙中の情勢判断も基本どの調査も外す。朝日の中盤の調査だけ結果論として当たった感じですが、ただバイアスを自分でかけた結果としての「まぐれあたり」の可能性もあります。

    情勢判断も実はちゃんと数字は出ていました。比例代表で自民70議席程度と自民の好調さはこっそり出ていました。ただ、その状況を「独自の取材」とやらで歪めてしまった感じです。確かに、有力候補者が苦戦という状況があって、それに流されてしまった仕方ない面はあります。ただ、それは実は「特定の有力者の選挙区だけが不振」という状況だったのです。

    世論調査はオールドメディアがネットと差別化するためのツールです。これが失われたとすれば、これは本当にオールドメディアが凋落してしまう一歩になります。

    多分オールドメディア内に強烈な危機感はあるでしょう。ただ有効な手は打てないように思います。

    今回は幸いにして?起こりませんでしたが、今後は当選確実の打ち間違いとかも起こりうると思ってます。

    NHKはなんか不貞腐れたのか翌朝の報道でも地震の話を優先したりしてましたね。バツの悪さを感じてはいたのでしょう。

  • うさんくさい言説を垂れ流した挙句、(朝日新聞を例外にして)議席予測すらまともにできないオールドメディアはもうおしまいですね。
    ますます視聴率は落ち、新聞は売れなくなるでしょうから、新宿会計士様がかねてから話題にされていた毎日新聞や、今年春に大きな話題になった東京スポーツのほかにも、1年以内に経営難で話題になる新聞社やテレビ局がでてきそうな気がします。

  • (まじめに予想しました)
    自由民主党:辞意表明
    立憲共産党:自慰表明

    •  >自慰表明

       自転車のサドルに「アレ」をぶっ掛けるのでしょうか(爆笑)。

       https://www.sankei.com/affairs/amp/180605/afr1806050016-a.html

  • マスゴミと特定野党は、中朝工作機関。
    国民は、それから離れるかもしれないけど、彼らは工作がお仕事だから、変わらないでしょう。

    自民党と立憲共産党の差は、責任を取るという姿勢の違いだと思います。
    彼らが政権を取った時も、責任を取らない政権になるでしょう。

    茂木さんが幹事長になるようで、外相ポストは一旦岸田首相が兼務という報道です。
    一人、外相にぴったりの元首相を知ってるけど、教えないニダ。

  • 素朴な疑問ですけど、議席減少率がもっとも高い共産党の党首の党首交代はないでしょうか。もっとも、(立憲民主党の党首交代をしたくないので)立憲民主党が、「野党共闘の効果があったので、共産党も(そして立憲民主党も)党首交代の必要はない」と言い出す可能性もありますが。
     駄文にて失礼しました。

    • 共産党には言論の自由は無いので、志位氏の責任論は出て来ないでしょう。結局は中国と同じで、幹部批判は自動的に粛清されるのが共産党の歴史であり志位局長・委員長としての30年の牙城だと思います。その点においては、立憲共産党の方が少しはマシだと思います。

  • 今回メディアが議席数の予想を大きく外したことについて、東洋経済(Web版)で興味深い記事が出ていた。
    (「自民苦戦?」テレビの出口調査が大外れだった訳 当日20時予想より自民は多く、立民は少なかった)
    内容は、メディアの予想は出口調査の結果に基づいているのだが、そもそも出口調査に応じて自分の投票内容を明かす人はリベラル寄りの人ということらしい。メディアはこの傾向に気づいていて、補正をしているのだが、今回はそれもむなしく大外れだったということ。
    これは無作為に電話をして行う世論調査にも当てはまるのではないだろうか。
    であれば、メディアの行う世論調査とはリベラルな人たちの意見を反映したものに過ぎないのではないだろうか。つまり世論でも何でもないということ。

  • 私が最も恐れるのは、凋落していくメディアが作戦を変えて、現状自民下げ、野党上げは継続しつつ、自民党内に第二の石破を作ることだと思います。
    いわゆる「獅子身中の虫」です。

    残念ながら自民党も一枚岩ではなく、河野や小泉のような石破「原石」が存在します。彼らを担ぎ上げて、目的を達成しようとするのではないでしょうか。
    利権も厄介ですが、獅子身中の虫もかなり厄介のように思います。

  • 「利権」
    の例としては、
    「留学生の奨学金」利権と
    「私大学」利権
    「宗教法人」利権
    「男女共同参画」利権
    の追加をお願いします。

    特に、留学生には無償奨学金が与えられるのに日本人学生には奨学金ローンが課される現在の状況は極めて不合理です。

  • 今回のマスコミの敗北について、注目したいのは出口調査です。
    世論調査は「電話」「働いている時間帯」など、方法に問題があることも考えられます。
    しかし、出口調査は出てくる人に直接声をかけるので、方法論ではありません。
    『協力してくれるかどうか』で決まります。
      ・『情報を取れる人達』のマスコミ不信が進み、協力が得にくくなった。
       そのため、『情報を取れる人達』の投票行動が出口調査に反映されにくくなった。
      ・『情報を取れる人達』とそうでない人達の投票行動には明確な傾向があった。
      ・マスコミ不信の『情報を取れる人達』の数は多く、調査結果に大きな影響を与えた。
    ゆえに出口調査の大きなズレは、マスコミ不信の広がりの現れと思うのです。

    • 矢塚様
      午後8時時点の議席予測がここまで大ハズレだったのは記憶にないですね。
      実際に情報を取れた人達と、そうでない人達の投票行動には明確な差があったということでしょうか。
      マスコミ不信の『情報を取れる人達』は、回答を拒否したかウソを答えた人もいるでしょうし。

      • インターネットで幅広く情報を取れた人の中で「マスコミは信用できない」「立憲共産党には投票できない」と、同時に考える人が増えたのではないかという推測ですね。

        sqsq様が「補正が追い付かなかった」ことに言及されていましたが、補正値は過去の実績から算出すると思います。大きくずれたということは、調査対象者の行動が『今回は大きく変化した』ということでしょうね。

  • 今回、大手メディアが大きく予想を外したことについては私も関心があります。今までは、開票が始まったばかりなのに、そこまで分かるの?というくらい各社の予想精度は高かったように思います。それがNHKですらあの体たらく。今回、何が起こったのか起こらなかったのか、何が有ったのか無かったのかの分析は、或いは、選挙結果そのものよりも重要かもしれませんね。

    今は、世界全体が同時・長期にわたる感染症に苦しんでいますが、何か、大きな流れの方向が変わりつつあるのか、はたまた何か既存の基盤的なものが流動化し始まったのかも知れません。今次衆院選は、そんな中での国政選挙でしたが時代の大きな流れにおける屈折点になるような気もします。もっともその、来るべき未来がどんなものかは良く分かりませんが。

    • haさま

      >何が有ったのか無かったのかの分析は、或いは、選挙結果そのものよりも重要かも
      >時代の大きな流れにおける屈折点になるような気も

      同意見です。
      「変化を起こしようがない」立候補集団たちが「すっかり飽きられて」投票者から却下を喰らったのではないかと考えます。革新? なんでしたっけー、カビ生えてませんかそれ。

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