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韓日ビジョンフォーラム、相変わらず「日本も努力を」

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、不定期で掲載されているシリーズのひとつが、「危機の韓日関係・連続診断」というものです。この会合、「韓日ビジョンフォーラム」なる組織が主催しているようです。自称元慰安婦に関する主権免除違反判決後、初めての会合が持たれたようですが、毎度ながら「日本も韓国に配慮しろ」という、まことに手前勝手な議論が展開されていて、正直、お話になりません。

対韓制裁論の本質は「約束破りのコスト負担」

まだ詳細は明かせませんが、現在、「対韓制裁論」についての当ウェブサイトの議論をまとめている作業の最中です。

ここで、「対韓制裁論」とは、韓国の「逃げ得」を許さず、「韓国による度重なる約束破りのコストを韓国に負担させるべき」とする考え方のことであり、昨年12月に掲載した一連のシリーズで展開しました(ちょっとした書籍くらいの分量があります)。

対韓制裁論

日本の「対韓譲歩論」≒韓国の「用日論」

こうしたなか、当ウェブサイトなりの問題意識のひとつは、日本の側で蔓延する「対韓譲歩論」のようなものと、韓国の側の「用日論」が、ひとつのセットになっているのではないか、という仮説にあります。

「対韓譲歩論」とは「日本が原理原則を多少捻じ曲げてでも韓国に譲歩した方が、日韓両国にとってはなにかと都合が良い」などと考える勢力のことです。今日、日韓関係が破綻の危機に瀕している遠因のひとつも、こうした日本側の「ちょっとした譲歩」の積み重ねにあるのでしょう。

もっとも、日本側でこのように考える勢力がいるという事は、韓国側にも日本側に譲歩を迫り、不当に安い対価で日本の技術や資本を得ようと考える勢力がいる、ということでもあります。そのような勢力のことを、当ウェブサイトでは「用日派」と呼んでいるわけです。

ただし、昨今の日韓関係の悪化にともない、さすがに日本国内でも「対韓譲歩論者」の発言力が低下しています。やはり、自称元徴用工判決や主権免除違反判決のような国際法違反のデタラメ判決に対しては、これ以上の譲歩はできないからです。

そうなると、当たり前のことですが、こうした日本側の態度の変化により、困る人たちが出て来ます。それがまさに「用日派の面々」なのです。

たとえば、主権免除違反判決(1月8日)以降に限定しても、ソウル大学国際大学院の朴喆煕(ぼく・てつき)教授は、「韓日の指導者は度量の大きな取引をしてほしい」などとする、なかなか強烈な主張を展開しました(『韓国「保守派」の悲鳴「韓日関係で日本は度量を示せ」』参照)。

また、「世宗研究所」の陳昌洙(ちん・しょうしゅ)主席研究員も、「このまま韓日関係が悪化すれば韓日断交の危険性もある」などと危機感を示す主張を展開しています(『韓国人研究員「このままだと日韓断交の可能性もある」』参照)。

ただし、これらの主張を読んでいてつくづくウンザリするのは、彼ら「用日派」は、この期に及んで日韓関係破綻の責任が「日韓双方にある」、などとする前提を置いているフシがあることです。

もちろん、とても当たり前の話ですが、日韓関係破綻は可能な限り避けるべきです。なぜなら、日韓関係が破綻してしまった際には、経済面でも外交・安全保障面でも、かなりの打撃が日韓双方に生じかねないからです。

しかし、それと同時に大事なことは、自称元慰安婦問題にしろ、自称元徴用工問題にしろ、日韓関係を破綻させようとする動きはすべて韓国の側から出ているのであって、それらの事態を収拾する責任は、第一義的には韓国側にある、という点でもあります。

日本にとっては、日韓関係破綻はできれば避けたいところではありますが、「日本があらゆるコストを支払ってまで、何がなんでも避けるべき」、というものではないことは間違いないでしょう。

中央日報、懲りずに第21回目を掲載

さて、なぜそんなことを申し上げるのかといえば、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、こんな記事が掲載されていたのを発見したからです。

<危機の韓日関係、連続診断21>文政府の対日政策転換意志、実践で見せてこそ=韓日ビジョンフォーラム(1)

―――2021.01.29 10:57付 中央日報日本語版より

記事タイトルにある「危機の韓日関係・連続診断」は、中央日報に連載されている「韓日ビジョンフォーラム」なる会合の記録だそうです。「韓日」、と名乗ってはいますが、この会合に日本人の名前は見当たりません。

それはともかくとして、リンク先記事は長々とさまざまな韓国人学者らの見解が述べられているものの、端的にいえば、「用日派」、つまり「韓日関係が破綻しそうになっている局面で、日本も韓日関係破綻を回避すべく、努力しなければならない」といった主張が盛り込まれています。

お粗末というほかありません。

ちなみに今回の「テーマ発表」を担当したのはは李元徳(り・げんとく)国民大学教授だそうですが、自称元慰安婦に関する主権免除違反判決について、次のように述べます。

韓日葛藤の根本原因は『65年体制』の限界から始まっている。1965年韓日基本条約締結の時、植民地の歴史を『すでに無効(already null and void)』とし、歴史認識の隔たりを相互了解する形で縫合したためだ。このような状況で、日本は植民地不法性を認めて、韓国は法的賠償をあきらめる韓日間大妥協を模索するのが一案になりうる」。

要するに、日韓基本条約で解決した問題をもう一度蒸し返せ、というわけですね。お話になりません。

ただ、「お話にならない」のは、李元徳氏だけではありません。

たとえば、聖公会大の梁起豪(りょう・きごう)教授は、「日本はこの判決を巡って韓国を叩くべきではない」などと述べていますが、「叩く」もなにも、日本政府としては「国際法に違反した判決を是正してください」と述べているだけのことでしょう。

結局は慰安婦問題というウソをどう粉砕するかという問題に

こうしたなか、大韓弁協人権委員長の申鉉昊(しん・げんこう)氏は、今回の主権免除違反判決を巡って、次のように述べます。

慰安婦問題は戦争や武力衝突過程でやむを得ず発生した事件ではなく、平和的な場所で人を拉致して慰安婦に配置した事件だ。国家がいつでも主権免除で免責されることはできないという解釈は、今後他の国にも援用可能な論理だ」。

これこそ、当ウェブサイトでくどいほど繰り返している、「慰安婦問題というウソに日本が敢然と反論しなかったこと」の弊害でしょう。

実際、慰安婦問題については、全世界において「日本軍が第二次大戦中、朝鮮人少女20万人を性奴隷状態に置いたという重大な人権侵害」と認識されてしまっています。やはり、この「慰安婦=性奴隷」という韓国のプロパガンダについては、(場合によっては韓国ごと)粉砕しなければなりません。

その意味で、慰安婦問題とは、「韓国にちょっと譲歩する」ということを繰り返してきたこの失敗が凝縮された問題だ、という言い方もできるのではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (36)

  • 韓国側が勝手に日本の罪を作り出します。
    根拠も証拠も無いですが、事実と言うことにします。
    それに反論すると、歴史を認めない、反省のない奴らだと言ってきます。
    誰も相手にしなければいいのですが、こういう話が好きなリベラル系が必ず乗っかってきます。
    国内だけでなく欧州などもです。
    ずっとこの繰り返しです。
    無限ループです。
    でも、声を大にして否定すると、今度は中共やロシアがアップを始めます。

  • 日本側からは一人も参加していないのに、なぜだか「韓日ビジョンフォーラム」と僭称するという恥ずかしいネーミングセンスは韓国ならではものではないでしょうか。

    この感覚は、平然と嘘八百を並べ立てることのできる韓国人の精神のありようと、どこかで通底しているものではないかと考えております。こういう身内だけのの集まりで、このような発言を発信し続けることによって、世界や日本がどう感じるのだろうかという、人としての配慮がまったく感じられません。

    また御自分達の発言にどれほどの信憑性があるのかないのか、知らないまま他国を誹謗し続ける行為とその姿勢には、もはや怒りを通り越して哀れみすら感じてしまいます。

    やはり、我々日本人はこうした「亜細亜東方の悪友を謝絶すべき」なのかもしれません。

  • 毎回この記事楽しみにしてます。
    こういうの日本じゃ「内弁慶」っていうんですよ。あぁこんなこと日本に言えたら気持ち良さそうだなぁって発言ばかりです。

    私が今回注目したのは慰安婦合意のときの外相(本当か知りませんがヅラとか言われてた)のコメントが出てたことです。大丈夫かなあのお方生きてるかなとか心配してました。(1)の最後にコメントあったので、思わず(2)まで続くのかと期待しちゃいました笑

  • この頃ずっと『閉ざされた言語空間』の事を考えて居ります。これは大東亜戦争開始時からアメリカが着々と計画していたモノで、真珠湾の翌日ぐらいから迅速に始められた一連の言論統制です。日本軍から奪回した欧米旧植民地などでも次々と実施され、満を辞してポツダム宣言受諾と前後して日本でも実施され、大変な陣容で、日本ばかりでなく台灣や朝鮮半島もこの市場最大のプロパガンダ作戦に置きました。
    このプロパガンダが朝鮮半島にも及んだという事が、どの様に作用しているのか? つまり今はアメリカ自身さえ韓国には手を焼いている訳ですがその一端はアメリカが撒いた反日プロパガンダにもあるのでは無いか。金日成が両班の帽子の紐を云々と述べたと言う話もありますが、金日成一族やその労働党勢力の知謀と工作の結果だけでこうはならなかったのでは無いか。
    それこそ西側諸国のショーケース国として甘やかされ、鈴置氏の指摘通りの事もあるのでしょうが。

  • >彼ら「用日派」は、この期に及んで日韓関係破綻の責任が「日韓双方にある」、などとする前提を置いているフシがあることです。

    「日韓双方にある」と考えているのは韓国の用日派だけではありません。

    1月27日の日本経済新聞社のコラム「一つの対中政策で結束を」に以下のような記述がありました。
    著者は、フィナンシャルタイムコメンテーターのフィリップ・スティーブンス氏です。

    >太平洋地域で米国の同盟関係の柱をなす日本と韓国は対中政策で結束するどころか、お互いの歴史上の傷をつつきあっている。
    >日韓両政府の利益が何かは明白なはずだ。

    どっちもどっち論ですね。お話になりません。
    また文政権の対中国政策についての理解もありません。
    もっと韓国について詳しく調べなさいと言いたくなります。
    ただ、アメリカやヨーロッパにはこのような認識の方がまだまだ多いのでしょうね。
    外務省の今後の広報活動に期待したいところです。

    広報活動には日本人ではなく外国のシンクタンクや研究者に歴史的事実や韓国政治の実態などを新聞や雑誌に掲載してもらう方が効果的ではないかとも思います。
    外務省のHPに掲載してお終いではお話になりません。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、韓国と同じく、自分は間違えない存在と自惚れそうなので)
     中世ヨーロッパでは、黒死病などの疫病の流行でそれまでの権威が疑われ、価値観が変化しました。ということは新型コロナの流行によっても、それまでの権威が否定されるかもしれません。ただし、その権威が日本中央政府の権威なのか、(すでになくなっているかもしれませんが)朝日新聞の権威なのか、リベラルの権威なのか、報道という権威なのかは分かりません。
     スレ違いで失礼いたしました。

  • いつも楽しみに拝見しております。
    ふと思ったのですが、貴殿はこのサイト又はご意見を英訳してるのでしょうか?
    当方はネット事情、貴殿の数字による考察、論証を自分自身の力で検証する能力はございません。何度読み返して検証しようにも、どうも最初から躓き、先に進まないのが現状です。パートナーに増税論者の嘘を説明したのですが、(貴殿の論証を参照に)、が、突っ込まれた言葉への反論がまだまだ出来ません。数字、経済に弱い自分を恥ずかしく思う日々です。
    前置きが長くなりましたが、貴殿の論証の数々は実に読み応えがあり、他のサイトとは一線を画しており、納得させられる部分が数多くあります。
    そこで質問なのですが、これは英語で世界に発信出来ないものでしょうか?少しでも論理的に考えれる思考のある方ならば、国籍問わず閲覧する価値があり、客観的に韓国を考察出来る優秀なツールだと思っています。
    近年のお隣の不法行為に怒り心頭の当方です。ですがなにぶんお隣は声が大きく、且つ日本の外交では事なかれ主義が蔓延し、子供、孫世代にもこの二次被害が発生すると思うと本当に、うんざりします。
    当方も子がおりますので他人事ではありません。
    サイト主様の英訳が世界で公開されていたらご教授願いたいです。
    もし、日本国内だけでの配信でしたら非常に勿体ないです!これほど数字を用いて(用いなくても)、客観的にお隣の不法行為の数々を論破出来ている数少ないサイトだと思っています。
    ウェブ事情やその他規制等色々あるかもで、あくまで他人事として話している事は申し訳ございません。
    当方も投資を様々しておりますので、せめて経済用語には強くなりたいと思って日々勉強中です。明らかに浅学の知識で投資をしていますので、成果についてはお応え控えさせて頂きますが(笑)
    もし今後、英文での同内容のコンテンツを開く事をお考えならば、是非是非拝見させて頂きます。(数字はダメですが英語は何故かスラスラ読め、ペラペラなんです(汗))
    今後も毎朝楽しみにしております。お身体ご自愛下さいますよう、お祈り申し上げます。

    • かーぴー様へ
      >そこで質問なのですが、これは英語で世界に発信出来ないものでしょうか?
      (自分でも、まさかと思いますが)そうなりそうなら、メンツが潰される朝日新聞が、全力で妨害してくるでしょう。
       駄文にて失礼しました。

    • 一般論としてですが、英語にしたからと言ってさして読者は増えないと思います。これだけの文章、相当に興味がなければ読みません。そもそも自分関係ない2国間関係に興味を持つ人なんているでしょうか?いや、韓国人の振る舞いがよほど滑稽とかそういう興味の持ち方はあり得ますが。

      例えば我々アメリカとメキシコの関係とかに興味ありますか?なんか色々ありそうですけど興味はないですよね。アメリカ人はじめ英語圏の人たちにとっての日韓関係なんてそんなもんです。なんか韓国人が意味不明で怒ってるからと適当に謝ってしまったものを全て「世界は韓国の味方」って韓国人が宣伝しているだけなのです。

      韓国人は日韓関係についてたくさん英語で発信しています。なんのためにやっているか。英語圏の人に韓国の味方になってもらおうと言うのでは「ありません」。英語化したものを日本に見せつけて「世界に宣伝しているぞ、このままだと世界が我々の味方になるぞ」と脅すだけのためにやってます。だーれも英語圏の人は興味ないですよ。

      まあ、韓国人に見せつけるために英訳発信する。面白そうではありますが、新宿会計士さま自身がやるべきかは微妙ですね。韓国人並みに性格悪い誰かが企画するかもしれません。

      ちなみにここのサイト韓国人は翻訳して結構読んでると思いますよ。興味があるから。今時Google翻訳とかありますから興味ある人にとって何語で書かれてるかとかあまり関係ないのです。

      • >例えば我々アメリカとメキシコの関係とかに興味ありますか?なんか色々ありそうですけど興味はないですよね

        そうなんですよね。NewsweekやAFP 通信を読んでも、韓国が日本に対して理不尽事を言ってる、というような記事はほとんどありません。韓国国内での事件や話題、日本国内での事象は記事になってますが、国交断絶にもならない限り日韓問題は大した記事にはならないでしょう。

        2008年のロシア⋅グルジア戦争でロシアは陸、海、空軍総動員で大きな戦争がありましたが、今の日本人で覚えてる人が何人いるでしょう?2019年にはフランスの駐イタリア大使は召還されました。それらの事実をそもそも日本のマスコミは大きく報道してたでしょうか?
        悲しいですが現実はそうです。
        かといって日本は韓国との争いには一歩もひいてはなりませんがね。

  • もはや、被害妄想という病気ですね。 いちいち論ずるに足りません。
    もっとバックボーンがしっかりしたものはないのでしょうか。大学教授が述べたものからして「度量を持て」とか結論が精神論では期待するほうが無理なんでしょうね。

  • >「慰安婦問題というウソに日本が敢然と反論しなかったこと」

    中央日報で「韓日ビジョンフォーラム」があるなら、逐一その論を粉砕するカウンターとして「日韓ビジョンフォーラム」を何処かの新聞が掲載されると面白いと思います。
    メンバーには是非、鈴置さんを入れていただいて。

  •  韓国人と慰安婦や竹島の話しをしても、全く議論になりません。激昂し喚き散らし、人の話は一切聞かず、反論できなくなると逃げます。

     韓国人にちゃんと聞いたことはないのですが、慰安婦、竹島、徴用工の真実を知っている韓国人もいそうです。それでも、他の韓国人の前では日本人に味方をする人はいません。恐らく「面倒臭い」、「仲間外れになる危険性」、「日本に対する悪意や嫉妬」等が理由だと思われます。真実を知っているのに口を閉ざすのは卑怯です。

     文在寅大統領の悪口や批判はかなり多く聞きました。その何人かに投票したかどうかを聞くと、半分以上が選挙に行ってないそうです。選挙にも行かずに批判するのは責任転嫁も甚だしいです。選挙に参加した国民が批判するのならまだしも、選挙に行きもしないで悪口や責任追求は自らの責任を他者に転嫁している事を韓国人は気付くべきです。
     ちなみに「選挙に行きもしないで、大統領批判は変じゃないか?」と聞くと韓国人は黙ります。

     韓国人が「お互い悪い」という場合や、「両方に責任がある」と言う場合には、殆どが自分にのみ落ち度がある時です。このフォーラム参加者もある程度は韓国の責任に気付いていると思われますが、国内での立ち位置や利権が絡むので、このような発言をするのでしょう。正直、反日信者よりタチが悪い連中です。

     駄文にて失礼します。

    • 日本人が韓国の飲み屋でそのような話をして大丈夫なんですか。 昨年は韓国内で老人が日本統治時代の方が良かったと若者と議論になり殴り殺されたニュースを聞いた記憶があります。

      ちなみに、家内とケンカするとき理屈からすると明らかに自分に非があり勝てないことが分かっている場合には、最初から激昂し喚き散らすことにしています。

      • >自分に非があり勝てないことが分かっている場合には、最初から激昂し喚き散らすことにしています。

        令和の時代の「星一徹」はスゴ過ぎですね(笑) ある意味、尊敬致します。 まあ、平時は奥様にアマアマだから許して頂いているのでしょうか?

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