メモ RCEPは関税だけでなくルールの協定でもある

先日から巷間をにぎわせているFTA、EPA、RCEPについて調べているのですが、本稿はちょっとした「メモ」です。

日本政府は昨日、「地域的な包括的経済連携」(通称「RCEP」)に署名しました。これにともない、外務省の『我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組』によると、日本が諸外国と署名した経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)は、21本となりました。

内訳は、個別国・地域とのEPAが17種類、FTAが1本、今回のRCEPを含めた多国間の協定が3本だそうです(図表)。

図表 署名済みのFTA、EPA、地域経済連携協定
区分概要具体例
FTA特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定日米貿易協定・日米デジタル貿易協定
EPA貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定日欧EPA、日英EPA、日印EPA、日・ASEAN-EPA など17ヵ国・地域と締結
多国間の協定FTAやEPAについて、地域でまとまって参加するものTPP12、TPP11、RCEP

(【出所】外務省『我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組』、経産省『TPP、EPA、FTA・・・何が違う?』等を参考に著者作成)

ただし、外務省『地域的な包括的経済連携(RCEP)協定への署名』によれば、今回のRCEPではインドが参加を見送ったこともあり、ASEAN10ヵ国、日豪NZ中韓の合計15ヵ国での発足としつつ、15ヵ国は「インドの将来的な参加は『開かれている』」とする閣僚宣言を出しています。

また、EPA、FTAなどのうち、現在交渉中のものが、トルココロンビア両国とのEPAと、日中韓3ヵ国のFTAの3本であり、交渉中断中のものが湾岸諸国(GCC)とのFTA、日韓EPA日加EPAの3本だそうです。

なお、今回のRCEPでは「関税撤廃」などに焦点が当たっているようですが、個人的に重要だと考えているのは、これら15ヵ国におけるルールの明確化です。

外務省が発表した資料によれば、「原産地規則」や「税関手続・貿易円滑化」、「衛生植物検疫手続」、「貿易上の救済」、「投資」、「自然人の一時的な移動」など、15項目のルールが盛り込まれています。そのなかでもとくに気になるのは、「紛争解決」です。

これは、当該EPAの解釈・適用に関する締約国間の紛争を解決する際の協議、パネル手続等について規定したもので、日本が某国に対し、紛争を解決するための手続を持ちかけても無視されたという事例を思い起こすならば、多国間が参加する協定できちんと紛争解決について規定することは有益です。

条文を読んでいると、とくに弁護士や公認会計士などの資格の相互承認に向けた動きを奨励する条文となっているなど、気になる点もないわけではありませんが、それでも今回のRCEPについては、一部の国に対し、「きちんとルールを守らせる」という効果が期待できる、ということではないかと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

     独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、素人考えなので)

     RCEPは日韓貿易関係に影響しますが、中豪貿易関係にも影響するのではないでしょうか。

     駄文にて失礼しました。

  2. カズ より:

    ・規則は他の者に守らせるためにある。
    ・都合が悪くなれば反故にしてもいい。
    ・明文化されてることだけ守ればいい。

    参加国の中には、損得勘定が行動原理の総てだったり、明文化されてない事項はご都合主義の解釈をしかねない国が含まれています。

    他の解釈の余地がないくらいの注釈と、罰則規定も含めた厳密な運営が必要なのだと思います。

    1. 阿野煮鱒 より:

      > ・規則は他の者に守らせるためにある。
      > ・都合が悪くなれば反故にしてもいい。

      この二つが朝鮮人の行動原理ですから

      >・明文化されてることだけ守ればいい。

      これはあり得ないでしょう。
      実際に、日韓基本条約、日韓請求権協定は明文化されているのに、多年にわたって自国民に隠してきた上に、自称徴用工裁判で破られてしまったのですから。

      彼らにとって、明文化など何の意味もありません。

      1. カズ より:

        ご指摘のとおりですね。

        インドが加わるとの先入観のままに書いてしまいました。
        「インドの参加は見送られた」と本稿で取り上げられてたにもかかわらずです・・。

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    遵法精神の無い韓国が加わった時点で、底抜けの協定になりはしないか、気になります。RCEPで約束事を破ったら、即退会処分にすべきです。RCEPで日本の意見に賛意を示してくれそうなのは、日、豪、NZ、プラスASEAN3〜4か国かな。きびし〜!

  4. 元左派系?の初老 より:

    新宿会計士 さん、理解力不足で悪い様に考える悲観論者の傾向がある私にとっての、正しき教科書となる様な解析解説の継続的続編宜しくお願いします。
    なにせ、協定無視/協定利用すべきの軍事国家(ともう一つ)相手ですから、本当に宜しくお願いします。
    自ら努力する事を放棄していますが、ご容赦の程を。

  5. だんな より:

    新宿会計士さま
    このスレを知らずに、コメントしてました。
    ぶっちゃけ、RCEPに付いては、長い間反対していました。
    日本政府は、これでルールを中韓に守らせると考えているんだと思います。
    中国は、これで中国中心の経済圏を作る。後は一帯一路アルと考え、韓国は隠れ蓑ができたニダと考えているんじゃ無いかなぁ。
    まあ、中韓とは約束した時点で、無かったものとして、考え無いとならないでしょうね。

  6. 農家の三男坊 より:

    中・韓を入れたRCEPは日本にとって何かメリットがあるのでしょうか?
    CPTPP拡大の邪魔になるだけだと思うのですが。
    菅さん2Fを上手くコントロールできない様では短命政権になりそう。

  7. 迷王星 より:

    RCEPはインドが加盟しないのですから日本も加盟を見送るべきでした。

    RCEPを結べば中韓にルールを守らせることが出来るなんて、刑法を定めればこの世から犯罪を無くせる(あるいは少なくとも犯罪を犯した者を漏れなく必ず処罰できる)と考えるのと同レベルの空理空論ですね。

    率直に言って日本政府には失望しました。RCEPに日本が参加するのは共産チャイナを利し対中貿易赤字を更に増やす結果になるだけだと予言しておきます。オバマアメリカの仲介による韓国との慰安婦合意よりも遥かに失望しました。

  8. 匿名29号 より:

    現在、日本の一番の貿易相手は中国であり、韓国との貿易額は全体の約10%にのぼるとか。これらの国の関税を下げさせるのは日本にとってメリットはあると思います。ただし相手がルールを守ればの話ですが。
    同時に購入時に技術供与を含めることを禁止した条項を入れたのは、個人的には一番評価しています。米国に高いライセンス料を払い勉強して日本が発展させた技術をタダであげるようなもので、今まで苦い思いをしてきました。

  9. H より:

    ルールは破る為にある国を他国間の
    ルールに封じ込めた事は一定の評価が
    出来るのではないでしょうか

    ルールを破った際の対応がカギではない
    でしょうか、破るだろう事まで考えて
    いるとすれば…

    おもいっきり殴ってやればいい
    大義名分ができた、と考えれば悪くない

    1. 迷王星 より:

      失礼ながらHさんの最後の2行は全く甘い子供じみた空想ですな。

      日本が共産チャイナ相手に思いっ切りぶん殴れる国なら苦労しませんよ。

      尖閣諸島周辺海域だけでなく小笠原海域や大和堆といった我が国のEEZでも、違法操業を続けるチャイナの漁船一つ追い払えない情けない政府が、貿易ルールを破ったからといって思い切り殴れるなんて現実には全く有り得ない妄想ですね。

      国同士の約束を破るのを繰り返し日本を貶め続けている韓国相手に露骨な嫌味の一つさえ言えない政府が全ての面で韓国よりも桁違いに力のある共産チャイナ相手に殴れるなんて子供並みの空想や願望にしても現実離れし過ぎている。

  10. リャンピ より:

    これに反対する意見の方々は、ネット上でも多く見受けます。
    自分も心配です。

    ただ、日本が参加しなければ、ASEAN諸国は中国に引っ張られてしまいます。ASEAN諸国の中には、日本にリーダーシップを取って欲しいと期待している国も多く存在しています。
    日本としては、これに参画しないことによるデメリットの方が大きいと判断したと思います。
    その判断に対しては、私も肯定いたします。
    しかし、難儀であろうことは想像できます。
    頑張るしかありません。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。なお、コメントに際しては当ウェブサイトのポリシーのページなどの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。