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カネの絶大な力を生かす、国益に合致したスワップ外交

カネの力は、ときとして軍事力を上回ります。日本国憲法などの制約により、なかなか軍事力を保持したり、行使したりするのが難しい日本にとって、150兆円にも達しようかという巨額の外貨準備、あるいは世界で3番目に取引されている日本円は、使いようによっては武器となり得ます。マレーシアとの新規通貨スワップについては昨日の『日本とマレーシア、30億ドルの通貨スワップで合意』で速報しましたが、本稿ではもう少し踏み込んで、「武器としての通貨の活用」について考えてみたいと思います。

スワップあれこれ

スワップの樹形図

以前の『あらためてスワップについてまとめてみる』などでも解説した触れたとおり、スワップ協定とは、通貨当局同士が協力して通貨を融通し合う協定のことです。

大きくわけて通貨スワップと為替スワップがあり、また、通貨スワップには二国間のものと多国間のものがあります。さらに二国間通貨スワップについては、国際的に通用する通貨と交換可能なスワップと、自国が発行している通貨のみと交換が可能なスワップにわかれます。これを図示しておきましょう。

スワップ
├通貨スワップ(Currency Swap Agreement)
│ ├二国間通貨スワップ(Bilateral Currency Swap Agreement)
│ │ ├国際通貨建ての二国間通貨スワップ
│ ├ └自国通貨建ての二国間通貨スワップ
│ └多国間通貨スワップ(Multilateral Currency Swap Agreement)
└為替スワップ(Bilateral FX Liquidity Swap Agreement)

もちろん、この図示は、あくまでも当ウェブサイト独自のものであり、日銀を含めた各国中央銀行の表記にはさまざまな揺れも見られる点には注意が必要です(たとえば日銀は為替スワップのことを英語で「自国通貨建ての二国間通貨スワップ」などと表記している事例があります)。

最も使い勝手が良いのは「二国間国際通貨建て通貨スワップ」

ただし、米国をはじめ、世界各国の中央銀行・通貨当局などが提供しているスワップの種類について確認していくと、やはり上記のような分類が最も正確だと考えて良いでしょう。これらのスワップの違いを選択肢で示すと、次のとおりです。

  • ⓵契約に参加しているのは2ヵ国か、それ以上か?→多国間であれば「多国間通貨スワップ」、二国間であれば「二国間スワップ」
  • ②二国間スワップの場合、外貨を入手するのは通貨当局か、民間金融機関か?→外貨を入手するのが民間金融機関であれば「為替スワップ」、通貨当局であれば「二国間通貨スワップ」
  • ③二国間通貨スワップの場合、入手できる外貨はお互いの国の通貨か、国際的に通用する通貨か?→お互いの国の通貨しか入手できないものは「二国間自国通貨建て通貨スワップ」、国際的に通用する通貨が入手可能なものは「二国間国際通貨建て通貨スワップ」

そして、これらのスワップのうち、最も使い勝手が良いスワップとは、「二国間国際通貨建て通貨スワップ」でしょう。なぜなら、二国間であるため、国際社会を大々的に巻き込まないで済むことが多く、さらには、イザというとき(通貨防衛などの際)に必要な外貨が入手できるからです。

これに対し、「二国間自国通貨建て通貨スワップ」は、さほど使い勝手が良いとは言えませんし、とくに弱小通貨同士の通貨スワップは中小企業同士の「融通手形」のようなであり、正直、百害あって一利なしです。

というのも、お互いの自国通貨しか引き出せないタイプの通貨スワップは、多くの場合、通貨防衛などに使うことができません。あるいは、下手に通貨防衛に使おうとしたら、相手国の通貨の価値を暴落させてしまうこともあるからです。

CMIMや為替スワップ

次に、多国間通貨スワップは二国間通貨スワップと異なり、多数の国が参加しているスワップであるため、ある国がスワップを引き出そうとすれば、その国が多国間通貨スワップ参加国に頭を下げて回る必要がありますし、無駄にプライドが高い国だと、そのスワップを使うのが難しい、という事例もあるでしょう。

一方、通貨スワップと為替スワップの最大の違いは、「誰が通貨を入手するか」、という点です。

通貨スワップの場合は外貨を入手するのはその国の通貨当局ですが、為替スワップの場合は「外国の民間金融機関に対し、自国通貨の流動性を直接供給する」という性質があります。このため、為替スワップを通貨防衛などに使う、という使い方はできません。

たとえば、今年3月に米国の事実上の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が9ヵ国・地域の外国中央銀行・通貨当局(FIMA)と締結した時限的なスワップは、いずれも通貨スワップではなく、為替スワップです(ほかに日英欧瑞加5ヵ国と常設・無制限の為替スワップもあります)。

したがって、14のFIMAがこれらの為替スワップを使って米ドル資金を引き出すためには、その14のFIMAが管轄している民間金融機関において、米ドルの資金需要がなければなりませんし、あくまでも「ターム物ローン」なので、満期が到来したら利息をつけて返済しなければなりません。

もちろん、為替スワップのなかでも米ドル建てのものはある意味で非常にパワフルかつ有用なスワップではあるのですが、用途が限定されているため、やはり恒常的な外貨不足に悩む国であれば、使い勝手は今ひとつ、といったところでしょう。

各国のスワップの現状

マレーシアとの通貨スワップで15本目

さて、『日本とマレーシア、30億ドルの通貨スワップで合意』で速報しましたが、財務省日銀によると、日本とマレーシアは18日、二国間通貨スワップ協定を締結しました。

しかも、日本がマレーシアと締結したスワップは、「それぞれの自国通貨を米ドルに交換することが可能な協定」であるため、一種の「ハード・カレンシー建ての通貨スワップ」であり、最も強力な部類に属するスワップのひとつです。

あらためて、日本が現在、諸外国と締結しているスワップについては、多国間通貨スワップである「チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定」(CMIM)を除くと全部で15本存在しており、このうち9本が為替スワップであり、残り6本が通貨スワップです(図表1)。

図表1 日本が諸外国と締結しているスワップ一覧
契約相手 交換上限 相手から見た交換条件
米連邦準備制度理事会(FRB) 無制限 (為)日本円と米ドル
欧州中央銀行(ECB) 無制限 (為)日本円とユーロ
英イングランド銀行(BOE) 無制限 (為)日本円と英ポンド
スイス国民銀行(SNB) 無制限 (為)日本円とスイスフラン
カナダ銀行(BOC) 無制限 (為)日本円と加ドル
豪州準備銀行(RBA) 1.6兆円/200億豪ドル (為)日本円と豪ドル
中国人民銀行(PBOC) 3.4兆円/2000億元 (為)日本円と人民元
シンガポール通貨庁(MAS) 1.1兆円/150億シンガポールドル (為)日本円とシンガポールドル
タイ中央銀行(BOT) 8000億円/2400億バーツ (為)日本円とタイバーツ
インドネシア銀行(BI) 227.6億ドル (通)日本円または米ドルとインドネシアルピア
フィリピン中央銀行(BSP) 120億ドル (通)日本円または米ドルとフィリピンペソ
シンガポール通貨庁(MAS) 30億ドル (通)日本円または米ドルとシンガポールドル
タイ中央銀行(BOT) 30億ドル (通)日本円または米ドルとタイバーツ
マレーシア中央銀行(BNM) 30億ドル 米ドルとマレーシアリンギット
インド準備銀行(RBI) 750億ドル (通)米ドルとインドルピー

(【出所】日銀『海外中銀との協力』のプレスリリース、財務省『アジア諸国との二国間通貨スワップ取極』等より著者作成。「交換条件」欄に(為)と示しているものが為替スワップ、(通)と示しているものが通貨スワップ。なお、通貨スワップについては「相手国が日本から引き出す際の条件」のみを記載している)

人民元スワップに手を出したトルコ

これで見ると、日本は13ヵ国・地域の中央銀行と15本のスワップを締結していることがわかります(シンガポールとタイの両国とは、日本は通貨スワップと為替スワップの双方を締結しています)。

ちなみにその定義上、為替スワップの締結主体は通貨発行権を有している日銀であり、通貨スワップの締結主体については外貨準備を管轄している財務省です(※細かい話をいえば、通貨スワップについては日銀が財務省の代理にとして協定を締結しています)。

(※個人的には、外貨準備の管轄を日銀に移し、その時点の時価相当額の円資金を日銀が政府預金口座に振り込めば、財務省はその資金を使って国債を150兆円分は償還することができ、財務省が大好きな「財政再建」とやらが一気に進むと思うのですが、どうしてそれをやらないのでしょうか?)

ところで、日本がこれら以外の国と通貨スワップ、為替スワップを結ぶかどうかについては、現時点ではよくわかりませんが、少なくとも日本が提供するスワップは諸外国から見て魅力的であることは間違いありません。

なぜなら、米ドルの発行国である米国ですら、米ドル建ての通貨スワップについては、カナダ(上限20億ドル)とメキシコ(上限90億ドル)の2本しか提供していないからです(詳しくは米FRB “Central bank liquidity swaps” 等参照)。

これに対し、日本は米ドル発行国ではありませんが、150兆円にも達する巨額の外貨準備を原資に、諸外国に米ドルを提供することができますし、また、世界で3番目に取引量が多い通貨である日本円の発行国でもあるため、諸外国に日本円を提供することもできます。

実際、日本に通貨スワップを「求愛」している国はいくつかあるのですが、その典型例が、トルコです。

トルコといえばコロナショックで通貨が暴落していた際、利下げの直前に「日銀との円建ての通貨スワップやイングランド銀行とのポンド建ての通貨スワップを準備している」という飛ばし記事で通貨危機を防いだという実績があります(『「飛ばし報道」だけでトルコリラの暴落を防いだ日本円』等参照)。

実際には、トルコ国内のその飛ばし記事は、「トルコ中央銀行が日本銀行と通貨スワップの締結でほぼ合意した」というメチャクチャなものですが、当ウェブサイトでは、「これは非常に考え辛い話だ」と申し上げた記憶があります。

なぜなら、通貨スワップを締結するかどうかを決める主体は日銀ではなく財務省だからであり、また、日銀が主体的に締結するかどうかを決めることができるのは為替スワップだからです。

もし日銀が主体的に結ぶならば、米ドル建ての通貨スワップではなく日本円建ての為替スワップであり、いくら日本円の取引量が世界3位であるとはいえ、さすがに日本から遠く離れたトルコが日本円を積極的に欲しているとも思えません。

ちなみにトルコは慢性的な外貨流出とインフレに悩まされている国ですが、そのトルコは今年6月、中国との通貨スワップを行使して人民元を引き出し、輸入品の決済代金に使ったという話題もあります(『トルコが中国との通貨スワップを実行し人民元を引出す』等参照)。

個人的に、人民元の通貨スワップを引き出した事例はこれくらいしか存じ上げません。

脆弱なインドネシアの通貨事情

さて、スワップの考察に話を戻しましょう。

図表1で示したわが国のスワップのうち、通貨スワップについては、いずれも相手国から見て、「喉から手が出るほど欲しい」ハード・カレンシー(米ドルや日本円)の入手が可能なタイプのスワップであり、このタイプのスワップが提供できる国は、日本くらいしかありません。

一般にほとんどの国の場合、通貨スワップで交換可能な通貨は相手国通貨のみですし、しかもその相手国が日本や豪州などのように、比較的強い通貨の発行国であれば良いのですが、そうでない場合には通貨危機が全世界に伝播してしまいかねません。

その典型例として、インドネシアの事例を挙げておきましょう(図表2)。

図表2 インドネシアが諸外国と締結する通貨スワップ
相手国と失効日 金額とドル換算額 ルピアとドル換算額
オーストラリア(2021/8/9) 100.0億豪ドル(72.9億米ドル) 100.0兆ルピア(67.9億米ドル)
シンガポール(2020/11/8) 95.0億Sドル(69.9億米ドル) 100.0兆ルピア(67.9億米ドル)
中国(2021/11/26) 2000.0億人民元(295.3億米ドル) 不明
韓国(2023/3/5) 107.0兆ウォン(92.0億米ドル) 115.0兆ルピア(78.0億米ドル)
日本(2021/10/14) 227.6億米ドル 不明
二国間通貨スワップ 合計 757.7億米ドル 不明
多国間通貨スワップ(CMIM) 227.6億米ドル
通貨スワップ 合計 985.3億米ドル

(【出所】各国中央銀行の報道発表等を参考に著者作成。為替換算はWSJのマーケット欄より2020年3月31日のものを参照。なお、日本との通貨スワップについては米ドルだけでなく日本円での引出も可能)

一見すると、インドネシアは5ヵ国との間で、総額757.5億ドル相当の二国間通貨スワップ協定を保持しているほか、多国間通貨スワップ協定である「チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定(CMIM)」にも参加していて、総額1000億ドル近いスワップラインを保持しているかに見えます。

ただ、ここには極めて大きな錯覚があります。というのも、これらのスワップのうち、本当に米ドルで入手できるものは、CMIMの227.6億ドルと、それと同額の日本との通貨スワップの合計455.2億ドルであり、それ以外の約530億ドル分のスワップは米ドルではありません。

いちおう、豪ドルとシンガポールドルについては、米ドルや日本円ほどではないにせよ、国際的な市場でそれなりに取引されている通貨ですが、人民元と韓国ウォンについてはいずれも国際通貨とは言い難く、非常時に役立つとも思えません。

だからこそ、以前の『インドネシア、米国に対しても通貨スワップ締結を要求』などでも取り上げたとおり、インドネシアが米国に対し通貨スワップの締結を要求したのでしょう(※もっとも、米国が外国と結んでいる通貨スワップは、カナダ、メキシコ両国とのものに限られますが…)。

ときとして軍事力を上回る「カネの力」

さて、さまざまなスワップについて見てきたのですが、当ウェブサイトなりの見方を示しておくと、「スワップ外交」とは結局、日本が金融支援の能力を示すことで、世界における日本の立場を強くすることに寄与する目的があるはずです。

とくに、日本国憲法の制約などもあり、日本は軍事力で世界に存在感を示すのが難しい国でもありますが、それと同時に、「カネの力」はときとして軍事力を上回ることがあるのもまた事実でしょう。

このように考えていくならば、先ほどの図表1で示した、わが国が外国と締結するスワップについては、相手国と金額が現在のままでよいとも思えません。とくに、インドネシアに対する227.6億ドルという金額は少し多すぎやしないでしょうか。

あるいは、日本がスワップを結ぶべき相手国は、ほかにもあるように思えてなりません。

たとえば、国際的に取引の制約はないものの、小国すぎるがために通貨が不安定になりがちなニュージーランドの通貨・NZドルについて、日本が為替スワップを提供する余地は十分にあると思います。

また、中国の周辺国のなかでも、とくにミャンマーやパキスタンなどに対しては、ごく少額でも良いので、通貨スワップ外交を仕掛ける価値はあるかもしれません。つまり、いまや日本にとっての最大の仮想敵国となりつつある中国を牽制するためには、中国から友好国を引き剥がしていくのも手だからです。

あるいは、当ウェブサイトの勝手な見方ですが、昨今の石油価格低迷などもあり、中東の産油国の外貨ポジションは意外と苦しいのではないかと思いますし、何なら中東から日本に至る「真珠の首飾り」にスワップ外交を仕掛けても良いかもしれません。

いずれにせよ、軍事力の行使が難しいわが国にとっては、通貨は軍事力に代替する武器となり得ます。

わが国の外貨準備は、間接的には私たち日本国民の貴重な虎の子のようなものであり、だからこそ、日本に恩義を感じてくれない国に対してではなく、確実に日本に恩義を感じてくれるような国にこそ、スワップは提供すべきなのではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (37)

  • >確実に日本に恩義を感じてくれるような国にこそ、スワップは提供すべきなのではないでしょうか。
    仰る通りだと思います。
    すみません寝ぼけて「カネの力」を「かねのか」と読んでました。

  • >なぜなら、米ドルの発行国である米国ですら、米ドル建ての通貨スワップについては、カナダ(上限20億ドル)とメキシコ(上限90億ドル)の2本しかてい狂していないからです

    2本しか提供していないからです

    • 二日市保養所 様

      訂正しました。大変ありがとうございました

  • >軍事力を上回る「カネの力」

    ロ-カル通貨でなくドルで、しかも為替防衛に使っても(あまり)とやかく言わないスワップなんて、当に「実弾」ですからね。

    • そういう意味でも、弾薬提供したら後から文句いってくる国とは、2国間通貨スワップは無理ですね。

      • ケロお様
        お隣で親日デモが始まっているようですよ。相当困っているのは事実なんでしょう。
        ただ、これは反日デモよりたちが悪いと思います。困ったら擦り寄ってきて後から恩を仇で返すのですから。
        そういう意味でもお隣とのスワップは、ほれほれとちらつかせておいて結ばないことが肝心かと。

        • 親日派は弾圧・粛清ニダ
          誇り高い韓国人は「用日」しかしないニダ

          • ケロお様
            ほんとに粛清しますから、自分で逃げ道の一つをふさいだ状態だと思います。
            公式には言えないでしょうが、政府から「貴国の国民情緒に配慮し、一切の援助は取りやめる」と宣言してほしいものです。

  • >確実に日本に恩義を感じてくれるような国にこそ、スワップは提供すべきなのではないでしょうか。

    そうですよね。
    支援を求める側が「出し惜しみをするな」とほざいたあげく、債権者が頭を下げて返済してもらわなければならないところなんかもありますよね。

    ですが、国家間に限らず企業や個人においても自助努力の伴わない組織は、破綻の際に「支援が物足りなかったせいだ」と実際に手を差し伸べてくれた者を逆恨みするようなメンタルしか持ち合わせていないとしたものなのでしょうけれどね。

    例えば、日韓間でも認識の違いは明白です。
    日:スワップの締結には信頼構築が必須だ。
    韓:スワップの締結が信頼構築には必須だ。

    *食い逃げ外交ここにあり!!

  • ちなみに本文ではトルコとインドネシアに言及していますが、ほかにも「通貨スワップを締結するには慎重でありるべき相手国」としては中国やロシアなどがあると思います。とくに中国については意外と外貨準備はハリボテだと思うのですが、じつは日本がインドに提供しているようなドル資金スワップを欲しがっている可能性はあります。

    いずれにせよ日本はどの相手国とスワップを結ぶか「あるいは結ばないか)を慎重に検討し続けなければなりません。

    • 新宿会計士様

      インドネシアに提供している通貨スワップの額はそれだけを見れば仰る通り高額過ぎると思いますし、以前は私もそのように批判コメントを書いたような気がします。

      (但し、コメントを書こうと思いつつ内容が乏しいので書くのを思い止まるケースは少なくないので、実際にはそのような批判コメントを書かなかったかも知れませんが、少なくとも「対インドネシアのスワップ額は多すぎる」と私も以前は思っていたのは事実です)

      しかしながら、あの海域(マラッカ・ロンボク両海峡とその周辺海域)を扼するインドネシアが完全に共産チャイナ側に取り込まれてしまうと、湾岸地域からのエネルギー資源やレアメタルの宝庫であるアフリカ大陸からの鉱物資源の輸入そして欧州との通商を担い我が国の生命線であるインド洋方面への海上通商路は致命的な打撃を受けて、我が国自身が共産チャイナに逆らえない事態となってしまいます。

      かと言って、イスラム教圏であるインドネシアに対して911以後イスラム教に対する警戒を強める一方のアメリカが便宜を図ることは全く期待できません。

      それどころか日米の戦略目標である共産チャイナ封じ込めの手段として結成を目指している日米豪印ダイヤモンド海洋同盟の一員であるオーストラリアとインドネシアとは互いに相手が最大の仮想敵国という関係にあります。(だからこそ、オーストラリアはF-111Cのような下手な小型戦略爆撃機顔負けの大航続距離・大搭載量を誇る大型戦闘爆撃機を常に最重要装備として装備しようと努めているのですし、豪の経済規模からすれば身分不相応なほどの巨額の投資をして現在の旧式化した潜水艦隊を航続性能に優れた高性能の潜水艦に更新しようともしております)

      ですから日本にとって生命線のインド洋航路を守るためにはインドネシアが完全に共産チャイナに取り込まれる事態だけは絶対に避けねばなりません。

      その手段として総額150兆円相当の外貨準備の1%強の2兆円余りの通貨スワップをインドネシアに餌として提供して「他のASEAN諸国への通貨スワップ額と比べてごらん。貴国を我が国が特別に優遇してるって分かるでしょ。だけどそっちが共産チャイナの軍門に下ったら、これほど巨額なルピー防衛策はゼロになるからね」と常にプレッシャーを感じさせておくのはさほど悪い手段ではないと私は考えを改めた次第です。

      ジョコ大統領に典型的に見られるようなインドネシアの両天秤にかける態度には馬鹿が付くほど正直な日本民族の一人として私も腹が立ちますが、しかしあれが世界の常識であると言えば言えると考え直すことにしています。

      インドネシアがあのような態度を取るのは自国の地政学的価値を正しく認識してその価値に見合う対価を日本のようにあのエリアに重大な弱点を有している国々に払えと言っているに過ぎません。(その点、韓国は自国の価値を余りにも過大評価し過ぎているのが滑稽で呆れるばかりです)

      日本民族が馬鹿がつくほど正直なのは自然災害の際に協力し合わなければ滅亡するので平素から互いの信頼関係が重要だという民族としての経験に起因する部分もありますし、島国として他国からのプレッシャーを余り受けず生き馬の目を抜くようなエゲツナイ外交をやらずに済んで来たということもあるでしょうが、それは世界全体で見れば極めて特殊である意味では異常な国民性であり、実は日本人の「正直さ」や「人の好さ」は単純に誇って良い性質のものでは無いと個人的には考える次第です。

      日本人ももっとエゲツナい交渉能力を身に付けねば遠からず滅亡し兼ねないと私は危惧しています。実際、日本と共に自由・民主制・資本主義・法治(順不同)という基本的価値観を共有する欧米先進国は平気で二枚舌やダブル・スタンダードを頻繁に駆使しています。この事実を日本人は批判ばかりせずに謙虚に見つめて己の単純バカさを反省し改めるべきです。

      • >それどころか・・・(中略)・・・結成を目指している日米豪印ダイヤモンド海洋同盟の一員であるオーストラリアとインドネシアとは互いに相手が最大の仮想敵国という関係にあります。・・・(後略)

        >ですから日本にとって生命線のインド洋航路を守るためには・・・(後略)

        失礼しました。後の文を「ですから」で始めるにはロジックが飛んでいました。

        上記の1番目の文の後に次の1文を挿入し、

        ーー
        即ち、インドネシアの立場から見れば我が国が目指す日米豪印ダイヤモンド構想はインドネシアに仇する構想と映りかねず、トランプ大統領に典型的に見られるアメリカ支配層に広まっている反イスラム的言動と共に、インドネシアを共産チャイナの側へとプッシュする動機になりかねないのです。
        ==
        更に引用した2番目の文を次のように改めて下さい。

        --
        ですから、インドネシアが完全に共産チャイナに取り込まれる事態を絶対に避けて日本にとって生命線のインド洋航路を守るためには、日本のダイヤモンド構想はあくまでも共産チャイナの拡大主義から自由な海上通商路を守るために過ぎず軍事的にインドネシアに仇する意図はなく、日本はインドネシアを今後も本気でサポートする意志がある、ということをインドネシアに十分に理解させることが不可欠です。
        ==

        以上です。

  • 究極の答えを言ってしまえば、軍事力も金の力です。
    金(かね)の種類が金(きん)か円かの違い程度でしかありません。

    為替・通貨スワップの他に、相手国通貨との交換に、

    円のみ
    円・ドルのいずれか
    ドルのみ

    の三種があるのですが、この分類も興味深いですね。
    タイのみが円だけのスワップですが、完全に”日本圏”という意識なのでしょうか。

  • 安倍前総理は、国家安全保障戦略として積極的平和主義のうちだし、ODAを重要な外交資産として戦略的に利用する方針を示して、実際にアジア太平洋地域やアフリカ諸国への外交に役立ててきました。※外遊の際に外遊先への支援表明ばかり目立ったので、一部で外国へのばらまきなどと言われましたが、国際的には日本の開発援助はまだまだ少ない方です。(総額ではなく国民一人当たりが)
    スワップについてもODAと同様の使い方ができるんじゃないかという意見と受け取りました。
    外交戦略的な視線を持つことには賛成ではありますが、あまり使い勝手がいいものではないんじゃないかとも思いますね。まして通貨・財務当局が担当ではね。どこかの大綱とかに明記する必要もありそうですし。

    あと気付いたんですが、コロナ対策としてのFRBの為替スワップで日銀の残高が多かった件ですが、日本の市中銀行だけじゃなく、もしかしたら、日本国内にあるアジア各国の銀行支店に対して日銀を通じて貸し出していた可能性もありますね(指摘してる人がいました)
    もしそうなら、今回のドル流動性不安において、結果的に日本との為替スワップ締結と似た機能を発揮していたのかもしれませんね。

    外貨準備の日銀移管ですが、外貨準備の外為特別会計は財務省だけで動かせる予算で、思いっきり既得権益でしょうから、まあ財務省が手放すなんて無理でしょうね。それにそもそもですけど、外貨準備って債権ですけど、原資となる同額の政府短期証券の借金なので、財務省のいう国の借金の総額が減るだけで他にメリットってあるんですかね?
    外為特会ってIMFとつながってますし、国際協力銀行への外貨貸し付けもここからです。そして外貨準備の中の米国債などで運用益が出れば、剰余金として一般会計へ繰入れたりもしていますし。まあそのために為替介入がなければ、外貨準備って一切減らないし政府短期証券なんか何があっても減らないですけどね。

    • >国際的には日本の開発援助はまだまだ少ない方です。

      米国・ドイツ以外の欧州先進国に関しては植民地支配の賠償をODAでやっているような構造でしょう。
      ドイツは戦後賠償も込み。米国はフィリピン以外にまともな植民地無かった。
      日本は結局、大東亜共栄圏2.0だったのですが、最近は4.0とか付けるのが流行らしい。

      • りょうちん様
        国民一人当たりでのODA負担額ランキングでいうと、トップはノルウェーで、次がスウェーデン、ルクセンブルク、デンマーク、スイス、オランダ、英国、フィンランド~で、スペイン・ポルトガルは日本以下です。
        植民地支配の賠償ってのはどうでしょうかね。各国の援助の中身を知らないのでなんともですが。北欧が高いのは自国が高福祉国家なのと関係あるかもですね。
        日本はODAの支出を対GNI比で0.7%を目標としています。(from開発協力大綱)
        2018年実績で0.28%なので、目標からいってもまだまだですね。

        • >国民一人当たりでのODA負担額ランキングでいうと、トップはノルウェーで、次がスウェーデン、ルクセンブルク、デンマーク、スイス、オランダ、英国、フィンランド~で、スペイン・ポルトガルは日本以下です。

          国民1人当たりODA負担額ランキングの上位の国々は、国民1人当たりGDP(為替レート換算)の上位の国々ですよ。その中で1人当たりGDPが日本と大差ないのは大英帝国ぐらい(それでも日本より上)だけです。ルクセンブルグやオランダや北欧諸国は1人当たりGDP額が日本よりも遥かに高額な国々です。

          なお1人当たりODA額で日本より下位(且つかっては植民地大国であった)スペインとポルトガルとは1人当たりGDP額も日本より下位です。

          つまり国民が豊かだから1人当たりの施しもたくさん出せるというだけの話です。

          1人当たりGDP額に関しては、例えばWikipedia日本語版の次のページにIMF・世銀・UN(※)の(恐らく直近の)データが出ています。

          https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%9B%BD%E5%86%85%E7%B7%8F%E7%94%9F%E7%94%A3%E9%A0%86%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88_(%E4%B8%80%E4%BA%BA%E5%BD%93%E3%82%8A%E7%82%BA%E6%9B%BF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88)

          注※:それにしても組織としても戦時中からずっと継続している"UN (United Nations)"を、戦時中のは「連合国」、講和条約後は「国連(国際連合)」と全く違う言葉で呼び、日本国民に対して国連は我が国を焼け野原にした連合国とは全く別な有難い組織かの如く錯覚させ続ける大いなる欺瞞をいつまで続けるつもりだろうか?
           そもそも"United Nations"には「国際」つまり“International”という語は全く含まれていないのに。

          ついでに言えば(現代の国連でなく戦時中の)連合国に属する国々の軍艦が日本の港に寄港する場合には(あの水色を基調とした)国際連合の旗をマストに掲揚する(つまり「国連憲章で敵国条項に定められている敗戦国の日本に対して戦勝側の連合国軍艦として入港するぞ」という意味)プロトコルが現在も国連=連合国で生き続けて実行されていますしね。(但し、最大の対日戦勝国たるアメリカの軍艦は日米安保条約に基づく入港として扱うという取極めなのか国連旗の掲揚はないように思うが間違っていたら誰か御指摘下さい)

          国連側が日本国内や日本語での表記を変更するのに要する費用の全てを日本政府が負担するので良いから、“United Nations”の日本語表記は従来の欺瞞的な「国際連合」から本来の「連合国」(または複数であることを正しく表す形の「連合諸国」)に変更すべきですね。少なくとも日本政府が出す全ての文書や声明では「連合国」に統一すべきです。

  • スワップを安全保障に活用出来れば、良いですよね。
    第二次コロナショックは、来るんですかね?

    • だんな様

      麻生氏の言う通りです。
      かつて中国はODAでも、日本からの支援を受けつつアフリカ等の諸国にODAを発動していましたよね。
      他人の褌で相撲を取るのを厭わない国なんですよね。

      *老獪を通り越して狡猾だ!!

      *限られた資金は「本当に支援が必要な国」に有効に振り分けられるべきなのだと思います。

      • >*老獪を通り越して狡猾だ!!

        と共産チャイナを批判するよりも、

        >かつて中国はODAでも、日本からの支援を受けつつアフリカ等の諸国にODAを発動していましたよね。

        そんな国に「アフリカ諸国へのODAは我が国(日本)が直接に提供するから貴国への供与は止める」と明確に宣言して打ち切らず、延々とODAを供与し続けた我々日本国民の人の好さやケンカ下手さを反省し改めるべきですよ。

        甘い顔をすれば相手はつけ上がってどこまでも要求を拡大してくるのは別に韓国や北朝鮮や共産チャイナだけのお家芸ではありません。欧米の西側先進国も含めて世界中の国々はみんなそうですよ。例えばですが、京都議定書で日本に押し付けられた炭酸ガス排出量の削減幅などは典型的で「お人好しは損をする」のが世界の常識だと良く分かる事例です。

        日本だけが国内でしか通用しない馬鹿正直さ・お人好しさを世界でも通用する、あるいは通用させるべきだと傲慢にも勘違いして、常に貧乏くじを引く羽目になっているだけです。

        その原因は日本自身の甘さであり、言葉を換えれば「日本人は考えが幼稚かつ独り善がり=傲慢なままで実際には世界に甘えている」から世界中から痛い目に遭わされ続けているに過ぎません。

        • そうですね。日本は甘いんです。

          ですが、2008年以降、対中ODAでの大規模プロジェクトへの円借款は実施されていない訳なのですし、今回のADBでの資金援助に対しての言及も然り、「事なかれ」からは認識が改まりつつあるのかと・・。

          たしかに、遅ればせながら過ぎるのだとは思うんですけれどね。

          *返信ありがとうございました。

    • だんな 様へ
      中国はかつて「第三世界の代表」を標榜していて、後進国を自認していました(今でも?)。
      なのでODAを貰う資格はあるのです。
      自称先進国のくせに援助クレクレと言う「エラそうな乞食」とはちょっと違います。

  • 韓国『産業銀行』も外貨調達に動く。外貨ないの?
    https://money1.jp/archives/32502

    韓国政府に続いて国策銀行『産業銀行』アジア初の『SOFR(米国債を担保)連動債』規模は2億ドル

    韓国政府 14億5,000万ドル規模の「外国為替平衡安定基金債券」
    http://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=76870
    アメリカドル建て債券が1.198%、ユーロ建て債券がマイナス0.059%

    • たかだか2億ドル程度の外貨調達に困っているのだとしたら、相当状況は深刻ですね。FRBとの為替スワップはまだ有効なはずだし、利率もそちらの方が低いはずなのに、わざわざSOFRを担保にするような債権を発行するとは。ちょっと意味がよく分かりません。
      また、外平債にしても、15億ドル弱程度など、市場介入に使ったらあっという間に消し飛びます。もしかしたら、以前に発行した外平債の借り換えのためかもしれませんが。

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