4月の輸出高は1兆円以上減少し5.2兆円にとどまる
本日の「速報」です。2020年4月分の普通貿易統計が本日、財務省から公表されています。本稿では取り急ぎ、いくつか目についたデータを紹介したいと思います。なお、これについては品目別の詳細なデータも公表されているのですが、なにか興味深い話題があれば、別稿にて報告したいと思います(※時間との兼ね合いですが…)。また、本稿末尾には韓国に対するフッ化水素等の輸出の状況についても最新データを示しておきたいと思います。
2020/05/28 15:00追記
図表2の「輸入額とシェア」欄に入れるべき数値が誤っていましたので修正しております。ご指摘くださいました「定年碁打ち」様、大変ありがとうございました。
輸出高は1兆4583億円も減少し5.2兆円に留まる
2020年4月分の普通貿易統計が本日、財務省から公表されています。本稿では取り急ぎ、いくつか目についたデータを紹介したいと思います。
まずは、輸出高です(図表1)。
図表1 2020年4月の輸出高(輸出高が大きい順に10ヵ国)
相手国 | 輸出額とシェア | 前年同月比 |
---|---|---|
中国 | 1兆1838億円(22.74%) | ▲492億円(▲4.16%) |
米国 | 8797億円(16.90%) | ▲5357億円(▲60.90%) |
韓国 | 4122億円(7.92%) | ▲488億円(▲11.85%) |
台湾 | 3970億円(7.63%) | +239億円(+6.03%) |
香港 | 2719億円(5.22%) | ▲323億円(▲11.88%) |
タイ | 2322億円(4.46%) | ▲455億円(▲19.61%) |
シンガポール | 1629億円(3.13%) | ▲352億円(▲21.59%) |
ベトナム | 1471億円(2.83%) | +3億円(+0.22%) |
ドイツ | 1464億円(2.81%) | ▲416億円(▲28.45%) |
オランダ | 1018億円(1.95%) | ▲206億円(▲20.28%) |
その他 | 1兆2710億円(24.41%) | ▲6735億円(▲52.99%) |
合計 | 5兆2060億円(100.00%) | ▲1兆4583億円(▲28.01%) |
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
いかがでしょうか。
コロナショックの影響もあり、2020年4月の輸出高は前年同月比で3割近く減少し、5.2兆円に留まりました。なかでも落ち込みが大きいのは対米輸出で、これは前年同月比6割以上、減少していることが確認できます。
ただ、コロナショックの震源地で日本の産業にとってはサプライチェーンで密接な関係を持つ相手国である中国に対する輸出については、前年同月比で4%ほどしか減少していません。また、コロナ防疫に成功した台湾に対しては、むしろ前年同月比小幅のプラスです。
輸入高は4674億円減少し5.2兆円に
次に、輸入の方を見ておきましょう(図表2)。
図表2 2020年4月の輸入高(輸入高が大きい順に10ヵ国)
相手国 | 輸入額とシェア | 前年同月比 |
---|---|---|
中国 | 1兆7351億円(22.74%) | +1824億円(+10.51%) |
米国 | 6999億円(16.90%) | +125億円(+1.78%) |
オーストラリア | 3703億円(1.53%) | ▲358億円(▲9.66%) |
台湾 | 2635億円(7.63%) | +235億円(+8.91%) |
韓国 | 2463億円(7.92%) | ▲237億円(▲9.61%) |
タイ | 2194億円(4.46%) | +10億円(+0.47%) |
ベトナム | 2031億円(2.83%) | +66億円(+3.24%) |
ドイツ | 2022億円(2.81%) | ▲169億円(▲8.34%) |
サウジアラビア | 1698億円(0.59%) | ▲1178億円(▲69.34%) |
アラブ首長国連邦 | 1539億円(1.06%) | ▲541億円(▲35.13%) |
その他 | 1兆8744億円(31.53%) | ▲4453億円(▲23.76%) |
合計 | 6兆1379億円(100.00%) | ▲4674億円(▲7.62%) |
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
輸出が3割以上減少しているわりには、2020年4月の輸入に関しては、前年同月比7.62%の減少に留まりました。なかでも、中国からの輸入が10%以上増えているのですが、このあたりについては品目別分解でなにか興味深いことがあれば、また別途、報告したいと思います。
ただ、産油国であるUAEからの輸入は35%減少しているほか、サウジアラビアに至っては7割近くの減少を記録しています。原油価格の低迷などが影響している可能性がありますが、このあたりについては時間的余裕を見ながら品目別分解をやってみたいと思います。
貿易収支は1兆円近い赤字に転落
貿易収支についても検討しておきましょう。
これについて、赤字額が大きい順に5ヵ国並べたものが図表3、黒字額が大きい順に5ヵ国並べたものが図表4です。
図表3 2020年4月の貿易収支(赤字が大きい順に5ヵ国)
相手国 | 貿易収支 | 前年同月比 |
---|---|---|
中華人民共和国 | ▲5513億円 | ▲2316億円(▲42.02%) |
オーストラリア | ▲2904億円 | ▲307億円(▲10.57%) |
サウジアラビア | ▲1390億円 | +1143億円(+82.22%) |
アラブ首長国連邦 | ▲985億円 | +527億円(+53.51%) |
カナダ | ▲736億円 | ▲548億円(▲74.43%) |
その他 | +2209億円 | ▲8407億円(▲380.61%) |
合計 | ▲9319億円 | ▲9909億円(▲106.33%) |
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
図表4 2020年4月の貿易収支(黒字が大きい順に5ヵ国)
相手国 | 貿易収支 | 前年同月比 |
---|---|---|
香港 | +2671億円 | ▲232億円(▲8.67%) |
米国 | +1798億円 | ▲5482億円(▲304.86%) |
韓国 | +1659億円 | ▲252億円(▲15.17%) |
台湾 | +1335億円 | +5億円(+0.35%) |
シンガポール | +818億円 | ▲456億円(▲55.72%) |
その他 | ▲1兆7600億円 | ▲3492億円(▲19.84%) |
合計 | ▲9319億円 | ▲9909億円(▲106.33%) |
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
なお、合計欄については図表3、図表4ともに同額の「9319億円の赤字」と表示されています。590円の貿易黒字だった前年同月(2019年4月)と比べて、貿易収支が1兆円近く悪化した計算ですね。
図表3から見てみましょう。
中国との貿易については輸出が大きな急ブレーキとなる一方、輸入がむしろ小幅拡大したことの影響で、赤字幅は2316億円拡大し、貿易収支は5513億円の赤字でした。一方で、サウジアラビアについては輸入額が大きく減少した影響で、貿易収支は1143億円改善し、赤字は1390億円に留まりました。
ただし、トータルで見た輸出額が輸入額よりも大きく減少したため、赤字幅が全体として拡大した格好となっています。
また、図表4については、少なくともここに挙げた5ヵ国(香港、米国、韓国、台湾、シンガポール)については、台湾を除くすべての国で、貿易収支が悪化し、黒字幅が縮小しました。とくに対米貿易黒字は4分の1に縮小した格好です。
これから米中対立が本格化すると見込まれるなか、貿易面における対中依存構造に調整が必要なのだとすれば、来月以降はさらに大きな波乱もあるかもしれませんね。
対韓フッ化水素輸出は続いているものの金額は低迷
最後に、「定点観測」している韓国向けの「HS番号2811.11-000」(フッ化水素、フッ化水素酸)の推移を確認しておきたいと思います(図表5)。
図表5 HS番号2811.11-000の対韓輸出額
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
昨年7月1日に日本政府が発表した輸出管理の適正化措置の影響でしょうか、フッ化水素、フッ化水素酸のコードである「2811.11-000」の対韓輸出額については、前年同月比で大きく減少する展開が続いています。
この「2811.11-000」の韓国への輸出高は、昨年8月にはゼロを記録していますが、その後は徐々に復活しているものの、輸出管理適正化措置発動前と比べれば2~3割程度に留まっていることが確認できるでしょう。
(※ただし、日本から韓国に輸出されるフッ化水素・フッ化水素酸のすべてが「HS番号2811.11-000」に計上されているとは限らない点には注意が必要ですが…。)
あるいは、見方を変えるならば、2019年7月以前、韓国がこれほどまでにたくさんのフッ化水素を輸入して、いったい何に使っていたのかという気もしますね。興味は尽きないところです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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第一次所得収支が有るから、まだ経常黒字といったとことでしょうか。
輸出入の減少は、5月も続いているはずだと思います。
「リーマンショック級の問題が発生しない限り、消費税増税を行う」と言って増税を強行した半年後にリーマンショックなど目ではない問題が発生した安倍首相のヒキの悪さよ・・・。
今回の対策費用を消費税増税による増収如きで(そもそも減収するのではないか)、ペイするのに何十年かかるんだろう。
新宿さま
輸出額と輸入額が同じです。
どちらか、入力まちがいでしょうか?
確認されることを、お勧めします。
定年碁打ち 様
ご指摘大変ありがとうございます。入力間違いです。さっそく修正いたします。
引き続き当ウェブサイトのご愛読・コメントのほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
対米輸出の減は残念なのですが、コロナ収束後にある程度の挽回は可能だと思います。
それよりも国内消費や雇用の減退に繋がり兼ねない「輸入総額の減」が抑制できてることの方が大きいのかもです。
日本は内需の国なのですから。
〔雇用が大事〕
UAEからの輸入は、原油に加えて天然ガスも多いのではないでしょうか。
残念ながら「中国依存の日本経済」というのが統計でもはっきり表れていますね。アメリカの経済停滞のおかげで,アメリカ向け輸出は激減して,そのダメージが大きい。世界の中で,経済の中に最大の爆弾を抱えているのはアメリカで,世界中の国がアメリカの巻き添えになる可能性が高いです。
主要半導体生産5か国への4月のフォトレジストの輸出量&額を調べてみました。
◆輸出額順
Gr 国名 数量(KG) 金額(K\) K\/KG
C 中華人民共和国 1,674,019 6,016,390 3.59
A アメリカ合衆国 794,577 5,494,409 6.91
C 台湾 536,716 7,136,820 13.30
B 大韓民国 239,329 4,221,655 17.64
C シンガポール 107,549 858,918 7.99
中国がダントツです。宗主国が自分たちより下のグループCなのにこれだけ輸入しているのにグループBの韓国は何をしているのでしょう?
◆KGあたり単価順
Gr 国名 数量(KG) 金額(K\) K\/KG
B 大韓民国 239,329 4,221,655 17.64
C 台湾 536,716 7,136,820 13.30
C シンガポール 107,549 858,918 7.99
A アメリカ合衆国 794,577 5,494,409 6.91
C 中華人民共和国 1,674,019 6,016,390 3.59
やはりEUVを持っている2か国が抜けています。グループCの台湾が韓国の2倍以上輸入しているのはtsmcが好調なためだと思います。
気が向けば時系列で見てみたいと思います。
韓国国内のフッ化水素使用総量ってどっかで入手できないんですかね?
しかしながら日本の貿易依存度は29.3%で日本貿易会が低すぎると嘆いてるくらいみたいですな。2018年の時点で世界で184位と175位の北朝鮮より低い始末。(ちなみに中共は178位、インドは181位、韓国は59位だそうな。第1位は香港。)
こりゃ国債発行で内需を喚起する政策が1番手っ取り早そうな感じ。