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韓国人と思しきツイート「日本こそ日韓スワップ必要」

以前から当ウェブサイトで注目している論点のひとつが、韓国で通貨危機が発生するかどうか、という点です。これについては「安心材料」と「不安材料」がそれなりに存在しているのですが、その一方で、韓国の一般国民と思しき方が「日韓通貨スワップを必要としているのは日本の側だ」といったツイートを発信しているのを発見してしまいました。このツイート主さんが当ウェブサイトを閲覧していただいているかどうかはわかりませんが、あらためて韓国の外貨調達状況に加え、「日韓通貨スワップの韓国側のメリット」などについて、簡単に整理しておきましょう。

韓国、通貨危機は?

当ウェブサイトで先月中ごろからとくに注目している論点のひとつが、「韓国で通貨危機という状況が生じるかどうか」、です。

これについては先日の『米韓為替スワップ:本当の危機は「コロナ後」に到来か』でも触れたとおり、いまこの瞬間の韓国において、無限に外貨が流出していくという状況にはないものの、いくつかの懸念状況もあるというのが実情です。

安心材料が多い

為替相場は不思議なほど安定している

まず、「安心材料」から挙げましょう。

韓国に代表される新興市場諸国の場合、金融市場に何らかの変調が生じた場合、通貨が暴落するなどの現象を伴うことがあります。これについて、韓国の通貨・ウォンは、先月には一時、1ドル=1300ウォンの大台を突破しそうなほどに売り込まれたことは事実です。

しかし、「コロナ騒ぎ」が本格化する直前と比べ、3月下旬の時点で通貨が大きく下落していた国は、意外とたくさんあります。次の図表1は、アジア主要国の通貨についての騰落を調べたものです(日付は最安値を付けた時点を意味します)。

図表1 アジア諸国の通貨の対ドル相場・年初来最安値
通貨 対米ドル相場最安値 日付と年初比
インドネシアルピア 16575 3月23日(月)、年初比 ▲19.39%
タイバーツ 33.09 4月1日(水)、年初比 ▲11.94%
韓国ウォン 1273 3月23日(月)、年初比 ▲10.21%
シンガポールドル 1.4598 3月23日(月)、年初比 ▲8.55%
マレーシアリンギット 4.3945 3月18日(水)、年初比 ▲7.43%
オフショア人民元 7.1576 3月19日(木)、年初比 ▲2.75%
日本円 112.11 2月20日(木)、年初比 ▲3.08%
オンショア人民元 7.1144 3月25日(水)、年初比 ▲2.17%
ベトナムドン 23643 3月30日(月)、年初比 ▲2.03%
フィリピンペソ 51.73 3月17日(火)、年初比 ▲2.01%
新台湾ドル 30.473 3月19日(木)、年初比 ▲1.87%

(【出所】WSJのマーケット欄を参照に著者作成)

たとえば、WSJの引け値データによると、韓国ウォンが最安値を付けたのは3月23日(月)で、この時点で1ドル=1273ウォンと年初来10%以上下落した格好ですが、韓国ウォンよりも深刻だったのが、年初来20%近く売られたインドネシアルピアと年初来11%売られたタイバーツです。

また、目をアジア以外に転じてみると、ロシアルーブル、メキシコペソ、ブラジルレアル、南アフリカランドなどが大きく下落していることがわかります(図表2。ただし、図表1とは比較の時点が異なる点に注意)。

図表2 為替変動と対ドルでの騰落率(1月20日→3月27日)
通貨 1月20日→3月27日 対ドルでの騰落率
ロシアルーブル 61.6→78.77 ▲27.87%
メキシコペソ 18.6637→23.391 ▲25.33%
ブラジルレアル 4.1904→5.1005 ▲21.72%
南アフリカランド 14.4987→17.63 ▲21.60%
インドネシアルピア 13621→16140 ▲18.49%
ノルウェークローネ 8.9292→10.4877 ▲17.45%
豪ドル(※) 0.6872→0.6165 ▲10.29%
スウェーデンクローナ 9.5183→10.4877 ▲10.18%

(【出所】WSJのマーケット欄を参考に著者作成。なお、市場慣行上、豪ドル・米ドル相場については「ニューヨークターム」で表示されているため、値が大きくなれば対米ドルでの上昇を、値が小さくなれば対米ドルでの下落を意味する点に注意)

この点、韓国の通貨・ウォンは、3月24日以降、1ドル=1210~1240ウォンのレンジで取引されており、不思議なほどに安定しています。

これについては「中央銀行である韓国銀行が為替介入をしているに違いない」、といった観測もありますし、実際に3月中旬ごろには、70~80億ドル規模の為替介入を行っていた可能性が濃厚です(『【記事内容に修正あり】韓国銀行、50億ドル以上を為替介入で溶かした模様』等参照)。

しかし、少なくとも4月以降の安定ぶりを「為替介入」で片づけるのは、やや乱暴な気がします。というのも、為替市場のチャートを眺めていると、どうも「通貨が急落する」→「それを当局が慌てて買い戻す」、といった、いわゆる「ワロス曲線」的なものは観測できないからです。

「深刻な外貨不足」という状況にはない

次に、韓国の金融機関などは、「深刻な外貨不足」に直面しているという状況にありません。

通常、外貨不足に陥る場合は、金融機関などが外貨の短期調達に苦労します。

こうしたなか、米国の連邦準備制度理事会(FRB)が先月、韓国銀行を含めた9つの中央銀行・通貨当局と為替スワップ協定を時限的に復活させているのですが、韓国銀行が実施する為替スワップに基づく流動性供給の応札額が、毎回、「札割れ」を起こしているのです。

先日の『米韓為替スワップ:本当の危機は「コロナ後」に到来か』では、韓国銀行は過去に4回、入札を実施したものの、いずれも実際の落札額が上限額に満たなかった、という話題を取り上げました。あらためてこれをアップデートしておくと、図表3のとおりです。

図表3 韓国銀行の各回の流動性スワップ入札倍率
入札日 予定額→落札額 落札額÷予定額
3月31日 120億ドル→87.2億ドル 72.67%
4月7日 80億ドル→44.2億ドル 55.19%
4月14日 40億ドル→20.3億ドル 50.63%
4月21日 40億ドル→21.2億ドル 52.98%
4月27日 40億ドル→12.6億ドル 31.60%
合計 320億ドル→185.4億ドル 57.95%

(【出所】第4回目まではニューヨーク連銀の “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” 、第5回目については韓国メディア『イーデイリー』の4月27日付記事(※韓国語)を参考に著者作成)

これを見ると、最新(4月27日時点)の入札倍率(予定額に対する落札額の倍率)は0.3倍に過ぎませんが、これは韓国銀行が「40億ドル供給しよう」と思ったにも関わらず、実際の需要は12.6億ドルしかなかった、という意味です。

韓国からの資金流出ではない

これに加え、もうひとつ、興味深い記事があります。韓国語ベースですが、韓国メディア『朝鮮日報』に掲載された、次のものです。

韓米通貨スワップ資金21.2億ドル4次供給(※韓国語)
  • 供給限度40億ドルの半分水準の入札…「外貨流動性良好」
  • 韓米通貨スワップ600億ドル四回にわたって172.8億ドル供給
  • <<…続きを読む>>

―――2020.04.21 12:09付 朝鮮日報より

リンク先の記事によれば、韓国銀行関係者が次のように述べたのだそうです(日本語に意訳しています)。

3月に一般企業や証券会社などの外貨預金が大幅に増加(67億8000万ドル)したため、(韓国国内銀行の)外貨流動性の問題は、良好なものと見られる

つまり、一般企業や証券会社などが外貨預金残高を67.8億ドルも積み増し、それを韓国国内の銀行のドル預金口座に入金しているのだそうです(こうした情報は、やはり韓国語のメディアを読んでいないと、なかなか手に入りません。まだまだリサーチ不足を実感します)。

自然に解釈すると、般企業などが韓国ウォンを売り、米ドルなどの外貨を入手して韓国国内の銀行に預けた(=貸し付けた)、ということであり、これを韓国国内の銀行から見れば、国内の企業や証券会社から外貨を貸してもらっている、という意味でもあります。

もしかすると、韓国の通貨・ウォンの下落は、こうした韓国国内の企業などが、やや「パニック」的に外貨流動性を手元に準備しようとしたという要因もあったのかもしれませんが、このあたりの真相については、正直、よくわかりません。

いずれにせよ、「ウォンが売られて米ドルが買われた」というのは事実でしょうが、この67.8億ドルの資金についてはとりあえず韓国の民間銀行に預け入れられたため、その瞬間において、「韓国国内からのドル資金の流出」は生じていないはずです(※現在、どうなっているかはわかりませんが…)。

不安材料もある

金融大国でもないくせに、借入額は新興国トップ

ただし、以上のような「安心材料」の数々に対し、不安材料もあります。

その客観的な証拠は、米韓為替スワップに基づく借入額です。

ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページに掲載されているエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を閲覧すると、4月27日時点におけるスワップ借入残高を集計すると、図表4のとおりです。

図表4 米国から為替スワップで借り入れている金額(4月27日時点)
借入人 借入金額 平均金利・日数
日本銀行 2147.5億ドル 0.34%/82.38日
欧州中央銀行 1420.7億ドル 0.36%/80.51日
イングランド銀行 222.8億ドル 0.35%/76.92日
韓国銀行 161.9億ドル 0.67%/83.88日
スイス国民銀行 111.9億ドル 0.32%/67.55日
メキシコ銀行 65.9億ドル 0.77%/84.00日
シンガポール通貨庁 58.7億ドル 0.61%/76.86日
ノルウェー銀行 54.0億ドル 0.34%/84.00日
デンマーク国民銀行 52.9億ドル 0.33%/68.11日
豪州準備銀行 11.5億ドル 0.33%/84.00日
スウェーデンリクスバンク なし
NZ準備銀行 なし
カナダ銀行 なし
ブラジル銀行 なし
合計 4307.8億ドル 0.37%/80.95日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページに掲載されているエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” に掲載されている4月27日実行分までの入札情報を参考に著者作成)

(※ただし、先ほどの図表3にあった「4月27日入札分」は図表4の金額には含まれていませんし、また、図表3はすでに満期が到来したスワップも含まれているため、図表3の合計額(185.4億ドル)と図表4の金額(161.9億ドル)とは一致していません。)

これで見ると、借入額の上位には「金融大国」である日本、欧州、英国などが来ますが、これらの金融大国に混じって、金融大国でもない韓国が借入額で4位についているのは、不気味な兆候です。

そして、現時点において、米国から付けてもらった為替スワップの上限額(600億ドル)に対し、韓国はすでに3分の1近くに手を付けてしまっている格好です。

輸出に急ブレーキ?

さらに、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には昨日、こんな記事も出ています。

韓国政府「99カ月ぶりに貿易収支赤字の可能性」

韓国政府が99カ月にわたり続いた貿易収支黒字が赤字に転落すると予想した<<…続きを読む>>
―――2020.04.29 10:52付 中央日報日本語版より

中央日報によると、韓国政府の高官は昨日、「4月の韓国の貿易収支が99ヵ月ぶりに赤字に転落するかもしれない」と述べた、ということです。

もっとも、この高官は「韓国の防疫は他国と比べて成功している」、「内需も他国と比べて堅調」、「(貿易赤字は)韓国経済の否定的な兆候とだけ見るべきではない」、といった趣旨の発言をしたそうですが、こうした認識が正しいかどうかは、総合的に判断する必要があります。

とくに、韓国はドイツと並び、貿易依存度(輸出依存度+輸入依存度)が高い国でもあり、とくに輸出依存度については日本の2倍以上です(2017年のデータ、図表5)。

図表5 2017年における貿易依存度(G5+中国+韓国)
国・地域 輸出依存度 輸入依存度 貿易依存度
アメリカ合衆国 7.9 12.4 20.3
日本 14.4 13.8 28.2
中国 18.9 15.3 34.2
イギリス 16.6 23.3 39.9
フランス 20.7 24.1 44.8
ドイツ 39.2 31.5 70.7
韓国 35.3 29.4 64.7

(【出所】『世界の統計2020』第9章『図表9-3 輸出依存度・輸入依存度』を参考に著者作成)

さらには、文在寅(ぶん・ざいいん)政権の経済運営の失敗などに起因する雇用不安、社会不安が韓国経済の重しとなっており、輸出減が嫌気されるのが引き金となって、再び韓国からの外貨流出という可能性も否定できないでしょう。

韓国が日韓通貨スワップを必要とするわけ

こうしたなか、韓国は米国から為替スワップを提供されている立場であるにもかかわらず、さらに大きな不安材料もあります。

それが、長引く「駐留経費問題」を含めた、米韓同盟を巡る危機的状況です。

これについてはまさに『鈴置論考に見る「唐突に日本に擦り寄る韓国人の低意」』でも紹介した、韓国観察者である鈴置高史氏の次の論考が参考になります。

「コロナ退治でスクラム組もう」… 唐突に日本にすり寄る韓国人の底意

「新型肺炎の防疫に失敗した」と日本を見下していた韓国人が、突然「スクラムを組んで共にコロナと闘おう」と言い出した。その狙いを韓国観察者の鈴置高史氏が読む。<<…続きを読む>>
―――2020年4月27日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より

鈴置氏によれば、今回の米韓為替スワップは、米国が韓国に与えた「毒まんじゅう」のようなものであり、「当面6ヵ月」という期限が到来した際に

米国は、為替スワップは延長しないぞ――金融システムの『つっかえ棒』を外すぞ、と韓国を脅せるようになった

という効果を米国が得た、という側面があると指摘します。

まったくそのとおりでしょう。

そして、韓国は現実に米国の「毒まんじゅう」を喰らってしまいました。だからこそ、韓国側では現在、「米韓為替スワップ」に代替する「安全弁」を求める意見が強まっているようなのです。

(※読者コメント欄でもご指摘いただいていたようですが、「低意」は「底意」の誤植でした。鈴置先生、大変失礼いたしました。ただし、記事タイトルについては原則として修正しない方針であるため、このまま恥を晒そうと思います。)

日韓通貨スワップ巡る誤解

日韓通貨スワップは「日本が必要としている」

いずれにせよ、こうした客観的な状況証拠を積み上げていけば、現在のところ韓国では直ちに深刻な外貨不足に陥る可能性はさほど高くありませんが、不安材料は山積しているという状況です。

だからこそ、またぞろ出て来たのが「日韓通貨スワップ」へのラブコールですが、これについては『「日本が韓国の真の友人なら韓日スワップを締結せよ」』でも紹介したとおり、なかには「日本が真の友人なら通貨スワップを結べ」といった高圧的な要求も含まれているようです。

さて、こうしたなか、昨日はこんなツイートを発見しました。

そもそも韓国も送ること検討したこともない。日本の新聞が報道しただろう。日本のキットで検査すればいい。1日すこしずつ!通話スワップも韓国はいらない。いらないのにネトウヨが叫ぶだけ。なぜなら韓国が日本より国際信用度が高いから。日本がスワップ必要だよ。国際信用度低い国だから。
―――2020/04/29 13:13付 ツイッターより

ユーザー名から判断すると、ツイートなさったのは韓国の方でしょうか。

「通話スワップ」とあるのは文脈から判断して「日韓通貨スワップ」のことだと思いますが、こうした誤植をあげつらうつもりはありません。韓国人の方が日本語を学習され、日本語でツイートを発信すること自体は敬意を払うに値する行為だからです。

ツイートの前半部分は、先ほども紹介した鈴置論考でも触れられていた、「コロナの検査キットを日本に提供すること」という話題だと思いますが、注目したいのはツイートの後半部分です。

「韓国が日本より国際信用度が高い」というのは、おそらくはムーディーズをはじめとする国際的な格付業者の格付上、韓国が日本を上回っていることを指しているものと思われます(図表6)。

図表6 ソブリン格付
格付業者 日本 韓国
ムーディーズ A1・安定的 Aa2・安定的
フィッチ A・安定的 AA-・安定的
S&P A+・ポジティブ AA・安定的

(【出所】著者調べ)

個人的な印象として申し上げれば、格付業者の格付は、少なくとも日本国債市場では一顧だにされていませんが、「格付業者が付与する信用格付で見れば、韓国の信用力が日本を上回っている」というのは事実です。

だったらなおさら、「日本の助けはなくても大丈夫ですよね」と言いたくなる気持ちでいっぱいになりますが…(笑)。

日本の通貨スワップの特徴

ただ、こうした信用格付の問題はさておき、通貨危機に際して懸念されるリスクは、「国債のデフォルト」ではありません。

「外貨不足」です。

その意味で、国全体が外貨不足に陥るかどうかを議論するのにソブリン格付の議論を持ち出して来ること自体がナンセンスなのですが、一般の韓国国民の認識の一端に触れたことは有意義です。

このツイート主が当ウェブサイトをご覧になっているかはわかりませんが、いちおう、簡単に「日韓スワップの韓国側へのメリット」を繰り返しておきましょう。ずばり、「米ドルか日本円という、国際的なハード・カレンシーを、日銀または日本の財務省から入手することができる」、という点にあります。

あくまでも一般論ですが、通貨が暴落すれば、外貨でおカネを借りている企業は借金を返すのが難しくなりますし、外貨準備が欠乏すれば、通貨の暴落を防ぐための「自国通貨買い・外国通貨売り」の為替介入ができなくなってしまいます。

だからこそ、通貨当局が相手国から直接、外国通貨を入手することができるという通貨スワップを、韓国が執拗に求めているのでしょう。

しかも、日本の場合は140兆円を超える外貨準備を保有しており(2019年12月末時点)、実際に日本が外国との間で保有している14本の二国間スワップのうち、5本の通貨スワップは、いずれも米ドルでの引出が可能です(図表7)。

図表7 日本が諸外国と締結する二国間スワップ
契約相手 交換上限 交換条件
米連邦準備制度理事会(FRB) 無制限 (為)日本円と米ドル
欧州中央銀行(ECB) 無制限 (為)日本円とユーロ
英イングランド銀行(BOE) 無制限 (為)日本円と英ポンド
スイス国民銀行(SNB) 無制限 (為)日本円とスイスフラン
カナダ銀行(BOC) 無制限 (為)日本円と加ドル
豪州準備銀行(RBA) 1.6兆円/200億豪ドル (為)日本円と豪ドル
中国人民銀行(PBOC) 3.4兆円/2000億元 (為)日本円と人民元
シンガポール通貨庁(MAS) 1.1兆円/150億シンガポールドル (為)日本円とシンガポールドル
タイ中央銀行(BOT) 8000億円/2400億バーツ (為)日本円とタイバーツ
インドネシア銀行(BI) 227.6億ドル (通)日本円または米ドルとインドネシアルピア
フィリピン中央銀行(BSP) 120億ドル (通)日本円または米ドルとフィリピンペソ
シンガポール通貨庁(MAS) 30億ドル (通)日本円または米ドルとシンガポールドル
タイ中央銀行(BOT) 30億ドル (通)日本円または米ドルとタイバーツ
インド準備銀行(RBI) 750億ドル (通)米ドルとインドルピー

(【出所】日銀『海外中銀との協力』のプレスリリース、財務省『アジア諸国との二国間通貨スワップ取極』等より著者作成。「交換条件」欄に(為)と示しているものが為替スワップ、(通)と示しているものが通貨スワップ。なお、通貨スワップについては「相手国が日本から引き出す際の条件」のみを記載している)

これを引き出す側から見れば、インドネシアなど東南アジア4ヵ国とインドは、米ドル資金が不足した場合でも、日本から通貨スワップを使って米ドルを引き出すことができる、というわけです。

さらに、日韓通貨スワップにはもうひとつ、重要な効果があります。

それは、「日本が韓国を信用補完している」というメッセージが国際的な市場参加者に発せられることで、韓国としては安心して、通貨が暴落しない範囲で通貨安誘導できる、というメリットです。

以前の『日韓通貨スワップこそ、日本の半導体産業を潰した犯人』などでも報告したとおり、韓国はこれまで、世界的な金融危機のドサクサに紛れ、自国通貨を意図的に安く誘導し、それを一種の「補助金」として産業競争力を不当に嵩上げし、日本の産業を潰しに来た、と、当ウェブサイトでは考えています。

日韓通貨スワップは危険

今月、韓国で行われた国会議員総選挙では、「左派」と呼ばれる勢力が3分の2近くの勢力を占めて圧勝しました。すでに韓国では、日米両国との関係を損ねても良い、とばかりの動きが、いくつも出て来ています(※これらについては、近日中に別稿で触れたいと思っています)。

こうしたなか、個人的に懸念しているのが、「韓国が本格的に中国や北朝鮮の側に行ってしまわないように、日本の側からも日韓関係改善の努力を行い、韓国を繋ぎ止めるために日韓通貨スワップを提案すべきだ」、といった動きです。

実際、『日韓スワップ、あえて「日本のメリット」を考えてみる』でも触れたとおり、2011年10月に野田佳彦首相(当時)が推進した「700億ドルの野田スワップ」の経緯について、財務省の国際局長は2014年4月の国会答弁で、次のようなロジックを展開しました。

  • ①日韓通貨スワップを初めとする地域の金融協力は、為替市場を含む金融市場の安定を通じ、相手国(韓国)だけでなく、日本にとってもメリットはある
  • ②日本と韓国との間の貿易・投資関係、とりわけ日本企業も多数韓国に進出して活動しているという事情を踏まえると、その国の経済の安定というのは双方にメリットがあり、通貨という面では、むしろ通貨ウォンを安定させるという面もある
  • ③財務省が当時、日韓通貨スワップの規模を拡大した理由としては、韓国のためだけというよりも、むしろ日本のため、ひいてはアジア地域の経済安定のためという側面があった

先ほど紹介した韓国の一般国民の見解も、財務省の人間がこんな発言をするから、相手に誤解を与えている、という側面があるように思えてなりません。

消極的経済制裁に使える?

なお、唐突ですが、『総論:経済制裁について考えてみる』でも述べたとおり、経済制裁(相手国に対する経済的な打撃を与える行為)には、「積極的に日本が相手国に打撃を与えるために発動するもの」だけがふくまれるわけではありません。

相手国が日本人の入国を拒絶するという意味での「セルフ経済制裁」や、相手国が困っているときにわざと助けないという「消極的経済制裁」も含まれます。

日本はこれまで、ともすれば「性善説」に立ち過ぎていて、「日本が相手国に便宜を図れば、相手国は日本に感謝してくれるはずだ」、といった誤解が蔓延していたように思えてなりません(とくに財務省や外務省に、そうした傾向が顕著に見られます)。

これを逆手に取り、自称元徴用工問題を筆頭に、日本の信頼を踏みにじり続けている韓国に対しては、この日韓通貨スワップをうまく使うというのも一手でしょう。

具体的には、日本政府が日韓通貨スワップについては完璧にノーコメントを貫き、本当に韓国が外貨不足に追い込まれた際にも、韓国の支援要請を無視する、という使い方です。

この点、日本政府の反応としては、『韓国の無礼な態度により麻生総理が席を立ったのは当然』で触れたとおり、麻生太郎総理(※副総理兼財相)の口から、

『日本が借りてくれと言えば韓国としては借りてやらないこともない』と(韓国側が)ぬかした

といった発言が出ているのを除けば、日韓通貨スワップについては一切の言及はありません。しかし、だからといって「日韓通貨スワップ」ないし「日韓為替スワップ」といった構想が水面下で動いていないという保証はありません。

引き続き、このテーマからは目が離せなそうです。

新宿会計士:

View Comments (37)

  • 日本がスワップ必要だよ。国際信用度低い国だから。

    この手の挙げたマイナス要因がまったく前段の説明にも理由にもなってない飛躍ってのは韓国のプロのマスコミにもよく見られることではありますしね。
    この人の場合はソブリン格付の話を早くどっかでしたかっただけなんでしょうけど。

  • 特に若い韓国人は反日教育の成果で、自分たちにとって都合の良いデータだけを基準に主観的要素満載で日本を観る。
    こんなデータは参考にはしないんだろうな…つーか、あえて見ない。見たくない。信じない。

    世界最高の国ランキング2020日本と韓国の順位は?
    https://japaninfo.net/bestcountryranking

  • いわゆる、「木を見て森を見ず」を地で行くツイートですね。
    また財務大臣の発言は、地雷を埋めたとも考えられます。

  • 韓国は、アポトーシスしていく。ゆっくりですが。
    関わらないことが、良さそうですね。

    • いつか来た道 様

      アポトーシス派がいらっしゃって嬉しいです。
      幸せ回路全開で、お花畑を見ているなら、そっとしておいてあげましょう。

      • アポトーシス、いろいろ勉強になります。
        ググってみたらネクローシスっていう症状の定義があることも。

        為替スワップで、ネクローシス。

  • 会計士さま、今朝も手厳しかったですね。
    某新聞社が大好きな「対話」が意味をなしていないことは多いと皆知ってます。すなわち「いいぶん」の前半と後半で論理が破綻、ちぐはぐ、なのが常套手段。言っていること変だろう。それが通じない相手は無視するしかないです。

  • 日韓が通貨スワップ結んで、日本は即限度いっぱいまでドルで引き出した上で、金融機関に低金利で入札で貸し出せばいいのです。
    FRBから供給されるファシリティより条件よければそちらに飛びつくでしょう。

    日本にとって日韓スワップが必要だとすれば、もちろんフル活用出来るような条件でスワップが締結されるでしょう。FRBより条件悪ければ日本からスワップをお願いする必要はありません。何せFRBのは金額無制限ですから。

  • 韓国人が、日本との通貨スワップを、日本への援助だとか、日本にもメリットが有るとか言うのは、昔から韓国人デフォルトです。多分起源は、韓国政府が「日本と通貨スワップを結んでやった」というような説明を、国民にしていたのを、愚民が都合良く信じていたためだと思います。
    TPCCPへの加盟や日韓スワップを、韓国の関係改善のカードだと思っているくらいだから、驚く事では有りません。
    それに比べれば、キットやマスクの提供が、カードになると思うのは、大した話では無いと思います。
    これ以外の韓国人デフォルトのなかの日本は、
    ◯新型コロナウイルスで、日本は滅びる。
    ◯福島の放射能で日本は汚染されて滅びる。
    ◯日本は沈没する。富士山が噴火する。
    など、日本に呪いをかけるような話には、事欠きません。
    これらは、全て彼らの理想であり、願望なんです。

    • だんな 様

      そんなに危険な日本に、韓国人を多数住まわせておくなんて、文大統領は何と非情なのでしょう。
      安全な韓国への帰国を働き掛けるニダ。

  • 更新ありがとうございます。

    何なに?コロナの検査キットを韓国のを使えってか?こちらから頼んだわけでもないのに、随分エラソーですね。ハイ、必要ありません!後で不具合あっても日本のせいにする、貸してやったと触れ回る。

    そういうの、韓国とはウンザリなんだよ。格付業者のランクなど、どうでもいい。要はどれだけ米ドルがあるかだ。正味幾らあんの?(笑)

    通貨スワップは無いから、期待しなさんな!

  • 格付け会社も商売だし、韓国はいろいろな意味でお得意様だしね。

  • 今回の為替スワップは、極度額(韓国は600億ドル〕と返済期限が定められた短期の資金融資です。
    必要な担保は引出し額の110%・・しかも追証の無限請求付きです。

    もしも本格的な外貨不足に陥った際には、通貨信用を質草に入れて〔政府保証債貸与によるテコ入れ〕米ドルを調達することになるのだと思います。

    受けた恩〔米ドル〕をウォンで返すような事態になれば、企業の社債や政府保証債の信用格付けはどうなってしまうんでしょうね。

    まぁ、彼らは信頼の毀損〔裏切り〕による延命が国是のような存在なのですから、罪悪感を感じることもないのかもですが・・。

    日本としても彼らからの信頼回復〔謝罪と是正〕は期待できないのですから、円の切れ目は縁の切れ目
    って方針でいいのだと思います。〔あゝ、彼らの欲しいのは米ドルでしたね・・。

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