金正恩危篤説に反論する韓国は、まるで北朝鮮の代理人

昨日の『【速報】CNNによる「金正恩危篤説」と市場の反応』で「速報」的に取り上げた、北朝鮮の独裁者である金正恩の「危篤」説を巡っては、予想に反して北朝鮮の側からは明確な否定の報道が出て来ていません。しかも、意外なことに、これを正面から否定しているのは北朝鮮ではなく、韓国政府であるようです。そういえば、数日前にはドナルド・J・トランプ米大統領が「北朝鮮から親書をもらった」と述べているのですが、これらはいずれも米国から北朝鮮(と韓国)を揺さぶるためのブラフ、という気がするのです。

米国から相次ぐ不思議な報道

不思議な報道①親書説

例の武漢コロナウィルスSARS-CoV-2蔓延のさなかで埋もれている報道のなかで、北朝鮮に関連し、いくつか気になる報道が出て来ています。

そのなかでもとくに「不思議なニュース」といえば、次のものでしょう。

トランプ氏、正恩氏から「書簡」 北朝鮮は否定

トランプ米大統領は18日の記者会見で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長から「素晴らしい書簡」を最近受け取ったことを明らかにした。<<…続きを読む>>
―――2020/4/19 7:56付 日本経済新聞電子版より

リンク先の日経電子版の記事を含め、いくつかのメディアが報じているとおり、ドナルド・J・トランプ米大統領は土曜日、記者会見で、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)から「素晴らしい書簡」を受け取った、「金正恩氏とはとても良好な関係にある」、などと述べたのだそうです。

唐突な発言ですね。

ちなみに日経電子版はトランプ氏のこの発言について、

北朝鮮が短距離ミサイルの発射を繰り返すなかで、首脳同士の関係に問題はないとアピールする狙いがある

と勝手に決めつけているのですが、果たしてこれは分析として正しいのでしょうか。

書簡の内容に言及しない時点で…

これについて考える前に、この報道にはそもそも論として、いくつかの不自然な点があります。

まず、その「素晴らしい書簡」とやらの内容について、トランプ氏は何も言及していない、という事実です。これまでの経緯を踏まえれば、もし本当にそんな「素晴らしい書簡」を受け取っているのだとすれば、トランプ氏の性格からすれば、

その書簡で金正恩氏は私に『近いうちに2人で会おう』と提案した

などという具合に、一言くらい、その内容に言及するような気がします。それなのに、「素晴らしい書簡」についての何の言及もないというのは、そのこと自体、そのような書簡は送付されていないか、あるいは「『書簡を受け取った』と発表すること自体が目的」ではないかと思わざるを得ません。

また、先ほどの日経電子版の記事によれば、次のような記載があります。

  • 北朝鮮は19日に外務省対外報道室長の談話を発表し「最近、北朝鮮最高指導部は米大統領にいかなる手紙も送っていない」と親書のやりとりを否定した
  • そのうえで「朝米首脳の関係は余談のように持ち出す話題ではない」とコメントした

本当に送っていないのならば、無視すれば済む話なのに、わざわざ北朝鮮が談話を発表してトランプ氏の発言を打ち消すこと自体、北朝鮮がこの米国の発表に相当慌てている証拠ではないでしょうか。

不思議な報道②金正恩危篤説

その一方で、当ウェブサイトでは昨日、『【速報】CNNによる「金正恩危篤説」と市場の反応』のなかで、米CNNが「米政府高官の話」として、金正恩の健康状態が「深刻な状況にある」と報じた、とする話題を紹介しました。

CNN自体がトランプ政権と仲が悪いという点は少し気になる点ですが、ただ、CNNが報じたことで、ほぼ全世界のメディアが「金正恩健康不安説」に注目したことは事実です(実際、デイリーNKなどのニュースにはめったに反応しない日本のメディアも、CNNの報道を大々的に引用しました)。

トランプ大統領本人が「金正恩氏から素晴らしい書簡を受け取った」と、あたかも金正恩が健在であるかのように発表しつつ、その裏で米政府がわざとCNNに対して金正恩の健康不安説を耳打ちしたのだとすれば、米国もなかなかの策士(?)ですね。

韓国と北朝鮮の反応

理解に苦しむ韓国の反応①親書説

ただ、米国発の「金正恩からの親書」説と「金正恩健康不安」説に対し、それぞれ大きく反応しているのが、韓国です。

まず、「親書」については、韓国大統領府が即日反応しています。

トランプ氏 文大統領に金正恩氏からの親書紹介=「温かい手紙届いた」

―――2020.04.19 15:03付 聯合ニュース日本語版より

韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の記事によれば、この「親書」の存在については、トランプ氏がメディアに公表する前である18日の時点で行われた米韓首脳の電話会談で、事前に韓国に知らされていたと「韓国大統領府が19日に明らかにした」のだそうです。

思わず「本当?」とつぶやきたくなる記事ですね。

もっとも、米韓首脳会談の内容について、米国と韓国がまったく矛盾する内容を発表する(あるいは米国が述べていない内容を韓国が一方的に発表する)のはいつものことですし、状況証拠に照らしてこのような場合、ウソをついているのはたいてい、韓国の側であることが多いです。

今回の報道発表も、自分たちの国が決して「蚊帳の外」に置かれているわけではないと強弁しているように見受けられますが、ただ、それと同時にもし見栄を張るならば、「親書の存在は北朝鮮から直接聞かされている」などと述べそうな気がします。

何となく、「親書の存在は米国から聞かされたものであり、北朝鮮からは聞かされていない」、つまり、「米国が韓国に対してウソをついた」、というニュアンスを醸し出そうとしているように思えるといえば、深読みのし過ぎでしょうか?

理解に苦しむ韓国の反応②金正恩危篤説

ただ、韓国政府の不可解な言動は、これだけではありません。

韓国情報当局「金正恩氏、江原道の別荘に滞在して非公開現地指導」(1)

最近身辺異常説が出回っている北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が江原道(カンウォンド)で正常な活動をしていることが21日、確認された。<<…続きを読む>>
―――2020.04.22 07:49付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された記事によれば、「韓国政府当局者」は21日、

金委員長は最近、江原道某所にある別荘に滞在しながら周辺地域を非公開で現地指導するなど正常な活動をしていると承知しており、今月14日には江原道元山隣の文川地区で、北朝鮮軍が行った短距離巡航ミサイル発射現場を訪れたと見られる

などと述べたのだそうです。

まるで北朝鮮政府の公式見解みたいですね。

それに「正常な活動」というのも不思議な表現です。というよりも、首都・平壌(へいじょう)を離れ、日本海に面した江原道(こうげんどう)に長期滞在していること自体、「正常な活動」をしていない証拠であるように思えてなりません。

ただし、もし韓国政府が北朝鮮によってそのように「言わされている」のだとしたら、金正恩自身が江原道に滞在しているという事実を北朝鮮が認めたという間接的証拠でもありますが…。

「自分でメディアに出てみろよ」

さて、北朝鮮側はこの危篤説について、現在のところ、表立って反論することはしていないようであり、中央日報に今朝掲載された次の記事によれば、北朝鮮メディアが金正恩の動向を「短く報じた」に留まっています。

金正恩氏の重篤説が浮上した日、北朝鮮メディアは「金正恩委員長の誕生日の祝い膳」を報道

金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の身辺異常説が浮上した21日、北朝鮮メディアが金委員長の動向を短く報じた。<<…続きを読む>>
―――2020.04.22 08:39付 中央日報日本語版より

中央日報によれば、北朝鮮の「朝鮮中央通信」は21日、金正恩が北朝鮮の「労働英雄」の80歳の誕生日に際して「祝い膳」を送ったと伝えたのだそうですが、そのわりに、肝心の「祝い膳」自体の関連写真を公表していないのだとか。

こうした状況を見ると、やはり、米国の

もし健在だというのなら、自分自身でメディアに出てみろよ

という挑発に対し、北朝鮮は防戦一方で、金正恩が「健在である」かのごとく、短く報じるのがやっとである、という印象を持ってしまいますね。

韓国を揺さぶる米国?

さて、韓国では先週の国会議員総選挙で、左派政党で文在寅大統領の出身母体でもある「ともに民主党」が衛星政党とあわせて国会の議席の6割を占めるという圧勝を収めました。

これについては先ほどの『成就する鈴置氏の予言:ベネズエラ化に踏み出した韓国』でも報告しましたが、今後、韓国は保守政党の歯止めが利かず、まるでかつてのベネズエラなどのように、共産主義的、反米的な方向に舵を切っていくのではないかとの懸念があります。

ただ、米国のインテリジェンスであれば、当然、韓国の赤化統一(あるいは中華属国化)については警戒しているべきでしょうし、ここで韓国と北朝鮮を同時に揺さぶっておこうとする判断が米国政府内に働いていても不思議ではありません。

そして、金正恩からの「親書」説にせよ、金正恩の「健康不安」説にせよ、米国から流れてくる情報に対し、韓国や北朝鮮が右往左往していること自体、こうした米国の「ブラフ」が「図星」であるという間接的な証拠ではないかと思います。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

もっとも、自称「半万年」(?)の歴史を有する韓国や北朝鮮のことです。

「インチキ外交」でこれまで生きて来た彼らが、米国からの報道で一時的に右往左往することはあったとしても、都合が悪くなれば「開き直る」といういつものパターンで乗り切れば良いと考えているのかもしれません。

【参考】韓国と北朝鮮のインチキ外交
  • ①ウソツキ外交…あることないこと織り交ぜて相手国を揺さぶる外交
  • ②告げ口外交…国際社会に対してロビー活動を行い、相手国を貶める外交
  • ③瀬戸際外交…国際協定や国際条約の破棄、ミサイル発射などの不法行為をチラつかせる外交
  • ④コウモリ外交…主要国間でどっちつかずの態度を取り、それぞれの国に良い顔をする外交
  • ⑤食い逃げ外交…先に権利だけ行使して義務を果たさない外交

いずれにせよ、朝鮮半島の情勢については目が離せない展開が続くであろうことは間違いないでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    中国共産党が危篤説を否定したという情報も加味して分析したいですね。

  2. 閑居小人 より:

    先日の北の重要とされるイベントに首領殿が姿を見せなかったとの報道に、武漢肺炎が怖くて逃げ回っているのかなと勝手に想像していました。
    トランプ大統領の発言とCNN報道、なかなかえぐいですね。
    今後の成り行きが楽しみです。

  3. だんな より:

    シンプルに考えれは、韓国政府が嘘をついており、金正恩はヤバイかもだと思います。
    少なくとも、韓国政府が事実を言う事は、無いと思います

  4. 愛読者 より:

    コロナを機に,北朝鮮が国内にいた外交官や外国人(中国人が多かったか)の大半を国外に追い出してしまったので,アメリカも北朝鮮からの情報ソースが激減していると思います。まだ,幾つかのルートは残っているとは思いますが,金正恩氏病気情報の裏付けが取れないので,CNNを利用した可能性は高いと思います。
    韓国政府はもともと怪しいところがあって,高官の何人かは北朝鮮と繋がっている可能性があると思います。そうでなくても,韓国国内には北朝鮮の工作員が大勢いるはずです。
    中国と北朝鮮の関係は微妙で,貿易量の減少とともに,中国に入ってくる北朝鮮情報も減っていると思います。
    元気なら今日か明日あたりまでには報道に登場しそうなものです。影武者の話もあって,素人には判断が難しいですが。重病でないまでも病床にいるとか,アメリカはそのあたりの情報がほしいのでしょう。
    この話は,また後日,情報が増えたところで検討してみたいと思います。

  5. G より:

    韓国に内通者がいて云々ですら、彼らを買いかぶってるのかもしれません。
    武藤元大使がおっしゃるように、そもそも韓国は北朝鮮の情報なんかもってなくて、従北勢力というのも単に北朝鮮に憧れてるだけの存在なのかも知れません。
    よく知らないけど危篤説じゃ北朝鮮まずいだろうから、韓国としてはフォローしとこう、位の話なのかなと思います。

    多分真相に近い情報を得てるのはアメリカ。トランプさんの発言からも金正恩が健康な状態でないというのが漏れちゃってます。

  6. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    韓国はさすが、北朝鮮の代理人ですね。ハナシに入れて貰ってないのに、「ウチを通してすべて話は進んでいる」と言いたいのか(笑)。

    本当に危篤なら、北朝鮮も韓国の阿呆を相手にしていられないです。しかし金正恩が「江原道某所にある別荘に滞在」なんて、信じられないです。

    江原道のような辺鄙なところ、彼の趣味嗜好に合うモノなど、一切無い(と断言できる)。狭い北朝鮮内で、泊まりがけで行くのは危険。

    平壌にいくつかある家が、警備上一番安全なはず。地方の特閣(招待所)にわざわざ行く必要無いです。これはカムフラージュだと見る。

    今、金正恩は一番優秀なスタッフのいる、金委員長一家専属の病院でしょう。そう言えば日本人拉致被害者も特閣に住まわせてるんでしたね。

  7. ブルー より:

    反日もさることながら、韓国の他国への一方的な片想いもなかなか成就せず恋路は滑らかではありません。いつぞやもアメリカと北朝鮮の間を取り持ってるつもりで北朝鮮に肩入れしていたら「南朝鮮当局者は米朝関係を仲裁しているように世論化しながら発言力を高めようとしているが対話の当事者はアメリカと北朝鮮であって、その敵対のそもそもの初めは朝鮮戦争当事者の韓国にあるんだから余計な口を出すな」みたいなケンモホロロの反応が北朝鮮から韓国に帰ってきた事もありました。まあごもっともと言やごもっとも。いいご挨拶と言やいいご挨拶なんですが、韓国は政府もマスコミも、この手の「自分らを省みない余計なお世話」がしばしば散見されますな。
    何かと日本をあげつらって「日本のような失われた10年のように韓国経済もなってしまう」だの「日本の政治のように1.5党体制にいずれ韓国もなってしまう」だの日本を韓国の「悪い見本」のように言う。
    こちらから言わせれば「見誤ってるだとかなんだとかというより、そちらが日本をそう考えようとアンタらそれ以前ですから。アンタらの問題はそんな生易しいモンじゃないですから。少しは自分らの足元見なさいよ。」と言いたくなりますが、教えてやる必要もなければ、アドバイスしてやりゃすぐ逆上してハナッから受け付けない妙なプライドばかり高い劣等生を善導してやる義理も無い訳です。
    今や韓国のそうした天上天下唯我独尊状態が韓国の政治や経済をのっぴきらない所へ驀進させているんだから哀れなものです。

  8. 匿名 より:

     CNN続報。トランプ大統領が金正恩に煽りを入れる(笑)。
     “Good luck”、「まぁ、頑張れや(お前の反応を楽しみにしている)」くらいの意味かな、日本語になりにくいけど。

    Trump says he doesn’t know whether Kim Jong Un is ill but wishes him luck
    https://edition.cnn.com/2020/04/21/politics/trump-kim-jong-un-north-korea/index.html
    “I can only say this, I wish him well,” Trump said when questioned about Kim’s condition. “Good luck.”

    1. 匿名 より:

      Good“Lack”って言ったんじゃねえの?もしかして

    2. はにわファクトリー より:

      語彙の貧困さはトランプ大統領の「持ち味」ですが、虚報誤報と指弾されているかも知れないCNNが照れ隠しの化粧をしている部分を差し引いても、匿名さまが書くように大統領発言のニュアンスは「元気でな、うまくやってとくれ(次会えるといいけどな)に読めますね。

  9. 通勤嫌いな不良サラリーマン より:

    次の等式が成立しているので、今回の韓国反応は、全く違和感ありません(。-`ω´-)キッパリ!! 

    文大統領=北の首席報道官
    韓国政府当局者=北の政府当局者

    p.s.
    某県庁所在市から東京経由都内勤務。朝夕とも座っての週一or週二通勤なのでコロナさえなければ、理想的な通勤環境なんですけど。。。

  10. 名無しの権兵衛 より:

     「トランプ米大統領は18日の記者会見で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長から『素晴らしい書簡』を最近受け取ったことを明らかにした。」
     トランプはん、あんたは、ほんまに千両役者やね。オバマはんも習近平はんも安倍はんも、誰もこんな芝居はとてもできまへん。まして、文在寅などに出来る訳おまへん。トランプはんには、是非、アカデミー賞主演男優賞を差し上げとうおます。
     

  11. 名無Uさん より:

    この固唾を飲むようなピリピリ感…
    パヨク勢の動揺も隠しきれない有り様です。

    いつ、朝鮮中央通信から『重大発表』の告知が来てもいいように、身構えておくべきでしょうね…
    もし、『重大発表』の告知があったなら、その瞬間から日本のネットのコメントは真っ二つに分かれるでしょう。
    金与正氏を表現するのに、『キシリア』とあだ名を付ける派と、有能かつ美貌の『女首領』と喧伝する派です。

    これがお互いに馬鹿にしあうと、この日本でどんな暴発が起こるか予測不能です。
    頼むから、その期間はお互いに触り合うことだけは止めて欲しい…
    御自重ください。
    (マジで)

  12. 匿名 より:

    「こんなに元気なんだぞ」
    「そうだそうだ」

    と影武者が二人並んでみせる

    そんなシュールな光景を希望します

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