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本当に「日本は韓国手本に検査増やせ」と言ったのか?

昨日の『米国の「専門家」が日本に「韓国手本に検査を増やせ」』では、米ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員が「日本は韓国などを手本に武漢コロナウィルス感染の検査数を増やすべきだ」という趣旨の主張をした、という話題を取り上げました。残念ながら、現時点で朝日新聞社がナゾ氏にどんなインタビューをしたのか、その全文を知ることはできないのですが、結論的にいえば、どうもナゾ氏がそんな発言をするとは思えないのです。

ナゾ氏は本当にそんなことを述べたのか?

昨日の『米国の「専門家」が日本に「韓国手本に検査を増やせ」』では、朝日新聞の記事を元に、「米ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員(Jennifer Nuzzo, DrPH)」が「日本は韓国などを手本に、武漢コロナウィルス感染の検査数を増やすべきだ」と述べた、とお伝えしました。

その際に参照した記事のリンクは、次のとおりです。

「日本のPCR検査少ない」米専門家が指摘 手本は韓国(2020年3月14日 21時30分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

これについては、『「トリアージ」の重要性 医療崩壊進む韓国が反面教師』でお伝えしたとおり、当ウェブサイトとしては、「韓国はむしろ貴重な医療リソースを検査で潰した結果、医療崩壊が生じつつある可能性が高い」と考えています。

したがって、その韓国を「お手本」にして、検査数を増やすべきだ、というのは、ちょっと何をおっしゃっているのかわからない暴論にしか見えません。このため、「専門家」ヅラしてそんな暴論を述べるとは、この「ジェニファー・ナゾ氏とは本当に専門家なのか?」と疑念を呈したのです。

ナゾ氏のツイッターを読んでみたら…

しかし、その後気になって、ナゾ氏のツイッターアカウント(@JenniferNuzzo)を眺めていると、ここ数日、彼女自身が発信したツイート、あるいは彼女がリツイートしたツイートは、いずれも非常に説得力のあるものばかりであり、誠に失礼ながら彼女が「日本は検査数を増やせ」と述べたとは信じられません。

彼女が発したツイートやリツイートした内容について、いくつかその実例を挙げておきましょう(オリジナルツイートのテキスト、ツイートの埋め込み、ツイートの意訳の順で列挙していきます)。

たとえば、彼女は「検査体制自体を増強することは必要だが、だからといってすべての人を検査すれば良いという話ではない」、とツイートしています。

Yes, we must increase COVID19 testing capacity. But that doesn’t mean everyone needs to be tested. Even if there were enough tests, there aren’t enough clinicians to test everyone. If you are sick  and don’t need to be hospitalized, stay home.
―――2020/03/15 10:54付 ツイッターより

もちろん、我々はCOVID19の検査能力を高めるべきだ。しかし、だからといってすべての人を検査しなければならないという意味にはならない。もし十分な数の検査がなされたとしても、すべての人を検査するために十分な医師はいない。もし入院するほどではないにせよ具合が悪いというのなら、自宅で安静に。

このツイート自体、くだんの朝日新聞の記事に記載されていた内容とは、ずいぶんとニュアンスが異なります。

現在韓国が行っているのは、本当に検査しなければならないのか、その必要性がよくわからない事例についても徹底的に検査しているという行為ですが、結果的には「医療リソースを検査で食いつぶしている行為」そのものであり、現実に韓国では医療崩壊が発生しています。

これに対し、現在の日本政府の方針は、「すべての人を検査するのではなく、『帰国者・接触者相談センター』などが必要と判断した人のみを検査する」というものであり、現在の日本では少なくとも医療崩壊自体は発生していません。

少なくとも現時点においては、韓国政府よりも日本政府の行動の方がナゾ氏の考え方に近いような気がします。

あれ?主張内容は非常にマトモでは…?

ナゾ氏の見識が伺えるツイートは、これだけではありません。

A question I often get is when does this all end? No one knows. But we have to set expectations that measures we are taking will likely have to be maintained. Political leaders have to make it clear that this is not simply going to go away or return to normal in 2 weeks.
―――2020年3月14日 22:23付 ツイッターより

(このコロナ騒動は)いつ終わるのかとよく聞かれるが、その明快な答えはない。しかし、現在我々が取っている対策については維持されるべきだ。政治指導者らも、こうした状況が2週間で消え去ったり、日常に戻ったりするなどと単純に考えるべきではない。

自体がいつ収束するかという予断を持たず、しかし、現在の対策については粛々と維持すべきだというツイートですね。

また、個人的に「これは興味深い」と思ったのが、次のリツイートです。

Travel bans have neither stopped spread of novel #coronavirus nor prevented it from becoming a pandemic. Today, @ThinkGlobalHlth launched a new tracker of #COVID19 cases in countries with and without travel restrictions on China. Will update regularly https://thinkglobalhealth.org/article/tracking-coronavirus-countries-and-without-travel-bans
―――2020/03/14 01:32付 ツイッターより

旅行規制はコロナウィルスの拡散、パンデミックを防止するのにまったく役に立たなかった。本日以降、@ThinkGlobalHlthは中国からの入国禁止措置を講じなかった国に関するCOVID19の新たなトラッカーを立ち上げ、ウェブサイトで更新することにした。

ちなみに「中国からの入国を規制したとしても、感染の蔓延防止にはほとんど意味がない」という点については、当ウェブサイトではすでに『【読者投稿】学術論文から見た「入国規制に意味なし」』や『【読者投稿】「安心より安全を」理系研究者の緊急提言』などでも提唱されているところです。

(聞いていますか、「140字で要約して」の某有名作家さん!?)

さらには、「感染者が~!」「検査が~!」などと大騒ぎする人たちに読んでいただきたいのは、次のツイートでしょう。

Test or no test, if you’ve got fever or cough, stay home until you’re well and if you’re well, stay home and avoid non-essential contact with others. It will save lives. Really.
―――2020/03/14 13:47付 ツイッターより

検査をしようがしまいが、熱と咳が出るならば具合がよくなるまで自宅で安静にすべきであり、不必要に他人と会うべきではない。そのことが実際に命を救うことになる。

まさに「検査ばかりしても意味がないよ」、ということですね。

可能性としてはやはり報道に問題があるのか?

さて、ナゾ氏自身が実際のところ、朝日新聞のインタビューに対してどう答えたのかについては、残念ながら日本時間の昨夜時点でナゾ氏のツイートには見当たりませんでした。ただ、ナゾ氏の一連のツイート、リツイートを読んでいる限りは、

日本も韓国をお手本にして検査件数を増やすべきだ

と述べたとは、にわかには信じられないのです。

というよりも、ナゾ氏が発したいくつかのツイート、リツイートを読んでいる限りは、おそらくナゾ氏が言いたかったのは、

検査能力を拡大すること自体は必要だが、片っ端から検査をすれば良いというものでもない

ということではないかと思えてなりません。

いずれにせよ、朝日新聞のナゾ氏に対するインタビューの全容がわからないので、これだけでは何とも言い様がないのですが、朝日新聞の記事はナゾ氏の発言を正確に記事にしたのかどうかが疑わしくてならないのです。

オマケ:秀逸なコメント

さて、昨日は匿名のコメント主様から、こんな趣旨のコメントをいただきました(文章については適宜修整しています)。

韓国がやっていることは、「池にブラックバスが大量発生しそうだから」と、池の面積の7000分の1という大きさの網(しかも穴が開いた網)で1日に1回、片っ端からすくっている状態。7000回すくえば池の面積を網羅することはできるが、それでもブラックバスは泳いでいる。

日本がやっていることは、網は小さいが、魚影の濃いところ・ブラックバスが潜んでいそうなところを重点的にすくうという方法。網の大きさを自慢しても何の自慢にもならない。

この説明は、なかなかわかりやすくてスッキリしていますね。

新宿会計士:

View Comments (56)

  • 感染クラスターが各地で爆発しまくっててんやわんやで封鎖地区でドライブスルー検査までしているアメリカに比べて日本は余力があるのだからもう少し検査量を増やしてもいいのでは?ぐらいは誘導されて言ったかもしれないですね。

    あと、韓国のやってることは疫学調査面では医学的に貢献してるとは思いますよ。

  • おはようございます。

    一次情報源とA社の新聞記事の内容相違ですが、お得意のカットアンドペーストと補間(ここに願望が入っている)によって作成されたと考えられます。
    部分的に元の情報が入っているが、隙間に別の情報が詰まっており、全体としては元の情報と似ても似つかぬ情報に作り替えられてしまう。
    政治家のインタビューなどでも頻繁に使われる印象操作の手法で、最も注意する必要があります。
    怪しいと感じたら元の情報源に近付いて再度確認するか、暫く待ちましょう。

    ブラックバスの件ですが、オンラインゲームでのガチャの問題と同じですね。
    計算してみると、とんでもない回数(たとえ9割釣り上げようとしても)になります。
    こういう切り口で考えても、感染者を全て捕捉しようという考えは愚かでありますね。

  • 「サンフランシスコ=尾形聡彦記者」および、米ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員(Jennifer Nuzzo, DrPH)に直接問い合わせてみればはっきりするのではありませんか。相手してもらえるかどうかは分かりませんが。ところで尾形聡彦記者がLinkedInアカウントを持っていないとは思えません。アメリカで活動できているのですから。

  • ドライブスルー検査をしている時点で、感染を拡散してることに気づかないのでしょうか?

    お見事な日テレ「スッキリ!」の加藤浩次。世界を見れば「日本」がトップランナー

    https://www.youtube.com/watch?v=2p9f-qCfGH0

    高須先生も言われていた様に、検査1回ごとに感染防護服を変えなければいけないのは、
    私の様な素人にもわかるのですが?

    医師資格を持つ有害な自称専門家さんも居られたようですが。

  • なんと…(呆)
    ナゾ氏には、若造と言い放って申し訳ありませんでした。
    で、朝日はいつもの切り貼り御免の印象操作、他者の主張をねじ曲げて自社の主張にしてしまう、というヤツですか?
    この場合、人々の命がかかっている内容なんてこと、朝日はわかっているのですかね?
    普通ならわかってないと考えてしまうところですが、朝日の邪悪さをさんざん感じて来た自分は、朝日は人々を頃したくてウズウズしているから確信犯で書いているのではないのかと考えてしまいます。
    いや、この記事は本当に唖然とした内容でした。

    ところで、こんな記事がナショナルジオグラフィックから出ているようなのですが…
    https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/031300172/?ST=m_news

    スペイン風邪の起源の汚名まで、アメリカはシナに付け変えてやろうという動きです。米中で武漢肺炎の起源を争っている内容が、100年前のパンデミックにまで飛び火しています。アメリカの怒り、アメリカの本気度が伝わって来る内容です。
    ナショナル・ジオグラフィックって、妙に親中だったイメージがあったのですが、いつの間に変わっていたのでしょう?

  • フェイクニュースの作り方のお手本のような手口ですね。
    メディアが事前に作ったストーリーに合うように、外国人の発言の一部を切り貼りする。
    外国人を使うのは、発言の裏取りや発言の真意を確認しにくくするのと、海外からの国際的な意見であると装うため。
    一度外国メディアに報道させてから引用する形を取ることもありますが、今回はそこは手抜き。

    雑なんだよなー。嘘つきすぎて感覚が麻痺してるんだろうね。
    韓○人や中○人といっしょ。

    • ケロおさま

      >雑なんだよなー。嘘つきすぎて感覚が麻痺

      軽減税率が決まったとき、新聞社は罠にかけられたと当方は判断しました。「▲2%職業」「▲2%頭ノー」なるそしりを受け続けるであろうことは容易に想像がついたからです。報道記者の理解力は▲2%、これで行きましょう。永遠に。

  • 更新ありがとうございます。

    ナゾ氏の公式見解が出ないとなんとも言えませんが、記者が「日本も韓国みたいにガンガン検査すべきだ」と考えていて、ナゾ氏が(前提条件付きで)其れを良しとするコメントをしたので(前提条件を外して)記事を書いたのでは?との疑いが強いですね。

    朝日新聞にとって情報操作はして当然なんだな、とは常々思ってます。

  • 「アベ悪し」の結論ありきの作文を綴るのが日々の彼らの業務なのでしょう。

    「晴れる日もあれば雨の日もある それにつけてもアベの悪さよ」
    「株ならば上げもすれば下げもする それにつけてもアベの悪さよ」
    「痛快と本音漏らせば怒られる それにつけてもアベの悪さよ」
    「新聞の売り上げどんどん減っていく それにつけてもアベの悪さよ」

  • どんな素材も大好きなうんこ風味に作り変える料理人が朝日新聞。
    うんこをカレーと言って譲らず出して来るのが中央日報だと思います。
    両方、頭がクラクラしますが精神衛生上、凶悪なのは中央日報の方だと思います。

    • あのう、ちょっと例えが汚いんですけど、韓国風にやってみたにでしょうか?趣旨はわかりますけど。

      • アッキー様
        お目汚ししました。クオリティペーパーにふさわしくない表現でした。
        ウンコネタが好きなのは小学生まで、以後控えます。

  • 朝日新聞がねつ造記事を出す→関係者がツイッターでそれを誇張して拡散する→ツイッターで叩かれる、
    この流れは、定着していると思いますが。

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