輸出管理緩和を譲歩と呼ぶのは報復と呼ぶのと同じ

「ベリーショートメモ」です。時間がない中でどうしても更新したいので短めですが、昨日の『【速報】「韓国向け輸出管理を一部緩和」報道の意味』に関する所見です。

昨日の『【速報】「韓国向け輸出管理を一部緩和」報道の意味』でもお伝えしましたが、報道によれば、経済産業省は昨日、韓国向けの輸出管理を一部緩和する措置に踏み切りました。

具体的には、今年7月4日以降、個別許可に切り替えた3つの「リスト規制」品目のうちのひとつであるレジストを、「個別許可」だけでなく「特別一般包括許可」も使えるように戻した、という話題です。

これについて一部のメディア、ネット掲示板などでは、「日本政府が韓国に対して配慮した証拠だ」、「これは譲歩だ」、「12月24日の首脳会談を前にした日本政府の『和解』メッセージだ」、といった評価が出ているようですが、正直、こうした見解は、適切ではありません。

総論 対韓輸出管理適正化と韓国の異常な反応のまとめ』など、従前より当ウェブサイトで何度も強調してきたとおり、輸出管理適正化措置は貿易報復でも経済制裁でも何でもありません。

もちろん、タイミング的に見て、日韓首脳会談を前にした日本政府によるメッセージにも見えなくはありませんし、実際、保守系論客の間でも、元の輸出管理適正化措置が事実上の対韓報復だと見ている人もいます。

ただし、くどいようですが、当ウェブサイトとしては、そもそもの輸出管理適正化措置が自称元徴用工問題と明らかに無関係であるという状況証拠を多数提示してきたとおり、輸出管理と経済報復はまったく関係ないと結論付けて良いと考えています。

韓国側で輸出管理に良い方向への変化が見られたら緩和する(逆ならさらに厳格化する)のは当たり前であって、今回の措置を「譲歩だ」、「和解だ」と大騒ぎしているのだとしたら、それはそもそもの措置を「輸出規制だ」、「貿易報復だ」と見る韓国側とまったく同じではないかと思う次第です。

いずれにせよ、冷静な議論が必要なのですが、本件についてはまた時間が取れるときにゆっくりと議論したいと思います。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 七味 より:

    もともと日本政府は、元徴用工判決の日韓請求権協定違反と、輸出管理、それとGSOMIAは別物って立場ですものね♪

    ただマスコミとかは包括的な解決策とか言ってて、そういう意識があんまし無さそうだから、また冷水浴びせられた〜とか大騒ぎしそうなのです♪ o(^^o)(o^^)o

  2. 匿名 より:

    詳しいことはよくわからないのですが、マスコミが「譲歩だ」と書いてそれを鵜呑みにするのだけは恥ずかしいと思います。

    詳しい情報が出揃って総合的に判断できるまで、安易に騒がないのが知的好奇心の刺激を求める人々のお作法ではないでしょうか。

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    「日本が譲歩した」「韓国が一歩踏み込んだ」「アベの支持率を上げる為だ」、、こんな罵詈雑言が韓国、日本在住朝鮮人とクラップや共産党供、ジャーナリストから聞こえてます。

    いちいち付き合うのも阿呆らしいですが、日韓会談直前なので、『日本は徴用工判決と輸出管理の適正化は別だ』という風に見ていると、取ってくれればいいんですがね。

    同じ土俵というなら首脳会談で、韓国もそれなりに土産を用意しろ!というだけです。安倍政権はブレていないと思う。

  4. 海と島 より:

    はじめて大阪から投稿します。
    今年の夏、本ブログにアクセスして以来、熱心なファンになってしまいました。
    冷静沈着、論理的、さらに爽やかですらあり、日々感動して拝読させていただいております。
    また、コメント欄に投稿される皆様も、過激にならず、冷静に、時にはジョークも混じるなど、
    楽しい気分になる程です。ありがとうございます。

    本日のショートメモですが、会計士さまのおっしゃるとおり、
    今回の輸出管理は報復ではないのですから、淡々と行政が必要に応じて見直したということですね。
    理由は確認したいところですが・・・

    これからも楽しみにしております。

  5. G より:

    まあ、首脳会談でゼロ回答されて気付くとは思いますけどね。

    期待もたせないと国が保たないので必死なのでしょう。

    本来やるつもりでいた日韓首脳会談をひたすら引っ張ったことからみても韓国にメリットあげない感ありあり。

    例の緩和措置も期待させて落とす仕掛けだったり(緩和時期はいつでも良かったはず)

  6. ピークを過ぎたソフトエンジニア より:

    輸出管理とは別の話ですが、韓国政府のやっていること(サムスン関連の報道)を眺めていると、半導体産業を大事にしたいのか駄目にしたいのか、判断に苦しむところがあります。
    もし韓国政府が財閥企業の無能な上司役として君臨するつもりなら、足を引っ張るどころではなくなるでしょう。それこそ中国企業での中共の影響よりもっと悪い結果になる気がします。
    このところ騒がれている不良品大量発生についても、韓国政府の口出しを疑っています。

  7. 匿名 より:

    世耕が大臣だったらツイッターで解説してくれただろう
    政治家もマスコミ任せの報道は時代遅れだと思う

  8. カズ より:

    中央日報の記事を見ました。

    日本、輸出規制7カ月ぶり一部緩和も、韓国政府・企業「不十分」
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191221-00000003-cnippou-kr

    輸出管理の緩和対象となったのは、戦略物資の管理体制が適正だと判断された1社に対してのことなんですね。

    ですので、これまでの日本政府の主張が全くブレていないと確信しました。(安心しました)

    輸出管理の適正化を「貿易報復」と評し、適正確認に基づく緩和を「譲歩」と論ずるメディアたち。

    どのように雪解けムードをを演出しようとも根本的な認識違いを正せない限り、過度な期待を煽り失意の連鎖が生み出されるだけだと思うんですけどね。(無責任な譲歩ロンダリングは慎むべきです)

    >「7月1日の輸出規制以前に戻ることを望む我々の立場としては十分でない」・・???

    *「日本が自らの責任において判断することであり、歩み寄って解決できる性質のものではない」ことを理解してもらえないのですから、理不尽な要求には都度の反論を交えつつ粛々と適正対処を積み重ねるしかないのだと思います。

    *日本政府には最後までブレない対処を期待しています。

  9. だんな より:

    新宿会計士さんが、怒りの投稿なんですかね。
    なかなか、正論が理解されず、我慢し切れなかった印象ですが。
    私が、気に入らないのは、上のカズさんのコメントにもあるように、韓国政府が偉そうな態度で、発言する所です。
    昨日の晩から、分かっていても、腹たちますね。
    「偉そうな乞食」には。

  10. スカイネット より:

    ん?メディア報道を読む限り、譲歩だと思いますよ。少なくとも、韓国配慮。4~5ヶ月ばかりで、「実績ができたから、包括許可を認めるよ」なんて、納得できませんよ。

    まあ、月曜日に経産省がプレスリリースを出すと思うので、それをじっくり読んでみたいですけどね。

    1. 匿名 より:

      スカイネットさんへ。

      >メディア報道を読む限り、譲歩だと思いますよ

      んー。
      メディア報道がおかしいのかあなたの読み方がおかしいか、それとも単に知識がないのか。

      取り敢えず一般包括許可と特別一般包括許可の違いについて理解してからコメントしようか。

      1. evgeny より:

        匿名様、今回は特定包括です。

    2. クロワッサン より:

      スカイネット さん

      メディアの報道を鵜呑みにするかしないかですよ。

      メディアの報道は客観的事実プラス主観的意見乃至解釈から成り立っています。
      メディアの主観的意見乃至解釈が正確かどうかを疑う事が大事なのですよ。

      1. 墺を見倣え より:

        > メディアの報道は客観的事実プラス主観的意見乃至解釈から成り立っています。

        日本政府が、「対話」だと言っているにも拘わらず、「協議」だとメディアが報じるのは、日本政府が言う事は「客観的事実」ではないという事でしょうか?

        それとも、「プラス」と言う意味の中に、「オーバーライト」が含まれているのでしょうか?

        1. クロワッサン より:

          まずは、対話と協議の定義が何かですよね。

          韓国をホワイト国に認定するかを日韓が話し合い、双方が納得し合って決める事であれば「協議」で、韓国が納得しようがしまいが日本が単独で決める事であれば「対話」で、という定義で良いかと思います。

          で、

          ・日本政府は韓国側と対話をしたと述べた。

          が客観的事実で、

          ・日本政府が韓国政府と行ったのは「対話」である。

          が日本政府の主観的意見で、

          ・日本政府が韓国政府と行ったのは「協議」である。

          がメディアの主観的意見です。

        2. 墺を見倣え より:

          > まずは、対話と協議の定義が何かですよね。

          細川氏の話では、官僚の世界では、昔から明確に国際的に定義済みという事になっていたそうですが。

          > ・日本政府は韓国側と対話をしたと述べた。
          > が客観的事実で、
          > ・日本政府が韓国政府と行ったのは「対話」である。
          > が日本政府の主観的意見で、
          > ・日本政府が韓国政府と行ったのは「協議」である。
          > がメディアの主観的意見です。

          要するに、「メディアの報道は客観的事実プラス主観的意見乃至解釈」の「プラス」の意味に「オーバーライト」が含まれるので、「客観的事実」が「メディアの主観的意見」の覆い隠されてしまって、外から見えなくなっている場合が含まれる、という意味ですね。

          「後者です」の一言で済んだのではないかという気がしないでもない。

        3. クロワッサン より:

          >細川氏の話では、官僚の世界では、昔から明確に国際的に定義済みという事になっていたそうですが。

          此方の12/18付けコラムで確認したら、そうですね(;^_^A
          https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00027/?P=2

          >要するに、「メディアの報道は客観的事実プラス主観的意見乃至解釈」の「プラス」の意味に「オーバーライト」が含まれるので、「客観的事実」が「メディアの主観的意見」の覆い隠されてしまって、外から見えなくなっている場合が含まれる、という意味ですね。

          そうですね、「客観的事実」が「メディアの主観的意見」に覆い隠されて、読者からは見えなくなっている場合が含まれる場合もありますね。

          >「後者です」の一言で済んだのではないかという気がしないでもない。

          読者からすると、日本政府が何と言うかは日本政府の主観的意見となり、日本政府が何と言ったかは客観的事実になる、を説明したかった訳で・・・日本政府が「対話」と言った時点でもメディアが「協議」と報じた時点でも「対話」は日本政府の主観的意見で、「対話」と「協議」の定義を理解する読者によって「対話」が客観的事実となる、と言う面倒臭い事を考えていました(;^_^A

  11. 農民 より:

    今回の対応に全く問題を感じない側の人間ですが。
    しいて不安点を挙げれば、TV新聞からしか情報を得ない人に、「今回の件は輸出”規制”について韓国に対する”譲歩”だ!」などという虚報を真に受ける人が多くなければいいなというあたりですかね。

    ちょっと慰安婦合意の時と空気が似てるかな?
    あちらでも個人的には肯定派でしたが、ネットでもだいぶ日本敗北論が盛り上がってましたし。
    結果今やすっかり慰安婦カードが死にカードに見えますけどね。
    (世界中から日本が罪を認めた、日本人は犯罪者の子孫だ!などと認定されてしまうと大騒ぎしておられる方々が居ましたがハテ?一応アメリカ左派メディアでそんな記事があるにはあったようですが)

    現政権の対韓外交は、10点落とす代わりに30点を得るような駆け引きが多い印象です。
    本件では、1点すらも差し出したくない人が慌ててる印象ですね。
    1点の隙から突破されてきた過去があるのも事実ですが。今はマネジメントされてると思えます。

    韓国にわずかでもプラスになることがあった時点で怒髪天な感情論の方は無視で…

  12. evgeny より:

    11月20日付経済産業省の通達は
    韓国へのレジストの輸出に限って「特定包括」を使用できるようにしたものです。
    「一般包括許可」でも「特別一般包括許可」でもありません。

    以下、他にも書きましたが
    個別輸出許可は、一契約に対して一申請が必要です。
    それに対して、特定包括輸出許可は、特定の1社へ3年間継続して貨物を輸出できるものです。

    個別輸出許可を貰う為の申請の場合、日本の輸出者は
    ①現地輸入者・需要者の詳細
    ②貨物の詳細
    ③契約の詳細・妥当性等を矛盾無いように説明できる資料を経済産業省に提出しますが、
    特定包括はそれらに加えて
    ④その企業へのこれまでの継続した輸出実績を提示する必要があります。

    レジストの、半導体製造にしか使用しない、という貨物の性質を考えれば、特定包括は、例え韓国相手にしても問題無いと考えます。
    経済産業省担当審査官からすれば、(例え韓国であろうと、貨物管理について)信用できる会社の審査に手間をかける分を個別許可に回したい、と考えているのではないでしょうか。

    以上です

    1. ななし より:

      >>evgeny様
      >例え韓国であろうと

      確かに、経産省も人手が余ってるはずはないのだから、もし7月以前にも以後にも書類をきっちり耳をそろえて提出してくる会社があったのなら、その分もっと怪しい取引に注力したいですよねえ。
      別に嫌がらせが目的でなし、安全保障が目的だし。

  13. クロワッサンー より:

    >韓国側で輸出管理に良い方向への変化が見られたら緩和する(逆ならさらに厳格化する)のは当たり前であって、今回の措置を「譲歩だ」、「和解だ」と大騒ぎしているのだとしたら、それはそもそもの措置を「輸出規制だ」、「貿易報復だ」と見る韓国側とまったく同じではないかと思う次第です。

    新宿会計士さんと同じ見解に至っていたので、合ってて良かったです。

  14. ばんきり より:

    >具体的には、今年7月4日以降、個別許可に切り替えた3つの「リスト規制」品目のうちのひとつであるレジストを、「個別許可」だけでなく「特別一般包括許可」も使えるように戻した、という話題です。

    元ソースでは「特定包括許可」となっています。特定包括許可は継続した取引がある相手間でのみ使える包括許可のようです。
    もし、「特別一般包括許可」にしたのであれば、他の品目並のレベルであり、「元に戻した」ことになるのではないでしょうか(そもそもグループBのままのため、完全に戻したわけではないですが)

  15. 茶筒 より:

    元々「レジスト」については「韓国による横流ししてないよね」と言うことは、韓国ウォッチャーの中では定説だったと思います。
    このタイミングで緩和化したとなると、むしろ「韓国の(歪んだ)自尊心満たすための緩衝地帯としてそもそも見込んでいた、シナリオ通りの展開」
     
    のように見えてしまいますね。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

匿名 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告