韓国政府の「GSOMIA条件付き延長」をどう見るか

先ほどの『韓国政府、GSOMIA破棄を「条件付き撤回通告」?』の続きです。韓国政府・大統領府は日韓GSOMIAの「条件付き延長」を発表したようです。

奇妙な「条件付き撤回通告」

先ほどの『韓国政府、GSOMIA破棄を「条件付き撤回通告」?』で報告したとおり、どうやら韓国政府は本日夜12時で失効するはずだった『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』(いわゆる「日韓GSOMIA」)を、急遽、延長させると発表したようです。

青「GSOMIA終了通知」の効力停止…WTO提訴の手続き停止(2019-11-22 18:07付 聯合ニュースより【韓国語】)

※タイトルにある「青」とは、韓国メディアで青瓦台(せいがだい)、つまり韓国大統領府の意味と思われます。

聯合ニュースによると、国家安保室の金有根(きん・ゆうこん)第2次長はこの日のブリーフィングで、次のように発表したそうです。

  • 韓国政府は韓日GSOMIAの終了通知の効力を停止させるが、ただし、韓国政府はいつでもGSOMIAの保護協定の効果を終了させることができるという前提がつく。
  • 韓日輸出管理政策対話が正常に行われている限り、日本側の3品目の輸出規制のWTO提訴手続についても停止させる。

輸出管理適正化措置の「協議」と引き換え?

聯合ニュースはこれについて、「事実上の輸出規制の問題を解消するために、条件付きでGSOMIAを延長する、という意味である」と説明しているのですが、言い換えれば、日韓が輸出管理適正化措置を巡る協議を続けている間は、日韓GSOMIAを延長する、という意味でしょう。

このような解釈が正しいとしたら、じつに奇妙な話ですね。

韓国側は今まで、「日本が『輸出規制』(※『輸出管理適正化措置の誤り』)を撤回しない限り、GSOMIAの延長には応じない」としていたのですが、現時点までに日本政府が輸出管理適正化措置を撤回したという事実はありません。

また、「条件付きでGSOMIAを延長」というのも、自然に考えると不可能です。なぜなら、GSOMIAは二国間協定であるため、日本政府の合意なく、韓国政府の一存で勝手に条件を付すということはできないからです。

それとも、「日本が輸出管理適正化措置に関する交渉を打ち切ったら、韓国政府は直ちにWTO提訴手続を再開し、GSOMIAについてもその時点で打ち切る」とでもいうのでしょうか。

日米が「条件付き」を受け入れるのか

当初、これについては、ポイントは、2つあると考えていました。

1つ目は、韓国政府が日韓GSOMIAを継続するための「名分」を、日本政府が与えたのかどうか。

2つ目は、今回の韓国政府の決定を米国が受け入れるかどうか、です。

しかし、少なくとも1つ目については、答えは「NO」だと考えて良いでしょう。日本側は韓国側に「賢明な対応」を求めているだけであり、この報道を読む限りは、おそらく日本政府は本件に関して何ら譲歩をしたわけではないからです。

いや、そもそも日本が何らかの「名分」を与えたというよりは、韓国政府側がむりくりな解釈で一方的で勝手な条件を付けて来たという方が正確な表現だと思います。そして、これに関連して2つ目の点についても、これが米国を十分に納得させる決定であるとも思えません。

そもそも今回のGSOMIA延長が「無条件のもの」ではないという点が事実ならば、韓国の一存でまたいつGSOMIAの破棄が宣言されるかわからないからですし、今のままで行けば、少なくとも来年8月24日にも同じような「瀬戸際外交」が韓国側から出て来ることは間違いありません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、今回のGSOMIA延長は、日本にとってはどう見るべきでしょうか。

日韓GSOMIAが破棄され、米韓同盟が無秩序に破棄されるような事態があれば、それはそれで日本にとっても困った話であり、「韓国なしでも国土を防衛するための体制を構築するための時間を稼ぐ」という意味では、却って好都合だ、という見方もできるかもしれません。

だいいち、「気に入らないことがあったら協定を破棄する」という瀬戸際外交を繰り広げてくるような国を準同盟国として信頼しろ、という方に、むしろ無理があると思います。やはり合理的な判断に照らすなら、中・長期的には米韓同盟が終了する方向に向かうなかのヒトコマ、と見るのが正解ではないでしょうか。

本件についての日本政府、米国政府の反応などで、特筆すべきことがあれば、また取り上げたいと思います。

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