先日より、当ウェブサイトでは『韓国、財務省、NHK、共産党の共通点は議論の拒否』や『議論を嫌う人たちの敗北』などの記事で、「議論をすることの大切さ・面白さ」について言及しています。こうしたなか、偶然でしょうか、『台湾を追い込めば台湾独立が現実味を帯びるという皮肉』のなかで、日台関係について言及したばかりですが、インターネット上の議論のメリットとは「外国メディアの報道などを読みつつ、前提条件なしにさまざまな可能性を考察すること」にあると思います。
目次
議論をすることの楽しさ
インターネット以前の環境
インターネットが出現する以前であれば、私たち一般人が時事的な情報を入手する手段といえば、新聞かテレビ、あるいはせいぜいラジオくらいしかありませんでした。
ただ、新聞といっても、結局は限られた数の全国紙か、その都道府県特有の地方紙、あるいは数少ない業界紙くらいしかありませんし、地方紙は多くの場合、全国の話題や世界の話題については時事通信や共同通信が配信した記事を垂れ流しているだけです。
環境問題を「セクシーに解決」(※小泉環境大臣の弁)しなければならない今日この頃、大量の二酸化炭素を撒き散らしながら、ウソの情報を満載にした紙を全国津々浦々に届けるというビジネスモデルこそ、真っ先に見直されるべきものではないでしょうか。
また、地上波テレビだと、自分が知りたいと思っている情報を常に流しているわけではなく、あらかじめ決められた番組が流れて来るだけの話であり、少なくとも地上波では「ニュース専門チャンネル」や「金融専門チャンネル」といった専門的な番組を見ることはできません。
しかも、地上波テレビ番組を視聴しようと思えば、テレビを設置しなければなりませんし、テレビを設置した人は、放送法第64条第1項に従い、NHKと受信契約を結ぶ義務が生じて来ます。
以前から『NHKこそ「みなさまの敵」 財務的には超優良企業』などでも議論しているとおり、NHKは国営企業と違って職員は国家公務員を遥かに超える非常識に高額な経済的利益を得ていながら、民間企業と違って事実上、存続が法律で保障されているため、まず倒産することはありません。
NHKを「暴力団のようだ」と表現したのは日本郵政の上級副社長ですが(『天下り先の内紛?日本郵政副社長が「NHKは暴力団」』参照)、NHKの集金代行業者が強引な手法で契約を迫ってくる、という話もよく耳にします。
マスコミ業界の問題点、NHKの問題点などを論じはじめるとキリがなくなるのでこのくらいにしておきましょう(※ただし、NHKの問題やNHK改革などについては、今後、何度でも議論したいと思います)。
これこそ「オールドメディア」
ところで、どんな産業もニーズがなければ発展しませんし、ニーズがなければ廃れるだけの話です。
あくまでも個人的な理解に基づけば、「インターネット」という単語が一般化し、日本のビジネスマンに定着したのは1990年代後半から2000年前半ごろのことですが、最初はあくまでもビジネスマンなどの利用に限られていました。
しかし、2010年頃からはスマートフォンが爆発的に普及し始めたことで、スマートフォンに適合したさまざまなサイトが出現。
たとえば、通勤時間帯にその日のニュースを配信するサイト(Yahoo!ニュースやGoogleニュースなど)やインターネット掲示板(とくに2ちゃんねるや5ちゃんねるなど)の議論をまとめた「まとめサイト」、あるいはそれらを閲覧するためのアプリなどが開発され、多くの人がそれらのサイトを閲覧しています。
さらには、インターネットには情報を一方的に受け取るだけでなく、みずから気軽に発信することができるという特徴もあります。
ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどがその典型例ですが、なかにはブログを開設して個人的な情報を積極的に発信している人もいますし、最近だと動画サイトで動画を発信して収入を得る、「ユーチューバー」などと呼ばれる人たちも出現しています。
新聞、テレビなどのオールドメディアが既得権益にアグラをかいているあいだに、インターネット上には次々と
新サービス、新ビジネス、新しい職業が出現したのですが、その背景にはインターネットという新しいツールの存在だけでなく、人々にそのようなニーズがあったからではないでしょうか。
こうした新しいインターネットビジネスのひとつが、「ウェブ評論業」です。
当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』の場合も、ウェブサイトの執筆者である私自身はジャーナリストでもなければ新聞記者でもありません。たんなる中小企業経営者であり、本業の片手間として、ウェブ評論サイトを使って自分なりの政治経済評論を世に問うているだけの人間です。
当ウェブサイトに掲載している文章は、基本的には「インターネットさえあれば誰にでも取得できる客観的な事実関係」と、「ビジネスマンとしてのセンスや金融規制専門家としての知見に基づく考察」を組み合わせただけの代物ですが、それでも2019年8月には月間400万PVを記録しました。
余談ですが、今後、もし当ウェブサイトが廃れることがあったとしても、インターネットが存続する限り、「ウェブ評論業」自体が消滅することは考えられません。その意味でも、今後、より多くの方々がウェブ評論業に参入してくることを強く期待したいと思います。
インターネット化の恩恵は多国籍化
ところで、インターネット時代の良いところは、日本語版のウェブサイトだけでなく、それこそ全世界から情報を集めることができる、という点にあります。
当ウェブサイトもその恩恵を最大限活用していて、たとえば国際決済銀行(BIS)や外国政府などが公表する資料を使いこなし、報じられているさまざまな情報と異なる結論を出すことも多々あります(『数値で見る日韓関係:ヒト・モノ・カネの交流状況とは?』等参照)。
とくに、韓国メディア『中央日報』(日本語版)は個人的な「愛読紙」(?)のひとつですが、残念なことに、最近になってウェブサイトの仕様が変わり、大変読み辛くなってしまいました(『対照的過ぎるボルトン氏と文在寅氏の対北朝鮮認識』)。
『中央日報』をはじめとする韓国メディアに掲載される、わけのわからない論説、コラム、社説のたぐいは、ウェブ評論家にとっては格好の「ネタ」だったのですが、こうした「ネタサイト」の使い勝手が落ちてしまったことは返す返すも残念です。
日台・日米台協力
台湾メディアが面白い!
こうしたなか、最近、個人的に注目しているメディアの1つが、台湾の国営通信社である「中央通訊社」(ちゅうおうつうしんしゃ)が運営する日本語版ウェブサイト『フォーカス台湾』です。
社名に「中央」の文字を冠し、日本語版ウェブサイトを設けている外国メディアである、という点では同じですが、こちらのフォーカス台湾の方に関しては、掲載されている情報は「知的好奇心を刺激する」という観点からは、非常に興味深いものばかりです。
そのひとつが、先週金曜日に掲載された、次の記事ではないでしょうか。
台日米の専門家、今後の安全保障連携を話し合う 米ワシントンで会議/台湾(2019/10/04 16:38付 フォーカス台湾より)
リンク先の記事を要約し、日本語表現を整えたうえで箇条書きにしておきましょう。
- 今月3日、米ワシントンで日米台の安全保障連携の今後に関する会議が開かれた。米台の安全保障部門の高官が面会するのは1979年の米台断交以来初めてのことだ
- 米台商業協会のルパート・ハモンド=チャンバース会長は基調講演で、米台は重要なパートナーとして同様の会議を常態的に開くべきだとしたうえで、日本からも安全保障当局職員か、少なくとも防衛当局者を招くべきとの見解を示した
- ハモンド=チャンバース会長は日米台の軍事交流に向けて米国がプラットフォームを提供すべきだと指摘する一方、台湾のシンクタンク「遠景基金会」の頼怡忠(らい・いちゅう)執行長は、日米間の外交・防衛担当閣僚協議(いわゆる「2+2」)または次官級協議に台湾を組み込むべきと言及した
- 日本国際問題研究所の小谷哲男主任研究員は、人民解放軍が台湾付近で実施している軍事活動が日本にとって安全保障上の大きな懸念だと指摘する一方で、日本政府内には「日台の安全保障連携を推進するためには中台関係が良好であることが必要」との見方があると強調した
(※上記要約にあたっては、当ウェブサイトの文責において、日本語表現を整え、人名にふりがなを振ったほか、文意を損ねない範囲で文章の順序を入れ替えています。)
日米台連携、そして「日台2+2」という構想
この会議は米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」が主催したそうですが、短い記事でありながらじつに読み応えがあります。冷静に文章を読んでいくと、いわゆる「1つの中国原則」(『台湾を追い込めば台湾独立が現実味を帯びるという皮肉』等参照)を巡って、米国側にも苦悩が見え隠れするからです。
こうしたなか、いわゆる「2+2」に台湾も参加させるべきだとする発想は、非常に斬新です。というのも、日本にとって台湾は同盟相手国ではないだけでなく、そもそも日本政府は台湾を「国」として認めていないからです。
この「2+2」とは、外交と防衛を担当する閣僚が4人で会談を行うとするもので、「日米2+2閣僚会合」が有名です。ただし、「2+2」会談を実施すべき相手国は、べつに「軍事同盟相手国」とだけとは限りません。
この点、外務省のウェブサイトで確認した限りにおいては、少なくともわが国は過去に5ヵ国以上の国とこの「2+2会談」を実施しています(図表)。
図表 わが国が過去に開催した「2+2」会談
相手国 | 回数 | 直近の会合 |
---|---|---|
米国 | 確認できるだけでも2000年9月11日以降、15回以上開催 | 2019年4月19日 |
豪州 | 2007年の第1回目を皮切りに、現在までで合計8回開催 | 2018年10月10日 |
英国 | 2015年の第1回目を皮切りに、現在までで合計3回開催 | 2017年12月14日 |
フランス | 2016年の第1回目を皮切りに、現在までで合計5回開催 | 2019年1月11日 |
ロシア | 2017年に第1回目を開催し、現在までで合計3回開催 | 2019年5月30日 |
(【出所】外務省HPより著者作成)
また、現時点ではまだ実現していませんが、日本政府はインドとの間でも「2+2」会談の実施を目指しているほか、共同通信は今年5月、日本政府が中国とのあいだでも「2+2」を「創設」しようとしている、などと報じています。
第10回日印外相間戦略対話の開催(2019/01/07付 外務省HPより)
政府、日中2プラス2創設を提案(2019/5/28 21:05付 共同通信より)
すでに「2+2」を実施した相手国のうち、米国は日本にとって最も重要な同盟相手国ですが、豪州、英国、フランスは日本にとって重要な協力相手国ではあるものの、直接の軍事同盟関係にはありません。また、ロシアは日本にとってはむしろ「仮想敵国」のような存在です。
インド、中国も同様に、少なくとも日本とは「軍事同盟」の相手国ではありません。インドは日本にとっては潜在的な連携相手ですが、中国は日本にとってはむしろ「最大の仮想敵国」でもあります。
いずれにせよ、「2+2」会談を実施すれば、外交・軍事という重要な分野で相手国との意思の疎通を図ることができ、国益の増進という観点からは望ましいといえます。このため、是非とも「日台2+2」、「米台2+2」、あるいは「日米台2+2」などの会合を推進して欲しいと思います。
中国を刺激したくない日本政府のホンネ
ただ、口先では「日米台3ヵ国連携」などと言い始めても、なかなかハードルが高いのが現実です。
先ほどの記事にもあったとおり、日本人出席者が「日台軍事連携を強化するためには中台関係が良好であることが必要だ」、という趣旨の発言を行ったそうですが、これはある意味で当然のことです。現状、中国との関係などを踏まえれば、日本だけが台湾を国家承認することは難しいからです。
もちろん、日本だけが勇気を持って、台湾を国家承認したとすれば、中国政府は日本に対して抗議するでしょうが、「日中断交」に至ることはおそらくありません。しかし、そこに至るまでの間に、二階俊博幹事長に代表される、自民党内の親中派らが全力で妨害するでしょう。
このように考えていくならば、現実的に日台が国交を樹立するためには、やはり、台湾側がいい加減、「わが国は中国ではない」と覚悟を決めることが必要ではないかと思います。場合によっては国号を「中華民国」ではなく「台湾共和国」に変更するくらいの意気込みがあっても良いでしょう。
また、日本が台湾を単独で国家承認するのはなかなか難しいのですが、もし西側諸国(とくにG7諸国)が協調し、一斉に台湾を国家承認するのであれば、ハードルはグッと下がります。
中国に気を遣って日台関係を深めようとしない日本政府に台湾側が苛立ちを感じていることはよくわかりますが、まずは台湾側の「覚悟」も必要ではないかと思う次第です。
国際関係は面白い!
価値と利益の外交
さて、不思議なことに、わが国のメディアの報道などを見ていると、「日中関係は重要だ」、「日韓関係は重要だ」といった主張を見かけることはあっても、「日台関係は重要だ」、といった主張を目にすることはほとんどありません。ときどき、保守性向の強い産経新聞が台湾について記事にするくらいでしょうか。
ただ、先日の『安倍総理の所信表明演説から読み解く価値と利益の外交』でも報告したとおり、国益(平和と繁栄)を最大化するためには、日本政府としてはありとあらゆる方法を試さなければなりませんし、その際、結論を決めつけずに柔軟に思考しなければなりません。
そして、外交関係とは基本的に、「国益の最大化合戦」だと考える必要があります。どの国も自国の国益を最大化するために駆け引きを行っているのであり、そのことは日米関係、日中関係、日露関係などにおいても何ら変わるところはありません。
日本が最も重視すべきなのは基本的価値と利益をともに共有する米国との関係であることは間違いありませんが、たとえば中国やロシアとの関係においても、表面上はにこやかにテーブルの上で握手をすべきです(たとえテーブルの下で相手の足を全力で蹴っ飛ばしていたとしても)。
このように考えていくならば、日台関係が日本の国益にかなうならば、日本は台湾との関係を何としても構築すべきでしょうし、台湾が「わが国は中国ではない」と覚悟を決めるうえで必要であれば、その意思決定を後押しすべく、裏で支援してあげるべきではないでしょうか。
まずはGSOMIAと通貨スワップを目指しませんか?
さて、外交の世界では「味方を1ヵ国でも増やすこと」「敵を1ヵ国でも減らすこと」が必要だといわれていますし、日本が大東亜戦争に敗北した最大の理由は、米国、中国、ソ連を同時に敵に回したからだと個人的には考えています。
ただ、それと同時に、1945年8月の日ソ開戦は、「味方だ」と思い込んでいる相手国から土壇場になって裏切られるという日本の甘さを後世に教訓として伝えていかねばなりません。
北朝鮮核問題は「待ったなし」の情勢が続いていますし、日本の苦境を見透かすように、仮想敵国である中国やロシア、「味方のふり」をした韓国などが、日本に対してさまざまな不法行為を仕掛けて来ていることは事実です。
ただ、「仮想敵国」の脅威を軽視したり、味方ではない国を味方だと勘違いしたりして、再び敗戦するようなことがあってはなりません。
このように考えていくならば、日本は今後、日米関係を基軸としつつ、日米豪、日米印、日米英、日米仏といった具合に、重層的な安全保障協力関係を構築していくべきですし、ここに「日米台」という新たな枠組みが加わるならば、日本にとっては心強いことこの上ないでしょう。
国際政治(とくに中国との関係)に照らし、日台関係がさほどすんなりと行くものではないという点は百も承知ではありますが、それと同時に、日台はまず「できるところ」から関係を深めるのが良いと思います。
その意味では、「前提を付けない議論」の典型例として、まずは日台通貨スワップや日台包括軍事情報保護協定(日台GSOMIA)などから始めてみると面白いのではないかと思います(※あくまでも現段階では理論的な「遊び」という側面も強いのですが…)。
View Comments (12)
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。
台湾相手にスワップは同意しますけど、GSOMIAには当方は反対です。
台湾には大陸に親族が残る要職はたくさんいるのでそこから情報は漏れると思います。
日本人はGSOMIAを結ぶと危険な情報を提供することに無頓着になる為国益に害を与える可能性が高いです。
日本人は台湾の利益は様々であることを忘れる点でもっと安全保障意識が向上しないとGSOMIAは台湾相手にむずかしいと思いますよ。
以上です。駄文失礼しました。
誤解されそうで補足しますが当方の反対理由は台湾側でなく日本側の安全保障意識の不充分さです。
日本人は相手をきちんと理解して国益第一の行動が取れないことは、お隣の半島国家に対して当方を含めたパヨクが現実の行動で証明していると思います(笑)。
野党・国民党の総統候補の地元・高雄市を先月視察して来ましたが、どうも黒社会の影響がかなり強い町だという印象を受けざるをえませんでした。
日本と台湾の友好を考える上で、この黒社会の問題は避けて通れないと思うのです。
台湾は多民族国家であり、必然的に黒社会が活躍する場も広い国。
どのようにつきあっていくのが良いのか、考えさせられました。
それはともかく、文化・スポーツ面からの交流をもっと深めて行くことが近道かも知れぬと思います。
たとえば、プロ野球のセ・パ両リーグに、台湾の2チームずつを加入させるとか、ですかね。
現状、台湾のプロ野球もご多分に漏れず、黒社会の影響を受け、観客数も1000人程度に留まり、ビジネスとして成立していません。
ちょうど昭和時代の日本の野球界みたいなものです。(あのころ,パリーグの観客数が、毎試合4000人と公式発表され、実際には数百人だったことを覚えている人はいますかねぇ)
今や日本のプロ野球は大リーグと変わらぬ観客動員力を誇ります(一部凌駕すらしています)が、その間に裏社会を排除する大変な努力があったことも理解しています。
その経験を台湾プロ野球に伝え、と同時に日本と台湾の両国の社会全体が黒社会を排除する手法をブラッシュアップしていくことが有益ではないかと思ったりしています。
安倍首相は、日中関係改善にご執心の様子です。
https://www.jiji.com/sp/article?k=2019100301202&g=int
勿論、台湾に対しても好意的だと思います。
台湾は、親日国で日台関係は重要と思います、
問題は、台湾には日本より多くの、中国工作員がいて、いつ政権が親中派に変わるか分からないところです。
朝鮮半島が、揃って中国側になると思いますので、台湾とフィリピンは、こっち側にしたいですよね。
日台通貨スワップの需要があるのですか?
米国の様に、基軸通貨国は安易に通貨スワップを出さない方が良いと考えますが。
>場合によっては国号を「中華民国」ではなく「台湾共和国」に変更するくらいの意気込みがあっても良いでしょう。
元々、台湾は中国に属領とされていた土地でした(あら、朝鮮半島と同じ!)。
言いたいことは、本来の中国ではないということです。蒋介石国民党が逃げ込んできて、勝手に「中華民国」にされてしまったわけなのですから。
民主主義国家としての現在の台湾の価値を高めているのは、地理的な要素に加わり、その独立の意志の高まりですが、Web主様を始め、幾人かの論者さんが指摘されていることは、台湾自身の意志が不安定です。
香港デモの報道からこっち、中国への警戒心から、民主党の蔡英文さんが人気を取り返しているようですが、それまでは、親中派である国民党が選挙で勝っていました。
香港デモの報道がなければ、次回総統選挙には、あろうことか、中国共産党と強い繋がりをもつ、鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)氏が立候補する予定でした。取りやめたみたいです(笑)。
独立を成し遂げるには、なにより、国民の意志の統一が必須ですが、それが不安定です。理由は、台湾に多く入り込んでいる郭台銘(テリー・ゴウ)氏のような外省人といわれる中国本土からの移民だと思います。
彼らは、民主主義国家に生まれ生きてきたにもかかわらず、中国本土に呼応する。(あら、これも韓国と同じ!)
そして、国際社会での台湾の発言力を産んできたのは皮肉なことに、外省人たちの活躍による産業力です。
彼ら外省人たちの存在が、台湾の行方を複雑にしています。
台湾のTPP入りは、そろそろ実務者協議が始まってもおかしくは無いと思う
地政学はブームとなっている分野だが、最近は地経学(geo-economics)という語も聞く様になった
米中新冷戦は米ソ冷戦と比較すると、軍事の比重がやや減り、経済・技術の比重がより大きくなるだろう
その際、地域の各国はどちらの経済ブロックにどれだけ足を掛けるかという問題が、
自国にも地域にも、非常に大きなイシューとなるでしょう
米中新冷戦ではもしかしたら、TPPが経済面だけではなく総合的な米国側ブロックの母体となるかも知れない
官房長官、台湾のTPP11参加「歓迎」 2017/6/26 18:43
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H2H_W7A620C1PP8000/
蔡総統、自民党衆院議員の訪問団と面会 TPPの協議開始を呼び掛け/台湾 2019/10/02 15:21
http://japan.cna.com.tw/news/apol/201910020005.aspx
以下は、とりとめのないムダ話と思ってください。
中華文化圏には、3,000年ほどまでに考案された天命と言う考え方(天命思想)があります。
それは、天帝に命令された者が、天下を支配する正当な権利(「正統」)を有するという考え方です。で、その権利の入手方法ですが、ゼロから新たに得る方法は示されておらず、既存の支配者から、正当な方法で継承する方法だけが示されています。
その方法とは、血統の継承者であるか、そうでない場合には、禅譲(ぜんじょう;既存の支配者から平和的に譲位してもらう)、放伐(ほうばつ;武力で既存の支配者をこの世から放逐)です。
で、この観点から、現在の中共中国と台湾との関係を眺めると、前述の「正統」は台湾に有ることが分かります。何故なら、「正統」は、清王朝から、袁世凱・中華帝国を経て、最終的に蒋介石・国民党に渡っているからです。そして台湾には、蒋介石・国民党を受け継ぐ政権が存命中です。これを日本の場合に喩えれば、天皇が皇族・三種の神器共々、九州のはずれあたりの島に立てこもり、亡命政権をつくって本州政権と対立しているようなものです。
すなわち、上記天命思想によれば、中華世界を支配すべき「正統」は依然、台湾にあるのです。ですから中共中国が、この「正統」を獲得しようとすれば、台湾に禅譲させるか、征服して放伐を完成させるしか無いことになります。無論、現実主義者である中共中国の狙いは、そんな事はどうでも良く、太平洋への出口を獲得したいと言う地政学的理由が大きいでしょう。ですから、たとえ台湾が「正統」を手放す事に同意しても、台湾独立を認める事はないでしょう。
ともあれ、現在の中共中国・台湾中国の人たちが、そんなことを気にしてるかどうか、確かめた事はありません。また、このような観点から台湾問題を論じと文章も見た事はありません。ですが、やはり悠久の歴史を誇る中国人ですから、こんなことも頭の片隅にあるのでは?と思うのです。
>3,000年ほどまでに は、正しくは⇒ 3,000年ほど前に でした。
訂正いたします。
>また、台湾国民政府によって、正史としての『清史』(実際は『清史稿』の改訂)が編纂されたが(1961年)、中華人民共和国政府はこれを認めていない。中華人民共和国は国家清史編纂委員会を立ち上げ、独自の『清史』を2002年より編纂中。当初は2013年の完成を予定していたが、内容に万全を期すため、完成は何度か先送りされている。2019年現在、原稿は完成したが、上級機関による添削を受けている途中という。
>正史
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E5%8F%B2
未だに前王朝の正史を編纂するという、正統の主張合戦をやっているので、
まだ中台両体制の意識の中には「正統」の意識は明確に残っているのでしょうね
溥儀が一中共人民として穏やかに(そう中共政府に演出されて)死んだのを見るとある種の禅譲にも見え、
正統は中共側にある様な気もしますが、清王朝→孫文→蒋介石とするなら台湾側になりますね
私は詳しくないので、正統がどちらにあるかというのはよく分かりません
ミナミ様
駄文にお付き合いいただき恐縮です。
そうそう、孫文の事を忘れてました。
孫文の下で国民党と共産党は国共合作し、また分裂して別れた訳ですから、中共中国は、孫文を介して「正統」は共産党に承継されているという立場かも知れませんね。
その証拠に、共産党も国民党同様に、孫文を国父と呼ぶようになってきているようです。つまり両者は、父を同じくするのですから、相続を争う兄弟ということですかね。
ですから現状をより正確に言えば、中共中国と台湾が共に「正統」を主張し合っており、資格的にも似たり寄ったりで、客観的にどちらとも言えない状態なのでしょう。それが、互いに清史編纂を競うことにもなっているのだと思います。無論、どちらか一方が亡べば、この二元状態は解消されますが。
なお、共産党に保護された時点の溥儀は、大清皇帝ではなく、共産党が「偽」と呼ぶ満州国皇帝の成れの果てだった訳で、「正統」を伝えられる資格は無かったと言えるのではないでしょうか?
いずれ、このような面から中台関係を観察してみるのも面白いものですね。
新宿会計士様、とても興味深いテーマの記事を有難うございます。
現在、台湾が親日的であるのは事実ですし、地政学的に見て台湾の位置は日本の国防にとって極めて重要なのも紛れもない事実です。実際、台湾が北京政府の共産チャイナの手に堕ちて台湾が人民解放軍の軍事基地化してしまうと、単に南シナ海の航行の自由が失われるのみならず、ペルシャ湾から日本本土への石油輸送路という我が国の生命線たるシーレーンを人民解放軍は好きな時に断ち切ることが可能になり、日本は共産チャイナに首根っこを掴まれて相手がいつでも我が国を絞め殺せる状況が生まれます。
しかしそれと同等以上に重要なことは、以前も書いたと思いますので詳細を再論するのは避けますが、台湾に人民解放軍が展開すると、飛び石作戦(これは太平洋戦争でアメリカ軍が日本本土に迫った方式の小型版になります)で最終的に日本が南西諸島を防衛することは不可能となり、尖閣諸島が守れないなどという枝葉末節の問題を遥かに超えてしまい、遠からず日中国境は種子島・屋久島と奄美諸島の間にならざるを得ないという点です。(しかも韓国が先祖返りしてチャイナ共産帝国の属国化して人民解放軍が朝鮮半島にも展開すれば、九州・中国・四国の3地方すら失陥する可能性が極めて高くなる)
従って、台湾を日米が主導する太平洋海洋同盟側に引き留めておくことは日本の国防にとって死活的に重要であることは確実で、この我が国の国防にとっての台湾の重要性は少なくとも中国大陸が支配する政治原理が自由&民主主義に変わらない限り不変です。
ですが、だからと言って台湾に対して通貨スワップをすることにもGSOMIAを結ぶことにも私は反対です。以下、その理由を述べます。
まず、最も基本的な理由は、台湾は常に親日国であった訳ではない、という点にあります。即ち、国民党が政権を握っている時期は台湾は必ずしも親日でなく反日的に振る舞うことが多いという点です。
もう一つの理由は、台湾社会の様々な部分(政界や報道界や実業界にも)に人民解放軍や北京共産党の人間やシンパが侵食していることは確実だという点です。
これらの事実または信じるに値する確実な推測を考えると、日本として台湾を信用し過ぎることは大変に危険です。ましてや大陸からのスパイが浸透している台湾と軍事情報の共有としてのGSOMIA締結は日本側の情報収集能力を大陸側に把握させるリスクが高く危険極まりない行為となります。
更に通貨スワップ特有の問題に関して言えば、台湾は韓国にも劣らぬ為替操作国であり、我が国の産業(特に電機産業など)に大きなマイナスの影響を及ぼしたという点にも十分に注意する必要があります。
それと台湾の電機産業の雄である鴻海の総帥テリー・ゴウこと郭台銘氏は北京共産党や人民解放軍とツーカーの仲であるという疑いが極めて強く、一部には彼は北京共産党の対台湾工作員だという見解さえあります。何故ならば共産党・人民解放軍と深い繋がりがない限り、共産チャイナであれほどの生産拠点の建設は許可されないという現実があるからです。先日、次期総統選の国民党候補選びで郭台銘氏が脱落したのは幸いですが、彼が台湾総統になるようなことがあれば一気に大陸との統合に進みかねないという危険性すらあるのです。
鴻海以外にも台湾の製造企業の少なからずが人民解放軍の手先機関となっているという観測もあり、日台通貨スワップを締結することで台湾が安心して為替操作出来るようになると、結果的には人民解放軍を経済的に利することになりかねません。
また軍事機密情報の共有というGSOMIAの台湾との現時点での締結は間違いなく北京共産政府を激怒させることは間違いなく、共産チャイナへの日本企業の投資や在チャイナ日本人を確実に危険に曝す事態を引き起こしてしまい、日本にとってはシンボリックな台湾応援というメリットよりも対チャイナとの緊張激化というデメリットのほうが大きいと私は判断します。
以上のような理由から、台湾自身がその憲法に定めている一つの中国の原則を破棄し独自路線を歩む憲法改正をすることによって自らの意志で大陸と袂を分かつことの宣言、即ち台湾の大陸チャイナからの独立宣言をしない限り、日本が台湾に深入りすることには私は反対です。
ただ同時に、現時点のアメリカで歴史的に台湾とのコネクションの強い共和党(民主党は昔からチャイナ共産党とのコネクションが強い)が政権を握っていることを活かし、アメリカから台湾に独立を促し台湾の独立宣言の際には速やかに日米が国家として承認することを日米台で秘密協定として結んでおく、という方向でアメリカに対して日本が強く働きかけるのは大いに意味があります。
即ち、日米が西太平洋エリアにおける海洋同盟の重要なプレイヤーとしての台湾を信用する上では、台湾の独立宣言が不可欠ということです。同時に台湾が日米に梯子を外される心配なく独立宣言をできるように、日米台で共産チャイナが台湾征伐のような行動を起こす前に共産チャイナの動きを封じて台湾の安全保障を担保する相互承認の意思統一を予め極秘裏にしておく、これが現時点で日本が我が国の国防上で非常に重要な地政学的位置にある台湾を確保する最重要なタスクです。