【速報】日韓GSOMIA破棄、日韓新時代へ

注目されていた日韓GSOMIAについて、『本日GSOMIA破棄なら、日韓関係清算のチャンス』で申し上げたとおり、当ウェブサイトとしては、「もし韓国政府に常識が通じるならば、おそらく破棄されないだろう」と読んでいたのですが、その読みは外れました。

日韓GSOMIA破棄

日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)が破棄されるそうです。

韓国政府は本日午後3時から国家安全保障会議(NSC)常任委員会の会議を開き、協定延長の可否を議論したそうですが、結局はこういう事態になってしまいました。

これによって、いよいよ日韓関係間の問題が米韓同盟にまで飛び火することは間違いありません。

もちろん、日韓GSOMIAを破棄すること自体は、協定に明示された韓国政府の正当な権利ですので、今回の韓国政府の決定自体が何らかの「協定違反」である、というわけではありません。

しかし、それと同時に日韓GSOMIAはたんに「日韓間の協定」というだけでなく、米国を巻き込んだ「日米韓3ヵ国連携」を円滑に機能させるための法的インフラという性質を担っており、GSOMIAが破棄されることで、中・長期的には間違いなく米韓同盟に影響が及ぶはずです。

なぜなら、日韓両国が軍事協力をしなければならないほぼ唯一の理由は、日韓両国がともに米国の同盟国である、という共通点を持っているという点にあるからです(裏を返せば「日米同盟」か「米韓同盟」のどちらかが消滅するようなことがあれば、自動的に日韓は軍事協力をする意味がなくなります)。

そして、米軍のオペレーションは日韓GSOMIAの存在が前提となっているわけですが、これが消滅するようなことがあれば、間違いなく米国政府は強いフラストレーションを感じるでしょう。

そもそも日韓GSOMIAは、安倍政権が2015年12月に「日韓慰安婦合意」を成立させることで何とか合意にこぎつけたという、日米両国にとっては「いわくつきの協定」です。

しかも、文在寅(ぶん・ざいいん)政権になってから、その日韓慰安婦合意に基づいて設立された財団を一方的に解散するなど、韓国政府が事実上、合意を反故にしてしまった(『今これをやるか!? 慰安婦財団解散の衝撃』参照)わけですから、何とも皮肉なものです。

今これをやるか!? 慰安婦財団解散の衝撃

どんな影響が生じるのか

もちろん、日韓GSOMIA破棄によって、ただちに日韓の軍事協力が全面的にストップする、という話ではありません。というのも、GSOMIAというものは、「受け取った軍事情報を適切に管理しましょうね」、という協定だからです。

一般に、GSOMIAには次のような条項が入っています。

  • 受領国は提供国の承認なしに、提供される秘密軍事情報を第三国に提供しない。
  • 受領国は提供された情報に対して、提供国と同等の保護措置をとる。
  • 受領国は提供国の承認なしに、提供された情報を本来の目的以外に使用しない。
  • 受領国は提供された情報に含まれる特許権、著作権、企業秘密等の私権を尊重する。
  • 提供される情報には、文書、口頭で伝達される情報、映像等あらゆるものが含まれる。
  • 秘密情報の伝達は政府間のチャンネルで行う。
  • 契約企業とその施設も、秘密軍事情報取扱資格(セキュリティクリアランス)を取得しなければならない。
  • 提供国は受領国の秘密保護措置を査察するため、受領国の施設を定期的に訪問できる

(【出所】『軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の比較分析』)

つまり、相手に提供された情報については自分の国の軍事機密と同じように扱いますよ、とする協定であり、この協定が破棄されたからといって、日韓間ですべての軍事情報のやりとりが止まるわけではありませんし、逆に、この協定があれば自動的にすべての軍事情報が共有される、という代物でもありません。

ただし、日韓GSOMIAが存在しない国と軍事情報をやり取りするとなれば、当然、授受される情報の質は低下するでしょう。

さらに大きな問題点は、米国のオペレーションに支障をきたす可能性がある、という点です。

「日米韓3ヵ国連携」という言葉はよく聞きますが、これはべつに「日米韓3ヵ国が軍事同盟を結んでいる」、という意味ではありません。あくまでも軍事同盟は「日米」と「米韓」にしか存在せず、「日韓」は日米韓3ヵ国を結ぶ環のウィークポイント(弱点)なのです。

このウィークポイントを補強するために、日米両国政府がどれだけ一生懸命に努力して来たのかと考えていけば、そもそもGSOMIAの破棄が議論に上る時点で、韓国は日米両国からの信頼を失って然るべきでしょう。

自由民主主同盟から弾き出される韓国

さて、本日の日韓GSOMIA破棄によって日韓関係が質的に変わるのかといえば、それは微妙です。なぜなら、『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』などでも報告したとおり、すでに日韓関係については、2019年7月19日をもって質的に変化してしまったからです。

「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係

この日、韓国政府は日韓請求権協定に定められた「仲裁に応じる義務」を破ったことで、名実ともに韓国は「国際条約を守らない国」というステータスを獲得しました。

(余談ですが、『なぜ日本政府は韓国にペナルティを与えないのか?』のなかで、本来ならば現時点ですでに日本政府は世界各国に対し、事実関係を説明したうえで「韓国は無法国家だ」という事実を伝えなければならないのですが、なぜか日本政府はこうした動きをしていません。)

なぜ日本政府は韓国にペナルティを与えないのか?

こうしたなか、本当に非常に深刻な事態が発生するのは、おそらくこれからでしょう。

なぜなら、今回のGSOMIA破棄は、韓国の無法行為に端を発する日韓関係の破綻危機が、米韓同盟の破綻危機にまで飛び火したからです。

今後、韓国はGSOMIA破棄の対価を「自由民主主義同盟」から弾き出されることによって支払うのではないでしょうか。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ちなみに、今回のGSOMIA破棄は、日本にとっても「嬉しいこと」とは限りません。

なぜなら、米韓同盟が消滅するということは、対馬が国防の「最前線」になる、ということを意味するからです。

その意味で、むしろ大事なのは、これからわが国がこの事態にどう対処するか、という点ではないでしょうか。

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