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【読者投稿】なぜ医療費は増えるのか

本稿は、昨日の『【読者投稿】なぜ国債発行額は増えるのか』の続編として、ふたたび当ウェブサイトの読者「りょうちん」様からの寄稿をお届けします。何となく「日本人の死因のトップはガンだ」という認識を持っている人は多いと思いますが、本稿を読んでいただければ、まさに「目からウロコが落ちる経験」をしていただけるのではないかと思います。

2019/06/23 13:10修正

当初公表版で、URLのリンクが間違っている箇所がありましたので修正しております。コメント欄でご指摘くださいました「なんちゃん」様、ご指摘大変ありがとうございました。

読者投稿の続き

昨日の『【読者投稿】なぜ国債発行額は増えるのか』では、当ウェブサイト初の試みとして、読者投稿記事を掲載しました。執筆者は、普段から当ウェブサイトに鋭いコメントを寄せて下さっている「りょうちん」様です。

自分が執筆したものではなく、純粋に他人様の文章を掲載したのは初めてだったのですが、読者の皆さまからはかなり高い評価を頂いたらしく、読んで下さった読者の皆さまだけでなく、執筆して下さった「りょうちん」様にも、深く御礼申し上げたい次第です。

さて、昨日の論考に対しては、「早く続きが読みたい」というご意見も非常に多く、また、現時点で第2稿を頂戴しているため、本日はさっそく第2回目をお送りしたいと思います。

りょうちん様の投稿

(※これ以降がりょうちん様からの投稿です。)

人口ピラミッド

今回は、医療費はなぜ増えるのかをテーマにお届けします。

前回はネタに走りすぎたきらいがあったのでシンプルに書きます。

  • 1.患者が増える。→患者=ほぼ高齢者
  • 2.単価が増える。→医療の高度化
  • 総額=単価×数量

という高度な経済学です。(おいネタに走るのはやめたんじゃなかったのか?あれは嘘だ。)

まず「患者が増える」という事実をブレイクダウンします。

人間が病気になるのは、まず寿命が近づく高齢者です。その次に免疫を含め未熟な乳幼児から小児です。

人間の数を人口といい、人口の分布をグラフにしたものをよく「人口ピラミッド」と呼びます。その自然的な性格を科学的に考えれば、平均寿命から先が正規分布し、平均寿命から下は寸胴状になります。

実際には医学の進歩や大量に死亡者が出る戦争などで影響を受けるので、その自然な姿の国を想像したのですが、それなりの人口規模でこの100年戦争に一切巻き込まれていない国が見つかりませんでした。切ないですね。

それでも、全世界の人口としてしまうと戦争の影響も均されてイイ感じになります。

World Population

世界の平均寿命(人口学的には出生時の平均余命を指します)は、男性62歳、女性67歳であり、平均寿命のピラミッドの先端辺りはその通りになっています。平均寿命の下が末広がりになっているのは、概ね世界が平和であり、かつ少子化が進むほどには世界は成熟していないからです。

日本の人口ピラミッドの推移

日本の場合、前にも引用しましたが、第二次世界大戦の影響と高度成長期時代の影響が大きく、人口ピラミッドはボンッ・キュッ・ボンッのグラマラスなボディになっています。

国立社会保障・人口問題研究所

これでも1965年あたりまでは世界との乖離は少なかったのです。

国立社会保障・人口問題研究所

この時点でも第二次世界大戦終了の影響が団塊の世代として見えてしまっています。

団塊の世代ってなんか集団意識の様でSFじみていますよね。かっこよい中二病ネームセンスですけどなんのこたぁありません。

太平洋戦争が終わって復員が進み、

「日本は負けたけど、これからは戦争のない平和な時代が来るんだ」→「さあヤるぞ!」

→復員期間+十月十日の感じで1947年あたりから家族が増えるよ、やったね多恵ちゃん!

という微笑ましい情事いや事情です。

ベビーブームの発生は全世界的な現象で日本の専売特許ではありませんが、この団塊の世代の存在が日本の高度成長期時代の大きな原動力になりました。

この団塊の世代がやりたい盛りになったころから、その子供が団塊ジュニアというグループを形成します。私はそれから微妙にずれているのですが、それでも1クラスの児童数45人に1学年10クラスという感じの学校生活だったのを覚えています。

なんだか最近また「白い巨塔」が漫画になったりドラマになったり、リバイバルしていますが、主人公財前の義父が、町医者の産婦人科医という設定で、お金がいくらあっても満たされない→頭のいいムコを浪速大の教授にして名誉欲を満たそうという動機の構図が描かれていました。

当時の世相では産婦人科は黙っててもお客さん(患者ではないけれど)が押し寄せて、儲かってしょうが無い診療科だったのですね。個人的にお世話になった先生の話では、分娩室は5列くらいラインがあって、助産師さんを並べて監督の様に列を移動してお産を並行していたとか。

出生率の低下と人口ピラミッドの変化

一般的に、出生率というものは国の経済状況や明るい展望・世相と正の相関があり、実際、平和な時代に日本株式会社が終身雇用や右肩上がりの成長を続けている間は増加します。

ちなみに国の経済状況やお先真っ暗な展望・世相と出生率が非常に強く相関している国が日本の近くにありますが、どうでもいいので言及しません。

また人口の増加は生産力の増大、消費の増大を意味し、経済学的には人口ボーナスと呼ばれます。少子高齢化で人口の減少局面になると生産力の減少、消費の減少による経済の悪化を来し、人口オーナスと呼ばれますがこちらはマイナーですね。

ちなみに少子高齢化が日本を追い越して経済が左前の国が日本の近くにあったような気がしますが、やっぱりどうでもいいので言及しません。

一方で中世のペスト、スペイン風邪クラスの大規模流行性疾患や戦争などの大量死が起きない状況では、人口が減るというのはダイレクトに出生率の低下ということになります。

出生率が減る理由には、教育の高度化・男女平等思想の共働き化による晩婚化、経済的理由があります。これについては私の専門ではないので割愛します。

人口ピラミッドがなだらかであるなら、社会の制度設計は比較的単純になります。しかし、ベビーブームなどで山ができると、人口ボーナスになっている時期は良いのですが、高齢者世代になった時に一気に負債になります。

がんが死因トップになった理由

人口の多い世代が高齢化し、体にガタが来ていろんな病気になって患者が増える

これは、直感的に理解できますよね。それでは、直感的に理解できない理由を説明します。

新聞やTVで、がん保険とかいう詐欺商売のCMかなんかで「今や日本人の死亡原因1位はがん!」「日本人の○割ががんで死亡する時代!」というのを見たり聞いたりしたことはありませんか?

主な死因別の死亡率の変化をさぐる(2017/9/25 11:09付 Yahoo!ニュース)

たしかに、現在の日本人の死因の1位は「悪性新生物」いわゆる「がん」であり、日本人の三割以上が「がん」が原因で死亡しています。

注目して欲しいのは、他の死因の推移です。

1947年では日本人の死因のダントツ1位が「結核」です。サナトリウム文学なんてニッチなジャンルができるくらい結核による日本人の死亡は身近なものだったのです。

一方でなんですか1947年の「悪性新生物」さんのやる気の無さは・・・。まだ頑張っている「脳卒中」君、「心筋梗塞」さんを見習いなさい!とかなんとかいわれて、よーしやるぞと「悪性新生物」さんはコツコツと努力を重ねて現在ではダントツ1位の成績を誇る様になりました―などというわけがありません。

脳卒中の死亡率が下がったのは、日本のお医者さんが、まず脳卒中の原因である高血圧や糖尿病を地道に治療し、頭の血管に動脈瘤を発見すれば積極的に手術し、万が一、脳卒中を起こしても高度な医学テクニックを駆使して、死亡を回避させるようになったからです。

その結果、まあ麻痺程度で社会復帰できれば御の字ですが、大量に寝たきり老人を作ることにもなったのですが。

「悪性新生物」というのは細胞の複製過程における遺伝子のエラーで発生するというのが既にほぼ解明されています。したがって、がんになるのはその複製回数の累積とエラーの発生率があがる高齢者に発生することがほとんどです。

例外として生まれ持って遺伝子にエラーがあって、成人や老年になる前にがんが発生するパターンもあります。がんによる死亡者・死亡率の増加というのは、「がんで死ねるほどの年齢に達する人口の増大」によるものです。

食生活の変化や発がん物質への被曝が増えたためと主張する人もいますが、信頼に足る根拠や全量に寄与するほどの要因はありません。

昔なら、初老にかーっとなって血圧が上がりそのままプッツンしてお亡くなりになる典型的ケースが、今や中年になれば健康診断で赤紙が突きつけられ、高血圧・糖尿病をうるさく管理されます。

中年になって糖尿病になって医者に通ったはいいがまったく食事制限を受け付けず、高価な薬を長期間服用しならがら暴飲暴食、結果、初老で動脈硬化で脳梗塞を発症。大きな救急病院に運ばれて、緊急MRIやら血栓溶解療法を試みたが、出血性梗塞に移行して、半身麻痺の寝たきりに。

そしてリハビリ病院・施設入所・自宅療養を経て20年、便から血が出たので病院を受診したら進行大腸がんだった。積極的な治療を家族は望まなかったが、本人の希望で手術と化学療法に分子標的薬投与を行うも最後は多発肝転移と癌性腹膜炎で苦しみ抜いたあげく、悪液質による肺炎で死ぬ。

という喜劇的なシナリオがあり得る様になってしまったのです。

医学の進歩が患者を増やす

医学の進歩が患者を増やすという性格は、間違いなくあります。その根拠が死亡原因の推移なのです。ちなみにこの喜劇シナリオでは、おそらく戦後直後の脳卒中死亡例の10000倍の医療費を消費したと考えられます。

また医療の進歩が患者を作るという側面では、「不治の病」さんの最近のやる気の無さです。

いや患者さんを殺す能力では「不治の病」さんの実力はまだまだ決して衰えてはいないんですよ。

しかし、「不治」と表現できる領分が医学の進歩でどんどん肩身が狭くなっているのです。

例えば「世界の中心で愛を叫ぶ」という小説原作の映画・ドラマがありましたが、あのヒロインは10代で白血病で亡くなっています。実話でない以上、推定でしかありませんが小児白血病のほとんどが急性リンパ性白血病であることを踏まえて仮定しますが、小児白血病の予後は近年大いに改善しています。

小児白血病の生存率は向上したが約半数は慢性疾患などの影響(2008/4/2付 日経メディカル)

Twenty-five–year follow-up among survivors of childhood acute lymphoblastic leukemia: a report from the Childhood Cancer Survivor Study

10年も前の記事で恐縮ですが、5年生存率8割を越え、5年生存できた人の25年生存率は87%です。もちろん20%が亡くなるわけですから悲劇的な疾患であるのは確かであるのですが、とても「不治の病」という名前にふさわしい成績かと言われるとちょっと力不足です。

もし今時の漫画やドラマで不治の病として白血病を使うのは勉強不足で「不平等」です。実際に「世界の中心で愛を叫ぶ」が流行ったときに血液内科医や家族団体辺りから苦情があったとか聞いた様な気がしましたがちょっと探せませんでした。

こんな記事も

“セカチュー”の時代設定が80年代だったのは(2005年06月23日付 大和総研グループ)

同様に昔は手の施しようがなかったので、患者とは言いながらただ死ぬのを看取るだけの簡単なお仕事から、「積極的に治療を行う患者さん」に変貌した例は枚挙に暇がありません。このあたりは医療の高度化と重なる部分です。

社会保障費増大の本質的原因

ここで医療の高度化について、語るのも良いのですが、興味のない人には退屈な話になるので、このブログのテーマに沿った論旨の方に飛びます。

日本の赤字国債発行額が増える要因の社会保障費の増大の最大の原因は団塊の世代の大人数そのものであるという本質です。そしてそれを支える生産人口世代の減少。

団塊世代にお迎えがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!

わー大変ですねえ。一大事ですねえ。で、それが何か?

国家の最大の責務は国民の生命、財産、そして国益を守ることなんだそうです。

国家の最大の責務は国民の生命、財産、そして国益を守ること(自由民主党衆議院議員 そのうら健太郎 政策・ビジョン)

このブログでもよくそう書かれています。

国益を守るために、第二次世界大戦以前には、莫大な戦没者を出し、莫大な国家予算を軍事費に投じ、時には外国に借金までして戦争をしました。それに比べたら、団塊世代が人間的に天寿を迎えられる様にするなんて命題は、実に軽すぎる問題です。

それは、血を吐きながら続ける悲しいマラソンどころか、本来たったの10年か、団塊ジュニア含めても30年かそこいらしか続かないお話なんです。15年戦争なんて平気でやった国がたった30年間老人が増えるくらいで本来、暗くなる必要などないのですが、不安を煽って増税しようとする輩の多いこと。

そんな輩の卑怯なところは、必要なのは税収を増やすことであって、増税はその手段のひとつでしかないのに、論理のすり替えを行うことです。

また稼ぎ自体を増やす‐経済成長をしてGDPを増大させる―というのも正道でしょう。

もし、大手マスゴミに勤務していて年収1000万円稼いで自宅も持っているような夫婦が自分の子供が大きな病気にかかって、大金が必要になったとして(※ちなみに日本で標準的治療を受ける限りそんな事態は制度上起こりえません)、仕事そっちのけで、親戚・知人に借金を頼んだり、ネットで募金を募ってたりすれば、かなりの反発を買うでしょう。

自分で稼げよ!と。

果たして日本は、団塊世代の寿命という国難wに対応できるのでしょうか。

それは次回に。(了)

ツッコミどころ?

さて、今回の文章も、分量を感じさせず、一気に読了してしまいました。

りょうちん様の軽快な文章もさることながら、客観的な情報源に基づき淡々と事実を述べていくという姿勢が強い説得力を生んでいる格好ですが、当ウェブサイトの本旨「読んで下さった方々の知的好奇心を刺激する」という観点からも、非常に満足度の高い部分です。

さて、私ごときが無粋なツッコミをするのもどうかと思うのですが、3点ほどツッコミを入れておきましょう。

①それってどこですか?

ちなみに国の経済状況やお先真っ暗な展望・世相と出生率が非常に強く相関している国が日本の近くにありますが、どうでもいいので言及しません。(略)ちなみに少子高齢化が日本を追い越して経済が左前の国が日本の近くにあったような気がしますが、やっぱりどうでもいいので言及しません。

たしかにわが国の近くに、わが国よりもさらに大きく出生率が低下している国が1つありますが、やはり「お先真っ暗な経済展望や世相」が強く関係しているのでしょうか?

ちなみに『韓国の経済の「空洞化現象」、そしてなぜか低い失業率の謎』でも触れたとおり、文在寅政権の経済失策の影響により、韓国は経済面で行き詰りつつあるわりには、失業率はなぜか異常に低いようですが…。

②募金活動

もし、大手マスゴミに勤務していて年収1000万円稼いで自宅も持っているような夫婦が自分の子供が大きな病気にかかって、大金が必要になったとして、仕事そっちのけで、親戚・知人に借金を頼んだり、ネットで募金を募ってたりすれば、かなりの反発を買うでしょう。

これについて調べてみると、今から13年前の記事ですが、「NHK職員の夫婦が娘の心臓病手術に必要な1億円少々の募金を集めていた」という記事が発見できます。

心臓病女児募金活動に ネット上で批判噴出(2006/10/ 3 17:36付 J-CASTニュースより)

りょうちんさまは「年収1000万円」とおっしゃいますが、仮にこれがNHK職員のことを指しているならば、「年収1000万円」どころではないでしょうね。なにせNHKは職員1人あたり人件費が少なくとも1700万円弱に達しているのですから(※年収と人件費は異なる概念ですが…)。

基本に立ち返る:消費税と財務省の、いったい何が問題なのか(2019/06/18 11:00付 当ウェブサイトより)
③ヘビの生殺し状態?

そして、今回の論考に対する最大のツッコミどころといえば、「もっと読みたい!」というところで、「次回に続く」となるところでしょうか。このあたり、鈴置高史氏の優れた論考を読んでいて、「次回に続く」となって「もっと読みたい!」と思ってしまうのとそっくりですね(笑)

まさに知的好奇心を刺激する記事というのは、こういうものをいうのでしょう。

りょうちん様、つきましては、ご多忙とは思いますが、次回につきましても楽しみにお待ち申し上げております。また、「ウェブサイト運営者」というよりは「一読者」という立場からすれば、「次回でおしまいとはいわず、是非、続けて下さると嬉しい」と思ってしまいます。

また、読者の皆さまも是非、コメント欄にてご感想をお寄せ下さい。

新宿会計士:

View Comments (84)

  • 団塊の世代が一段落すると、単価の伸びに注意すれば、医療費って下がる可能性はあるんですね。

  • 高額療養費制度使ってオプジーポでのガン治療で年間3600万円とか

    いろいろ膿を出さないといけない

    • りちゃさんが同じ薬の投与患者になったときに言うなら、「お説」の説得力は増すでしょう

    • ????

      >高額療養費制度使ってオプジーポでのガン治療で年間3600万円

      それどこ情報?どこ情報よー?
      http://jigokuno.com/eid_245.html

      いや国家としての医療費を心配するのはわかるんですが。この辺ですか?
      http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03165_01

      その後の動きを追っていませんよね。

      あとこの手の高額抗がん剤は、いくら効いてもせいぜい数年間しか
      使わないので(なぜかはお察し)、目くじら立てる程では
      ないと思います。
      それよかは、効果が絶大すぎて長期間投与される分子標的薬の方が問題は大きいですね。

  • 日本の医療に関する次の議論は尊厳死だと思います。

    自分の両親を見送ってきた者として、末期の苦しみと本人・および家族がどう向き合うかは深刻な問題でした。有り体に言えば、助かる見込みがないのに生き続けさせることの是非で家族が揉めました。本人の意識がもうろうとしていて生きる意思があるのかないのかも定かでなく、年齢・気力・体力のどれを見てもこれ以上の加療に耐えられそうにないなかで、「何とか生き続けて欲しい」と願う家族と「楽にさせてあげたい」という家族の意見が収束しませんでした。

    ウチだけでなく、多くの家族が、患者側で議論がなされないまま医療機関に「何とかして」とすがりついているのが現状だと思います。その「何とかして」の何割かは「今すぐ患者を健康にしろ」という無理難題だったりしないかと邪推します。

    患者本人に明確な意思があるならまだしも、意思もうろうとなった中で、家族が生命維持治療の継続の意思を問われたら、「お父さんを殺せという判断を下したくない」という理由で決断から逃げたくなるでしょう。

    本人の意識がしっかりしている内に決めておけば良かったじゃないか、という意見はごもっともですが、本人の意識がしっかりしている内は、まだ助かる見込みがあるときだったりします。

    誰もが決断を避ける中で、患者は苦しみながら、あるいは意識なく生き続け、医療費だけが積み上がる現実があると思います。

  • 低負担高福祉は世界に誇るべき日本の医療制度だと思いますが、それによる弊害も大きいのでは?
    安いからと言ってとりあえず受診、タダだからといってすぐ救急車を呼ぶ等のムダな医療が多い気がします。
    結局はそれが医療者を疲弊させ、医療費を増大させている。
    もう少し高負担にして、患者教育をしっかりすることに主眼を置いてもいいと思います。

  • 引退してかなり長い年月が経ちましたので、昨今の医療経済事情の詳細は存じ上げませんが、病院の経営管理に数十年携わって来た小生の感想としましては、申し訳ありませんが「目からコンタクト」とは言い難いお話です。お気に障るかもしれませんが、この程度の「常識」はどの医療職でも学生の頃学ぶ教科書レベルの知識です。18歳の看護学生でも知ってるでしょう。決してケチをつけるつもりも、水をさすつもりもございません(してるけど)こんなことも知らない「患者さん」がいるのだとしたら、むしろその方が驚きです。重ね重ね嫌味な言い方ですみません。黙っておこうかなとも思いましたが、今朝がた老妻と口喧嘩して、ちょっと腹の虫の居所が悪いのです(笑)大丈夫です、血圧は上がってません。え?心配なんかしてないと?あ、そうですか。

    • もちろんそのとおりでございます。

      しかし、新宿会計士さんともあろう見識のあるお方が「目からうろこ」という感想を抱かれたのであれば、書いた価値はあると思います。

      医療系ブログなんかでは、もう手垢の付いた内容なんですが、ああいうのはインナーサークル化しているので一般の方は読まないのです。
      ですからたまーに異端の場所で、開陳するのも悪くはないかなと。

    • あと18才の看護学生には夢を見すぎです。

      看護学生に授業をしたことがありますか?w

      • りょうちん 様

        横から失礼します。

        専門的な記事を寄稿される場合は、冒頭に作者ご経歴自己紹介等があった方が良かったかと思います。例えば○年○科某国立病院臨床医とか。

        私はプレゼンは、見せてやる、ではなく、見ていただく、良いレビューは、教えてやる、ではなく、読んで頂く、ことだと思います。

        冷静沈着知的な方が、私よりもっともっと年上の元病院関連者に、「看護学生に授業をしたことがありますか?w」と書いているのを見ることこそ、日本の医療に不信感を覚えてしまいます。

        • え、18才の看護学生を小馬鹿にする様な失礼なコメントを和らげるつもりでフォローしたつもりだったのですが。
          18才の看護学生は真面目な子もそうでない子もいますが、想像以上に「幼い」ですよ。

          私の経歴はまあ開示してもいいかなというのは、某旧帝大系元外科医、昭和までは知らない卒後25年程度までです。
          今は、ほぼアーリーリタイアしています。

  • ほぼ全ての論旨に賛同しますが、出生率が飛躍的に回復しない限り、
    団塊・団塊ジュニアという二つの大波が去った後でも、
    老年人口率はマシ程度にしかならないと思います
    例えば出生率1.4で推移する場合、人生90年時代になって行きますから、
    大まかに30歳毎に100:70:49 → 70:49:34 という風に移行するでしょうが、
    その場合、65歳以上人口の割合は、40%程度で安定すると思います(現在27%)
    それでも大波が来る時よりはマシ、或いは日本より出生率の低い、
    韓国・台湾・(中共)等よりはマシでしょうけど。
    社会福祉制度も、かなり持ちこたえるでしょうし。

    少子高齢化・人口減少は、これから先進国で無く、世界的な現象になります。
    その中で日本は相対的には「マシ」な状況ではあるとは思いますが、
    楽な状況でも全く無いという所でしょうね

    • すいません。40%は言い過ぎかも知れません。
      90歳までに死ぬ人を数を考えれば35%ぐらいかも知れません

  • また、良いところで終わってしまいましたね!
    何回も続くと蛇の生殺しどころか、もはやシェヘラザードに毎晩お預けを喰らうシャフリヤール王の気分です!w
    ところで、前スレのコメントでアメリカの医療費についての質問が出てましたので、後で私なりの答えを書いておきます。

  • りょうちんさんの文章は、軽妙で一気に読めて楽しめました。

    個人的には、今の医療の進み方には疑問がありまして、自分自身の認知機能・身体機能に問題が出るようなら、私は安楽死(必ずしも安楽とはいかないかもですが)を選びたいです。

    自分の家族や他人に勧めようとは思いませんが、希望する者には認めてくれてもいいように思います。
    こんなこと言うと、「希望しない人に無理強いすることにつながるからダメ」と言う人が必ず出てきそうですけど。

    • 安楽死について、私も上に書きましたが、自分がその立場になったときにどうするかは、正直言って確信がありません。

      今は漠然と安楽死を選びたいと思っているのですが、いざその時になったら、一分でも一秒でも生きながらえることに執着するのではないか、と自分を疑っています。

      また、私の母は認知症になりました。私も認知症になる可能性はあります。とっさに個人名が出てこないなどの予兆はありますし。そうなると、意味のある決断ができるかどうかも怪しくなります。

      まだ健康で冷静な判断ができる内に、自分の死に方を文書化して公正証書にでもしておくのがよいのでしょうが、なんだかファウストとメフィストフェレスの契約みたいな気がします。いざとなったら…

      そんなに自分は潔いかなぁ……

      • 阿野煮鱒 様、

        大半の人間は、いざその場になったら安楽死を拒否するのじゃないかと思います。

        私の知人で「俺はいつ死んだって良いんだよ!!」が口癖の豪快な人がいました。
        元ヤクザでしたが常人離れした剛毅な伝説をいくつも持つ人で、我々皆に愛された人でした。
        数年前その人は、ある病気で生死が危ぶまれる状態になりました。
        その時、その人は恥も外聞もかなぐり捨てて「何が何でも生きたい」と涙をボロボロ流しながら周囲にすがりついたのです。
        そういうことは絶対にやらなさそうな人だったので皆が本当に驚きました。

        後に小康状態になった時に彼は話してくれました。
        死を直感した瞬間、ものすごい勢いで生への渇望が湧き上がってきたそうです。「生きたいというのは人間の最も強い本能なんだとよくわかったよ」とカラカラ笑いながら言ってたのを思い出します。

        かの一休和尚も最後の言葉は「死にとうない」だったそうですし、我々凡人であればなおのこと、いざとなれば生に執着するのだと思います。また、それが生物として自然なのだろうと思います。

        • 次稿にさすがに、ソリューションとして、ソイレントグリーンは入れませんでしたよ。

      • 阿野煮鱒様

        辛い思い出だと思いますが、記載していただき、有難うございます。

        私の母も、意識がなくなり、物が食べれなくなり、病院から「延命のためには胃瘻するしかない」と言われ、父と顔を突き合わせて「どうしよう?」「放置して死なせるわけにはいかない」という陰気な会話の後、胃瘻手術を決めました。

        来週手術というある夜、父からの電話があり、意識の戻らないままの母の死を聞きました。
        「お母さん、手術が嫌だったんだな」
        父の言葉が、今も忘れられません。そして
        「僕が同じようになったら、無理やり生かすのはやめてくれ」
        とも言われました。

        「死に方については書類にして残しておくからお前は心配しなくていい」
        ということではありますが、結局処置を判断するのは子供である自分の責任です。、

        その時はいつか来ます。その時どう判断するか、自分でもわかりません。

    • 阿野煮鱒さま

      コメントありがとうございます。
      私は小心者ですので、いざとなったら「1秒でも長く生かして」と懇願するのかもしれません。

      詳しくは知りませんが、オランダやスイスでの安楽死を選択する人の多さは、死生観の違いはあるにしても、自分の死に方を自分で決めたい欲求が(国によらず)普遍的にあるためなのではないかなと考えております。

      自ら手を下す自殺と違って、他の助力を乞うことができる自殺なのですから、私みたいな小心者にはピッタリかも。
      勿論、他の人に同意を求めるようなことではないことぐらいは承知しております。

  • 医療の高度化やそれに伴う高齢者の増加そのものは、決して悪い話ではないでしょう。
    我が身の命、愛する人の命を考えると、否定することは難しいかと。
    医療の発達を否定したら、それこそブラックジャック先生が「医者は何のためにあるんだ!」と叫ぶでしょうし。

    ここで、気になるのは医療の高度化が、即ち1回の診療あたりの単価、経費の高額化に直結しているのだろうか?
    自分は、基本的に「不治の病」は難病であると同時に、レアな病気だというイメージを持っています。

    レアな病気の発生数が増大するということは考えにくい。
    とすれば、問題点は細分化すると、もう少し別の可能性が見えてきたりしないでしょうか?
    下記はあくまでも自分の考えた、独断イメージの可能性ですが。こういうものはないでしょうか?

    1:実は脳溢血のような、高齢化で誰にでもなる可能性がある、高度な医療が必要な病気に費用が掛かっている
    2:かつての不治の病(胃がんとか)の単価を安くすることが出来ていない
     ※独断ですが、まだ胃がんってそこまで高度な医療が必要なものなのか? とか思っています。
    3:痴呆のような、高度な医療は必要が無いものの、世話をするための費用が嵩んでいる
    4:サロン感覚で病院に行って、しょっちゅう少額の医療費を(無駄に)使う老人が増えている

    問題は、働けない高齢者が増大し、彼らの面倒を見るための費用が重たいということだと思います。
    いっそのこと、ここで「ナガイキデキール(CV:青い猫型ロボット)」とか出てきて、彼らが若返ってきびきび働いてくれるようなら、こういう問題は無くなるのではないかと。

    総額の中で、特定の重くなっている項目はあるのか? それらの単価を安くする手段は無いのか?
    自分はこの手の分野には疎いので調べられないのですが、こういうところが気になります。

    お役人もいっそのこと、「年金支給額を先延ばしに」とか言わないで、「働いてくれるなら、消費税を上げなくて済みます」とか言ってくれたらいいのに。

    • >医療の高度化が、即ち1回の診療あたりの単価、経費の高額化に直結しているのだろうか?
      その通りだと思います。

      これまで癌は不治の病で死に直結していましたが、医療の発達によりなかなか死ななくなった。治療期間が長いからたくさん医療費がかかるようになったということでしょう。

      2.に関して
      単価が安くなるどころか時代が進めば進むほど医療単価は高くなる傾向にあります。。。
      胃癌に関して言えば、手術は腹腔鏡に変わり、新たな抗癌剤もどんどん出てきています。最近はロボット手術も保険適応になり、その機械は約3億円します。

      個人個人が医療はタダでないことを認識することが重要な気がします。

      • なるほど、かつての「不治の病」が治療可能になったものの、全体的に見ると、治療費そのものは治療期間の延長込みで増額されているということなのですか。
        てっきり、胃がんなども「腹腔鏡で体に負担も軽くて安全安心」「だから入院期間だってこんなに短く」「じゃあ、安くなってもいいんじゃない?」くらいのイメージでしたが、設備費や新薬の登場の結果、そう上手くはいかないということなのですね。

        なんか、IT業界で次から次へと「こんなに安くて早く簡単に」とか謳う新しい技術が出てきても、結局はそんなに開発費が安くならない現実を思い出しますねえ。

        多分、現場のお医者さんも、設備費を安く、薬代を安く、でもって患者さんに効果的な治療が出来たら嬉しくて。
        でもってその分、自分のお給料や休み貰うための人員確保のための経費に回して欲しいとか考えていると思いますが。
        医者も商売だし、商売敵に負けないよう、高額な機材の購入も必要でしょうし。

        色々と考えてみましたが、やはり自分ごときの頭じゃ全く解決策が思い浮かびませんね。
        AI診療みたいなものが普及すればあるいはとかも考えましたが、その初期設備費用や、やはり残ってくれないと困る人間のお医者さんとかの問題もありそうですし。
        うーん、難しい。

    • 次か次の投稿でレス内容についても触れられています。
      思いつくまま書き連ねてしまった悪弊の為に、前後編に読める様に編集していただけるそうでw。

      >実は脳溢血のような、高齢化で誰にでもなる可能性がある、高度な医療が必要な病気に費用が掛かっている

      脳溢血(脳出血)は、実のところ、まったくお安い疾患なんですよ。
      というのも、現状、減圧開頭血腫除去くらいしか医療介入がないので、あとは急性期の管理してリハビリ病院に送るだけのシンプルな(分岐が簡単という意味で診療が簡単という意味ではありません)お仕事で、お金が掛かるのは、そのあとの生き延びた後の期間です。

      手術の料金は、内視鏡手術やロボット手術など、投資が必要なものは最初は比較的高い診療報酬が設定されるのですが、ジリジリと下げられて、底値になったら、こんどは「こんなんじゃ赤字で手術できない!」って外科医が騒ぎ出すと、「ちっ、うせーな。だったら物価スライド分だけ上げてやるよ」と恩着せがましく少しだけまた上げるという様式になっております。

      3.4.に関しては次稿をお待ちください。

  • 「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」、ウルトラセブンの名台詞ですね。ニヤリといてしまいました(笑)

    • いちおうヲタクネタは理解できなくても、
      スルーして読めるようにはしているつもりですが
      拾ってもらえると嬉しいですw

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