昨日は韓国で発表された外貨準備高、経常収支という2つの経済指標について、それぞれ、『「為替変動」だけでは説明がつかない、韓国の外貨準備の減少』、『「韓国の経常収支が7年ぶりに赤字」の意味を考えてみる』という2つの記事で速報的に紹介しました。ただ、韓国で経常収支赤字が今後も続くのかどうかについては気になるところです。というのも、経常赤字が転じて格付アクションを招き、そのことがきっかけになって韓国からの資金流出(株安・通貨安・金利上昇)のきっかけとなる可能性があるからです。そこで、本稿ではもう1つ、韓国と個別国との貿易収支構造に関するデータを紹介したいと思います。
2019/06/06 11:45追記
図表3~6の縦軸の表示が間違っていましたのでグラフを差し替えております。読者にはご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。
目次
なぜ韓国経済を見るのか?
最近、当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』では、韓国に関する話題を提供する機会が急増しています。
当ウェブサイトは「韓国専門サイト」であるつもりはありませんが、それでも、彼らはそれこそ国を挙げて私たちの国に対してさまざまな不法行為を仕掛けて来ているため、当ウェブサイトとしても、「いかにして彼らの不法行為から日本の国益を守るか」という視点に着目せざるを得ないのです。
当ウェブサイトで韓国に注目する理由は、それだけではありません。
日本が好むと好まざるにかかわらず、仮に近隣諸国で戦争などの混乱が発生すれば、そのことによって大量の難民が日本に押し寄せてくる可能性もありますし、日本に敵対する国がその気になれば、大量の難民に紛れさせて工作員などを日本列島に送り込むことも可能でしょう。
また、戦乱とまでは行かなくても、通貨危機や経済危機、あるいは雇用不安などが生じたとしても、「経済難民」の流れが生じる可能性はあります(いや、むしろ平時の方が、日本の入国管理の網を潜り抜けて不法就労が発生する確率が高いかもしれません)。
もちろん、1人あたりの所得や社会環境などの経済格差が存在する以上は、「政治難民・経済難民として日本に流入してくるリスク」が高い国は韓国には限られません。日本の周囲だと、中国、ロシア、フィリピン、インドネシア、ベトナムなど、そのような国はいくらでもあります。
ただ、人口密集地帯である釜山が対馬から最短で50kmしか離れていないなど、韓国が地理的に極めて近いことに加え、特異で強固な反日感情が根強く、政府、企業、国民などさまざまなレベルで日本に敵対するさまざまな行動を実践している国であるという事実を無視してはなりません。
つまり、日本にとって韓国とは、「ただの外国」ではなく、「監視しなければならない潜在的な敵対国」の1つです。その意味で、当ウェブサイトでどうしても韓国に関する話題が増えてしまっている点につきましては、なにとぞご了承いただきたいと思うのです。
経常収支と貿易収支
経常収支が7年ぶりに赤字に
さて、昨日は韓国で発表された外貨準備高、経常収支という2つの経済指標について、それぞれ、『「為替変動」だけでは説明がつかない、韓国の外貨準備の減少』、『「韓国の経常収支が7年ぶりに赤字」の意味を考えてみる』という2つの記事で速報的に紹介しました。
得てして経済指標というものは、1回や2回の発表ですべてを読むということはできず、何らかの「ターニング・ポイント」を探るというきっかけに過ぎません。
しかし、昨日の2つの指標のうち、経常収支については、現在の韓国経済を象徴する大きな変化があったことも事実です。それは、7年ぶりに経常収支が赤字に転落した、という事実です。
昨日、「韓国の経常収支は貿易収支と一次所得収支でほぼ説明が付く」と申し上げましたが、それを1つにまとめたグラフが、次の図表1です。
図表1 韓国の経常収支・貿易収支・一次所得収支(2012年1月以降、金額単位:百万ドル)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
これを見れば、韓国では経常収支の動き(棒グラフ)と貿易収支(赤線)が重なっている頻度が高いといえるものの、月によってもかなりの変動があり、両者が大きく乖離するときもあります。
とくに、一次所得収支(青線)は、例年、4月に大きな赤字となることが多く、必然的に、毎年4月は経常収支の黒字が大きく落ち込むという傾向があります。そして、今年はついに、貿易収支の黒字で一次所得収支の赤字を賄うことができず、経常収支自体が赤字になってしまったのです。
わかりやすい貿易収支構造
ところで、韓国が資本構造的に、どうしても配当金の流出という体質を抱えていることは間違いないのですが、問題は、韓国の経常収支の赤字が恒常化するかどうか、という点ですが、これについて考察するうえで、参考になるのが国別の貿易収支です。
気になって韓国銀行のサイトを漁っていると、興味深いデータを見つけました。それが、「国別の貿易高」に関するデータです(図表2)。
図表2 韓国の相手先別輸出入(2019年4月、通関ベース【金額単位:千ドル】)
相手国 | 輸出(E) | 輸入(I) | E-I |
---|---|---|---|
通関ベース | 48,829,340 | 44,826,006 | 4,003,334 |
うち中国 | 12,444,535 | 9,796,056 | 2,648,479 |
うち米国 | 6,172,402 | 5,581,152 | 591,250 |
うち日本 | 2,279,157 | 4,570,247 | -2,291,090 |
うち香港 | 2,593,489 | 177,884 | 2,415,605 |
うち台湾 | 1,406,663 | 1,300,704 | 105,959 |
うちドイツ | 768,831 | 1,618,627 | -849,796 |
うちサウジアラビア | 288,885 | 2,058,883 | -1,769,998 |
(【出所】韓国銀行)
なお、こちらのデータはどうやら「通関ベース」らしいので、貿易収支は先ほどの図表1で示した経常収支統計のデータとはおそらく一致しません。
また、韓国メディアの昨日の報道では、韓国政府・産業通商資源部が5月分までの輸出入データを公表しているそうですが、韓国銀行のデータ上、現時点では「国別貿易高」については4月分までしか収録されていないようです。
それはともかくとして、図表2は非常に興味深いものです。
というのも、韓国は中国と香港に対して巨額の貿易黒字を計上しており(2019年4月時点だとそれぞれ26億ドル・24億ドルで、あわせて50億ドル)、また、対米黒字も巨額ですが、日本とサウジアラビア、ドイツの3ヵ国に対して巨額の赤字を計上しているのです。
ということは、
- サウジアラビアからは石油を、日本とドイツからは素材を買ってくる
- 韓国国内でそれらの素材を使って生産活動を行う
- 製品を製造したうえで、中国や香港、米国などに対して輸出する
という、まことにわかりやすいビジネスモデルなのです。
個別国の貿易高
中国と香港、そして米国が韓国の主要得意先
とはいえ、図表2は単月のデータですので、もう少し長い傾向を見るために、ここ4年分少々について見てみましょう。まずは中国と香港です(図表3、図表4)。
図表3 韓国の中国との貿易高と収支(通関ベース、金額単位:百万ドル)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
図表4 韓国の香港との貿易高と収支(通関ベース、金額単位:百万ドル)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
この2つのグラフからは、韓国にとって中国(香港を含む)との貿易が死活的に重要だ、ということが伺えます。輸出の金額もさることながら、純額での貿易収支(※厳密には「貿易収支」ではなく「輸出入差額」かもしれませんが…)も非常に巨額であることが分かります。
ところが、中国向けに関しては輸出高の低迷を受け、貿易収支が今年に入ってから急激に悪化しています。とくに、今年1月には貿易収支はギリギリ黒字を維持したものの、赤字転落直前という状態にあったのです。
一方、「黒字を計上している貿易相手国」という意味では、韓国にとっては米国も重要です(図表5)。
図表5 韓国と米国との貿易高と収支(通関ベース、金額単位:百万ドル)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
ところが、こちらの貿易高についても、貿易収支はギリギリ黒字を維持しているものの、赤字転落直前という状況にあります。もともと、韓国の米国向け輸出高(通関ベース)は中国向け輸出高の半分くらいで、いわば「きわどいバランス」にあったのですが、赤字転落間近にも見えます。
日独からは輸入が大幅に超過
一方で、日本とドイツとの貿易関係を見れば、いずれの相手国とも、韓国は巨額の貿易赤字を計上しています(図表6、図表7)。
図表6 韓国と日本との貿易高と収支(通関ベース、金額単位:百万ドル)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
図表7 韓国とドイツとの貿易高と収支(通関ベース、金額単位:百万ドル)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
当ウェブサイトでは以前から指摘して来ているとおり、これは日本から見れば、韓国が日本に巨額の貿易黒字をもたらす重要な貿易相手国である、という意味でもありますが、韓国の視点からは、日本とドイツが貿易赤字の相手国だ、ということです。
また、韓国が日独に対して巨額の貿易赤字を計上し続けている理由は、おそらく、韓国の産業が部品・素材の供給を日独両国に頼っているという構図があるからでしょう。これについては次の韓国メディア『中央日報』(日本語版)などでも報じられています。
韓経:「韓国は日独に部品・素材依存していた時代に後退している」(2019年04月02日09時21分付 中央日報日本語版より)
リンク先は中央日報が『韓国経済新聞』の記事を日本語訳して掲載したものですが、こうした「部品・素材を韓国は日独に依存している」といった報道は、ときどき韓国メディアに掲載されます。しかし、数字の上からここまで極端に出ていることについては、実際に調べてみると興味深いものがあります。
韓国の貿易は縮小均衡へ?
ただ、日本とドイツを比べると、日本との間では貿易赤字額はほとんど変わっていないのに対し、ドイツとの間では徐々に貿易赤字幅が縮小傾向にあります。
これについては『韓国は典型的な「縮小均衡経済」の罠におちたのか?』のなかで、韓国のGDP速報を眺めると、2019年第一四半期(1~3月期)における輸出入が急落するという、典型的な「縮小均衡」の罠に落ちたのではないか、と指摘しました。
実際、韓国にとって重要な輸出先(中国・香港・米国)と輸入先(日本・ドイツ)を眺めてみたところ、
- 中国、米国との貿易黒字幅は縮小している
- ドイツとの貿易赤字幅は縮小している
という傾向がくっきりと確認できるのです。以上を踏まえて、実際に全世界に対する貿易額と、貿易収支の推移を見てみましょう(図表8)。
図表8 韓国の輸出入と差額(金額単位:百万ドル)
(【出所】韓国銀行データより著者作成)
グラフで見るとくっきりしますが、あきらかに韓国の貿易黒字額が低迷しているのです。
一国のGDPは「消費+投資+政府支出±貿易収支」で定義されますが、貿易面での黒字が縮小し始めたという傾向が一時的なものでないならば、韓国は今すぐ内需を振興しなければ、GDPのマイナス成長が続いてしまう可能性もあるでしょう。
View Comments (10)
韓国経済の低迷は日本にも影響する。韓国は日本の大事な輸出先。
などという日韓議連辺りの虚言に乗って、懸案事項を棚上げすることなどはお断りです。
文在寅政権に景気対策を求めるとはご無体な。
ブログ主さんも意地が悪い(笑)。
彼らの特徴は、「不作為」「責任逃れ」「現実逃避」。
意図的な韓国破壊工作だとする向きもありますが、
単に無能なだけなんじゃないかと思います。
対北支援問題を見ても、
制裁解除⇒ケソン再開⇒しょぼい食糧援助
ですからね。北朝鮮が恩着せがましいと罵るのも
理解できます。
これらの特徴を考えると、大阪G20欠席するんじゃ
ないかと思います。来ても針の筵ですから。
針の筵っていう概念が文在寅の中にあるんですかね?
この間のトランプとの2分会談でもあの満面の笑みですよ
匿名様
たしかに(笑)。G20欠席予想に自信がなくなってきました。
お題違いですが、韓国関連の速報です。
< 「習近平氏、5年ぶりに訪韓…大阪G20サミット参加前に」>
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190606-00000002-cnippou-kr
習近平氏が、大阪G20サミット参加前に訪韓するそうです。
米中経済戦争で、旗をはっきりとさせない韓国に大御所出陣ということでしょうか。
たぶん、何の考えもないのでしょうが、どうします?文在寅さん。
G20後には、あなたが自らトランプさんをお招きしているのですよ。
今回の経常収支の赤字は季節的な影響がかなり大きいとは思うけれど、中長期的に見て韓国経済の見通しがかなり絶望的なのも確かですね。いい材料が本当に一つもない。
長期的にみると、日本からの新技術の移転(含む盗み)がない限り、韓国は他の新興国(主に中国)に
技術的優位性を保てません
なぜなら、韓国内に「持続可能な根源技術」がないからです
これは韓国人自身の問題とも言えますが、日本が意図的に鵜飼の鵜の立場を韓国に割り当てていたからです
慰安婦像問題で、ハイレベル経済協力会議(実質的には日本から韓国への一方的な支援)は止まってますし
多くの大企業は、技術情報の盗みに対して対策を取ってます
上の構図が変わらない限り、韓国の経常利益は持続的に減少していきます
赤字と黒字がどこで入れ替わるかは、他の要素もあるので、一概には言えないです
例えば、海外観光旅行を禁止すればそれだけで随分助かります
私個人の事情ですが、文字より絵の方が脳味噌に入りやすく、今回のグラフはとてもわかりやすかったです。
中国:輸出入とも死活的に大事
米国:輸出先として死活的に大事
日本(米国の子分):輸出入とも死活的に大事
死活的に重要な3国のうち、中国か、日米どっちを選ぶのかを迫られているわけですね。
ドイツもなんだかんだ、最終的には米国の言うこと聞かざるを得ないと思いますし。
キビシイ選択。
お茶を濁してどうにかなる話じゃないと思うんですが、お茶を濁して逃れようとし、信用を失ういつものパターンでしょうか。
いつの間にか中国側メンバーにカウントされて、しかも信用されてないから下っ端扱い。
腹くくったほうが返って楽だと思うんですがね。
習近平がG20前に訪韓する記事が紹介されていましたが、華為やTHAADで何か呑んだんでしょうかね。
中央日報で「西側外交消息筋」ってのが怪しい感じもしますが。
しかし、いよいよ機が熟しつつある感じがします。
米国は見せしめ的なお仕置きをするんだろうか。
台湾総統選挙(来年1月?)前になんかするんだろうか。
しかし、他の韓国関連エントリとのコメント数の差を見ると、実はみんな「反日の韓国」にしか興味がないんじゃないかとすら思います・・・。
安保体制で米国にぶら下がりながら、中国に接近し甘い汁を吸い続けた韓国。
いいとこ取りのファジー戦略も限界。(赤と青の韓国旗みたいにはいかない)
*韓国は米中どちらにつくのが幸せなのだろう?
(安保)
赤くなっても青くなっても片方から叩かれる。
赤くもなく青くもなければ両方から叩かれる。
(経済)
対中の輸出依存が高いのですが、中国・香港への輸出額のうち約23.8%は中国経由で米国に迂回輸出されてると仮定しました。
本稿の図表2に当てはめると中国香港への輸出合計額約150億ドル×23.8%=35.7億ドル
これを対米直輸にシフトすれば、
修正前の貿易収支は
米 5.9億ドル
中・香 50.6億ドル
修正後の貿易収支は
米 41.6億ドル
中・香 14.9億ドル・・と、逆転します。
*常識で考えると「西側陣営残留」の一択だと思うんですけどね。
*でも、結論は最期まで出ないのかもしれません。肝心なとこでは「何もしないことしかできない人たち」なのですから・・。
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「世界の統計2019」図表9-6(3) 2017の数値より
https://www.stat.go.jp/data/sekai/0116.html#c09
①中国と香港の輸出を一体化(輸出額合算から相互干渉額を差引)
A:中22633億ドル+香5502億ドル-(干渉額5771億ドル)=22364億ドル
②Aから日韓(日韓は立場が類似のため)の影響力を差引
B:A-(日1538億ドル+韓1027億ドル)=19799億ドル
③日韓から中国経由での対米輸出割合
C:中国(含む香港)の対米輸出4727億ドル÷B=【約23.8%】
④韓国から中国経由での対米輸出金額
D:中国(含む香港)への輸出約2100億ドル×C=約500億ドル
*②の計算は中国からの「Uターン輸入はない」との前提です。
*ま、所詮は素人考えなんですけどね。