トランプ訪日成功に慢心するな 次の一手は日台通貨スワップ?

3泊4日の日程で日本を訪れていたドナルド・J・トランプ米大統領が、火曜日、帰国の途に就きます。今回の訪問日程は、日本にとって、その長さもさることながら、日本「だけ」に滞在したという点に加え、令和初の国賓として、御即位されたばかりの天皇陛下と会う初の外国国家元首となったという、非常に重要な意味があります。また、米国の側から見れば、来月予定されているトランプ氏の国賓としての訪英とエリザベス女王との会見と並び、日英両国との強固な同盟を確認する、という意味があるといえます。ただし、日本の側はトランプ氏の訪日の成功に慢心することなく、「次の一手」を講じなければなりません。

トランプ訪日、大成功

トランプ氏、離日

土曜日から日本を訪れていたドナルド・J・トランプ大統領が、火曜日、羽田空港から帰国の途に就きます。あらためて振り返っておくと、トランプ氏は日本で実に充実した時間を過ごしました。

5月25日(土)
  • 午後:トランプ氏が大統領専用機で羽田空港に到着、「パレスホテル東京」に宿泊(~28日)
5月26日(日)
  • 午前:安倍総理と千葉県茂原市でプロゴルファーの青木功氏を交えてゴルフ
  • 午後:東京・両国国技館で大相撲夏場所千秋楽を観戦、優勝力士に「米国大統領杯」を授与
  • 夕方:安倍総理と東京・六本木の炉端料理店で非公式夕食会
5月27日(月)

(午前)

  • 皇居で歓迎行事、天皇・皇后両陛下と会見
  • 元赤坂の迎賓館で安倍総理と日米首脳会談

(午後)

  • 拉致被害者家族と面会
  • 共同記者会見
  • 宮中晩餐会
5月28日(火)
  • 午前:神奈川県の海上自衛隊横須賀基地で護衛艦「かが」に乗艦
  • 午後:トランプ大統領が大統領専用機で離日

(【出所】時事通信『【図解・国際】トランプ米大統領の来日日程(2019年5月)』、産経ニュース『日米首脳 北問題協議へ トランプ氏、25日来日』、東京新聞『トランプ氏 あす国賓来日 27日、天皇陛下と会見』等を参考に著者作成)

多忙なアメリカ合衆国大統領という立場にあるトランプ氏が、3泊4日に及んで「日本だけに」滞在したという事実の重みは、非常に大きいでしょう。

これに加えて、トランプ氏は天皇陛下が今月1日に御即位されて初めて迎えられる国賓でもあります。実際、トランプ氏も自身のツイッターで、そのことを速報したジャパンタイムズの記事をリツイートしています。

貿易問題など、課題も山積するが…

もちろん、現在の日米関係に、まったく何の問題もない、というものではありません。

むしろ、沖縄県の米軍基地問題を筆頭に、日米間にさまざまな課題が山積していますし、これに加えてトランプ氏が日本との貿易不均衡を政治問題化していることもあり、米国が中国に対して仕掛けているような貿易戦争は日本にとっても他人事ではありません。

ただ、日本と中国の最大の違いは、米国と価値を共有している、という点にあります。

自由主義経済とは、単に「儲けるためには何をやっても良い」という制度のことではありません。「ルールの範囲内で利益を最大化すること」がその最大の特徴です。

日本にも米国にも、ごく一部、「ルールを破ってでも儲けた者が勝ちだ」という歪んだ意識を持っている経営者がいないわけではありませんが、基本的には経営者はさまざまなルール(独占禁止法、労働法、会社法、税法など)を守りながら、利益を最大化することが求められます。

しかし、こうした日米の「ルール主義」が通用しない国が、中国です。

基本的に中国で儲けるためには「中国共産党との距離の近さ」がポイントとなりますし、中国に進出した日本企業の担当者が常に頭を悩ませるのは、国を挙げて人治主義、不正、賄賂などが罷り通っているという状況にあります。

(※なお、このあたりについては私自身も非常に多くの事例を知っていますが、関係者に迷惑が掛かっても困るので、本稿で個別の具体的な事例を指摘することは控えたいと思います。)

このため、私の理解では、トランプ氏の主導する「米中貿易戦争」の究極的な目的は、「ルール主義」から逸脱した中国を西側諸国から排除することにある、と考えているのです。

それこそがまさに、華為(ファーウェイ)製の通信機器を次世代通信規格(5G)から排除する、という点に表れているのではないでしょうか。

日本にとって盤石な日米関係の恩恵

さて、今回のトランプ氏の訪日を巡って、ツイッターでは「巨額のカネを使った」といった批判をテレビ番組が繰り広げていたことを批判する投稿もありましたが、それが事実だとすれば、テレビのワイドショーとは、本当に低レベルすぎて困ります。

基本的に、現在の日本が置かれている国際環境を見れば、日米同盟が盤石であること(あるいは「日米同盟は盤石だ」と周辺国に思われること)の価値は、非常に大きいからです。

まず、日本の隣には、世界最大の面積を誇るロシア、世界最大の人口を誇る中国という2つの大国があります。

どちらの大国も、過去に日本が戦争で勝った相手国でもあり、現実には非常に戦争に弱い国でもありますが、それと同時に、第二次世界大戦に敗戦したあとの日本は憲法で戦争が禁止され、それを良いことに、この2ヵ国はそれぞれ日本に対して軍事的脅威を与えています。

日本国憲法第9条
  • 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  • 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

私自身は日本国民の1人として、この憲法第9条についてはできれば全文の削除、それが無理だったとしても第2項の削除(もしくは次の第9条の2の新設)が必要だと考えています。

日本国憲法第9条の2

前条の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

ただし、残念ながら現状、改憲を阻む「国民の敵」の勢力は、衰えたとはいえ依然として強く、中国の海洋進出をはじめとする諸問題に対処するためには、日米同盟の盤石さを見せるのが一番手っ取り早いのです。

その意味で、今回のトランプ氏の訪日は、日米の強いきずなを改めて確認する良い機会になったことは間違いありません。

とくに、皇居・宮殿を訪れたトランプ大統領夫妻を、天皇・皇后両陛下が最初は通訳なしで歓待していたことは、新時代の幕開けを感じさせる象徴的なものでした(※ちなみに両陛下はお二人とも英語圏への留学経験をお持ちです)。

また、茂原市のゴルフ場でトランプ大統領をカートに乗せて運転する安倍総理は、日米首脳が個人レベルでも深い友人関係にあるということを如実に示しているといえるでしょう。

視野を広げよう

テリーザ・メイ首相、最後の仕事は「トランプ対応」

さて、トランプ氏の訪日を興味深く眺めている人物が、もう1人いるとしたら、ユーラシア大陸を挟んだもう1つの島国・英国のテリーザ・メイ首相ではないでしょうか。

Theresa May to Step Down as U.K. Prime Minister(米国夏時間2019/05/24(金) 09:31付=日本時間2019/05/24(金) 22:31付 WSJより)

すでに報じられているとおり、メイ首相は6月7日に保守党の党首を退任する予定ですが、そのメイ首相にとって、最後の仕事が、どうもトランプ大統領を迎えることになりそうなのです。

トランプ米大統領、6月に訪英へ 初の国賓待遇(2019年04月24日付 BBC NEWS JAPANより)

英メディアBBCやバッキンガム宮殿のツイートなどによると、トランプ大統領は6月3日から3日間の予定で英国を国賓として訪問し、エリザベス二世女王と会う予定だとか。

トランプ氏にとっては、ごく短期間で、(米国から見て)西の日本、東の英国という、2つの重要な同盟国を国賓訪問するという格好になりますが、このことは米国にとっても悪いことではありません。

なぜなら、米中貿易戦争を巡っては、欧州連合(EU)、とりわけドイツが米国に対して批判的ですが、米国にとっては盤石な英米同盟をあらためて確認する、非常に良い機会になるからです。

BBCによると、トランプ氏は2018年7月に大統領就任後初めてイギリスを訪れ、ウィンザー城で女王と対面しているものの、このときは国賓ではなく実務訪問に格下げされています。

また、英国にとっても、EU離脱(ブレグジット)の先行きはわかりませんが、この機会に米国との「特別な関係」を確かめるのは悪いことではありませんし、ブレグジットの混乱で辞任を余儀なくされたメイ首相にとっては最後の花道になるのではないでしょうか。

盤石な日米同盟は盤石な海洋同盟へ

さて、世界主要20ヵ国の首脳が大阪に集う、今年6月の「G20首脳会合」に先立って、トランプ氏が日本を4日間、英国を3日間、それぞれ国賓として訪れることには、非常に大きな意味があります。

それは、米国を中心として、西に日米同盟、東に英米同盟があり、同じ価値観、同じ戦略で結びついているからです。

そして、日本にとっては、日米同盟を軸にしつつ、将来的には、豪州・カナダ・インド・ASEAN・英国・フランスなどと連携するといった形で、同盟をさらに拡大させ、地域と世界の平和と繁栄に寄与していくという未来図が見えて来るのです。これこそまさに「希望の同盟」そのものでしょう。

ただし、そのためには、私たち日本国民が絶対に無視できないステップがいくつかあります。

最初のステップは、日本の軍事的自立です。日本の安全を、いつまでも日米同盟だけに頼ることは許されません。トランプ氏自身、米軍の経費節減を大々的に提唱している人物でもありますが、それと同時に、最低限、自国を守るのは独立国としての当然の義務でもあります。

少なくとも宗谷海峡、対馬海峡、台湾海峡を自力で守れる能力が、日本には必要ですし、理想を言えば現在の片務的な日米安保体制を、英米同盟のような「双務的な同盟」に格上げし、日本が米国にとって真に信頼されるパートナーとなることを目指すべきです。

なお、日米同盟を「双務的な同盟」にしたら、日本が米国に言われるがまま、海外出兵させられて、日本軍に人的な損害が出る、といった議論があることは事実でしょう。

しかし、逆もまた真なりで、日米同盟が対等なものに近付けば近付くほど、米国は日本に対して無茶を主張することができなくなります。米国が2003年のイラク戦争のような無茶な戦争を始めようとしたときに、日本が「米国の対等なパートナー」としてそれを止めることも期待できるでしょう。

そろそろ台湾問題に向き合いませんか?

さらに、軍事的自立の過程で、日本は台湾問題とも正面から取り組まねばなりません。

台湾は現在、正式には「中華民国」と名乗っていて、「中華人民共和国」と名乗る国の領土の領有権を主張している一方、「中華人民共和国」と名乗る国は台湾の領有権を主張しています。

しかし、すでに分断から70年が経過し、共産主義と不透明な一党独裁が支配する中国本土と異なり、台湾では透明な民主主義が実施されていて、もはや中台両国を「同じ国」だとみることは難しいのではないでしょうか。

もちろん、台湾人が自分たちを独自国家と見るかどうかは、台湾人自身の選択であるため、私たち日本がそれに干渉することはできません。

ただ、共産主義と腐敗が支配する中国本土から離れ、台湾が独自の道を選ぶというのならば、日本はそれを支援しなければなりませんし、場合によって、日台同盟で日本が台湾を中国から守るくらいの気概を見せるべきでしょう。

いや、それに先立って、現時点でもできることがいくつかあります。

日本は公式には台湾を国家と認めていませんが、さしあたって日本銀行と台湾銀行が日台通貨スワップ協定を締結し、金融危機などの有事の際には台湾ドルを担保に日本銀行が台湾に日本円を貸し出す、という仕組みを整えてはいかがでしょうか。

是非、通貨当局にはこのことをご検討いただきたいと思います。

ツイッターを嫌がるメディア

さて、今回のトランプ氏の訪日には、もう1つ、興味深い側面があります。

それは、トランプ氏の「ツイッター主義」です。

トランプ氏は普段から重要な話をツイッターで全世界に向けて発信しまくる人物でもありますが、これを苦々しく見ているのが米国のメディアです。日本時間の日曜日夕刻に米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が掲載した次の記事など、その典型例でしょう。

Trump’s Japan Visit: Golf, Burgers and a Provocative Tweet(米国夏時間2019/05/26(日) 03:14付=日本時間2019/05/26(日) 16:14付 WSJより)

タイトルにある “provocative tweet” (挑発的なツイート)という単語に引っかかりますが、早い話が、ツイッターで何でもかんでも発信するな、と言いたいのではないでしょうか。

早い話、昔は大統領の発言を一般大衆に伝えるという役割を、自分たちメディアが独占的に担っていたのに、今やトランプ氏はツイッターを通じて、わかりやすく噛み砕いた言葉で、広く大衆に直接呼びかけているという状況に、不満を抱いているのでしょう。

しかも、トランプ氏はときどき、CNNなどの実名を挙げて、自身のツイッターで「フェイク・ニューズ・メディア」(fake news media)と批判しているのも、米国のメディアがトランプ氏を嫌っている理由の1つなのかもしれません。

日本でも最近だとマスコミが業界を挙げて繰り広げた「もりかけ問題」などの倒閣運動も失敗に終わり、新聞・テレビを中心とするオールドメディアがインターネットの発達を疎ましく感じているようですが、このあたりの事情は日米共通なのかもしれませんね。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 一読者 より:

    日本国内でも、「日本を特亜に差し出したい方達」が、キーキー言っていますね。

    トランプ大統領来日、野党が「おもてなし」批判
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190527-00000600-san-pol

    金子勝氏が安倍首相のトランプ過剰接待に苦言「ああバカボンボン外交」
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190528-00000005-tospoweb-ent

    「アメリカと日本が仲がいいのが悔しい。ああ悔しい。これは過剰な接待のせいだ」
    「アメリカとの蜜月は日本の国益じゃない」

    等、認知バイアスにかかっている方達が騒ぐことで、
    「日本の敵」がとてもわかりやすく炙り出せているのがとても楽しいです。

    1. 心配性のおばさん より:

      一読者様

      日本でいう接待を、英語では何というのでしょう。ワーキンディナー?
      飲食で場を和らげてはいますが、そこで、情報交換し、根回しをする。「越後屋、おぬしも悪よのう。」といった密約、腹芸もあります。しかし、それは、日本のビジネスマンの戦いの場でもあります。お金がかかり過ぎ?いえ、ペイすれば問題ありません。
      それより、トランプ氏が共同記者会見の場で記者から日米貿易交渉について質問を受け、ニヤリと笑って「私もそこを聞きたいのだ」と言った後、「8月までに良い結果が聞けると思う」といったあたりは、さすがビジネスで成功している人物らしい見事な反則技です。
      安倍さんとは、事前にそのような約束はしていないに相違なく。明らかな上書きです。安倍さんも「やられた。」と苦笑いでした。
      ”接待”という戦いの場では、ニコニコと笑いながら、丁々発止の戦いがあります。トランプ氏は帰国されましたが、戦いは続きます。

  2. 自転車の修理ばかりしている より:

    私たちは中韓が日本からの戦争被害に言及するたびに「いったい何年前の話をしているんだ」と辟易とします。
    別な視点で見れば、日本が「憲法に謳われているので主導的軍事活動はできません」と発言するたびに、英米を含むブルーチームも日本に対し同じようなことを思っているのではないでしょうか。「何年間敗戦国でいるつもりだ」と。軍事大国になる能力があるのに米国の陰に隠れている、金は出しても命は懸けない、ずるい、と思われても仕方がないように思います。
    安倍首相の改憲への努力に賛成します。

  3. 牛島 より:

    台湾は大陸との結びつきがつよいし、北とも取り引きのある企業もあるのだとか。

  4. 名無しA より:

    今回、貿易や北朝鮮対応がクローズアップされがちですが、
    実はイラン問題が結構重要だったのではないかと思います。

    トランプ訪日直前にイラン外相が突然訪日してますし、
    日米会談で安倍首相は来月半ばにイラン訪問を検討して
    いることを伝え、トランプ大統領は期待感を示したとのこと。
    仲介役を頼まれたのでしょうね。

    日本としてもホルムズ海峡封鎖とかなったら大打撃ですから、
    米vsイランの軍事衝突だけは避けるよう仲介するしかない
    のでしょう。ただあまり深入りはしないでほしいと思ってます。
    中東問題は大火傷しかねないので。

    ところで31日にシンガポールで開かれるアジア安全保障会議
    で日韓防衛相会談が中止になるそうで。岩屋大臣の「韓国と
    元の関係に戻りたい」発言は釣りだったのか?それとも官邸から
    ストップがかかったのか?

  5. 伊江太 より:

    次の焦眉の問題は台湾との指摘。本当にその通りですね。南シナ海が中国の領海になるなんてとんでもない話ですが、それにも増して仮に台湾が中国の一部になったとしたら、フィリピンもその軍門に降るのは間違いないでしょう。そうなればまさに日本のシーレーンの要バシー海峡の安全航行が脅かされることになる。なんとしても台湾には今の独立的状態を保ってもらいたいと念じます。とはいえ台湾問題は中国にとっては第一等の核心的利益。下手につつくのはいかにもまずい。日本外交の実力がまさに問われるところでしょう。河野外相が台湾のWHO加盟を支持するような意見をツイッターで発信したというニュースがありましたが、台湾の国際舞台への復帰の一歩として、目の付け所としてはまずはこんなところかと思います。SARS(重症急性呼吸器症候群)の騒動の時が、これは発生地が中国でしかもその初期対応の重大な不手際で世界中から攻め立てられてたこともあったので、大きなチャンスだったんですがね。それはともかくとして、国際公衆衛生上重要な様々な感染症の温床である中国、東南アジア諸国に近接する位置にあり、比較的大きな人口を擁する台湾をWHOメンバーに加えないのは、危険な疾患の蔓延を防止する上で重大なリスク要因になるという正論には、中国もそう表立っての妨害は出来ないんっじゃないかと思うんですが。
    台湾の経済状況についての知識がないので、日本とのスワップ締結がどの程度切実な問題なのかについては判断できませんが、中国に文句を言わせない分野での両国の経済協力はもっと積極的に進めて行くべきだろうと思います。一案ですが、日本の経済力、医学、技術力と、熱帯医学に関する台湾の経験と知識、人材を生かして、熱帯域の途上国に提供する医療パッケージを開発するなんてことも可能かと思います。台湾を表に立てて日本は脇役でいいという形でやれば、台湾の国際地位の向上の一助にはなりそうです。

  6. 阿野煮鱒 より:

    台湾については、まず台湾人の覚悟が先だと思います。

    敗戦で日本が去った後に、蒋介石率いる国民党が大陸から逃げてきたことで、擬似的に少数民族たる外省人が多数派の本省人を抑圧的に支配するという構図ができました。この強権支配体制は、息子の蒋経国の時代に徐々に緩和され、本省人であり日本語世代である李登輝へと「禅譲」が行われます。

    こうした経緯のなか、台湾の人々は「台湾人」とひとくくりにできない多様、といえば聞こえは良いが要するにてんでんバラバラな政治的志向を持ち続けています。独立台湾を主張する人もいれば、いまだに「一つの中国」に固執する人もいます。

    民進党の陳水扁が総統になったとき、私は、これで台湾の独立に弾みが付くと期待したものでしたが、金銭スキャンダルで失墜し、国民党の馬英九が政権を握ってしまいました。これで、台湾は心中路線・統一路線へと舵を切り、先行きが怪しくなりましたが、幸い、中国共産党に台湾を売り渡すほどの売国ではなかったようで、きわどいバランス外交で乗り切りました。現在は民進党の蔡英文のもとで「穏健な現状維持」状態です。

    端から見ていると、台湾の内部で常に対立が続いていて、今後どこへ向かうのか予想がつきません。九州よりも少し狭いくらいの国土に、約四千万人がひしめき、原住民、びん南系本省人、客家系本省人、外省人と民族や言語が多様で、「一つの中国」以前に「一つの台湾」ですら困難に見えます。

    私個人は、台湾は「一つの中国」という建前を捨て、「中華民国」という看板を下ろし、台湾国として「独立」すべきだと思います。(独立という言葉を使うのもどうかと思うほどです。)中国とは別の自由主義陣営に属する価値観を持つ今の台湾の有り様を素直に形にしたらそうなると思います。それが素直にそうできないしがらみと思惑でがんじがらめなのです。

    政権が変わる都度に方向が揺れ動く台湾に対し、日本も米国も過度の肩入れはしにくいでしょう。国民の話し合いで意思統一ができるような問題でもなさそうです。それでも議論を続け、熟成させていって欲しいと願っています。

    1. ラスタ より:

      阿野煮鱒様

      独立国台湾に賛成です。日本人が口出しする話ではないのですが。

      台湾と中国との関係は、中国共産党による中国本土支配の正統性という問題が根本にあると思っています。
      台湾が中国とはまったく別の国として独立するなら、中国共産党もそのような心配から解放される。

      引き換えに南シナ海の制海権を諦めるとは思えないけれど、軍事的に抑え込もうとすれば日米英仏による包囲網の干渉を招きかねない。それだけでなく、ロシアも牽制しなくてはならないし、ドサクサで自治区のコントロールを失うわけにもいかない。
      となると経済的に締め付けて逃げられないように拘束しているという現状があるのでしょう。

      しかしここで頭に浮かぶことがあります。
      日本はもう韓国を助ける必要ないですよね。

  7. シレン より:

    >そろそろ台湾問題に向き合いませんか?
    よくぞ、仰せになりました。嬉しいです。

    そして台湾に申し訳ないです。

    台湾総統、日本と協力意欲 安保対話 中国視野にサイバー防衛も
    https://www.sankeibiz.jp/macro/news/190305/mcb1903050500008-n1.htm

    過日このニュースに接したときを思い出しました。
    当時反射的に「アロハ・オエ」の調べがよぎりました。

    蔡総統の苦悩に当時のリリウオカラニ女王も斯くやと思ったのです。
    米国を慮る日本はカラカウア国王の提案を退けハワイを見捨てました。※

    今日本は散々韓国に阿った挙句、アジア一の友邦と言える台湾を見捨てようとしています。
    アロハ・オエを聞き、若き女王の胸中に思いを馳せれば台湾の苦境にてを拱いている我国に忸怩たる思いがするのです。

    ※下種の後知恵ですが、ハワイと同盟し、代りに半島利権の一切を米国に呉れてやれば良かったのです(そもそも時代も合わないし、米国が虎の子を差出代りに借金の肩代わりをするような取引に応じるか?という問題はさて置き気分としては・・・・・・)。

    1. 門外漢 より:

      シレン様へ

      半島は中国に任せる代わりに台湾の独立を認めさせる。そんな上手い手はありませんかね?

      1. 寅太郎 より:

        門外漢様

        >半島は中国に任せる代わりに台湾の独立を認めさせる。

        そうなれば日本のアチソンラインは対馬海峡と台湾海峡になります。
        日本国民にその覚悟があるか?
        その覚悟に目覚めさせるためにも先ずは改憲が必要でしょうね。

    2. ラスタ より:

      シレン様

      私見ですが、当時のアメリカは太平洋側がほぼ無防備であったことから、太平洋におけるの拠点を切実に必要としていて、ハワイ諸島が日本の影響化に入ることは絶対に許さなかったと思います。
      日本は移民を送り込んで(それが正しかったかはともかく)ハワイの独立を支援しましたが、それが後にカリフォルニアの日禍論(そもそもは清国人苦力問題だったはずなのですが。このあたりはいまのアメリカにおける移民問題も同じ論調と思います)、はては日本人収容所という極端な事態に至りました。
      それぐらいアメリカは日本を脅威と見なしていたと思います。

      穿った見方をすれば、日本がハワイに出ていかなかったら、もしかしたらハワイは独立国のままであった可能性もあるんでないかと。
      いや、やっぱり無理ですね。アメリカとしてはハワイが他国の支配下に入る可能性を絶対的に潰さなくてはならなかったから。

      当時、半島とバーターでハワイ独立という目はないです。
      ハワイがなければアメリカは半島まで補給なしになってしまいます。しかも半島に行くには日本の防衛線を通らなくてはならない。日本が逆らったときに日本と戦えるだけの兵站基地が必要です。
      むしろ、太平洋はアメリカに任せて日本は関東軍(本来、関南とすべきではなかったかとも思う)の大陸防衛を満州ロシア国境に置き、東南アジアを日米で独立支援して近代化しつつ中国を包囲するのがお互いの目的に適ったのではないでしょうか。
      なんか、いまと似てますね。

  8. ななしさん より:

    日本国民は台湾を北京共産党の魔の手から防衛することこそ我が国の国防にとって死活的に重要であることを理解せねばなりません。

    台湾の中共による占領を許した場合、日本は尖閣諸島はおろか最終的に南西諸島の全てを失う事態に陥ります。それを説明しましょう。

    まず台湾が中共のものとなれば尖閣諸島のみならず八重山諸島つまり西表島や石垣島の防衛も極めて難しくなり、八重山諸島と尖閣諸島とは最終的には中共に奪われてしまいます。何故ならばこれらの島々は航空自衛隊が拠点とできる沖縄本島よりも中共空軍が拠点とできる台湾からのほうが遥かに近いからです。つまりこれらの島々の攻防戦において地上軍に対してより部厚い航空の傘をさしかけてやれるのは日本側でなく中共側だということです。なお、現在は空自が展開していない宮古島に空自の航空部隊の前進拠点を設けても結論は変わりません。何故ならば、八重山諸島までの距離は沖縄本島はおろか宮古島ですら台湾よりも遠いからです。

    さて、八重山諸島(と尖閣諸島)とが中共の手に落ちると、上と同じ理屈で我が国にとって宮古島防衛は防衛は不可能になります。何故ならば、宮古島は沖縄本島よりも八重山諸島にずっと近いからです。

    そして宮古島まで失えば、同じ理屈の繰り返しで九州よりも宮古島に近い沖縄本島の防衛が不可能になり、最終的には南西諸島の全てを日本は失うことになります。沖縄本島は九州よりも宮古島に近いですからね。しかもこの段階になれば沖縄西方海上の東シナ海に中共が多数の航空母艦を展開して宮古島や八重山諸島の航空兵力に追加することが可能になります。

    つまり、我が国にとって沖縄本島の防衛は不可能となり奄美大島を始めとする残りの南西諸島も次々に奪われ、最終的に日中の国境線は屋久島・種子島と奄美諸島との間に引かれる事態に最終的にはならざるを得ないということです。これも元を辿れば台湾たった一島を中共に奪われることによって起こるのです。

    しかし本当の問題は実はここから始まるのです。中共の対日侵攻がそこで止まるかどうかということです。

    韓国が日米を中心とする海洋同盟から脱落するのが明らかになった今、朝鮮半島は最終的に中共のものとなる(中共領とはならなくても軍事基地を自由に設置できる属国には確実になるでしょう)のは確実ですが、その状態で南西諸島の全ても中共に奪われると、九州の防衛すら現実的には不可能に近い事態となります。

    何故ならば、中共は九州に対して北(朝鮮半島経由)と南(南西諸島経由)と西(南西諸島失陥により完全に中共の内海化した東シナ海経由)の3方向から同時に侵攻が可能になるからです。対して我が国の防衛戦力の補充は東側からしか行えません。これでは勝負は最初から決まっています。

    つまり、台湾を失った場合、最終的な日中の国境線は、最も楽観的に考えても種子島・屋久島と奄美諸島との間、しかし最も可能性の高いのは恐らく関門海峡、そして最悪の事態を考えると九州では飽き足らず中国地方あるいは近畿地方や中部地方のどこか(四国はその場合中共の手に落ちる)になる、ということです。

    「情けは人のためならず」という言葉がありますが、「台湾防衛は台湾のためならず(日本自身のためなのだ)」ということです。日本国民が南西諸島はおろか九州まで失いたくないならば、です。

    ブログ主さまが台湾海峡を対馬・宗谷両海峡と共に我が国の防衛範囲に含められているのは実に御卓見だと思った次第です。

    1. りょうちん より:

      ええと。

      まず中国が台湾を占領して軍事基地にできるという仮定が「まず屏風から虎を出します。」並みなんですが・・・。

      まずは軽い読み物から

      https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/post-11060.php

      専門家の論文はこちらがオススメです。

      https://csbaonline.org/research/publications/hard-roc-2-0-taiwan-and-deterrence-through-protraction/

      台湾の軍事的侵略が難しいからこそ、政治・経済的に屈服させようと一生懸命なわけです。
      韓国・北朝鮮みたいな「成功例」があるわけですしw

      1. なんちゃん より:

        面白い記事をありがとうございます。

        前者の記事しかまだ読んでませんが、
        中共にとっても台湾進攻はリスクの大きな賭けってことですか。

  9. シレン より:

    門外漢さま

    そんな都合の良い話が通る相手ではありません。

    その提案 桃鉄風に言えば、
    「桃太郎ランド寄越せ、その代わりお前にはキングボンビーを擦り付けてやる」

    と言ったところでしょう。

    アジアを知らない明治の欧米なら兎も角、半島を知り尽くした China には核攻撃の予告と同程度には「喧嘩売ってるのか❗(怒)」となること間違いなしです。

    何れにせよ日本は自縄自縛の呪縛から覚醒する必要があるようです。

    こんな時は「青年日本の歌」に限ります。

    1. 鞍馬天狗 より:

      シレンさんへ

      >桃太郎ランド寄越せ、その代わりお前にはキングボンビーを擦り付けてやる
      座布団一枚

      1. シレン より:

        鞍馬天狗さま、ありがとうございます。

  10. りょうちん より:

    FDRのFireside chats、佐藤栄作の新聞記者締め出し会談をお手軽に21世紀的にしたのがトランプのツィッター中毒なんでしょうね。

    しかし、米国大統領が嘘松とか笑える。

    日本でも河野外務大臣のツィッターが結構、危うい感じで、炎上しなければいいがと思って見ています。
    華春瑩女史とのツーショットとかうわーとか思いましたw

  11. 心配性のおばさん より:

    >場合によって、日台同盟で日本が台湾を中国から守るくらいの気概を見せるべきでしょう。

    台湾自身はどう考えるかです。現在、民主党政権の党首である蔡英文女史は台湾独立派です。
    また、台湾国民の多数は、中国と軍事衝突してもというわけではありませんが、独立を支持しています。
    ただ、ここへ来て、民主党政権が議席を減らし、対立する国民党が政権奪取を狙っています。
    その国民党から総統選に立候補をするのが、鴻海郭台銘(テリー・ゴウ)会長で、彼は習近平の盟友で台湾併合派です。彼が台湾総統となれば、中国は労せずに台湾を併合すると見ていいでしょう。
    結局、台湾自身が独立をとるか、併合をとるかが。ですが・・・
    でも、アメリカはどう考えるでしょう。台湾は地理的に対中国の重要な軍事拠点となります。また、ファーウエイ排除で、アメリカは部品の補給路を断つ作戦を展開していますが、台湾の鴻海はこの部品をファーウエイに提供できてしまうかもしれません。
    アメリカは台湾の中国併合を何としても止めなくてはならないと考えます。危険な手ではありますが、諜報活動があるかもしれません。

    現状、交戦権のある軍隊を持っていない日本は、台湾の独立に参戦することは難しいですが、その際の兵站部を担うことは可能です。
    台湾独立後に、日米台の同盟を締結できれば、自衛の範囲としての防衛戦も可能となり、大陸や半島の脅威と、日米台プラスASEAN、オセアニアで対抗することができます。
    おや、久しぶりの妄想大暴走ですね。暑さのせいかしら。

    1. シレン より:

      心配性のおばさん さま

      はじめまして、

      >台湾の独立

      夢見てしまいます。
      北東アジアに初めての親日国(本当は反日で無いだけなんですけど・・・)の誕生。

      夢は夢で現状では願望の白昼夢なのですが、それでも実現して欲しい気持ちは抑えられません。

      私も暑さに中てられたようです。

      1. 心配性のおばさん より:

        シレン様 御機嫌よう。

        >北東アジアに初めての親日国(本当は反日で無いだけなんですけど・・・)の誕生。

        国と国とのお付き合いで、親〇国なんて、ウソだと思いません?
        親〇なんて気持ち悪いものじゃなく、普通に相手国を尊敬できればいいと思います。
        そういった意味では、日本は特亜3国を除いて、アジアでも中東でも尊敬されていると思います。
        主に私たちの父や祖父の代に造られたものですが。

        あっ、遅れました。はじめまして。これからもよろしくお願いします。

        1. シレン より:

          返信ありがとうございます。

          >親〇国なんて、ウソだと思いません?
          >親〇なんて気持ち悪いものじゃなく、普通に相手国を尊敬できればいいと思います。

          御意。本当にそうだと思います。
          正直、私自身親○ に該当する国はないです。

          台湾通の知人曰く、台湾は親日ではないと、

          「台湾と絶縁し大陸と国交を結んだだけでなく、それ以降今日に至る日本にも失望している」
          「だが彼らはそれを直接言わない節度(賢さ)と、公正足らんとする彼らなりの矜持を持っているに過ぎない。だから、親日だなどと浮かれているととんでもないことになるよ・・・・・・」

          と靖国神社に参拝に来ていた台湾人達を見ながら私にそう告げました。

          訂正します。
          ×北東アジアに初めての親日国(本当は反日で無いだけなんですけど・・・)の誕生
          ○北東アジアに初めての価値観を共有し得る友邦の誕生

  12. 心配性のおばさん より:

    >新聞・テレビを中心とするオールドメディアがインターネットの発達を疎ましく感じているようですが、このあたりの事情は日米共通なのかもしれませんね。

    おもしろいところに気付かれましたね。私自身はトランプ氏登場の頃は、氏のツイッター発信を「無責任に思いつきを発信しないでよ」と苦々しく感じておりました。
    が、氏の「フェイクニュースだ!」の発言と呼応するように、日本でもメディア革命が起こりました。
    政治家は記者クラブを避けて、自ら発言をツイートするようになり、購読者は、記事の捏造、恣意的な編集に怒って、自ら情報収集するようになりました。
    日米のオールドメディアの皆さん。日本ではこういうのを”自業自得”というのですよ。

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