基礎資料「日本全体の資金循環(2018年9月末)」の公表

当ウェブサイトでは以前からときどき、日銀が公表する「資金循環統計」に基づく「日本全体の資金循環」という資料を公表してます。これは、資金循環統計の速報値をベースにして、日本の家計、企業、政府、海外などの経済主体と、間を取り持つ金融仲介機能の金融資産・負債バランスを図示したものです。

資金循環統計とは?

当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』では、日本経済の姿を議論するに際して、「基礎的な数値」を何より重視しています。

こうした「基礎的な数値」のうち、経済・金融評論家として踏まえておかねばならないものの1つが、「資金循環統計」です。

日銀の解説資料によれば、資金循環統計は、「1つの国で生じる金融取引や、その結果として保有された金融資産・負債を、家計や企業、政府といった経済主体ごとに記録した統計」と定義され(同1-1)、おカネの流れが一目瞭然でわかるという優れた統計です。

ただし、もともとの統計は数字の羅列であり、非常に読み辛いものですが、当ウェブサイトでは定期的に、これを「普通の人が読んでもわかりやすい」という形に加工する作業を行っています。

2018年9月末の統計

日銀は資金循環統計の「2018年9月末基準」(速報値)を昨年12月時点ですでに公表していたのですが、私自身がどうしても多忙のため、これを加工するのが遅れておりました。ただ、先ほど作業が終了しましたので、これを以下に公表しておきたいと思います。

日本全体の資金循環(クリックで拡大※大容量注意)

日本全体の資金循環(PDFファイル)

(【出所】いずれも日銀統計ダウンロードサイトより著者作成)

当ウェブサイトの場合、掲載しているいかなる図表、ファイル等であっても、出所さえ示していただければ、商業利用でない限り、私に断りなく使っていただくことが可能です。上記ファイルもご自由にお使いください。

注意点

この資金循環統計分析は、私自身、当ウェブサイトでの評論にあたって基礎的な資料として重視しているものの1つですが、それとともに、注意点があります。

まず、「純資産」「純債務」という項目は、オリジナルの資金循環統計には存在しません。あくまでも私自身が「バランスシート形式」にこだわり、金融資産、金融負債の総額を経済主体ごとに説明するために設けた項目です。

次に、この「資金循環統計」に計上されてくる項目は、金融資産と金融負債だけである、という点です。

たとえば、家計が保有する金融資産の総額は2018年9月末(速報値)で1859兆円ですが、これには土地、建物、自動車、家電、貴金属、美術品といった財産類は一切含まれません。

また、預金取扱機関(銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、系統上部団体、商工組合中央金庫、ゆうちょ銀行)が受け入れている預金には、「系統団体間の預合い」などが含まれるため、これらは相殺されず、二重計上となっていますが、こうした点については修正を入れていません。

さらに、資金循環統計上の現在の国債発行残高は1092兆円(※時価ベース)ですが、図表中、「中央政府」の国債発行残高とは整合していません。これには、「中央政府」が発行した国債・TDB(991兆円)には財政投資基金が発行している「財投債」(約101兆円)が含まれないからです。

いずれにせよ、今後も当ウェブサイトでこの図表を利用した議論を続けていくつもりですので、どうかご期待ください。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

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読者コメント一覧

  1. りょうちん より:

    ちょっと興味がわいたので、財政投資基金について調べてみました。

    https://www.mof.go.jp/filp/
    >財政投融資とは、税負担に拠ることなく、国債の一種である財投債の発行などにより調達した資金を財源として、政策的な必要性があるものの、民間では対応が困難な長期・低利の資金供給や大規模・超長期プロジェクトの実施を可能とするための投融資活動です。

    https://www.mof.go.jp/filp/plan/fy2019/youkyu01.pdf
    によると、H12年から激減していたのは、日本経済そのものが沈没していたためで、最近も低調なのは、景気自体がよくなったので民間融資の方で動く様になったという理解でいいもんなんでしょうか。
    なんで東日本大地震があった翌年とか翌々年にもっと出せなかったのかとも思います。

    1. りょうちん より:

      やっぱり一時期絞られたのは「霞ヶ関埋蔵金」呼ばわりの影響なんですかねえ・・・。

  2. 韓国在住日本人 より:

     韓国ネタが食傷気味だったので、新しい議論の提案は大歓迎です。

     しかし、ここに来れられる方々の情報、見識等本当に驚かされます。皆さんは一体何者ですか?(笑)
     小生のようなただのジジイとは大違いのようです。

     新宿会計士様をはじめ、諸投稿者様方の内容を楽しみにしております。

     駄文にて失礼します

  3. 匿名 より:

    なんか、まるで『金融規制の専門家が書く、マニアックな政治経済評論サイト』みたいw 

  4. より:

    この一連の記事は大変参考になります。よくまとめられていて毎回見るのが楽しみです。
    友人で某国立大の教員がいますが、授業で「通貨スワップ・為替スワップ」などの記事を受講生十数名にコピーして利用しているそうです。「おい、それは商業利用だぞ」などとからかっているのですが真面目一筋の彼は「URLとか表示しているんだけど新宿会計士さんに了解を求めないとまずいのかな」と心配しています。OKですよね?
    出欠を取る代わりに毎回アンケートを採っているそうですが、「先生の授業よりわかりやすい」「こんな面白いサイトがあるのですね」「自分の嫌韓が裏付けられた」とかとても好評だとか。もっとも中には「先生は右翼なんですか」という頓珍漢なのもあるそうですけど。

    1. より:

      読み返したところ、誤解されるような記載がありますので訂正させていただきます。
      新宿会計士さんの文章を一言一句そのまま転載した訳ではなくて、主旨を引用してまとめたものをコピーして配布したということです。引用元は新宿会計士さんのサイトのこのURLであるという形です。

  5. りょうちん より:

    雑感ですけど、正直、韓国・北朝鮮の話題はこのブログのテーマには沿わないですよ・・・。

    >知的好奇心を刺激する、無料で読めるクオリティ評論

    の考証対象があまりにも痴的なのでw
    もう少し理性的に行動する相手なら、知的ゲームに興ずることができるでしょうけど・・・。
    中国くらいでまあなんとかってくらいですよねえ。
    こっちがいくら知恵を巡らそうが「どうぶつのかんさつにっき」を脱するのが難しい。

    本来的?なこういうエントリが閑古鳥で、嫌韓ネタが100にも届きそうなコメントで溢れかえるのを喜んでいいものやら。

    1. gommer より:

      りょうちんさん

      私のような韓国系の記事にコメントしまくりが言うのも説得力がありませんが、この記事のようなものこそこちらのサイトの本領だと思います。

      新宿会計士さんに対して失礼な物言いですが、個人的には韓国系の記事自体は議論の為の切欠として捉えていて、コメント欄を重視しています。
      一方でこちらの記事のように重要と考えるものの、コメントするにはハードルの高い記事に対して、新宿会計士さんに支持する姿勢をどう伝えようかと逡巡していました。

      コメント数がそのまま記事の評価ではありませんので、新宿会計士さんにはこれからも良質な記事をお願いします。
      経済評論にもコメントできるよう、私も精進したいと思います。

  6. クク より:

    政治評論 (韓国を中心に)と 討論の場の様相になってしまいましたが
    現在の経済情勢についての お話は 大変有り難い勉強させていただける機会と 思っています。
    わたしは 素人で ほぼ 理解から遠いのが現実ですが
    たとえば 韓国の問題が展開するときの 次の 日本の経済がどうなるのか と いうことに 当然ながら 強い関心があります。
    幸いにして 難解なお話でも 読者コメントの皆様の解説が入ったり、討論の中で おぼろげなりとも イメージできた様な気がするのが、何より有り難いところです。
    引き続き 今回のような 資料のご提供や その解説が頂ければ ほんとうに幸いです。

  7. カズ より:

    新しい資金循環図を確認してみたのですが、以前の集計値とのかかわりが、いまひとつ、解りません。

    「非金融法人企業」や「海外」に分類されるものについては、金額変動が比較的に大きいのですが、株や為替相場の影響によるものとの見方でよいのでしょうか?

    家計に分類される項目のうち、公的住宅融資の金額が減少してるのは、低金利を受けて民間融資への借り換えが進んだ、とのことなのでしょうか?

    日銀の保有国債残高だけを見てると、量的緩和の政策は一段落着いたかのような印象を受けるのですが、実際のところはどうなんでしょうか?

    このところ隣国の動向に集中してしまって、国内経済の件は不勉強になってます。
    お時間が大丈夫なときに、少し解説を頂けましたら幸いです。
    よろしくお願いいたします。

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