北朝鮮に理解示して日本には逆ギレする韓国政府の支離滅裂さ

私が気になっているのは韓国による相次ぐ対日不法行為に対し、日本政府がいつになったら実効性のある対韓制裁に乗り出すのか、という論点です。本日が日本の「仕事始め」ですが、本稿執筆時点において、日本政府が何らかの具体的な経済制裁措置に乗り出したという情報はありません。ただ、新春というタイミングで、客観的事実として、「韓国は日本との約束を破りながら北朝鮮との約束は守る」という倒錯した考え方を持っている証拠を挙げておきたいと思います。

日本政府の対韓制裁はまだ?

今朝方の『「仕事始め」の安倍政権、支離滅裂な韓国にどう対応するか?』では、私は安倍政権が「仕事始め」となる今日、韓国に対する何らかの対抗措置(あるいは制裁措置)を打ち出すのではないかとひそかに期待していました。

「仕事始め」の安倍政権、支離滅裂な韓国にどう対応するか?

というのも、「徴用工判決」を巡っては現実に日本企業の在韓資産に対する差し押さえという動きが出ているわけですし、「レーダー照射事件」を巡っては韓国政府は謝罪を拒絶するばかりか、むしろ日本に対する非難(あるいは「逆ギレ」)の動きに出ているからです。

こうしたなか、安倍晋三総理大臣はフジサンケイグループ各社の新春インタビューなどに応じ、おそらく韓国を念頭に、「国家間の約束が守られなければ、国と国との関係は成り立たない」などと述べています(たとえば次の『zakzak』の記事参照)。

安倍首相 新春独占インタビュー(前編) 米中貿易戦争は「どの国の利益にもならない」 約束を守らない韓国は「国と国との関係が成り立たない」(2019.1.4付 zakzakより)

ただ、残念ながら(?)、少なくとも「仕事始め」となる本日の午前中において、日本政府は韓国による徴用工判決、レーダー照射事件、慰安婦財団解散などの事件を受けた韓国に対する具体的な対抗措置を打ち出しておらず、沈黙を守っています。

(もちろん、来週以降、日本政府が何らかの動きに出る可能性はありますが…。)

日本批判のトーン強める韓国

朝鮮日報は「首脳間対立」

その一方で、韓国メディアの報道を眺めていると、韓国の政府、国会議員、メディアなどが連日のように日本を批判しています。そのうちの1つが、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に掲載された、次の記事です。

レーダー照射:韓日国防当局間で済む問題がついに首脳間対立にまで拡大(2019/01/04 08:37付 朝鮮日報日本語版より)

朝鮮日報によれば、安倍総理が日本のテレビインタビューで「火器管制レーダーの照射は危険な行為であり、再発防止策をしっかりとやっていただきたい」と述べたことに対し、韓国大統領府が3日、レーダー照射事件について「韓国の艦艇に日本の哨戒機が低空で接近飛行した事件だ」と定義したと言及。

こうした状況を「両国の国防当局間で起こっている確執が事実上、首脳間の衝突に拡大したもの」だとたうえで、安倍総理の発言を「再発防止策を求めた安倍首相の新年インタビューは、今回の確執に油を注いだ形になった」と逆ギレ的に批判してみせます。

つまり、韓国の中では、「韓国駆逐艦が自衛隊機に火器管制レーダーを照射した事件」がいつのまにか「自衛隊機が韓国艦艇に異常接近し威嚇した事件」に完全にすり変わってしまっているのです。韓国の大好きなコトバで言い換えれば、いわば、「我々は加害者ではなく被害者」だ、という主張ですね。

ハンギョレ新聞は「日本国内向けパフォーマンス」

同様に、少し前の記事ではありますが、韓国では「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』(日本語版)にも、今回の「レーダー照射事件」が、日本の安倍政権による政権支持率浮上など、国内向けのパフォーマンスである、と決めつける記事が掲載されています。

[コラム]韓日間レーダー照射論争の自画像(2019-01-02 08:00付 ハンギョレ新聞日本語版より)

さらに、ハンギョレ新聞の記事では

日本には過去にも外国とレーダー照準攻防を行った前例がある。尖閣諸島(中国名:釣魚島)領有権紛争が真っ最中だった2013年2月、日本は東シナ海海上で中国の駆逐艦が海上自衛隊の護衛艦に対し射撃統制レーダーを照射したとし、抗議したことがある。これに対して中国も「事実でない」と強く否定して出て、しばらく論争が続いた。類似の攻防が今回韓日間で起きたことは、両国関係に示唆するところが多い。

とも述べて、今回のレーダー照射事件はあたかも日本が周辺国と頻繁にいざこざを起こす国だという印象を植え付けようとしているかにも見えます。

しかも、困ったことに同様の主張をするメディアはハンギョレ新聞だけではありません。東亜日報や朝鮮日報、中央日報などの「保守派(?)メディア」などにも、これと似たような主張が散見されるのです。

中央日報「野党議員が『日本の軍国主義』と批判」

そして、韓国メディア『中央日報』(日本語版)によれば、韓国の野党議員の1人が、このレーダー照射事件を巡って、「日本の軍国主義的膨張的本性があらわれている」などと主張しはじめたようです。

韓国野党議員「いま日本は軍国主義的本性を現している」(2019年01月04日11時07分付 中央日報日本語版より)

中央日報によれば、韓国正義党の金鍾大(きん・しょうだい)議員は4日、韓国放送公社(KBS)のラジオ番組に出演し、次のように述べたそうです。

  • 日本が単純にレーダー問題を提起したとは考えない
  • いま日本の軍国主義的膨張的本性があらわれている
  • 集団的自衛権を行使する日本が軍事的膨張を図っていて、こうした中で東アジアでアジア指導国に浮上しようという、まさに日本崛起、日本の夢を見ている
  • 韓国に対する事前牽制レベルだ

正直、ここまで来ると支離滅裂です。

この議員はラジオ番組で、

韓国政府は最初から静かに対応し、適切に解消するという立場だった/安倍首相までが出てきたため(韓国としては)そのまま済ませることができない問題になった。(韓国が)映像を速やかに公開するのよい

などと述べたそうですが、「哨戒機が異常接近した」などと言い張るのであれば、その「哨戒機が異常接近している写真」を公表すれば済む話でしょう。

ウソも国レベルで付き続けると、政府、メディア、国会議員などの思考が歪んでしまうという実例を見た気がします。

北朝鮮と中国に近付く韓国

「北の挑発行動の理解」を呼びかける国防相

ただ、韓国政府関係者などがレーダー照射事件を巡る日本への批判のトーンを強める一方、昨日は密かにこんな報道もありました。

【社説】北の挑発行為に対し国民に理解を呼び掛ける韓国国防相(2019/01/03 08:30付 朝鮮日報日本語版より)

朝鮮日報によると、韓国政府・国防部(防衛省に相当)の鄭景斗(てい・けいと)長官は1日、韓国・KBSのテレビ対談に出演した際、2010年に発生した北朝鮮による韓国の哨戒艦撃沈事件や延坪島砲撃事件について、「我々が一定の理解を示し、未来のために進むべきだ」と述べたのだそうです。

呆れて物も言えません。

いちおう、注記しておきますと、「天安撃沈事件」とは、2010年3月に韓国海軍の哨戒艦「天安」が北朝鮮によって撃沈され、将兵46人に加え、救助に際して10人の犠牲者が出た事件のことです。

また、同年12月に発生した延坪島に対する砲撃事件では、軍人2人、住民2人の犠牲者を出したほか、島中で火災となるなど、非常に大きな被害がもたらされました。

こうした一連の行為は、「挑発行為」というよりはむしろ、戦闘行為とほぼ同じでしょう。

それなのに、攻防を司る閣僚が、北朝鮮のこうした戦闘行為に対して「一定の理解を示すべき」と述べたというのです。「自分が『強い』と感じた相手にはひれ伏し、自分が『弱い』と感じた相手に高圧的になる」というのは、本当だったようですね。

そもそも矛盾した北朝鮮政策

ただ、冷静に考えてみると、現在の韓国の大統領が、極端な親北派として知られる文在寅(ぶん・ざいいん)氏であることだけが問題の本質ではありません。

だいいち、天安撃沈事件や延坪島砲撃事件が発生した2010年といえば、「反北派」(?)だったはずの李明博(り・めいはく)氏が大統領を務めていましたし、その後、2013年には李元大統領と同じく「保守派」(?)を自称する朴槿恵(ぼく・きんけい)氏が大統領に就任しました。

それなのに、李、朴両政権時代において、韓国軍は結局、最後まで北朝鮮に対する反撃を行いませんでした。

それどころか、李政権時代の2011年12月には、市民団体の手によってソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置されましたし、李元大統領自身が2012年8月に島根県竹島に不法上陸し、さらには天皇陛下を侮辱する発言を行っています。

朴前大統領に至っては、在任中、ただの1回も日本にやって来ませんでしたし、安倍晋三総理大臣との首脳会談を徹底的に避けようとしていたほどです。

つまり、韓国は「保守政権」であろうがなかろうが、自国にとって最も脅威をもたらす国(北朝鮮)に対して敢然と戦うことをせず、自国にとって最も脅威をもたらさない国(日本)を苛立たせることに精を出している、まことに歪んだ国なのです。

中国に近寄るか、北朝鮮に近寄るか

こうしたなか、中央日報に気になる記事が2つほどありました。

韓経:韓国、輸出市場を多角化するといったが…中国依存が過去「最高」(2019年01月04日09時14分付 中央日報日本語版より)

1つ目は、韓国政府・産業部が3日公表した統計によると、中国に対する輸出高は前年より2.0%ポイント上昇して過去最大となり、韓国の輸出高全体の26.8%を占めた、とする話題です。中央日報は

政府が2016年「THAAD(高高度ミサイル防衛)事態」以降、中国への輸出依存度を減らすと公言したが、偏りの現象がさらに深刻になったわけだ。米中貿易紛争が拡大する状況で過度に中国に依存した構造は輸出の足を引っ張るリスク要因になる恐れがある。

と評していますが、要するに産業政策としての「脱中国」の必要性は理解しているものの、現実にはそれがまったくうまく行っていない、ということでしょう。

一方、2つ目は、2018年を通じた日本からの韓国への投資額が29.4%減少した、という話題です。

日本の対韓国投資29%減少…自国の経済が改善されたおかげ(2019年01月03日13時14分付 中央日報日本語版より)

中央日報はこれについて「自国の経済が改善されたおかげ」、「日本の海外投資が中国・ASEAN諸国に集中している」などとする韓国政府関係者のコメントを紹介しているのですが、それだけの理由で日本の対韓投資額が前年比30%も減少したりするものでしょうか?

敵味方を判別できない国は滅ぶ?

不思議なことに、韓国という国は、最大の味方である日本を最大限挑発し、苛立たせようとしています。

不思議なことに、韓国は繰り返し、北朝鮮からの脅威を受けているにも関わらず、現在に至るまで、国を挙げて北朝鮮に反撃する、ということをしませんでした。

不思議なことに、韓国は中国に経済の命運を握られるリスクを感じているにもかかわらず、対中依存度を下げる努力を怠っています。

徴用工判決、レーダー照射事件、旭日旗騒動、慰安婦財団解散。大小さまざまな問題が日韓関係の重しとなる中で、日韓関係悪化の影響が政治、安保協力だけでなく、民間の経済活動にまで波及しないと考える方が不自然でしょう。

現時点で、近いうちに日本政府による対韓制裁の動きがあるのかどうかはわかりません。

しかし、民間レベルでは確実に、韓国とは距離を置こうとする動きが出ていることは確かだと思うのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 一読者 より:

    韓国国内でも、ニュースサイトのコメント欄などで、
    北朝鮮や中国には何も言わないことを疑問視するような、
    同様の声が上がっていると言う記事が、別サイトにありました。
     
    果たして、韓国国民が、韓国政府の洗脳から脱却する事は出来るんですかね。

  2. むるむる より:

    韓国側が作った動画見てきましたがゴミ過ぎて話になりませんでした。
    日本側の動画をほとんど使用していただけで証拠にすらなっていません。字幕で自分たちの主張を言っているだけです。間の解説ページと音楽で水増ししており見る価値はありません。唯一韓国側から撮った映像も冒頭のみで周囲を旋回しているだけで問題にもなっていません。

    あんなゴミ動画個人でも素材さえあれば一週間未満で作れます。

    https://m.youtube.com/watch?v=4dpWAWpzWyE
    これがその動画です。

    1. 新宿会計士 より:

      むるむる 様

      いつもコメントありがとうございます。
      また、貴重な情報のご提供、大変ありがとうございました。さっそく当ウェブサイトのコンテンツとして掲載させていただいています。
      https://shinjukuacc.com/20190104-05/
      引き続き当ウェブサイトへのご愛読とお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

    2. にゅるす より:

      私も見ました。
      証拠映像もなく、低空飛行した部分もなく、ただ文字で主張して終わり。
      見事に肩透かしを食らった気分です。

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

     韓国・国防部の鄭景斗長官は1日、テレビ対談に出演した際、2010年に発生した北朝鮮による韓国の哨戒艦撃沈事件や延坪島砲撃事件について、「我々が一定の理解を示し、未来のために進むべきだ」と述べた、、、、幾ら殴られ蹴られて瀕死の重体でも、『全く元気だ』『殴った人には怒りの気持ちがあるのだろう』という事かな(笑)。日本にもそれぐらい忖度せよ!韓国。

     それも自国民がやられているのに。その分、日本を蔑み、貶し、貶めると。頭ん中狂ってるよ。多分、コトの善悪は気にならないんでしょう。【自分より上】が北であり中国と米国に露。【自分より下で居てほしい。いやそうあるべきだ】が日本。

     安倍内閣総理大臣様、もうそろそろ『韓国への制裁を始めて欲しいなあ~』と思っている日本人が約70%。『絶対に制裁などしてはならぬ、日本が大人の対応をせよ。話し合いで解決を』が10%、、も居ないか(笑)。以上の数値は私の思い込みです。ちょっとじれったいね。日本政府の動きは。あと1週間以内にアクション起こして下さい。

  4. とある東京都民 より:

    ・・・。
    3DCGで、リアルにものすごい捏造を、
    思い切って、盛大にぶっ込んでくれると思っていて、
    期待して待っていたのに。

    跳んだシケモクだったみたいだぜ!!
    ガッカリ~・・・。

  5. 泣ける より:

    安倍政権の対応にもウンザリ

    朝鮮半島出身労働者判決に基づき差押申請されても
    レーダー反射反論?動画が出されても

    「韓国政府に対応を要求。防衛当局者同士で話し合いを。」
    仕事始めなのに外務大臣のこの発言

    アメリカが在韓米軍を撤退決定するまで政府は動く気がないのかもしれない

    1. 防人隼人 より:

      泣けるさま

      防衛当局者でどのような話をするんだ?河野さんよ。
      日本は被害者だぞ!状況はどうあれ哨戒機は狙われたんだぞ?分かって言ってんのか?
      外務省は佐藤正久さんに任せっきりかよ?
      急に歯切れが悪くなったのは親爺に言い包められたからか?

      韓国を一気呵成に責め上げる時それが今では?口先だけなのか行動を起こすのかトランプは安倍政権の日本の本気度を見ているぞ。

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