北朝鮮問題:能天気すぎるアメリカの「外交コンサルタント」
日経ビジネスオンライン(NBO)に米国の「外交コンサルタント」を名乗る人物の、まことに奇妙なインタビュー記事が掲載されています。
北朝鮮の非核化と段階的核廃絶論
朝鮮半島非核化問題を巡っては、当ウェブサイトでもずいぶんと議論して来ました。そのなかで、北朝鮮核問題を簡潔にまとめると、次のとおりです。
北朝鮮問題は大きく2つある
北朝鮮を巡る問題は、現在、大きく2つあります。1つは核武装している(あるいは北朝鮮が「自分たちは核武装した」と主張している)という問題であり、もう1つは日本人拉致事件の全容解明と完全解決が終わっていない問題です。
もっとも、前者に関していえば、問題となっているのは核兵器だけではありません。ミサイル、生物・化学兵器などの大量破壊兵器全般の問題もあります。また、後者に関しても、日本人拉致事件だけでなく、北朝鮮は大韓航空機爆破など、さまざまなテロ犯罪を行ってきました。
さらに、この大きな2つの問題以外にも、北朝鮮は麻薬製造、保険金詐欺、贋札製造などのテロ行為を、現在進行形で行っている国でもあります(※余談ですが、私自身はこれらの犯罪行為をすべて「なかったこと」にして、北朝鮮との国交正常化を行うことはありえないと考えています)。
ただ、以下ではこのうち「非核化」問題に焦点を絞って考察していきます。
北朝鮮の非核化には、2つの方法がある
まず、北朝鮮の非核化のアプローチとしては、「北朝鮮に懇願し、莫大なカネを払うことで非核化を実現する」、「北朝鮮を武力で脅し、経済力で圧迫して、強制的に核を放棄させる」という2つの大きな違いがあります。
現在の安倍政権が採用しているのは後者の方法ですが、北朝鮮が望んでいるのは、もちろん、前者の方法です。ただ、前者の方法を主張する勢力は日本国内にも多く、朝日新聞や日本共産党などがその典型例です。
北朝鮮は自発的な核放棄をしない
しかし、北朝鮮(あるいは独裁者・金正恩【きん・しょうおん】)は、非核化をすれば自分たちの国が攻め込まれるのではないかと考えており、基本的には核放棄を行うことはないと考えて良いでしょう。
6月12日の米朝首脳会談で北朝鮮が核放棄に合意したとされていますが、朝鮮民族はウソをつくのが常套手段であるという事実を忘れてはなりません。金正恩は米朝合意で時間稼ぎを行い、核放棄を行わずに経済制裁を解除させようと目論んでいます。
その大きな柱が、「段階的核廃棄」、あるいは「行動対行動」です。
簡単にいえば、北朝鮮が「核廃絶」までの段階を設け、「核実験施設を廃棄する」、「ミサイル実験場を閉鎖する」などの中間目標を設定し、それらの中間目標を達成すれば、米国や日本も経済制裁を緩和したり、通商代表部を設けたり、といった具合に、段階的にご褒美を与える、という考え方です。
「北朝鮮が行動を取れば、日本や米国もその行動に応じて、その都度、行動を取る」という意味で、「行動対行動」ともいわれます。
しかし、わが国の安倍総理などは、核の完全な廃棄が達成されていない段階で経済制裁を緩和してしまうと、核廃棄のプロセスが止まってしまうのではないかと警戒しており、「段階的廃棄」「行動対行動」には応じない考えを繰り返して示していますが、私も個人的にはこの考え方に賛同しています。
NBOに掲載された奇妙な議論
段階的支援論唱える米外交コンサルタントの愚
こうしたなか、日経ビジネスオンライン(NBO)に奇妙な記事を発見しました。日経ビジネス副編集長の森永輔氏が執筆した、「米外交コンサルタント」のポール・ゴールドスタイン氏のインタビュー記事です。
「非核化は相互&段階的、半年で平和協定も」(2018/07/12付 日経ビジネスオンラインより)
リンク先の記事を読むためには、日経IDの取得などの面倒な手続が必要です。正直、そこまでの手間を掛けてでも読むべき記事ではないと思いますが、もし内容を読みたければ、直接、リンク先で内容を確かめてください。
NBOによると、ゴールドスタイン氏は、1949年、米ニューヨークに生まれ、インディアナ州立大学で歴史と政治を学び、政治専門誌エグゼクティブ・インテリジェンス・レビューの記者などを経て、1982年から政治・経済、インテリジェンスのコンサルタントを務めているそうです。
ただ、まことに恐縮ながら、このような方でも外交コンサルタントが務まる米国という社会に、私は少し背筋が寒くなりました。というのも、ゴールドスタイン氏が主張している内容とは、まさに「段階的核廃棄論」だからです。
ゴールドスタイン氏は北朝鮮の非核化が米朝間の努力だけで達成できるものではないなどとしつつ、
「日本には日本の役割があります。同様に、中国には中国の、ロシアにはロシアの役割がある。それぞれの役割がどんなものになるのか、まだ決まっていませんが。」
と述べます。「日中露の役割がそれぞれ何なのか」を述べないで、「まだ決まっていません」と逃げるあたり、非常に説得力が低い文章だと感じますが、
「非核化は現実的な相互主義に基づいてゆっくり進んでいくでしょう。相互主義が、非核化を前に進める方策なのです。相互に事を進め、信頼を醸成していくことが大事。」「米国は、北朝鮮が取った行動を受けて相応の行動を取っていく。」
という能天気な発言を読むと、私は思わず、「あなたは北朝鮮の代弁者なのですか?」と聞き返したくなります。
ゴールドスタイン氏がいう「米国は北朝鮮が取った行動を受けて相応の行動を取る」というのは、先ほど私が批判した「行動対行動」そのものです。
米国内の空気を感じ取るべき
ゴールドスタイン氏の発言の支離滅裂さは、これに留まりません。なぜなら、「平和協定が締結されるまでの時間」として、ゴールドスタイン氏は「3~6ヵ月の間に実現するかもしれない」などと述べているからです。ついさきほど、「非核化は相互主義に向けてゆっくり進む」と述べたばかりなのに、です。
ゴールドスタイン氏の発言を要約すれば、「まずは北朝鮮が取った行動に応じて日米などが褒美を与え、相互信頼を醸成しながら3~6ヵ月以内に平和協定を締結し、非核化はその後、ゆっくりと進めれば良い」と述べているのと同じです。
ゴールドスタイン氏は、北朝鮮が過去に何度も、6ヵ国協議などでの合意内容を裏切り、核開発を続けてきたという事実を無視しています。それだけではありません。ゴールドスタイン氏は「信頼を醸成する手段として、ビジネス投資を進めるべき」だという、仰天すべき主張を持ち出してくるのです。
「金王朝は市場経済に移行する決断をしました。我々はこれと歩調を合わせることができます。北朝鮮がいくつかの核施設やいくつかのミサイル施設を廃棄したなら、我々は投資で応じるのです。」
こうした愚かな発言が、米国内の自称知識人らの意見を代表していると思いたくはありませんが、「北朝鮮にビジネス投資をすれば、独裁体制はやがて民主的な制度に変わる」といった、能天気極まりない主張は、実は、日米を問わず見られます。
具体的な事例については『日本が「蚊帳の外」だと言っていた人たちの言い訳が聞きたい』などでも触れたとおりですが、米国内でこの手の主張が民間から出て来ているということについては、きちんと認識しておく必要があるでしょう。
CVID以外にあり得ない
日米両国は現在、北朝鮮の核放棄の在り方については、CVID ((CVIDとは、「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)のこと。)) という共通の目標を共有しています。
これに対し、『ポンペオ長官訪日の詳細を読む』でも触れたとおり、北朝鮮は米国が非核化を求めていることに強く反発し始めました。6月12日の米朝首脳会談で、北朝鮮自身が非核化に合意する文書に署名したにも関わらず、です。
ただし、私に言わせれば、北朝鮮は約束破りの常習犯です。いくら文書で約束させようが、そんなものに大した意味はありません。しかし、それと同時に、金正恩自身が文書に署名してしまったがために、北朝鮮の非核化プロセスが停滞すれば、米国は北朝鮮を「約束を破った国だ!」と批判できます。
また、どうせ北朝鮮は絶対に約束を破るのですから、トランプ氏が6月13日のツイッターで「北朝鮮との核戦争はもう生じない」「安心して今夜はぐっすり眠れ」などと発言したのは軽率すぎますが(以下のツイート参照)、それでも米国としては「北朝鮮が約束を破った」という実績を作ることを狙っているのでしょう。
Before taking office people were assuming that we were going to War with North Korea. President Obama said that North Korea was our biggest and most dangerous problem. No longer – sleep well tonight!(2018年6月13日 19:01付 ツイッターより)
Before taking office people were assuming that we were going to War with North Korea. President Obama said that North Korea was our biggest and most dangerous problem. No longer – sleep well tonight!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年6月13日
いずれにせよ、このままだと、遅かれ早かれ、米朝間の非核化交渉は行き詰まり、米国は再び「軍事的圧力」に舵を切らざるを得なくなると私自身は考えています。ただし、ここに来て「中国リスク」が台頭してきたため、米国が中国を牽制する目的で、北朝鮮を味方に引き入れようとするリスクもあります。
先ほどのゴールドスタイン氏の文章にも、米朝同盟が成立するかもしれないといったくだりが出て来ます。確かにこの点については米国が北朝鮮との同盟を考えている可能性はゼロではありませんが、もしそうだとしたら、私は安倍総理が米国に対し、「悪いことは言わないからおやめなさい」と牽制すべきだと思います。
この問題、まだまだ目を離すことができない展開が続きそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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更新お疲れさまです。
国内に限らず、拝金主義の自称リベラルというのほどこにでも湧きますね。
このゴールド某という人物も、自分の金儲けのために、世論を誘導したいだけでしょう。
言わせておけばいいと思いますが、未だに権威主義の幅をきかせる国内には、こういうのにあっさり騙されるお花畑が多いと思うと頭の痛い問題でもあります
Paul Goldsteinという人の情報を英語圏でググってみましたけど、この人実のところ日本で言えば、元朝日とか元毎日新聞出身のジャーナリスト並にどうでもいい経歴なんじゃ?
公的セクターに在籍した形跡も無く、ただ、インテリジェンス界隈を長年渡ってきましたと自称しているだけ。
日本人の元傭兵のセキュリティアドバイザーとか、外資系企業で長年キャリアを積んだ投資アドバイザー並にうさんくさい。
まあ、このインタビュー記事だけでいうのも何ですので、調べた、講演資料と質疑応答を貼っておきます。
http://www.canon-igs.org/en/event/report/20171108_4575.html
これ見る限り、物事が自分の都合の良い様になるように、物事を予測するタイプの人なんだなあという印象を受けました。
この方がCEOを勤めてるPTBって団体も、
https://pacifictechbridge.com/
>This website is under reconstruction and will be back up shortly.
なんじゃそりゃとずっこけました。
そもそも、半島問題はこの人、要は素人なんですよ。なんとなくものを知ってそうな雰囲気を持った素人。
米国と中国と日本の知識だけではまったく理解できないのが韓国と北朝鮮だってのがわかっていない。
そんなシロートに、さも「アメリカの知識人がこー言ってる」みたいな印象操作する日経ビジネス副編集長ってヤバいね。鈴置さんの記事は信頼してたのにこんな酷い記事も乗るんだと知りとても残念。
< 更新ありがとうございます。
< NBOもハズレ企画多いですね。同じ人がトップで切り盛りしているとは思えない酷さです。某コラムとか、ココだけのハナシとか、成長企業の内情探訪とか、スポーツビジネスとか、私は懲りてるので見ませんが、この米国人外交コンサルタントも、相当程度低いですね。ま、日経だもん。どこかのスポンサーの提灯記事の可能性あります。
< 名前から判断するのは重々失礼な事と承知しますが、このポール・ゴールドスタイン氏はユダヤ系でしょう。中東の嫌われ者(笑)。米国人でその系統多いんです。自称コンサルで、自分の手は決して汚さず、大金を得ようという匂いがプンプンします。神田友紀さんが言われる通り、拝金主義者かな。いずれにしても、胡散臭さてんこ盛りです(笑)。
< 【段階的核破棄論】ん~。それを言うかな。『米国は北朝鮮が取った行動を受けて行動する』って、何も行動してないやん!会談後、動きは止まってるよ。『非核化はゆっくり進んでいく。信頼を醸成していく事が大事』なるほど、ゆっくり時間かけるんですな。『でも平和協定締結まで3~6か月で実現するかもしれない』占い師かッ。それにビジネス投資なんてカネを北にくれてやるようなもの。ホントに貴方は北朝鮮人ではないのか?
< しかし、米中貿易戦争に絡み、会計士様の言う『米国が中国を牽制する意味で北を引き入れる』、、考えられるだけに恐いです。有り得る。ハッキリ言って、米国は朝鮮人、中国人の特質が十分理解できていない。少なくとも隣国に位置する日本よりは、数段甘いと思う。ズルい駆け引きは上手い。北朝鮮(朝鮮民族)は嘘つき、タカリ屋、ハッタリで生きている。約束もクソも無い。最後は喚いて命乞いするぐらいです。
< 中国はその宗主国であり、扱い方も知っているし、今は一党独裁だが、侮れない民族です。非核化交渉はこのまま日だけ過ぎ、米国は軍事強化にシフトするでしょう。おそらく秋の選挙後。それまで日本の役割はCVID死守と拉致被害者解放、全容解明を安倍首相が米国に求め続け、北朝鮮(韓国もだ)の経済制裁を更に徹底すべしでしょうね。 以上。
多様な意見があっていい。
段階的が国益にならないとも限らない。相互作用こそ戦略の要。CVIDは望ましいが固執することは危険でもある。
例えば、米朝安保なんて仕組みができればCVIDは無効化されます。在韓米軍撤退があればCVIDよりも困難な事態に陥ります。
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。
>CVIDは望ましいが固執することは危険でもある。
俗に言われる共産主義国家が発展するには資本主義の遺産を必要とし、現実も資本主義の資産を利用して発展しました。
イギリス資本主義の遺産を利用して共産主義社会の発展を説明したマルクスに始まり、
ナチスドイツのユダヤ人を利用して発展したソ連、大日本帝国の遺産を利用して地上の楽園と呼ばれた北朝鮮。初期の中国は満州国の遺産を利用しています。
さて、核兵器を持った北朝鮮が資本主義の遺産を獲るのはどこからでしょう?
貿易でアメリカから?、カネの亡者のグローバリスト?
同胞愛の美名で奴隷の主人面する韓国から?
どれでもなく核兵器を利用して日本からすべてを奪うのが、核を持った北朝鮮が選ぼうとする道ではないでしょうか。
地道な努力でなく手っ取り早い結果を望む民族性を考えると十分ありえる話です。
日本は軍事的手段で解決デキナイならアブナイオモチャを刈り上げ将軍に持たせてはいけません。
アメリカより日本がCVIDを必要とするのです。
日本がそれを理解しなければ国民全てが自由や権利を奪われて北朝鮮の奴隷になるでしょう。
手段は北朝鮮が持ちつつあります。時間の余裕はあまりありません。
最初から誤っているか今は正しく見えるが将来誤る事になる虚言若しくは狂言は以上です。
駄文失礼しました。
https://this.kiji.is/389936022799058017
北、米側に遺骨協議格上げ提案
実務協議に現れず
【ソウル共同】韓国の聯合ニュースは12日、朝鮮戦争(1950~53年)の戦没米兵の遺骨返還を巡る米国と北朝鮮の実務協議について、北朝鮮が同日、米国を代表する在韓国連軍司令部に対し、将官級会談に格上げして15日に実施することを提案したと伝えた。複数の消息筋の話としている。韓国外務省当局者によると、12日開催が見込まれた実務協議は北朝鮮側の欠席で開かれなかったもようだ。
韓国のYTNテレビによると、米側は午前10時から午後2時ごろまで南北軍事境界線がある板門店の会談場で待機したが、北朝鮮側が現れず撤収した。
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遺骨すら交渉材料としか考えない民族性が露骨にわかります。
おそらく適当な骨をDNA鑑定できないくらい処理してから渡すんじゃないでしょうか。
日本に偽物の遺骨渡して、バレましたからね。