ジャーナリストとは気楽な職業だ
「安倍夫妻には大事な何かが欠落している」と言ってのけるジャーナリスト様が出現したようです。
目次
大事な何かが欠落した記事
「安倍が自ら便宜を図ったのは明白」
『プレジデント』といえば、企業経営者ややる気のあるビジネスマンなどに人気がある雑誌だと思われているようです。しかし、私に言わせれば、ウェブ・メディアとしてみると、ときどき、経営者やまともなビジネスマンから相手にされるのかどうか、よくわからない記事が掲載されることもあります。そんな記事がこれです。
日本を私物化して開き直る安倍夫妻の異常/2人とも大事な何かが欠落している(2018.7.2付 プレジデントオンラインより)
これは、昨日のプレジデントオンラインに掲載された記事で、執筆したのは「ジャーナリスト(※)」の元木昌彦(もとき・まさひこ)氏です(※プレジデントオンラインのプロフィール欄より)。私がこの記事に興味を抱いたのは、次の下りを発見したからです。
「妻・昭恵が親しくしていた森友学園理事長の国有地購入に便宜を図ったこと。安倍の腹心の友である加計学園理事長の進めていた獣医学部新設に安倍自らが便宜を図ったことは、ほぼ間違いない事実なのに、安倍夫妻は嘘をつき続け、しらを切りとおしている。」(※人名を「安倍晋三」、「安倍昭恵」などと呼び捨てにしている点も含めて、原文どおりに抜粋しています。)
これは非常に興味深い話です。
当ウェブサイトでは何度も何度も繰り返してきたとおり、「もりかけ問題」とは、
「安倍晋三(氏)が内閣総理大臣としての地位を悪用して、友人が経営する学校法人に対し、違法な便宜を供与してきたとされる疑惑」
のことだからです。しかし、マス・メディアが1年半ちかくも掛けて大騒ぎしてきた割には、「安倍晋三(氏)が犯罪をしていた証拠」をきちんと提示したジャーナリストは、私が知る限り、ただの1人もいません。
元木氏は記事のなかで、「安倍自らが便宜を図った」、「昭恵が便宜を図った」ことは「ほぼ間違いない事実」だと断言しているのです。それでは果たして、元木氏は「安倍晋三(氏)が犯罪を行ったという、誰にでも納得ができる証拠」を提示してくれるのでしょうか?
「大事な何かが欠落している」のは元木氏では?
期待させておいて恐縮ですが、結論からいえば、元木氏の記事は、「安倍晋三(氏)が犯罪をしていた証拠」という意味では、ゼロ点です。ウェブページで全6ページに及ぶ記事ですが、まことに失礼ながら、これでジャーナリストを名乗れるのならば、私なども今すぐジャーナリストを名乗って良いと思います。
いちおう、読まずに批判するのは失礼ですから、ひととおり読んだのですが、元木氏の記事は理論的でなく、新聞やテレビの報道の印象をそのまま述べているだけの代物です。
例を挙げるならば、『【夕刊】加計学園「問題」巡る愛媛県怪文書事件の本質』などでも紹介した愛媛県による「2015年2月25日に安倍総理と加計学園の加計孝太郎理事長が面会していた」とされる怪文書を無条件に信頼しています。
「2月25日の記録が残っていないというのは考えにくい」
という小見出しの下りでは、
「しかし名前を騙られた安倍は怒りもしなかった。やはり加計との間であのようなやりとりが実際にあったのだろう。そう思うのは私だけではないはずだ。そうした空気が蔓延することを恐れた安倍が、加計に「あんたが出て釈明しろ」といったのではないのか。」
「加計は、部下が嘘をついた、安倍とはその日面会していない、当日の記録はないと全否定したのだ。記者も核心を突く質問ができず、加計は間違いなく嘘をついているという印象が強く残っただけの会見だった。」
「ノンフィクション作家の森功は、昨年5月に文藝春秋で「安倍首相の腹心の友の商魂」を書いた際、加計側から猛烈な抗議を受けた。その際、加計側は理事長の詳細なスケジュールを出してきたと日刊ゲンダイで話している。それなのに「15年の2月25日の記録が残っていないというのは考えにくい」(森功)。」
といった文章が続きます。いずれも元木氏の「~ではないのか」、「~という印象が強く残った」、「~というのは考えにくい」など、とうてい「証拠」とは呼べないものばかりです。
元木さん、「犯罪」の意味を知っていますか?
誠に失礼ながら、元木氏はこの記事を書く際に、「犯罪」の意味を理解しているようには思えません。
本来の「犯罪」とは、「これをやれば犯罪に該当しますよ」と、事前に法律に書かれている内容をやったことで初めて成立する行為です。もちろん、朝日新聞のように虚報ばかり垂れ流す行為も広い意味では犯罪といえるかもしれませんが、狭い意味の「犯罪」とは、「違法行為」がなければなりません。
ということは、「安倍晋三(氏)が犯罪を行った」と断罪するならば、「何という法律の何条に違反したのか」、ということを主張しなければなりません。しかし、元木氏の文章には、そもそも安倍総理がどのような犯罪を犯したのかについて、まったく触れられていません。
森友学園の場合は「国有財産を不当に安い値段で払い下げたこと」が、加計学園の場合は「法律で禁止された獣医学部の新設をむりやり押し通したこと」が、それぞれ疑惑の中核です。
しかし、森友学園の場合は、完全に近畿財務局の過失であり、籠池理事長夫妻という非常に癖のある人たちの脅しに近畿財務局が屈したことが疑惑の真相です。末端の職員がやったことに、安倍総理や昭恵夫人が関わっている証拠などありません。
ついでに言えば、野田中央公園の用地の払い下げに辻元清美議員が深く関わっていますが、大阪航空局が所有していたこれらの土地の払い下げについては、むしろ前科者でもある辻元清美議員に対して、疑惑を徹底解明すべき筋合いのものでしょう。
さらに悪質なのは、加計学園問題です。これは、そもそも「獣医学部の新設を禁止した法律」が存在しないのに、勝手に文部科学省が獣医学部の新設を受け付けなかったことが、むしろ問題の本質であり、その意味で、スキャンダルを起こしたのは文部科学省の側です。
獣医師の関連団体から100万円という巨額献金を受け取っていた玉木雄一郎衆議院議員や、違法天下りの斡旋という犯罪の首謀者だった前川喜平・前文科省事務次官こそ、獣医学部新設を違法に拒絶した疑惑に対し、真摯に答える義務があるでしょう。
ジャーナリストとは気楽な職業
以上、元木氏の文章を読んだ印象を申し上げます。
「ジャーナリストとは気軽な職業だね」。
「安倍晋三(氏)がどんな違法行為を働いたのか」という定義もせず、肝心な「違法行為の決定的な証拠」も提示せず、ただひたすら「~ではないのか」、「~という印象が強く残った」、「~とは考えにくい」などと繰り返すのは、本当に説明責任の放棄です。
「にほんブログ村」に参加しているブロガーが執筆する記事のなかにも、「安倍総理は怪しい」「昭恵夫人は怪しい」などと繰り返しているだけのブログがありますが、元木氏の記事は、まことに失礼ながら、こうした低レベルなブログと大して変わりません。
一方で、ブロガーやウェブ評論家のなかには、すでに「プロフェッショナルのジャーナリスト(笑)」をはるかに越えるレベルの議論を展開する人もいて、もはやジャーナリストとブロガーの境界線は消滅したと見ても良いでしょう。
くどいようですが、私は別に、「安倍晋三(氏)が違法行為を働いた!」と主張すること自体、構わないと考えています。「怪しい!」と思うのならば、そう思えば良いだけの話です。
ただ、日本は法治国家ですから、「疑われている側が無実である証拠を提示する義務がある」のではありません。「疑っている側が有罪である証拠を提示する義務がある」のです。
昨今の「もりかけ問題」のように、印象操作だけで「怪しい」「怪しい」と疑いを吹っかけ、「疑われている方が無実である証拠を出す義務がある」などといった議論がまかりとおるならば、日本は法治国家ではなくなってしまいます。それこそ気に入らない大統領をデモで引き摺り下ろした幼稚な某国とそっくりです。
元木氏も「ジャーナリスト」を名乗る以上、「さすがジャーナリストは優れているね!」と思われたいのであれば、「安倍晋三(氏)がこの法律に違反している決定的な証拠」とやらを見つけて来て、それを国民に分かりやすく提示すべきではないでしょうか?
そうでなければ「ジャーナリストってブロガー以下の人もいるよね~」などと皮肉を言われても、文句を言う権利はないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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< お世話になります。
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< ハッキリ言って提灯記事そのものだ。取材を受けた方も、『プレジデントで特集で取り上げられたんだ』と嬉しさあまり、何百部もまとめ買いする。馬鹿丸出しですう(笑)。
< この元木氏はじめ、ジャーナリストには辟易します。まずマトモな判断を出来る人が極めて少ない。たいてい『安倍があやしい』『シロの証拠を見せろ』と、無理難題。個人的にはプレジデントなど廃刊になっても何の問題も無い。情報弱者の読者を増やすだけですね。
以前よりこの「もりかけ」ネタに関しては、誰が書いても同じような文章になっているので最後まで読む気になりません。賞味期限切れのネタを野党議員とメディアで結託して言い続けている事だけはわかります。必死に訴えかけているようですがつまらん!この業界も一度足を踏み入れるとなかなか抜け出せない世界なんだなと何時も感じます。