【夕刊】非核化コストと北朝鮮に対する経済支援を同一視する愚

「安倍(総理)が北朝鮮にカネを払うと言った!」。こういう意見を言い放つ輩のことを、「短絡的なバカウヨク」とでもいえば良いのでしょうか。

非核化コストの負担に賛成する

安倍総理「非核化費用を日本が負担」とは?

読売新聞によると、安倍晋三総理大臣は昨日(16日)、読売テレビの番組に出演し、北朝鮮が国際原子力機関(IAEA)の核査察を受けることが必要だとしたうえで、この「非核化費用を日本が負担することを検討する」との考え方を示したそうです。

北非核化で首相「日本が費用負担するのは当然」(2018年06月16日 11時36分付 読売オンラインより)

私は読売テレビの番組を視聴していないので、安倍総理の発言の正確な意味合い、発言の意図については、この短い記事から読み取ることは困難です。とくに、安倍総理が「日本が負担する」と述べた下りについては、正確に理解する必要があります。

仮に、安倍総理が「IAEAの核査察費用などを負担する」という意味で発言したのであれば、私は安倍発言を100%支持します。しかし、「核放棄の見返りとして北朝鮮に現金を渡す」という意味であれば、まったくそれを支持することはできません。

ただし、おそらく安倍総理の発言の意図は、前者でしょう。というのも、昨日の『大好評・「朝鮮半島の将来シナリオ」2018年6月版』のなかでも紹介したとおり、日本政府の北朝鮮に対する支援の方針には、3段階から構成される、という報道が、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に出ているからです。

日本「北への現金支援はない」…3段階支援の構想をみると(2018年06月15日07時46分付 中央日報日本語版より)

中央日報が報じた、日本による北朝鮮支援の方式は、次の3段階です。

  • 第1段階:国際原子力機関(IAEA)の核査察に対する初期費用の支援
  • 第2段階:国際機関を通じた人道支援。現金を直接支払うのではなく、コメや医薬品の現物を提供するもの
  • 第3段階:インフラ整備などの有償による経済協力

そして、読売新聞が報じた安倍総理の発言も、おそらくこの「第1段階」のことを指していると考えて間違いないでしょう。

非核化費用と経済支援を混同する意見

ところで、この読売の記事については、某匿名掲示板に転載され、さまざまな意見交換が書き込まれたようです。ただ、あまりにも短絡的な書き込みが殺到していて、思わず呆れてしまいました。要するに、「北朝鮮にカネを出すことは北朝鮮を支援することと等しい」、という、極めて短絡的かつ無責任な発想です。

当ウェブサイトでは、あまり「バカ」という単語を使いたくないのですが、語弊を恐れずに申し上げると、こういう書き込みをする連中のことを、「バカウヨク」とでも呼べば良いのでしょうか?これだと、北朝鮮の非核化を妨害する「パヨク」と呼ばれる連中と、五十歩百歩です。

どんな意見であっても、意見を表明することは自由です。しかし、自由に表明した意見に対しては、それを批判されることも覚悟しなければなりません。その意味で、敢えて私は、「バカウヨク」という言葉を使って、彼らの意見を強く批判したいと思います。

これらの意見の要諦は、おそらく、

  • 核開発という不法行為をしている国は北朝鮮であって、北朝鮮の核武装は北朝鮮に責任がある
  • だから北朝鮮の核武装解除は北朝鮮や韓国、朝鮮総連などが出すべきであって、日本が出すべきではない

といったものでしょう。「北朝鮮が自主的に武装解除すべきだ」、「韓国は同族としての責任を取って北朝鮮の武装解除の費用を出すべきだ」、という感情が、こうした意見の根底にあるのでしょう。

しかし、北朝鮮は自主的な核武装解除には絶対に応じません。強制的に核武装を解除させる必要があります。また、本来ならば、韓国が日本とともに北朝鮮の核武装解除解除に向けて努力しなければなりませんが、現在の韓国政府にはそのような意思はありません。

なにより、「北朝鮮が核武装している状態」は日本にとっての安全保障上の危機ですし、自分の身に降りかかる火の粉を振り払うのにかかるコストを自分たちで負担しなければならないというのは、当たり前の話です。

つまり、「北朝鮮の非核化コストを日本が負担する」というニュースを聞いて、短絡的・条件反射的に

日本が北朝鮮の脅しに屈した

と反応するのは、思考停止であり、いい加減、やめたいものです。

どのような負担が考えられるのか?

さて、こうした「日本が非核化コストを負担するのにハンターイ」と盲目的に反応する「バカ」は放っておいて、私たちがここで深く考えなければならないのは、「北朝鮮を非核化するために、日本がどのような形で費用を負担するのか」、という点です。

読売新聞が報じた、安倍総理が述べたとされる

IAEAによる核査察のためのコスト

というのも「非核化コスト」の一例ですが、もっと言うならば、「北朝鮮の核武装を解除するコスト」は、一通りではありません。たとえば、

北朝鮮が保有している核兵器を、巨額のおカネを払って買い取る

というのも「非核化コスト」ですし、あるいは、

北朝鮮を焼き払い、北の独裁体制を崩壊させるための戦費

というのも「非核化コスト」といえるかもしれません。

韓国国内では、一種の「戦後賠償」として、日本から巨額の現金が北朝鮮に手渡されることを期待している節があります。この場合、外貨不足に悩む韓国にとっては、統一費用の負担が軽減されるだけでなく、日本の支援金ののおこぼれにあずかることができるかもしれない、という思惑もあるようです。

しかし、こうした「戦後賠償」形態での北朝鮮による支援は、一切行われてはなりません。1965年の日韓国交正常化は、日本外交にとってはさまざまな禍根を残すことになりましたが、対北朝鮮外交では、同じ轍を踏んではならないのです。

もちろん、現在の日本が、北朝鮮に対して宣戦布告をするなどということは、事実上困難です。ただ、それと同時に、過去の轍を踏まないということであれば、十分に可能です。その意味で、昨今の北朝鮮外交の局面は、戦後日本の総決算という意味合いもあるのではないでしょうか?

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 謎田謎也 より:

    パチンコの市場規模は、2015年で23兆億円強。

    北朝鮮への予算は、パチンコの売上に対して
    1%の特定目的税を掛けるだけで
    充分にまかなえるような気がしますが、
    いかがでしょう。

  2. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。
    < 安倍首相の読売テレビの放送は見てないですが、IAEAによる査察費用なら日本が負担するのはアリだと思います。どうせ放っておけば、マトモな廃棄などしません。自主的に失くす事は絶対しない国です。韓国も核を失くすのは内心惜しいと思っている。当然カネも出さない(無い)。『不可逆的な破棄』をするならIAEAに委託して世界に知らせる形でやるのがいいでしょう。また携わった多くの人間は、半島外の刑務所に20年程度隔離すべきです。
    < 本当は韓国、米国こそ負担すべきです。また韓国は日本が北朝鮮の『核破棄』『平和統一』に向けて、北への賠償金を差し出すという妄想、そのおこぼれを期待しているみたいですが、そんなものは先に受け取っている韓国がやればいい。別にどうしても統一を願っているわけではない。逆に拉致被害者への補償金、戦前の日本が遺したインフラ使用料を北朝鮮には請求するべきです。
    < 『安倍首相が北朝鮮に屈した』など笑止の発言が見られますが、パヨクもバカウヨクも同程度の底辺民に見えますね〜。物事の本質が見えない。どちらがより酷いかと問われれば野党系人、マスゴミだと思いますが。
    < 失礼します。

  3. いつもお世話になっております より:

    シンガポールでの滞在費用すらゴネていたわけなので、仮に核・大量破壊兵器の撤去が始まっても、金がないことを口実に、北朝鮮が査察を引き伸ばすことは考えられますからね
    IAEAに経費を支援するのは、非常に効果的な金の使い方だと思います

  4. 1ファンより より:

    適切な記事を掲載して頂きましてありがとうございました。ブログ主様もご指摘の通りあの読売の記事は少々意味が取り辛かったですので、適切なフォローをしていただきまして感謝いたします。これからも陰ながら貴ブログの応援をさせて頂きます。

    某掲示板の件ですが、私も見ましたが、左翼側の工作員が保守のイメージ悪化を目的としてあえて保守のふりをして異常なコメントを書く、いわゆる成りすまし投稿が多数湧いている印象でした。あの掲示板を利用するにはこの手の工作員による妨害行為を適切に見抜くことが重要になります。慣れてくると大体分かるようになり、あの掲示板を有益に活用できるようになると思います。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

謎田謎也 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告