【夕刊】アフリカ諸国「人民元が基軸通貨」?どうぞご勝手に。
ときどき、経済・金融を理解しない人が執筆した通貨に関する記事を読むと、辟易することがあります。韓国メディアに掲載された、人民元の国際化に関する話題がその典型例ですが、通貨自体の使い勝手の良し悪しを決めるのはあくまでも市場であって、国家ではありません。
目次
人民元が準備通貨?
アフリカ諸国が人民元を「準備通貨」に?
韓国メディア『中央日報』日本語版に、こんな記事を見つけました。
アフリカ国家、人民元を「準備通貨」に?中国と通貨スワップ締結も(2018年06月02日08時57分付 中央日報日本語版より)
記事の中身は、タイトルのままですが、あえて内容を抜粋・要約すると、次のとおりです。
- アフリカ14ヵ国で構成される「東南部アフリカ経済・金融管理研究所(MEFMI)」は29日から30日、ジンバブエの首都ハラレで会議を開き、中国人民元を準備通貨として使用する案について議論した
- MEFMIの報道官は「中国は約130ヵ国の最大貿易相手国」とし「加盟国の大半が中国から借款と援助を受けたため、人民元で償還するのが経済的な意味を持つ」と述べた
- 現時点までに中国と通貨スワップを締結したアフリカの国はガーナ、南アフリカ、ジンバブエ、ナイジェリアの4ヵ国だ
これはいったいどのような意味を持つのでしょうか?
通貨の使い勝手とは?
そもそも、「通貨の使い勝手」とは、いったい何でしょうか?
それは、「流動性」にあります。たとえば、米ドルは「世界の基軸通貨である」とされていますが、その名の通り、全世界の通貨はすべて米ドルと両替できます。発展途上国を中心に、1ドル紙幣をたくさん持ち歩いていれば、現地通貨を持っていなくても買い物ができる国もたくさんあります。
一方、ユーロや円、英ポンドは、流通量では米ドルと比べ、かなり劣っているものの、それでも国際的な為替市場では広く取引されています。とくにユーロは欧州だけでなく、北アフリカや中近東などで、現地通貨よりも広く使用されている、という事例もあるようです。
そして、世界の主要通貨のうち、「米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、スイス・フラン」の5つを、「(旧)G10通貨」と呼びます。どうして5つしかないのに「G10」なのかといえば、ユーロへの通貨統合前は、欧州には独マルク、仏フラン、伊リラなどが存在していたからです。
最近ではこの5つの「G10通貨」に豪ドル、加ドル、ニュージーランド・ドル、デンマーク・クローネ、スウェーデン・クローナ、ノルウェー・クローネの6つの通貨を足して、「新G10通貨」と呼ぶこともあります(といっても、通貨数は11個ありますが、細かいことは気にしないでください)。
この「新G10通貨」には、共通点があります。たとえば、決済システムが安定していることと、資本の流入・流出規制が緩く、外国人投資家がその国の市場に簡単にアクセスできることや、外国為替市場(とくにデリバティブ市場)での流通が容易であること――などが挙げられます。
CNYとCNH――2つの人民元
この「通貨の使い勝手の良さ」という面で、決定的に劣っているのが、人民元です。
そもそも中国本土の金融市場に、外国人投資家は気軽に投資することができません。つい最近まで、外国人が人民元建て預金を持つこともできなかったほどですが、中国本土の株式や債券を、中国国外の投資家が自由に売買することは、事実上、不可能に近いのが現状です。
また、わが国で2つのメガバンクが「パンダ債」なる代物を発行して、すこし話題になったことがありました(詳しくは『ソフト・カレンシー建て債券の危険性』や『危険なパンダ債と「日中為替スワップ構想」』などをご参照ください)。
これが話題になること自体、人民元建ての取引がいかに難しいかという証拠です。
さらに、人民元の大きな問題は、人民元自体、2種類存在している、ということです。これが中国本土の人民元(Chinese Yuenを略してCNY)と、香港などの「オフショア」で流通している人民元(CNH)です。
為替相場も2種類存在していて、両者はおおむね連動しているものの、過去には1~2%程度のズレが生じていたこともあります(たとえば2015年12月~2016年1月)。資本移動が自由ではなく、しかも為替相場が複数存在しているような人民元という通貨自体、危なっかしくて信頼できません。
通貨の信頼を決めるのは誰か?
冒頭の中央日報の報道については、アフリカ諸国が「人民元を準備通貨として使用する」と決めたとしても、そのこと自体については「あぁそうですか、勝手にどうぞ」と申し上げたいと思います。
しかし、ここで本質的に誤解してはならないことがあります。それは、「通貨の使い勝手が良いか、悪いか」を決めるのは、政府ではなく、市場である、という点です。使い勝手が良い通貨であれば勝手に広まっていきますし、使い勝手が悪い通貨であれば、政府が音頭を取ったところで、市場に無視されて終了です。
当然、使い勝手が悪い通貨を「準備通貨」として使用するのもその国の勝手ですが、たとえば、市場の大混乱が生じて自国通貨が売られ始めたときに、人民元で通貨防衛をすることはできません。やはり、通貨防衛で一番重要なのは、米ドルを初めとするハード・カレンシーを調達することです。
つまり、中央日報の記事どおり、本当にアフリカ諸国が人民元を基軸通貨にしようと思ったからといって、人民元を使った決済や資産運用ができるかといえば、そこは非常に怪しいというのが実情でしょう。
張子の虎の中韓スワップ
ところで、中央日報を初めとする、韓国メディアの報道に接していて、常に抱く違和感があります。それは、記事の執筆者が、「中国はいずれ米国を抜いて、世界最大の経済大国になる」、「中国の通貨・人民元は世界の基軸通貨になる」、といった前提(あるいは「幻想」)を持っている、という点です。
冒頭で紹介した中央日報の記事は、「アフリカ諸国が人民元の準備通貨化を検討している」という事実関係を淡々と報じているだけですが、「人民元自体が国際的に通用するハード・カレンシーではない」という点については、私が知る限り、中央日報が報じたという記憶はありません。
つい先日も『【準保存版】韓国の外貨準備統計のウソと通貨スワップ』で紹介したばかりですが、韓国は現在、5ヵ国とのあいだで、米ドルに換算して総額860億ドル(約9.4兆円)程度の通貨スワップ(BSA)協定を締結していると主張しています。
ただし、このうち中国とのスワップ3600億元(約560億ドル、約6.1兆円)については、昨年10月10日時点で失効しており、韓国政府と韓国銀行が一方的に「期間が3年延長された」と主張しているだけです。
しかし、そもそも中国側は「スワップを延長した」とはただのヒトコトも述べていませんし、北朝鮮核問題などで中国のメンツを潰しまくっている韓国に対し、中国側がこのスワップの発動を認める保証はありません。さらにスワップで人民元を引き出したとしても、その人民元が通貨防衛に使える、というものでもありません。
このような協定を、日本語では「張子の虎」と呼びます。
私の予想だと、スペインの首相が失脚したことに加え、イタリアの政治的混迷が深まって来るなかで、近いうちにユーロ圏発の金融市場の混乱があると思います。そうなってくれば、外貨ポジションが脆弱な韓国は、真っ先に投機筋の標的にされるおそれがあります。
そのときに、人民元建てスワップの「威力」がどの程度のものなのか、じっくり見極めさせてもらおうかと思っているのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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< 更新ありがとうございます。
< 中韓スワップ3600億元、560億ドルですか、韓国発表は(笑)。信用ゼロですな(笑)。一丁事あれば、『南鮮とスワップ結んでないアル』で終わりい〜(笑)。だから盛んに『日本と結んでやるべきだ』『日本にもメリットがあるだろう』『双方の国益に繋がる』なんて声がアチラから飛んで来るんですね。
< 1円も結ばないよ!700億ドル?冗談言うなよ。勝手に破綻しな! 以上
スペインの政治不安は非常に面白い事になりそうですよね。(不謹慎ですがw)
激戦のスペイン内戦が1世紀近く経って再来するなんて戦略趣味レーションゲーム好きとしては結構期待しています、恐らくまたフランコ将軍の様な人物が出そうな流れなんですよねこれが。
まずお浚いですがスペインの左派と右派は第一次世界大戦後から互いに対立し政権を奪取し合う状態が続き1936年7月17日に反乱軍側の国民戦線がモロッコで反乱を起こしてスペインに流れ込みます。
これに呼応し列強から個人までを巻き込んで総力戦に突入し2年かけて内戦を終結。第二共和制を掲げた共和国は敗北しフランスに亡命政権を作ります。その後は皆さんも知っての通りファシズムを掲げた枢軸は世界から消えて冷戦が始まり唯一残ったフランコ率いる国粋スペインは文字通り世界から孤立して東西から干されます。その後は現在のスペインに移るので話す価値も無いのですが現在の政情不安に関わる部分として何点か上げます。
1、スペイン第二共和国は内戦時にソ連にスペインが保有していた金全てを差し出した為その後のスペインが復活する目を潰し現代でもイメージが非常に悪くなっている。(当時世界3位の金保有量710トンが全てソ連に渡った)
2、共和制支持者(独立色の強い地域)は労働者が主体であり軍部に現在も含めて影響力が無い、また問題地域の労働者と軍人の仲は非常に悪い
3、カトリックが根強いスペインだが1930年代の内戦時と違い右派左派共にカトリック教会の影響が支持を左右する事はない。
今後スペインの政情不安で注目すべき点があるとすればイタリアとフランスです。
上記の通り独立色の強い地域は反乱を起こしても勝ち目もイメージも良く無いので独立は不可能です。
しかしイタリアとフランスが脱EUだと話は変わって来るのでイタリア脱EU→スペイン動揺→フランス反移民から脱EUの流れだとスペインは混迷する筈です。
長文失礼しました。
さすがに「ウォンを準備通貨に」なんて言い出す国はありませんね。残念!
でもまあ当たり前か・・・。