不透明な既存メディアの広告

新聞を広げても広告が目に付きますし、テレビを点けてもひっきりなしに広告が流れてきます。このように、私たちの生活と「広告」は切っても切り離せない関係にあります。しかし、企業の広告支出に占める「インターネット広告」の比率が、近年、高まっています。既存メディア(新聞・テレビなど)の広告費や視聴率・部数などに関する実態は、情報開示が不十分でよくわかりませんが、それでも「実態がよくわからない」という事実だけで考えてみても、「料金体系も広告閲覧者も明瞭である」というインターネット広告が近いうちに、既存メディアの広告を凌駕するのは当然の成り行きではないかと思います。

広告とメディア

当ウェブサイトでは、先日より、グーグルの「アドセンス」、アマゾンの「アマゾン・アソシエイト」という、二つの広告プログラムに参加しています。広告プログラムに参加する目的は簡単です。私はここを「無料のオピニオン・サイト」として運営していますが、通信費、サーバのレンタル代、URLの更新費用など、ブログ運営にかかる費用を賄うためです(といってもそれらのコストも微々たるものですが…)。私自身、新聞や雑誌のような「読者から購読料を徴収する」というビジネスモデルは、早ければあと数年で破綻すると考えていますが、ただ、「ジャーナリスト」、あるいは「オピニオンの専門家」は社会に必要でもあります。そこで、「オピニオンを社会に向けて発信すること」自体がビジネスになるかどうかを実験してみたいという考えもあり、また、読者の方に無料で閲覧していただける仕組みを維持するという狙いで、広告化に踏み切った次第です。

【重要】何度も申しあげていますが、私自身を「儲けさせる」ために、表示されている広告を「興味もないのにわざわざクリックする」という必要は全くありませんし、むしろ、そのような行為は控えて頂きたいと思います。あくまでも広告に興味があればクリックすれば良いだけの話であり、また、広告の表示を希望しない場合には、無効化する設定も可能です(詳しくは「プライバシー・ポリシー」のページなどもご参照ください)。

ただ、よく考えてみると、新聞や雑誌の場合は「コンテンツ」の対価として、「購読料」などの料金を徴収していますが、「コンテンツ自体は無料で提供していて、立派にビジネスとして成立している」という産業は存在します。テレビ局やラジオ局がその典型例ですが、小規模ながらタウン誌などの無料誌なども存在しています(図表1)。

図表1 既存メディアと広告
区分コンテンツ代金広告の位置付け
新聞定期購読者から「購読料」を徴収するほか、駅・書店などでも販売。新聞・雑誌本文にも広告を掲載新聞本紙の広告だけでなく「折込チラシ」も重要
雑誌雑誌に広告ページもある
テレビ視聴者から受信料を徴収せず、スポンサーからの広告料で運営(NHKを除く)広告収入の比重がきわめて大きいため、広告がとても重要
ラジオ
無料誌街中のスタンドで自由に持ち帰ることができる。ポストに投函されることもある

つまり、現在のメディアを眺めてみると、新聞・雑誌にせよ、テレビ・ラジオ・無料誌にせよ、広告を掲載することの収入は重要な比重を占めている、ということです。新聞・雑誌は購読料等を負担しなければ入手できませんが、それにも関わらず、紙面の多くが広告に費やされています。また、NHKを除く民間放送局(テレビ、ラジオ)は受信料自体を徴収しておらず、いずれも広告収入がきわめて重要であると言えます。

※なお、本論から外れますが、NHKが徴収している「受信料」は、実質的には国民から強制的に徴収されるという意味で「税金」と極めて類似していますが、NHKは情報開示に極めて消極的であり、NHKに対する会計監査・業務監査などの仕組みも不十分です。このように不透明な組織の問題は、「マス・メディア論」の中でも、別途議論されるべき問題ですが、本日は「広告」が主テーマですので、NHKの問題は後日に譲りたいと思います。

広告に関する包括的データがない!

ところで、私自身が「広告付きのウェブサイト」を運営するようになってから、広告について深く考えようと思い、広告に関する様々なデータを集めようとしたのですが、どうも広告に関しては、「誰でも利用可能で最新のデータ」が存在しません。いちおう、「広告図書館」というウェブサイトにいけば、「媒体別広告費」と題するページの中で、かなり限定的ながら、媒体別の広告費の一覧を見ることはできます。このウェブサイトで公表されているデータは、「どのような方法で集計したのか」に関する情報も開示されていません。しかし、傾向としては、「既存メディアがじり貧であること」、「インターネット広告が急伸していること」がわかります(図表2)。

図表2 媒体別広告費の推移からわかること
項目概要
広告費全体日本全体の広告費(総広告費)は、2011年以降、毎年、少しずつ増えている
マスコミ四媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告費広告費の金額は微増傾向にあるが、日本全体の広告費に占める比率は少しずつ減少している。また、テレビ以外の三媒体(新聞、雑誌、ラジオ)については金額、比率ともに微減傾向にある
インターネット広告広告費、日本全体の広告費に占める比率いずれも右肩上がりで上昇し続けている

「広告図書館」のデータ自体、「転載禁止」扱いとなっていますが、エクセルのデータもダウンロードできるようですので、興味がある方は是非、直接同ウェブサイトから数字をご確認ください(なお、ダウンロード等に当たっては自己責任にてご対応をお願い申し上げます)。

ただ、私自身もいろいろと探してみたのですが、広告費全体の推移やテレビの視聴率、新聞の部数の増減などについて、包括的に取りまとめたウェブサイト等が見当たりません。もちろん、読売広告社のウェブサイトのように、(かなり読み辛いものの)新聞の販売部数と掲載エリアについての限定的な情報を公表している場合もありますが、「時系列で追いかけられるようなウェブサイト」については、見当たらないというのが実情ではないかと思います。

広告料は良くわからない…。

そこで、広告料を試算してみようと思います。

まず、「誰でも気軽に作れる広告」としては、「新聞の折り込みチラシ」というものがあります。A4の紙に広告を印刷して朝刊に折り込んで配るとしたら、いくらのコストがかかるのでしょうか?印刷するのに利用する紙や配布する地域などの条件にもよりますが、1枚当たり8円から、という計算です(図表3

図表3 A4の紙を1万部印刷して配る場合のコスト
項目金額
印刷代金単価 4.5円×1万枚=45,000円
配布代金単価 3.5円×1万枚=35,000円
合計代金1万枚で80,000円、1枚当たり8円

(出所:印刷会社、広告折込会社等のウェブサイトから概算)

もちろん、条件はさらに細かくわかれます。たとえば、A4の紙の片面を使うのか、両面を使うのか、A3の紙を使うのか、といった具合です。たとえばスーパーマーケットが特売のチラシを刷って商圏の家庭に届けるような場合には、こうした折込チラシが有効だとされています。

次にテレビ広告の場合は、どの程度のコストがかかるのでしょうか?

あるウェブサイトによると、「ゴールデンタイム」と呼ばれる時間帯にテレビで広告を打つと、地方局でも数十万円、全国ネットだと一回数百万円というレベルでコストがかかるのだとか。ただ、全国ネット放送で広告を打つことができるとすれば、それこそ自動車や家電、食品メーカーなど、会社は限られてくるのではないでしょうか?

新聞業界の苦境と変化する米国

余談ですが、新聞業界の苦境についても取り上げておきましょう。既にわが国でも多くのメディアが報じた事実なので、ご存知の方も多いと思いますが、「米国新聞協会」(Newspaper Association of America)が、協会名称を「ニューズ・メディア協会」(News Media Association)に変更しました。

Newspaper Association of America Changes Name to News Media Alliance(2016/09/07付 ニューズメディア・アソシエーション報道発表より)

紙に印刷された新聞を読む人が激減しているのは、日本だけではなく、おそらく世界共通でしょう。紙に書かれた情報は、印刷された瞬間から古くなりますし、新聞紙はほんの数日分溜まるだけで重たくなり、ゴミ出しをするのも一苦労です。軽いスマートフォンやタブレットなどの端末の方が、持ち運びには遥かに便利ですから、新聞が廃れるのは時間の問題でしょう。

ただ、私がこのプレス・リリースを見て感心したのは、「変化に対応する能力」の素晴らしさです。日本の場合は、「再販売価格維持制度」や「宅配制度」、「記者クラブ」という名の談合制度などの既得権益が存在し、新聞・テレビ各社は自由競争から守られています。しかし、こうした既得権益が米国には存在しないためでしょうか、大手メディアであるWSJですら、かなり早い時期からネット・ビジネス戦略に経営資源を投入してきました。

日本の新聞協会がこれを真似したところで、ろくすっぽ勉強もせず、取材力もない日本の新聞記者が、インターネット・メディアに伍していけるのでしょうか?私は日本の新聞業界を冷ややかに注視していきたいと考えています。

インターネット広告のメリット

さて、インターネット広告の場合、私が契約している「アドセンス」は、ワンクリックで数円から数十円の報酬が発生するようです。間に立つグーグル社がかなり「手数料」を取っていることは想像に難くありませんが、それでも広告主からすれば、ワンクリックで数十円程度の負担だとすれば、チラシを刷って配るよりも遥かに高い広告効果を期待することができます。

広告の中でももっとも原始的な「新聞折り込みチラシ」が1枚8円だと仮定しても、折込チラシを一切読まずに捨ててしまう家庭も多いでしょうし、チラシがターゲット層の目に留まるとは限りません。しかし、「アドセンス」や「アマゾン・アソシエイト」の場合だと、そもそもそのウェブサイトを訪れている人の興味・性向に応じて表示する広告を変えることができることもあります。つまり、「よりターゲットに即した広告を表示する」ことができるのです。

そのように考えていくならば、新聞・テレビのように「不特定多数の人に一律で流す広告」よりも、インターネットのように「閲覧する人に応じて内容が変わる広告」の方が、広告としての効果が遥かに高いことは容易に想像できます。

さらに、私自身がこれほどデータを調べようとしても、既存メディア(特に新聞、テレビ)の広告費や広告効果に関するデータがほとんど見つからないということは、一般企業の担当者レベルからすれば、「効果もよくわからないし、費用体系も不透明」な新聞・テレビ広告よりも、「誰が見ているかはっきりと把握できるインターネット広告」の方が魅力的に映ることは間違いありません。

本日は、本当は「インターネット広告と既存メディア広告のコスト比較」を行いたかったのですが、既に申しあげたとおり、既存メディアの広告料については非常に不透明であり、よくわからないというのが実情です。ただし、私は様々な状況から判断すれば、早ければあと数年以内に、企業の広告支出の割合で見ると、インターネット広告の比率がテレビ広告の比率を追い抜くのではないかと見ています。

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