【夕刊】安倍訪韓巡る「力不足の力作」

先週末の安倍総理の訪韓を巡り、産経新聞の官邸キャップである田北真樹子氏らが「舞台裏」と称する詳細レポートを発表しています。しかし、残念ながら、このレポートに新鮮味はほとんど感じられません。

産経が報じた、新味なき「舞台裏」

産経ニュースの詳細レポート

安倍政権に近い(?)産経ニュースに今朝、少し気になるレポートが掲載されています。

【平昌五輪 政治祭典の舞台裏】/「安倍-ペンス」共に遅刻、緊密さ見せつけ 文在寅氏から笑み消えた、首相「高支持率なんだから決断を」(2018.2.13 07:15付 産経ニュースより)

リンク先は産経新聞の官邸キャップの田北真樹子氏と政治部編集委員の阿比留瑠比氏が連名で執筆したもので、6ページに及ぶ長文のレポートです。

阿比留氏といえば人気シリーズの「阿比留瑠比の極言御免」などでも知られる、産経新聞社の「名物編集委員」です。また、田北氏は阿比留氏とともに、1月24日付けで産経ニュースが報じた安倍総理の単独インタビュー記事を執筆した記者です。

この両名が執筆したレポートであるということは、安倍総理やその周辺に対し、それなりの取材を行った結果だと期待して良いかもしれません(※ただし、「リンク先の記事が無条件に正しい」、という意味ではありません)。

「重要な新情報」なし

ただ、正直に申し上げるならば、せっかくの労作ですが、今回のレポートに「重要な新情報」は含まれていません。

私が一番気にしているのは、日韓首脳会談で何が話し合われたか(あるいは安倍総理が文在寅氏に対し、何を要求したか)、です。これについて、現時点までに明らかになっているのは次の3点です。

  1. 慰安婦合意は揺らがない
  2. 日米韓3ヵ国は協調して北朝鮮に最大限の圧力を加えなければならない
  3. 韓国は平昌五輪後に米韓合同軍事演習を再開しなければならない

(※ただし、情報源その他の詳細につきましては、『米韓同盟の終了が見えた』などをご参照ください。)

ただ、この3点を言うためだけであれば、わざわざ安倍総理本人が、政治的リスクを賭けてまで韓国にノコノコ出掛ける必要などありません。だからこそ、『【夕刊】安倍総理の訪韓は成功?失敗?』でも申し上げたとおり、現時点で私は安倍総理の訪韓に何らかの決定的な成果があったのかどうか、読み切れないのです。

この点、産経ニュースのレポートでは、安倍総理とマイク・ペンス米副大統領が揃って文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が主催したレセプション兼晩餐会に遅刻した背景について深掘りし、

平昌五輪を機に、安倍-トランプ関係に加え、新たに安倍-ペンス間にも太いパイプが築かれることになった意義は大きい。安倍が国内の反発覚悟で訪韓した最も大きな成果かもしれない。

と評していますが、この点については100%ではないにしても同意します。また、

「(北朝鮮が仕掛けた)露骨な南北融和路線に冷や水を浴びせたのが首相、安倍晋三と米副大統領、マイク・ペンスだった。2人は五輪開会式でも隣に座り、2時間にわたり会話を続けた。文在寅-ペンス-安倍の3人が並んで座ることにより国際社会に日米同盟、米韓同盟の強固さを誇示する狙いがあったが、結果は日米の絆ばかりがクローズアップされた」(下線部は引用者による加工)

という下りについても、ほぼその通りでしょう。

しかし、「日米友好を演出するための目的で、わざわざ韓国くんだりに出掛ける意味はあったのか?」と言われれば、やはり理由としては非常に弱いと言わざるを得ません。

真の狙いは「邦人保護」?

では、安倍総理が産経新聞に対しても隠す「真意」とは、いったい何だったのでしょうか?

実は、そのヒントは、産経新聞の阿比留氏ではなく、中日新聞・東京新聞論説委員の長谷川幸洋氏が、鋭くえぐっているように思えます。その証拠は、『試される日本人と「人間の盾」構想の衝撃』でも取り上げた、次の記事です。

韓国は在韓邦人を「人間の盾」にするつもりかもしれない(2018.01.26付 現代ビジネスより)

正直、私は東京新聞というメディアをまったく信頼していませんが、それでも長谷川氏は、東京新聞のなかでは例外的に優れたジャーナリストだと考えています。

長谷川氏によれば、「今回の安倍総理訪韓の目的とは、6万人ともいわれる在韓邦人の保護を目的とした、有事の際の自衛隊受け入れを求めること」ではないかとしていますが、敢えて申し上げるならば、現時点ではこれこそが最も正解に仮説でしょう。

総合的かつ冷静に議論しよう

ところで、安倍総理の訪韓にここまで高い関心が集まる理由は、マス・メディアやジャーナリストが、きちんとした分析をしていないからではないでしょうか?だからこそ、当ウェブサイトにも多くの方々がアクセスし、コメントを残してくださっているのだと思います。

ところで、当ウェブサイトのコメント欄ではここ数日、「今後の日韓関係」を巡って、活発な議論が展開されています。ごく一部には生産的ではない煽りコメントもあるようですが、圧倒的多くのコメントは参考になる意見ばかりであり、コメント主の皆様には深く感謝申し上げたいと思います。

世間に溢れる、いわゆる「ネトウヨ」サイトでは、「韓国なんて腹が立つ国だから日韓断交してしまえ!」などの非常に短絡的な議論が某匿名掲示板から転載されていることもあります。しかし、当ウェブサイトの場合は、こうした短絡的な議論はほとんど見られません。私の主観ですが、当ウェブサイトのコメント主様には、「短絡的に日韓断交などできるものではない」という問題意識が、ある程度、共有されている気がします。

もちろん、わが国を公然と侮辱し、全世界に向けてウソに基づいて日本人の名誉と尊厳を傷つける韓国という国と、本質的には友好関係が成り立つわけなどありません。

ただ、わが国に韓国が嫌いだという人が多いことは当然だと思いますが、それと同時に、あらゆる問題は「好き嫌い」だけで議論しても良いというものではありません。

私は、当ウェブサイトの運営を通じて、何事も総合的かつ冷静に議論することの必要性を痛感しています。日本にはさまざまな立場の人がいて、いきなり物事を進めることなどできないからです。

その意味で、現在の日韓関係は非常に良い題材であり、当ウェブサイトでも深く取り扱う意義があることは間違いないでしょう。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。
    < 田北氏阿比留氏の論評は見ていませんが、だいたい会計士様の要約で理解できました。今私用で横浜なので、駅で産経を、買っておきます。
    < 内容的には新味が無いというか、新しい切り口も無いみたいですね。でも官邸や安倍首相サイドで話を集めると、意外や逆説的に理解出来るのではないでしょうか。つまり、
    ① 慰安婦合意は揺るがない(像はどけない。日本は韓国民意に沿って追加措置せよ)
    ② 日米韓は北朝鮮に最大限の圧力を加え続ける(韓国は宥和会談、外交努力をする)
    ③ 米韓軍事演習は五輪後、すみやかに行なう。演習は時間をおき、延期。北説得に文は訪朝を優先したい。演習するにしても米韓演習の韓国軍規模は今までも米軍より遥かに小さかったが、更に半減ぐらいにしたいーーどうでしょう。これで安倍首相、ペンス副大統領の意見を聞いた事になるでしょうか。
    < 五輪レセプションでペンス副大統領が5分で退席、翌日安倍首相共々、仏頂面だったのはまだハッキリ刻まれてますね。
    < 日米韓の同盟友邦は完全に破綻しました。次はどれだけ米軍、自衛隊に被害僅少にして核施設、ミサイル基地、核弾頭をぶっ壊し、邦人保護を進めるかです。文大統領とは、有事保護だけは絶対譲れないところ。ここは豪、加、印、尼、比、台など他国の民間人保護もあり、恫喝するぐらい言い切ったのではないですか。オモテには一切出ませんが。青瓦台が言うはずがない。
    < 私も他人事みたいに言ってますが、もう大枠でカウントダウン始まっていると思います。まだ導火線に火は着いてませんが。
    < 失礼しました。

    1. むるむる より:

      韓国が北や中国へ機密情報を売り渡してるのは有名なので事前に朝鮮半島から邦人を避難をするのが難しいのは重々承知していますが作戦統制権が米国にある以上韓国が人間の盾を利用しても余り意味が無いように思うのですが皆さんはどうお考えでしょうか?。

      それに個人的に言わせて貰えば韓国へのこの時期での旅行が危険なのは誰しも理解してる筈です。
      である以上韓国に住んでいる在韓邦人の保護は兎も角観光客の救助に日本の外交力を費やす必要性があまり感じられません。(私が薄情なだけなのかもしれませんが)
      むしろ問題なのが日本にいる在日コリアン、在日朝鮮人でしょう。コイツらは危険すぎます、他国と違い日本の原発には軍隊が駐留していない為狙われたら一発で終わりです。
      むしろ韓国に安倍首相は日本国内にいる不法移民の韓国人と朝鮮人の引き取りを強く求めるべきではないでしょうか?

  2. 何となく より:

    今回の訪韓の真意は未だ不明ですが、元々目に見えて得られるものは、当初から無いのかもしれません。

    私自身は自国の媚韓議員及び観光関連業界の支持や資金を得ることだと思ってましたし、それは今も変わりません。穿った見方をずれば、予想通りの外交成果にも関わらず、訪韓後の国内世論が訪韓前より高い支持率を示すのが裏付けになるかもしれません。

    外交機密は当然あるでしょから、それは将来でしか分かりませんが、北朝鮮以上に現在の韓国の立ち位置は危うそうですね。

    さて話は変わりますが、今夜の五輪はホッケー女子日韓戦らしいです。政治色が最も色濃くでる試合であるので、選手・関係者には迷惑でしかありませんが、日韓の匿名掲示板が荒れそうです。罵詈雑言の嵐にならない事を切に願います。

    1. 何となく より:

      ごめんなさい、ホッケー女子日韓戦は明日2/14でしたねm(_ _”m)ペコリ

  3. むるむる より:

    河野外相がBBCのインタビューでのやり取りの最新の動画が出ていたのでURL貼っときます。
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180212-53028789-bbcv-int
    特に目新しい内容は無かったのですが寧ろインタビューをする記者の発言で
    記者「日本は過去70年間米国に依存して来ました、あなたと安倍首相はもうその状況は続かないと考えている。日本は別の役割を担う為に踏み出す必要があると。」

    ここで重要だと思ったのが米国は日本の新しい役割に異論を唱えず記者も日本の新しい方針に米国の反発を唱えずインタビューが終わっている点です。(寧ろトランプとの間に興味津々でしたがww
    こうなると韓国はもうアメリカの戦力とは一切思われないほど米国民間人のレベルでさえも重要度が低下したのでしょう。

    ここまで来ると憲法改正は避けられませんし避けてもいけません、内と外両方から憲法改正は必須に見られているのですから安倍政権はここで止まってはいけないでしょう。

  4. 匿名 より:

    米国も日本もメディアを排除して、リーク情報のみ提供しているので、産経以下、何も情報が取れないのです。故に産経は憶測を超えた記事を書けないし、朝日などは妄想記事と中傷記事しか書けません。
    本来、中傷記事を書けば政権批判として得点できましたが、今までの行いから国民も朝日・毎日・東京の報道を信用しなくなりました。

  5. 雪だるま より:

    初めてコメントさせて頂きます。
    マスコミがオリンピックばかりで、北朝鮮問題、韓国問題を取り上げないのは、憲法改正を何が何でも阻止する為ではないかと思ってます。特に憲法九条の二項。
    北朝鮮問題、韓国問題がここまで切迫してる事を日本国民に知られると、憲法改正は必要だと日本国民は納得し、改正の流れになるのが、反日マスゴミ、失礼マスコミは是が非でも阻止したいのだと思う。だから報道しないのだと思う。
    でも、マスコミ不信は自分の周りでも徐々に広がっていますよ!
    反日マスコミの伝えない自由を行使するのは良いが、国民からの信頼を失って下さい。そして潰れて下さい。

    乱文失礼しました。

    1. めがねのおやじ より:

      < 雪だるま様
      < コメント拝見しました。憲法改正に賛成する者の一人ですが、平昌五輪前までは国会で3分の2が取れても、国民投票で否決されるのではないかと言う声が、私の周りでは聞かれました。確かに北朝鮮の核開発による挑発は酷いですが、憲法改正してまでーーという世論は今でもある程度いるでしょう。マスゴミとしては、何としても改憲論を封殺したい。
      < 五輪の韓国、北絡みの報道でも当たり障りないハナシばかり優先されます。臭いものには蓋をするですね。保守安倍政権には絶対改憲させないスタンスです。でも新聞、テレビが情報を得る絶対王者ではなくなってます。特にこれまで政治や選挙に関心の薄い若い層から、安倍首相支持が高いことは良い傾向と思います。
      < 失礼しました。

    2. 通行人 より:

      雪だるまさんへ。反日マスコミに不信感を持つのは自然なことだと思いますよ。ホント酷過ぎですもん。韓国問題もこのブログがないとよく分からないですからね。ホント、マスゴミには潰れてほしい。

  6. 歴史好きの軍国主義者 より:

    産経新聞、意味づけしようとせっかちですね。
    向こうの空気で産経新聞の記者もパリパリ精神に当てられたのかもしれません(笑)

    皆様ご存知の通り、選手のトレードやM&A等、交渉の存在自体の発覚で、交渉が流れてしまう事案は山のようにあります。
    そういえば70余年ほど前のわが国の終戦交渉もそうでした。
    今分かっているのは、動線(表面)上では北朝鮮とアメリカは一切接触しなかったことと、
    夕食前のスピーチ前に日米が何らかを話したこと。
    そして安倍首相が管理人様が様々な記事で書かれているような内容の話をしたこと。
    それで十分じゃないでしょうか?

    一日本国民としては、今は黙って友邦とわが国の指導者を信じつつ、今後の変化を待ちたいと思います。

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