リスキーな米国の経済運営

米国が金融引き締めに転じながら、拡張的な財政政策という、非常にリスキーな経済運営を開始しました。先週金曜日の雇用統計とそれに対する市場の反応を見る限り、金融引き締めは間違いないのですが、トランプ政権の狙いとその副作用とは、いったい何でしょうか?

米国の雇用統計をどう読むか?

先週金曜日、米国で雇用統計が発表されました。

内容についてはすでに報じられているとおり、米国労務將が発表した1月の雇用者数(※農業部門を除く)の伸びは+20万人と市場予想を上回り、失業率も前月に続き、4.1%と2000年12月以来の最低水準を維持したというものです。

U.S. Adds 200,000 Jobs; Wage Growth Best Since Recession(米国時間2018/02/02 10:57付 WSJオンラインより)

この雇用統計が発表された金曜日、米国では株価が急落。ダウジョーンズ工業平均30種(DJIA)は665.75ドル安い25,520.96ドル、S&P500種(SPX)も59.85ポイント低い2762.13ポイントに沈みました。

しかし、その一方で債券市場では、米国10年債利回りが前日の2.792%から2.841%に上昇。「利回りの上昇」は「価格の下落」を意味しますが、債券価格は約0.5%下落した計算です。

さらには米ドルは日本円に対して1ドル=110.15円と、前日比0.74円の円安・ドル高に動き、対ユーロでも1ユーロ=1.2458ドルと、前日比▲0.49セントのドル高・ユーロ安に動きました。

つまり、事実だけを列挙すれば、

雇用統計の結果が発表された→米国では株安・債券安・ドル高になった

とうい因果関係が成立しているのです。

これをどう読むべきでしょうか?

私は、少なくとも米国の金融市場関係者が、近い将来の金融引き締めを強く予想した結果だと見ています。

ただ、それと同時に「トランプ減税」が行われることで、景気はさらに過熱することへの警戒も必要でしょう。つまり、米国経済はこれから、「金融政策は引き締め」「財政政策は拡張」という、何やらちぐはぐなことになりそうなのです。

ただ、いきなり「金融政策」だの、「財政政策」だのと言われても困るよ、という方も多いでしょう。

そこで、本日は久しぶりに、金融政策と財政政策の違いについて考えてみたいと思います。

インフレとデフレの正体

モノには値段がある

まず、そもそも論ですが、古今東西、あらゆるモノには値段があります。

聖書の時代にはすでにカネが存在していましたが、モノとカネを交換するのは非常に便利です。

たとえば、「ダイコン1本と卵10個が同じ価値だ」といわれてもよく分かりませんが、スーパーで「ダイコン1本198円」、「卵10個パック198円」と表示されていれば、両者が同じ価値だとすぐにわかります。

そして、モノの値段は、常に需給によって動いています。

たとえばキャベツが大豊作になりすぎれば、キャベツの値段が暴落してしまい、かえってキャベツ農家にとっては困ったことになります。

つまり、ごく簡単に言えば、

  • 供給量が増えれば需要が同じであっても値段は下がる。
  • 供給量が減れば需要が同じであっても値段は上がる。

という関係にあります。

これは、最近だと小中学生でも知っている経済の原理であり、鉄則です。

では、モノの値段は上がるのが良いのでしょうか、下がるのが良いのでしょうか?

簡単にいえば、それは状況次第です。

たとえば、モノの値段が下がれば、それを作って生計を立てている人の生活を直撃しますが、安い値段でモノが手に入るようになれば、国民生活は間違いなく豊かになります。

値段があるのは「モノ」だけではない!

しかし、議論がここで止まってしまっては面白くありません。

実際には、市場で取引されているのは「モノ」だけではないからです。

じつは、「カネ」にも値段があります。

いや、正しくいえば、経済取引とは「モノ」と「カネ」の交換です。「モノ」の価値が上がるということであれば「カネ」の価値は下落しますし、「モノ」の価値が下がるということであれば「カネ」の価値は上昇します。

この関係、少しややこしいですが、冷静に考えれば当たり前の議論です。

そして、「世の中全体のモノの値段」のことを、専門用語では「物価水準」と呼びます。物価が上昇することをインフレと呼びますが、言い換えれば「カネの価値が下落すること」です。これとは逆に、物価が下落すること、あるいは「カネの価値が上昇すること」をデフレと呼びます。

先ほど私は、「同じ値段で買えるものが増えれば国民生活は豊かになる」と申し上げましたが、これは言い換えれば「デフレ」ということです。

同じお金で買えるモノが増えれば(つまりカネの価値が上がれば)、すでにお金を持っている人(仕事を引退して貯金を取り崩して生活している人や給料が増えない公務員など)にとっては非常にハッピーです。しかし、デフレには1つの重大な副作用があります。これは、経済(GDP)の縮小を通じて、やがては国民所得が減少してしまう、というものです。

デフレが続けば、物価が下がり続けます。カネを持っている人にとっては、いま自分が持っているカネの価値が、明日、明後日になれば増えていく、ということです。

ということは、カネを持っている人はカネを使わずに溜め込んでいく、という現象が生じるのです。

GDPとは、「消費、投資、政府支出、輸出入の純額」の合計値です。そして、カネを持っている人がカネを使わなければ、消費も投資も抑制されてしまい、GDPが縮小します。

GDPが縮小すればモノが売れなくなり、そうなればモノを作っている会社は給与を抑え、あるいは人減らしを始め、やがて給与生活者全体がもらう給与の総額が減ってしまうのです。

簡単にいえば、これがデフレの罠です。

金融緩和とは?

金融緩和とは、「カネの価値」を落とすこと

このように考えていけば、デフレを脱却するためには、いくつかの方策が考えられます。

これには大きく分けて、「財政政策」と「金融政策」があります。

「財政政策」とは、公共事業をやったり、減税をしたりして、国が直接、GDPを大きくしようとする政策のことです。

たとえば、GDPは「消費、投資、政府支出、輸出入の純額」の合計値として定義されますが、このうち、公共事業をやれば「政府支出」が増大してGDPが拡大する効果が見込めますし、減税をやれば民間の「消費、投資」が増えてGDPが拡大する効果が見込めます。

一方、これに対して「金融政策」とは、おカネを製造している主体である中央銀行が、おカネの価値を人為的に落とすための政策です。

たとえば中央銀行が国債や株式、ETF、REITなどの有価証券を買い入れれば、その分、民間の金融市場にはカネが供給されます。世の中に出回るカネの量が増えれば、モノに対してカネの価値が下落する(つまりインフレになる)という効果が期待できます。

では、デフレからの脱却において、どちらの政策が良いのでしょうか?

実は、経済学的には、これに対する答えはほぼ出ています。その答えとは、

デフレ期には金融緩和が必要だ

――です。

なぜ金融緩和が効くのか?(その①)

おカネの市場(金融市場)では、債券(債、ではありません)と株式、ETF(上場投資信託)などが活発に取引されています。銀行や保険会社、年金基金などの機関投資家は、日々、巨額の資金を運用しなければなりません。その時に基準となる考え方が「利回り」です。

債券の場合、国債がその典型例ですが、カネを投資すれば、満期までに定められた「利子」(coupon)と償還金額を受け取ることができます。そのトータルのリターンの割引現在価値と現時点の投下資本が等しくなる利子率のことを「金利」、あるいは「利回り」(yield)と呼ぶのですが、債券市場参加者は、同じリスクで少しでも高い金利を得ることを、虎視眈々と狙っているのです。

そして、この金融市場で形成された利回りなどをベースに、銀行や信用金庫などの金融機関が民間の事業者に貸し出す金利水準が決定されます(本当はもう少し複雑なのですが、ここでは割愛します)。

ここで、中央銀行がカネを供給すれば、利回りが低下します。そうなれば、金融機関の融資金利も必然的に低下し、民間の事業者が、よりお金を借りやすい状況ができるのです。

それだけではありません。

市場にインフレ期待が醸成されれば、民間事業者にとっては、「物価水準が上がる前にカネを借りよう」と思うようになります。

その理由は、非常に簡単です。なぜなら、カネを借りた後でインフレになれば、借りたカネの価値が下落し、返済負担が楽になるからです。

ということは、市場金利が下がれば、事業者がカネを借りて投資を行ってくれることが期待されるのです。

なぜ金融緩和が効くのか(その②)

それから、金融緩和にはもう1つ、「副作用」があります。

それは、為替相場への影響です。

たとえば、日本の場合、野田佳彦政権の末期だった2012年11月14日に、当時の野田首相が「衆議院を解散する」と宣言したところ、政権交代観測が一気に高まり、自民党の安倍晋三総裁(現・内閣総理大臣)が提唱した「アベノミクス」への期待を金融市場が織り込み始めました。

そして、実際に2013年4月4日に、黒田東彦(くろだ・はるひこ)日銀総裁が「異次元緩和(QQE)」を開始して以降、それまでの円高が是正され、この5年間でみると、最も円安が進んだ時点で1ドル=125円程度にまで下落した瞬間もありました。

これは、円の供給量が外貨(とくに米ドル、ユーロ)に対して相対的に増えれば、円の価値が落ちる、という、考えてみたら当たり前のロジックです。

そして、円安になれば、輸出企業にとっては輸出競争力が増えますし、輸入品の価格競争力は損なわれ、内需に代替されるという効果が生じます。

ただし、この「為替相場への影響」は、あくまでも副次的なものに過ぎません。

実際、中国や韓国のように、金融緩和も行っていないのに、中央銀行が直接、外国為替市場で外貨の売買を行うような行為については「為替操作」(currency manipulation)と呼ばれ、G20会合でも強く嫌われている行為です。

このため、わが国の場合も、麻生太郎副総理兼財相をはじめ、政権幹部はあくまでも「為替相場は政府ではなく市場が決める」とする立場を貫いているのです。

しかし、いかに副次的な効果だとしても、為替相場への影響が生じるという点については、金融緩和の効果の1つとして間違いない点でもあります。

金融緩和を伴わない財政政策の副作用

一方で、不況の脱却に対して処方箋を間違えると、大変なことになります。

2008年9月にリーマン・ブラザーズが経営破綻したことに端を発する金融危機では、世界的な恐慌に陥りかねない状況になり、時の麻生太郎政権は、積極的な財政政策で危機を乗り越えようとしました。

しかし、当時の日本銀行は金融緩和を拒否。やむなく政府が財政政策の一本足打法に依存したのですが、その結果、何が起きたのでしょうか?

日本国内だけでGDPを拡大しようとすれば、当然、モノの需要が増えます。政府が借金をしてモノを買おうとすれば、金利が上昇します。金利が上昇すれば、日本円の価値が上昇します(つまり円高になります)。

諸外国が金融緩和に踏み切ったという不幸な事情もありますが、結局、金融緩和を伴わない財政政策は、自国通貨高を招いておしまい、ということです。

白川正明(しらかわ・まさあき)前日銀総裁は、なぜ日本が危機の時に、大胆な金融緩和を打たなかったのか、それについての説明をしないままに退任してしまいました。

しかし、金融危機直後の日本の経験を見るだけでも、デフレからの脱却には金融緩和が欠かせないことがよくわかります。

金融緩和時の財政政策はとても効く!

しかし、逆に現在の日本では、日銀が旺盛な金融緩和を行っていて、金利は史上最低水準(というよりも、年限によってはマイナス利回り)となっている状況にあります。

ということは、いわば、中央銀行がバック・ファイナンスをしてくれている状況にあるので、こういう時にこそ、金利上昇や円高に邪魔されずに、どんどんと財政政策を打つべきなのです。

すでに現在の日本では、失業率が史上最低水準にまで低下していますし、金融緩和でこれ以上、失業率を下げることは難しい状況です。

そこで、教育や医療、先端研究などの分野に積極的に投資するために、いまこそ国が巨額の国債を発行し、旺盛な財政政策に打って出るべきでしょう。

私の試算では、ハイパー・インフレを招かずに国債を増発するにしても、その増発余力は、どんなに少なく見積もっても500兆円です。

この数値にはきちんとした根拠があって、たとえば500兆円とは日銀が発行している当座預金の額であり、かりに政府が500兆円の国債を発行しても、国債市場は今から5年前の姿に戻るだけであって、ハイパー・インフレになりようがありません。

いずれにせよ、日本政府が財政再建原理主義を退治し、旺盛な財政政策に打って出ることを、私は強く期待したいと思います。

なぜ米国は減税をするのか?

ただし、日本より一足先にデフレを脱却しつつある米国の場合、また状況が異なります。

理論上、完全雇用状態で金融緩和を続ければ、逆にインフレが進み過ぎることになります。そうなれば、最適なインフレ水準を超過してしまうため、逆に中央銀行は「カネの価値を上げる」方向に舵を切るのです。

具体的には、市場に供給した資金の吸収(中央銀行が保有する債券などの売却)、基準となる金利(米国の場合はFF金利、日本の場合は無担保O/N金利)の引き上げなどにより、事業者などがお金を借りるのが難しい状況を作り上げるのです。

現在の米国は、すでにこの金融緩和脱出局面にあると考えられます。

そして、金融緩和の裏付けを失った財政政策は危険です。なぜなら、金利の上昇を招く可能性があるほか、いわゆる「クラウディング・アウト」(政府がカネを使ってしまうために民間が使えるカネがなくなり、投資機会が失われること)などが生じることもあるからです。

さらに、金利が上昇すれば自国通貨が上昇し、輸出競争力も損なわれてしまいます。

では、なぜ米国・トランプ政権は、敢えてこのタイミングで減税の措置に出たのでしょうか?

あくまでも私の見方ですが、トランプ政権にはおそらく、多少のインフレを社会的コストとして負担してでも、米国の企業を外国(というか中国)から呼び戻そうとしている、という狙いがあるのだと考えます。

いわば、製造拠点を米国に戻すことで、虎の子の技術が中国に漏洩するリスクをできるだけ減らす、という狙いです。

しかし、この狙いは経済学的に見て、一種の「諸刃の剣(もろはのつるぎ)」です。

中国に流出した企業が米国に戻ってくる効果を狙うにしても、再び米国で資産バブルが形成されるようなことがあれば、再び米国経済には大混乱が生じかねません。

その意味で、日本に一歩先行する米国経済の今後(とくに金利と為替)については、興味深く眺めてみる価値がありそうです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 団塊 より:

    日本はデフレが何十年も続いているというのは嘘という感じですね、実際の生活費の支出からするとインフレですよ。
    (土地は1989年と比較すると暴落ですがバブル以前に戻っただけ)
    ・家屋は暴騰と言いたくなるほど高くなった
    ・車の値段は上がる一方
    食料費は上がってる、デフレじゃないぞ
    ・卵は値上がりし10個200円前後になって久しい
    ・箱ものアイスは中のアイスが見事にダイエットに成功(=細くなった)だけでなく足まで長くなった(=むき出しの棒が長くなった
    ・牛乳は高くなり
    ・バターは400円では買えなくなった(100円以上の値上がり)
    アイスそのものは・肩幅が狭くなり厚みも薄くなり(いつしか箱が薄くなっていた)・胴も短くなった(=アイスそのものが短くなった)→1本のアイスは3分の1に減った。こうなる前に300円がいつの間にか330円に値上がりしていた。
    ….商品(アイス)が3分の1に小さくなり値段が1割り上がった実体をデフレと言うのですか
    なお、テレビは安くなったがスピーカー劣化し子画面消えと機能劣化。おまけに一度買えば20年30年と買うことはないから実際の生活費にはほとんど関係ない。

    量が極端に減って値段は下がってない。→ 生産数は同じでも生産量が減ってりゃあ雇用は減り 原材料費も減だ。
    我が国は実質物価上昇しているが、原材料減かつ雇用減ってことは経済活動そのものが縮小したと判断すべきではないでしょうか。

  2. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。
    < 米国経済はなにやら今後、金融政策は引き締め、財政政策は拡張ということになりそうですね。
    < 7日朝の東京株式市場は、大幅に反発しています(日経平均株価)。6日の終値が21,610円で、今日は22,001円で始まりましたが、600円を超える上げ幅で22,000円台に上昇しています。昨日あれだけ下がったので、短期的な戻りを狙う買いが入ったんでしょう。もう少し戻らないかとも思いますが、今のところ『世界株安』は小康状態ではないかと思います。ただ株安と円高が続けば、個人消費も冷え込むかもしれません。「アベノミクス」は正念場か?
    < 失礼しました。

    1. むるむる より:

      この混乱は時期に落ち着くでしょうが日本の懸念としては確かに個人消費ですね、今回の混乱で別段消費が落ち込むわけではないでしょうが消費税の増税が起きると厄介です。やはり消費税増税は何としても阻止してもらいたいですね。

  3. go より:

    次期日銀総裁人事が重要ですね
    黒田総裁は金融緩和によって雇用を回復させましたが増税派でもあります
    それが現総裁の限界である以上そこを突き破れる人材が必要です

    1. むるむる より:

      黒田さんって増税派なんですか!?知らなかった………
      次の総裁選と有力者って誰なんですかねぇ………お願いだから消費税増税だけはやめてクレメンス

  4. オールドプログラマ より:

    新宿会計士様には申し訳ありませんが、若干異論があります。
    >デフレには1つの重大な副作用があります。これは、経済(GDP)の縮小を通じて、やがては国民所得が減少してしまう、というものです。
    第1に現在のデフレは消費者物価を元に算出されていますが、約600品目程度の加重平均であり、なおかつ5年毎に品目が変更されます。従って、全体の物価を示すものではありません。ましてや、コア消費者物価では変動が大きいという理由で食料品や燃料が除外されています。日本の場合、デフレといっても1%以下のデフレであり一般的には誤差の範囲です。また、デフレだからといって消費が減少するとは限らず、価格が下がることによって需要が伸びることもあります。さらに言えばGDPは結果の数字であるので、デフレ=GDPの減少にはなりません。19世紀はデフレの世紀(20世紀はインフレの世紀)と言われますが、欧州各国のGDPは拡大しています。
    >市場にインフレ期待が醸成されれば、民間事業者にとっては、「物価水準が上がる前にカネを借りよう」と思うようになります。
     民間企業のとって投資はその投資で事業として利益が出るかが問題であるので、インフレ、デフレに関係なく投資は行われます。戦後のドイツのようなハイパーインフレならともかく、0.何%以下のインフレがいくら続いてもカネを借りる気にはならないでしょう。
    >そして、円安になれば、輸出企業にとっては輸出競争力が増えますし、輸入品の価格競争力は損なわれ、内需に代替されるという効果が生じます。
     現在の通貨別輸出はドル50%、円40%、他10%であり、資本財や工業用原材料が70%を占めているので為替の影響は小さく、実際に円安になっても数量ベースでは伸びていません。また、輸入ではドルが70%であり、大半は内需に代替えできない原油です。従って、日本にとっては円高が望ましいことになります。実際、東日本大震災は円高になったおかげで貿易が若干の赤字で済んだ経緯があります。
    >白川正明(しらかわ・まさあき)前日銀総裁は、なぜ日本が危機の時に、大胆な金融緩和を打たなかったのか、それについての説明をしないままに退任してしまいました。
     黒田さんが総裁になって異次元緩和を行ったときは確かに120台の円安に動きましたが、1年もたずに110円に戻りました。2%のインフレ目標も達成できていません。マイナス金利まで下げてもインフレにはなっていません。結局、黒田さんの政策は失敗であったと言うべきでしょう。発行している国債の半分も中央銀行が所有しているのは正気のさたではありません。黒田さんが就任した当時は白川さんはボロクソに言われましたが、今になってみると白川さんのほうが正しかったのではないかとの意見が見られます。貨幣数量説は成り立たないことが分かってきたと思います。

     

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