資金循環統計によると、日本の家計金融資産残高はついに1800兆円の大台に乗せました。ただし、冷静に眺めてみると、全ては一つの問題点に行きつきます。それは、「日本の家計が生活防衛をやめないこと」、です。そこで、本日はまず、家計金融資産の問題について、客観的な数値を確認するとともに、私の持論の一つである「消費税法廃止」についても議論してみたいと思います。

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    ここからが本文です。

    資金循環統計とは?

    日本銀行は3月17日(金)に資金循環統計(速報値)を公表しました。この統計は四半期に一度公表されるもので、日本国全体の資金の流れや金融資産・負債の保有主体別の残高を示す、非常に優れた統計です。そして、日本経済について議論するならば、まずは資金循環統計を読むべきです。

    ただ、世の中のエコノミストらは、なぜかこの資金循環統計を無視しています。特に、「日本の財政は破綻する!」「日本はもうすぐハイパー・インフレになる」などと主張するインチキ・エコノミストらは、日本全体のバランスを無視して、「政府の借金」だけで日本の未来を議論しようとするため、「消費税率は25%にしなければならない」といった、メチャクチャな結論が導き出されるのです。

    私は以前から、「資金循環統計から確認する限り、日本の財政は危機的状況でもなければ、増税も必要なく、むしろ日本経済に必要なことは減税である」と主張して来ました。2016年7月に、この「独立系ビジネス評論サイト」を立ち上げたことをきっかけに、改めて私の主張を、本日と明日の2回に分けて説明しておきたいと思います。

    日本の家計が保有する巨額の資産

    家計金融資産総額、遂に1800兆円の大台!

    今回の資金循環統計では、遂に「家計金融資産総額」が1800兆円の大台に乗りました(図表1)。

    図表1 家計金融資産総額(2016年12月末)
    項目 金額(億円) ①に対する比率
    現金・預金 9,365,513 52.02%
    投資信託受益証券 964,323 5.36%
    株式等 1,667,559 9.26%
    保険・年金・定型保証 5,242,937 29.12%
    金融資産合計(①) 18,002,632 100.00%
    金融負債(②) 3,909,982 21.72%
    家計純資産(①-②) 14,092,650 78.28%

    ここでポイントは3つあります。

    1. 集計対象となっているのはあくまでも金融資産のみであること。
    2. 家計金融資産の大部分が現金預金や保険であること。
    3. 金融資産から金融負債を引いた金額も巨額であること。

    それでは、1つずつ確認してみましょう。

    家計資産に含まれるものは?

    さて、最初のポイントは、「資金循環統計」に計上されているのは、あくまでも金融資産のみである、という点です。

    家計が保有する金融資産の金額は、遂に史上初めて、1800兆円の大台を超えました。これは凄いことです。日本のGDPは500兆円前後ですので、いわばGDPの4倍弱もの家計資産が存在している格好です。

    しかも、ここで集計されているのは、「家計の財産の全額」ではありません。あくまでも、「家計が保有する金融資産の金額」に限定されているのです。家計の資産としては、他にも、たとえば不動産(土地や建物、農地など)などがありますし、それ以外にも自動車や家電、PC、スマホ、宝飾品のたぐいなどもあるでしょう。しかし、「資金循環統計」に計上されるのは、あくまでも「金融資産」だけです。

    ということは、日本の家計が非常にゆたかであるということでしょう。

    現金・預金・保険資産に偏る

    2つ目のポイントは、家計資産の内訳は、8割以上が現金預金や保険年金資産などで構成されている、という点です。よく新聞などでは「株高・円安により株式や外貨建資産の評価額が膨らんだ」といった報道が見られますが、これは明らかに不適切でしょう。

    家計金融資産、最高を更新 16年末1800兆円(2017/3/17 10:41付 日本経済新聞電子版より)

    日経電子版は

    昨年11月以降に進んだ円安・株高で株式や外貨建て資産の評価額が膨らみ資産を押し上げた。

    と述べていますが、果たしてこれは事実でしょうか?これを確かめるために、四半期データが入手可能な1997年以降の「家計金融資産内訳」の推移を見てみましょう(図表2)。

    図表2 家計金融資産内訳推移

    家計金融資産の内訳は、その半分以上が現金・預金で占められています。これに「保険・年金・定型保証」の金額を含めると、金融資産金額の、実に80%を超えます。

    もちろん、株高や円安により、家計の資産の評価額が増えたことは事実ですが、むしろ現金・預金の額が一貫して増え続けていることの影響を無視することは不適切です(図表3)。

    図表3 家計資産の増減(2016年12月期、前四半期比)
    項目 金額(億円) 増減
    現金・預金 9,365,513 +205,234
    投資信託受益証券 964,323 +73,074
    株式等 1,667,559 +167,181
    保険・年金・定型保証 5,242,937 +30,858
    金融資産合計(①) 18,002,632 +470,827
    金融負債(②) 3,909,982 +64,827
    家計純資産(③=①-②) 14,092,650 +406,000

    実際のデータを確認してみると、確かに「株式等」は17兆円弱、「投信等」は7兆円少々、それぞれ金額が増えていますが、現金預金が20兆円以上増加したことの影響が一番大きいことは間違いありません。日経の記者の方には、「データを正確に読む」癖をつけることを強くお勧めしたいと思います。

    家計がお金を借りない!

    そして、3つめのポイントは、私がむしろ一番重要だと思う「家計純資産」の金額です。

    家計は確かに金融資産などの財産を保有していますが、住宅ローンや自動車ローンなどの「負債」も抱えています。そして、たとえば欧州の一部の国や韓国のように、家計負債が家計資産に対して50%近くに達している国もあります。

    しかし、日本の場合、家計資産が1800兆円の大台を超えているにもかかわらず、家計負債の金額は400兆円以下で、全体に占める比率も20%を少し超えているに過ぎません。そして、その残額こそが、日本の強さの源泉である「家計純資産」(資金循環統計上の「金融資産負債差額」)なのです。

    日本の家計が抱える金融負債の金額と、家計が保有する金融資産に対する金融負債の比率の推移を確認してみましょう(図表4)。

    図表4 極めて低い家計負債比率

    (グラフは「家計負債比率」のみ右軸、それ以外は全て左軸)

    このグラフからわかることは、この「失われた20年」で、家計負債比率は一貫して低下、ないしは横ばいで推移してきた、ということです。1997年12月に411兆円だった家計負債の金額が、20年後の現時点で391兆円に過ぎないという時点で、いかに日本が「デフレ不況」に苦しんできたのかという証拠であるようにしか思えません。

    ただし、「アベノミクス」が始まった2013年頃から、家計負債の金額は、ほんの少しずつではありますが、伸び始めています。マイナス金利政策でお金を借りやすくなっている昨今、この金額が400兆円を超えるのかどうかが、今後の目安の一つとなるでしょう。

    ニッポンの処方箋

    家計は「生活防衛」に走っている!

    まとめますと、この資金循環統計という数値を見る限り、次の3つの点がわかります。

    1. 家計が保有する財産は、金融資産だけでも1800兆円を超えたこと
    2. 家計金融資産の内訳は、現金と保険・年金資産に極端に偏っていること
    3. 家計が借りているお金は400兆円に満たないこと

    ここから判明することは、「家計は生活防衛に走っている」、ということです。

    考えてみれば当たり前の話ですね。テレビを点ければ「年金財政は破綻する!」「国家財政は破綻する!」などと大騒ぎし、新聞(慰安婦問題を捏造した朝日新聞や誤報を垂れ流しまくっている日経新聞など)を読んでも、日本の将来に関しては悲観的な報道ばかりです。

    中には、「消費税の税率を10%にしても日本の財政は必ず破綻する」といった荒唐無稽な財務省のプロパガンダをそのまま垂れ流している記事もあり、日本のマス・メディアの報道は、まさに「マスゴミ」と呼ぶに相応しい低レベルさです。

    こうした報道ばかりに接していると、家計が「生活防衛」のために借金を返し、貯金をするのも当たり前でしょう。そして、国民みんながお金を使わないようにすれば、景気が良くなるはずなどありません。

    預貯金や保険・年金を保有しているという事実

    ただ、あくまでも一般論ですが、日本の家計が保有する金融資産の残高が1800兆円に達しているということは、その金融資産が「誰か他の人の金融負債になっている」、ということです。なぜなら金融商品の世界では、「誰かにとっての資産は、他の誰かにとっての負債」だからです。

    家計が保有している937兆円の現金預金は、預金取扱金融機関(銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協、漁協、ゆうちょ銀行など)に流れていますし、524兆円の保険・年金資産は保険会社や年金基金などに流れています。そして、これらの機関投資家が日々、家計などから預かったお金を、莫大な有価証券などで運用しなければならないのです。

    言い換えれば、私たち家計は、働けなくなった時には預金を取り崩したり、年金・保険を受給したりして、生活を続けることができます。実は、日本の場合、公的年金制度(国民年金や厚生年金、共済年金など)が非常に充実しているため、一人ひとりが巨額の貯金をする必要などないのです。

    日本に必要なのは増税ではなく減税

    こうした状況であるにもかかわらず、家計が「生活防衛」に走るもう一つの原因は、いうまでもなく、財務省に責任があります。特に問題が大きい税制は、消費税でしょう(正しくは消費税6.3%と地方消費税1.7%ですが、ここでは「消費税8%」と表現します)。

    財務省は2014年4月の消費増税を、発足まもない安倍晋三政権に決断させました。この増税により、せっかく回復しかけていた日本の景気も「腰折れ」となってしまいました。私は、安倍政権がその後、消費税の2回目の増税を延期したこと自体に対しては一定の評価をしたいと考えていますが、それにしてもこの増税はまさに「痛恨の極み」でした。

    そして、日本に本当に必要な処方箋は、実は「増税」ではなく「減税」です。

    消費税についても、現在は8%(国税6.3%と地方税1.7%)となっているものを、10%(国税7.8%と地方税2.2%)に引き上げるのではなく、それを逆に引き下げる(あるいは廃止する)ことを、強く提案したいと思います。

    これだけある、消費税の欠陥

    考えてみると、消費税は数多くある税制の中でも、最も欠陥に満ちた税制です。

    一つは、生活用品をはじめ、数多くの商品・サービスに課税される税金である、という点です。このため、「金持ち」も「貧乏人」も、等しく日々の税金を支払うという負担を感じながら生きています。私自身は資本主義者ですが、それでも「累進課税制度」(金持ちほど税負担を重くする制度)は正しいと考えており、消費税は「逆累進性」(貧乏人ほど税負担が重くなる制度)という意味から、大きな欠陥があると言わざるを得ません。

    さらに深刻な問題は、例外措置を数多く設けているため、制度設計が複雑怪奇なものとなっていることです。たとえば、「仕入税額控除」という問題があります。これは、消費税を納めるべき事業者が、売上に含まれている金額に含まれている消費税を計算する時に、仕入れた金額に含まれている消費税を控除することができるという制度ですが、納めるべき税金が実際に授受された消費税の金額と全く異なるものになる、という問題点です。

    例えば540万円の売上があった会社が受け取った消費税は40万円(=540÷1.08×0.08)ですが、中小企業の場合、実際に納める金額は最大でも20万円でよく、残り20万円は業者の利益となります(いわゆる益税問題)。

    このような問題が生じるのも、消費税という税制が「インボイス方式」ではないという大きな問題があるからであり、また、免税売上高、非課税取引、不課税取引など、複雑な概念も多く、社会的な負担も極めて重いのが実情でしょう。

    明日の予告―消費税、廃止しても大丈夫なの?

    ただ、消費税法を廃止した場合、10兆円前後の税収が失われることになります。それでは、この消費税法は、廃止しても良いものなのでしょうか?

    実は、政府の財政再建は急速進んでおり、今や日本政府が増税を行う必要は乏しいのが実情です。そして、今回の資金循環統計からも、日本の財政バランスの改善が顕著となっています。

    そこで、明日は引き続き、今回の資金循環統計をベースに、「日本国政府の財政」について議論してみたいと思います。明日のコンテンツにつきましても、どうかお楽しみに!

    ※本文は以上です。

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