【昼刊】説得力がまったくない、新聞・出版への軽減税率
2019年10月に、消費税・地方消費税の合計税率は10%に引き上げられる予定ですが、「消費税率を引き上げると日本経済に悪影響がある」といった主張は、新聞業界からはほとんど出て来ません。それどころか、「新聞だけは軽減税率で税制優遇してね」、という、まことに自分勝手な意見が出て来ています。
目次
2018/06/15 16:30付 追記
本文ではありませんが、リード部分に誤字がありました。「芸滅税率」という誤字を「軽減税率」に修正しております。コメント欄でご指摘くださいました「ノブくん」様、大変ありがとうございました。
消費税法の問題点
現在のところ、2019年10月には消費税・地方消費税の合計税率は、10%に引き上げられる予定です。この点、「引き上げられたとしてもまだ10%に過ぎない」、「欧米では20%近い消費税率が適用されている国もある」、「したがって増税の影響は大きくない」、といった議論が見られることも事実です。
しかし、わが国の場合は食品などの生活必需品にも消費税が課税されており、わが国の国民は、富裕層であろうが、非富裕層であろうが、日常生活において広く消費税を負担させられています。このため、表面的な税率だけで、「欧米と比較して消費税の負担感は大きくない」と議論するのは不適切です。
また、わが国の消費税法には、さまざまな問題点があります。たとえば、年間売上高が1000万円以下の事業者には、消費税の納税義務が存在しません。このため、顧客から預かった消費税は「益税」として、これらの事業者の懐に入るのです。
さらには、年間売上高が5000万円以下の事業者の場合、「みなし仕入率」が適用されるため、たとえばサービス業の場合は、顧客から受け取った消費税については50%を納税するだけで済みます。こうした不公平かつ不透明な税制に問題がないとは言えません。
つまり、消費税法には、
- 国民生活のあらゆる場面で課税されるため、税負担が重く感じられる
- 富裕層、非富裕層に等しく課税されるため、逆累進性が強い
- 制度設計にさまざまな不備があり、事業者による節税・益税が横行している
という問題点があります。余談ですが、消費税法は法人税法と並び、税制が極めて複雑であり、国税OBの税理士が税務顧問として暴利をむさぼる材料の1つでもあります。
このため、財務省の解体、歳入庁の設置と並び、消費税法廃止こそが、私の強い持論なのです。
特例扱いを求める新聞、出版業界
消費増税を主張しながら自分たちには軽減税率を!
こうしたなか、私が最近、発見した文章のなかで、一番愚劣で醜悪な主張が、これです。
軽減税率、確実に導入を 新聞協会・白石会長 書籍・雑誌にも適用求める 活字議連総会(2018/06/11付 一般社団法人日本新聞協会HPより)
これは、今週、日本新聞協会のウェブサイトに掲載された声明文です。私の文責で主張を要約すると、次のとおりです(ただし、日本新聞協会は記事などの無断転載を禁止しているため、原文をそのまま転載することはしません。また、文章番号は引用者が付したものです)。
- ①日本新聞協会の白石興二郎会長(読売)は新聞への軽減税率導入について、確実な実行と即売や電子新聞、書籍・雑誌への適用を求めた。白石会長は、真偽不明の情報が飛び交う中、民主主義社会の維持には「信頼できる情報を広く、廉価で入手できること」が重要だと訴えた
- ②活字議連の細田博之会長は、出版物は「目から脳に入り、人に知恵を付けるもので生活に欠かせない」とし、新聞、書籍・雑誌への軽減税率適用を推進すると話した
- ③書籍出版協会の相賀昌宏理事長は、軽減税率の対象図書を区別するために、流通コードを管理する自主管理団体の下に第三者委員会を設置し、有害図書の排除に努めると述べた
原文が知りたいという方は、上記ウェブサイトを直接、お読みください。といっても、あまりにもバカらし過ぎて、乾いた笑いしか出ませんが…(笑)
文章①については、要するに、「民主主義社会の維持には信頼できる情報を安く入手することが必要」だから、「新聞や出版物への消費税の軽減税率を適用しろ」、という主張です。慰安婦問題を捏造した朝日新聞を筆頭に、ウソばっかり垂れ流している新聞のどこが「信頼できる情報」だというのでしょうか?
一方、文章②については、自民党の細田博之議員がこのような議連に属しているという事実を、しっかりと記憶しておきたいと思います。私が細田議員の選挙区(島根1区)の有権者だったとしたら、こんな人物、さっさと落選させたいと思います。
さらに、文章③については、わかりやすく言えば、「税の優遇措置を受けたいから自分たちで検閲しますよ」、という宣言です。要するに出版業界が「この書籍は有害図書」「この書籍は有害ではない図書」と振り分ける、ということですね。
保護を受け、利権化した産業は、必ず滅びる
もちろん、「民主主義社会を維持するためには、正しい情報が安価に手に入ることが必要だ」、という主張については、まったくそのとおりであり、私も100%賛成します。しかし、「新聞、雑誌、出版物が正しい情報だ」という主張には、まったく同意しません。
もっと正確に申し上げるならば、情報は「新聞、雑誌、出版物」に限られるべきではありません。私が執筆しているこのウェブ言論サイトもそうですし、動画サイト、インターネット掲示板、ツイッターなどのSNSなども、多様な情報源として尊重されるべきです。
この読売新聞の白石とかいう人間の主張を読んでいて感じるのは、新聞業界の思い上がりです。新聞こそ、戦前、戦中、戦後を通じて、ウソのプロパガンダを大量に垂れ流して来た媒体です。しかし、そのことに対する反省は、この日本新聞協会会長の発言からは、みじんも感じられません。
何より、白石会長に教えてやりたい話が1つ、あります。それは、「保護を受け、利権化した産業」は、必ず滅びるという、古今東西の鉄則です。
要するに、新聞は今や、定期購読者が激減し始めていて、未来がない産業です。消費税の増税をきっかけとして、新聞離れが加速することを、新聞業界は何より恐れているのだと思います。しかし、仮に新聞業界が税制優遇を受けたならば、新聞は財務省を批判することができなくなります。
新聞が新聞たるゆえんは、権力を恐れずにペンの力で批判することにあったはずです。しかし、軽減税率という形で税制優遇を受け始めると、財務省という権力に対する批判が鈍りますし、そうでなくても国民の側は、「新聞はどうせ軽減税率を受けているからね」と思い、新聞をますます信頼しなくなります。
出版業界も滅亡の道を歩むのか?
ただ、私が今回の日本新聞協会の報道発表を読んで、最も違和感を抱いたのは、出版業界も軽減税率を求め始めた、という点です。
少数の新聞社が独占している新聞業界と違って、少なくとも出版業界は、さまざまなジャンル、さまざまな主張を持った出版社が大量に存在していて、日々、さまざまな出版物が刊行されています。中には新聞が取り上げないような優れた言説を出版する会社もあります。
それなのに、書籍出版協会の相賀昌宏理事長は、「軽減税率を受けられる図書を選別するために、出版業界が自主検閲を行いますよ」、と宣言しているのです。そうなれば、出版社に高い手数料を取られてまで、出版しようとする人は、ますます減っていくでしょう。
実際、私が現在やっているように、インターネットという情報発信手段があれば、それこそ出版社などを通さなくても、誰でも気軽にオピニオンを発信することができます。当ウェブサイトも、別にどこかの出版社や大手オピニオン・サイトと提携しているわけではありません。あくまでも「独立評論サイト」です。
ということは、出版社から書籍を刊行する際に、軽減税率の適用を受けるためには、出版社の自主検閲を合格しなければならない、ということです。著者としては、正直、このような自主検閲を受けるくらいなら、インターネットで自分のオピニオンを直接、発信する方を選ぶのではないでしょうか?
当ウェブサイトのようにわざわざwordpressでウェブサイトを構築しなくても、最近だと、ブログ、SNSなどのウェブサイトも充実しています。また、有料でオピニオンの発信を狙うなら、AmazonのKindleダイレクト・パブリッシングなどのサービスを利用すれば、出版社を通さなくても気軽に出版できます。
新聞、出版には軽減税率を!
どうぞご自由に衰退してください
以上の議論はありますが、それでもあえて私自身の持論を申し上げるならば、新聞業界や出版業界が「軽減税率」の適用を求めるならば、彼らの希望どおり、軽減税率を適用させてやれば良いと考えています。その理由は簡単。いったん国の保護を受けてしまえば、あとはその産業は衰退するだけだからです。
とくに、出版業界は「軽減税率の適用を受けるために自主規制団体を設立する」と主張しているのです。もしかすると、「財務省や消費税法を批判する書籍」に対しては「有害図書」と認定され、軽減税率の適用は受けられないのかもしれません。
ただ、そうなってくれば、「本当に売れる本」「国民に支持される本」を書く人は、出版社を通さず、ダイレクト・パブリッシングなどのウェブサイトに作品を持ち込むようになると思います。実際、スマートフォンが普及したことで、マンガや小説はウェブで読む、という人も増えているようです。
出版業界に軽減税率が適用され、自主検閲が機能し始めれば、紙媒体で出版しようとする人は激減し、また、紙媒体の出版物に魅力がなくなれば、それを買おうとする人も激減するでしょう。つまり、結局は自分で自分の首を絞めているのと同じなのですが、彼らにはこんな簡単なロジックも理解できないのです。
ただし、いかなる産業も発展する自由もあれば、衰退する自由もあります。私は新聞・出版業界に対しては、「どうぞご自由に衰退してください」と申し上げたいと思います。
軽減税率ありとなしで競争しましょう
以前からの持論の繰り返しですが、消費税・地方消費税率の10%への引き上げについては、日本の経済成長率を腰折れさせ、経済をさらに衰退させるきっかけになりかねません。現在の日本が必要としているのは拡張的な財政政策であり、財政再建ではありません。
その意味で、消費税については税率引き上げではなく、むしろ、税率引き下げ、あるいは消費税法の廃止が妥当です。おりしも財務省が公文書偽造事件や事務次官セクハラ疑惑などで揺れています。新聞社が本来主張すべきことは、自分たちへの軽減税率の適用ではなく、財務省の解体であるはずです。
それをやらない時点で、すでに新聞はジャーナリズムとしての本来の使命を放棄しているのです。私のようなウェブ評論家は、そんな連中とまともに勝負して負けるような気がしません。私は軽減税率のない世界で、軽減税率に守られた新聞・出版社という意気地なしどもを、盛大にからかってやりたいと思います。
ちなみに私自身、実名で専門書を10冊近く出版をしているのですが、私は別に出版を「本業」にしているわけではありません。単なる自分の会社・事業の宣伝と位置付けており、別に売れても売れなくても関係ありません。いや、内容に自信があれば、別に軽減税率の適用を受けなくても、売れるはずです。
私はあえて、軽減税率や国の保護を受けず、実力だけで戦う道を選びたいと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。
ツイート @新宿会計士をフォロー
読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
コメントを残す
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
いつもご苦労様です
新聞だけは芸減税率で税制優遇してね
見出し下の枠の中で上記の文章があり
芸減税率と誤字されています。
ノブくん 様
コメント大変ありがとうございます。また、誤植をご指摘賜り、大変ありがとうございました。
引き続き当ウェブサイトのご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
消費税法には、
> 国民生活のあらゆる場面で課税されるため、税負担が重く感じられる
> 富裕層、非富裕層に等しく課税されるため、逆累進性が強い
> 制度設計にさまざまな不備があり、事業者による節税・益税が横行している
とのご意見ですが、2行目の逆累進性については別に不公平と思えません。
(ただ不平等を招くとは思いますが。)
日本の税制は細かく細分化され複雑怪奇状態になってますが、
大まかに言って
・所得税
・法人(住民・事業)税
・消費税
の3本でできていると思います。(あくまで一般会計、特別会計は別として)
このうち所得税には所得累進性があり、
法人税と消費税には累進性がありません。
このように税制別に累進性の有り無し大きさを変えているのが現状でしょう。
にもかかわらず、なんでのかんでも所得累進性が高くなければならないという考え方には、
残念ながら賛同できません。
バランスという意味においては、消費税10%でも止む無し感があるのは私だけでしょうか?
むしろ(この国が真の資本主義であるなら)見直すべきは譲渡益税や配当課税では?
もちろん譲渡益は基本的にゼロサムなので、これに課税すること自体に問題を含んでいますし、
法人事業税課税後の利益配当に課税している現状は二重課税そのものでしょう。
(参考までに「競馬」の配当利益への課税も二重課税ですが、まかり通ってますけどw。)
それらを解った上で思うところは、
この国において本当の金持ちは譲渡益や配当で莫大な不労所得を得ていて、
それらについての税率は一律20%(+α)で累進性がなく固定されており、
所得の再配分をもっとも妨げている原因かと思います。
だからといって所得再配分のために譲渡益税をもっと上げろとか、
配当所得にも累進性を!とか言うつもりもありません。
なぜならこれらの税制は資本主義に相反することだし、
日本だけがこれらへの課税を強化すれば資本逃避が起こるからです。
税制は大変難しい問題ですが、基本は「公平」を基準にすべきと私は考えます。
人は生まれ持って能力差があります。
結果、不平等はやむを得ないでしょう。
ただ行き過ぎた不平等は社会不安を生むので、ある程度調整も必要かとは思います。
一筆に消費税は「不公平」と間違った叫びをあげるだけでは、
どこぞのマスゴミどもと本質が同じかと・・・
乱筆失礼しました。
>一筆に消費税は「不公平」と間違った叫びをあげるだけでは、
>どこぞのマスゴミどもと本質が同じかと・・・
どこのマスゴミがそう言ってんの?
マスゴミって消費増税しろってゆー割には自分達は例外だよって厚かまし過ぎ。だから説得力ねーんだよ。
ところでブログ主さん、コメント欄もっとどーかなんない?コメントのタイトル打ちたいしフェスブックとツイターの連携もないんだけど。
政府の保護は確かにあまりよくない。農業なんか典型例。政府に保護を求めるとやってくるのは緩慢な死。一時は楽になるけど、結局、政府の定めた方針に沿わないといけない。それが経済合理性に必ずしも一致しないからね。金はいらないから口出しするなと政府に言うのがたぶん正解。