【夜刊】叩き続けなければ上昇してしまう内閣支持率

異例ですが本日4本目の記事です。内閣支持率の最新版が出て来ました。相変わらず支持率が不支持率を下回っている状況は続いていますが、支持率は上昇、不支持率は低下という点では、各メディアの調査結果は一致しています。また、各メディアともに支持率は上昇していますが、これは「一時的な政権叩きネタの燃料切れ」に過ぎません。

内閣支持率の傾向は一致

各メディアによる最新版の内閣支持率

週末に主要メディアのうちいくつかの会社が内閣支持率調査の最新版を公表しています。

内閣支持、3ポイント増の42%…読売世論調査(2018年05月21日 06時00分付 読売オンラインより)
加計問題「疑惑は晴れていない」83% 朝日世論調査(2018年5月20日21時55分付 朝日新聞デジタル日本語版より)
安倍内閣の支持率32.4% 5.7P上昇(2018/5/20 19:21付 NEWS24より)
【本社・FNN合同世論調査】/拉致問題進展に期待65%、「対北制裁続けるべき」81%、自衛隊「違憲」が25%(2018.5.21 11:44付 産経ニュースより)

私が確認したのはうえの4つの記事ですが、状況をまとめると次のとおりです。

主要メディアによる内閣支持率調査
メディア支持不支持
読売新聞(5/18~20)42%(+3)47%(▲6)
朝日新聞(5/19~20)36%(+5)44%(▲8)
NNN(5/18~20)32.4%(+5.7)50.6%(▲2.8)
産経新聞・FNN(5/19~20)39.8%(+1.5)48.5%(▲5.6)

(【出所】各社報道より著者作成。ただしNNN調査については「不支持率の前回対比の増減」が明記されていないため、著者調べにより情報を補足している)

これをどう見るべきでしょうか?

既存メディアによる世論調査の問題点

ところで、既存メディアが実施する内閣支持率調査については、全幅の信頼を置くべきではないと考えています。その理由は次のとおりです。

支持率調査の方法が電話調査主体であること。

最大の問題点は、支持率調査の方法が電話調査主体である、という点にあります。若年世帯だと自宅に固定電話を置いていないことも多く、固定電話を使った世論調査だと回答者が高齢世帯に偏っているのではないかとの疑念を払拭することができません。

また、最近でこそ携帯電話を調査対象に含める事例が増えているようですが、そもそも携帯電話の場合だと、非通知、あるいは知らない番号からの電話には出ない人も多いのではないでしょうか?

支持率調査の質問項目が一貫しておらず、公表されていないこと。

次に、設問項目の内容や順序によっては、調査結果など、誘導できてしまいます。このため、世論調査の信頼性を判断するためには、一応、どの質問に対してどのような調査結果が出たのか、確認できることが望ましいと思います。

この点、私がチェックしたところ、上記4本の記事については産経ニュースのみ、質問項目が掲載されていましたが、それ以外のメディアだと掲載されていないか、あるいは無料版だと確認できないか、そのいずれかです。

各社が過去の支持率調査を公表しているとは限らないこと。

さらに大きな問題は、支持率については内閣発足時点からさかのぼった調査を公表していないメディアが多い、ということです。今回の世論調査でも、支持率、不支持率ともに「前回との比較」については記載されていることが多いのですが(NNNを除く)、「トレンド」を見るのは困難です。

既存メディア調査は「方向性」が大事

以上を踏まえるならば、既存のマス・メディア各社による世論調査を見るときには、重要なのは「全幅の信頼を置かない」ことと、「メディア各社の整合性・共通点を見る」ことだと思います。この観点から、冒頭に示した4社の世論調査を見る限り、次の4つの共通点があります。

  • 不支持率が支持率を上回っていること。
  • 支持率は30%を上回っていること。
  • 支持率は前回調査よりも上昇していること。
  • 不支持率は前回調査よりも下落していること。

一般に「支持率が30%を割り込んだらその内閣は危険水域だ」と報じられることが多いのですが、この「30%基準」基準に照らすならば、とりあえず危機は脱した、ということです。また、不支持率が軒並み、支持率を上回っているものの、不支持率は減少し、支持率は上昇しています。

とくに、NNN調査で支持率が30%台を回復した点は、象徴的です。前回調査(4月13~15日)だと、支持率は26.7%、不支持率は53.4%でしたが、NNNとしても「これ以上支持率を低下させるように誘導することが難しい」と思ったのでしょうか?

ただ、今回、支持率がいっせいに上昇したことは不自然です。前回(約1ヵ月前)と比べ、マス・メディアや野党のみなさんが大騒ぎしていた、「もりかけ・セクハラ・日報問題」で、マス・メディアや野党の皆さんが「納得」するような展開が、何か1つでもあったわけではないからです。

たとえば、麻生太郎副総理兼財相は辞任していませんし、朝日新聞自身が言い張っているとおり、「加計問題の疑惑は晴れていない」状況です。「麻生副総理も辞任せず、加計問題の疑惑が晴れていない」のに、前回調査と比べ、軒並み支持率が上昇し、不支持率が減少したこと自体、非常に不自然です。

結論:叩き続けなければ上昇してしまう

おそらくこの不自然さの正体とは、「マス・メディアによる世論誘導が効かなくなっていること」の証拠でしょう。

何か政権を叩くネタなり、燃料なりを投下し続けなければ、既存のマス・メディアによる支持率調査では支持率が上昇してしまうのです。既存のマス・メディアによる世論調査自体、非常に偏ったものであると私は考えていますが、その偏った調査ですら、放っておけば支持率は上昇するのです。

言い換えれば、現在はマス・メディアが政権を叩く「燃料」が一時的に切れている状況です。ということは、マス・メディアや野党が政権の足を引っ張ることだけを目的に、「燃料」を追加投下して来る可能性はかなり高いと思います。

しかし、ウソ・捏造すれすれの事件を報じ、印象操作で内閣支持率を落とす手法に、限界が来ていることも事実でしょう。朝日新聞・テレビ朝日の例に見るまでもなく、投下する「燃料」次第では、政権支持率を下げるのではなく、燃料を投下する側であるマス・メディア自身が炎上する展開もあり得るからです。

いずれにせよ、安易に政権支持率を低下させるような虚報とは、いわば麻薬のようなものであり、このような虚報はを続けていけば、マス・メディア業界全体に対する国民の信頼が損なわれ、やがては経営難に陥る新聞社やテレビ局が出現することは間違いないでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

あれだけ「もりかけ・セクハラ・日報問題」などの虚報、印象操作で叩かれておきながら、政権支持率は30%台が底となっており、そこから反転し始めています。ニコニコ動画のように年代の偏りのない調査だと、実質的に支持率は50%、不支持率は20%が良いところです。

余談ですが、「調査の実施方法がインターネットである」「調査の質問項目が一貫していて、公表されている」「過去の支持率がすべて公表されている」という要件を満たしているのは、ニコニコ動画の調査だけです。その意味で、現状でもっとも客観的なのは、ニコニコ動画の調査ではないかと思います。

ただし、現時点ではまだ5月の世論調査結果については公表されていないため、ためしにニコニコの調査結果が出て来た時点で、もう一度、本日の図表をアップデートしてみても面白いかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 夜刊の発信ありがとうございます。
    < そもそも大手メディアの首相支持率は、何を目的にやっているのでしょうか。『内閣支持率はこんなに低いんだぞ』『信任されてない、やめろ!』と貶めるため?
    < まだ電話で調査しているのは、旧式手段にしかすぎないし、ケータイも不審な番号なら着信拒否か出ない。正確に取るなら、インターネットプラス全国の農漁村、住宅地、ターミナルで時間別、世代別に対面でするしかない。ある想定を描いて、それに沿うよう取るなら、世論を誘導しているだけだ。あまり参考にならんと思います。以上

  2. りょうちん より:

    サンプリングバイアスにはいろいろとあるんですが、例えば、RDDに当たって、電話が掛かってきたところで
    ふつうの人はつきあっていられるかと切ります。
    うちにも一回掛かってきましたが、ノンポリの妻が実際に「なんか変な機械音声の電話が掛かってきたけど、気持ち悪いから切ったわ」とかいうのがありました。
    そして、わざわざそんな電話調査に協力するのは、そもそもが現政権に不満を持って訴えたいノイジーマイノリティなんです。
    逆にネットで調査すると、マスゴミに不満を持った層が、能動的に逆目に投票します。
    客観的に支持率を測る方法は、現実的に「選挙」しかないわけです。

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