安倍政権は東アジア秩序の再構築を目論む?

年の瀬ということもあり、休刊しようかとも思ったのですが、例の「慰安婦合意TF」を巡って隣国が大騒ぎになっているようです。そこで、本日はこの騒動を冷ややかに眺めておきたいと思います。

年の瀬に自爆する国

年の瀬も押し迫って来ました。

早いもので、今年も残すところあと2日です。こうしたタイミングでは、普段ならば少し腰を落ち着けて、じっくりと経済分析記事を書いてみたり、随筆的に雑感を綴ってみたりするところなのですが、今年に関しては、そういうわけにはいきません。

というのも、「日韓慰安婦合意」成立から2年目を目前にした12月27日、韓国政府・外交部が設置した「慰安婦合意検証タスクフォース(TF)」が発表した「検証結果」の余波が、未だに続いているからです。

これは話題として取り上げないわけにはいきません。

この検証結果が発表された直後、韓国メディアは日本政府や韓国の前政権を批判する論調で一色となり、なかには「慰安婦合意など破棄してしまえ!」とばかりに、勇ましい主張をするメディアもありました。

私は最初から、『慰安婦合意TF:自ら墓穴を掘った韓国政府』でも申し上げたとおり、このタスクフォースは韓国側の盛大な自爆だと考えていました。しかし、検証結果の発表から数日が経過し、韓国メディアの間でも、徐々に、

これは非常にまずいことになったのではないか?

という論調が増えて来ているようにも思えます。

そこで、本日は少し趣向を変えて、改めて「なぜ韓国はこんなことをしたのか」、「これについてどう落とし前をつけるつもりなのか」について、韓国側の視点から眺めておきたいと思います。

自爆の余波が続く韓国

失敗事例について観察する意味とは?

さて、私は社会人評論家として、1年半前から、ウェブ評論活動を本格化させました。

本業では金融規制を専門としていますが、そこから派生して、ビジネス、国家、金融など、幅広い観点からウェブサイトを運営して来たのですが、その目的とは、「読んで下さる方の知的好奇心を刺激すること」にあります。

こうした中、評論家が陥りやすい誤りとは、「成功事例」にばかり着目してしまうことです。

たとえば、トヨタ自動車という優良企業があります。多くの人から見ても、トヨタ自動車はとても良い企業ですし、トヨタ自動車の経営について知りたければ、それについて議論した書籍は山ほど手に入ります。

しかし、すべての会社がトヨタ自動車のようにうまく経営できるわけではありません。

労使紛争だって発生しますし、コスト上昇にも直面しなければなりません。

トヨタ自動車は「さまざまな問題にうまく対処した事例」に過ぎず、逆に、「さまざまな問題に対処できずに粉飾決算に手を染める企業」だって存在します。

したがって、私たち社会人にとっては、「成功している事例」だけ見ても、あまり勉強にならないことがあるのです。

これこそが、私が「失敗事例」に注目する理由なのです。

そして、私は本業で企業経営について分析しているのですが、こちらのウェブ評論活動では、国家経営そのものに、強い関心を抱いています。

私のウェブサイトで、中国や韓国、北朝鮮を取り上げることが多い理由は、まさに、「国家の失敗事例」という観点から、私たちの国・日本が、行く末を誤らないことを願ってのものなのです。

ある日のハンギョレ新聞のトップページ

ところで、インターネット時代のおかげでしょうか、韓国や中国などの外国メディアが日本語版のウェブサイトを開設してくれることが増えて来ました。

こうした中、日韓関係や日中関係をめぐって、何か事件が発生すると、日本のメディア、日本政府だけでなく、これらの外国メディアのウェブサイトを訪れて、同じ事件をどのように分析しているのかを確かめることができます。

日本語版ウェブサイトを開設している韓国メディアの1つといえば『ハンギョレ新聞』ですが、昨日の同社ウェブサイトを見て、私は思わずのけぞりました。というのも、トップサイトに写真付きで大きく掲載されている記事が、いずれも、慰安婦合意TF関連のものばかりだったからです。

日本「慰安婦合意変更するなら日韓関係はマネージできない」強く反発(2017-12-28 06:57)
「最終的かつ不可逆的」慰安婦合意の文言は日本の返し技だった(2017-12-28 06:55)
慰安婦TF「政府、被害者たちに具体的な合意内容を教えなかた」(2017-12-28 07:00)
大統領府「慰安婦被害者の尊厳回復できる処置講じる」(2017-12-28 06:52)
朴前大統領の「慰安婦合意は年内妥結」督促が交渉力を落とした(2017-12-28 07:10)

記事の日付はいずれも1日前のものですが、これらの記事が、12月29日午前10時時点で、いずれもトップサイトに目立つように記載されていたのです。

慰安婦合意を巡って日本政府と韓国の朴槿恵・前政権をなじる内容ばかりですが、それだけ韓国国内でこのTFの関心が高いという証拠でしょう。

さらに、ハンギョレ新聞は社説で、日本政府側に対し、慰安婦合意の再考を求めています。

[社説]日本は「慰安婦」被害者の名誉回復の意義に立ち返れ(2017-12-28 22:48付 ハンギョレ新聞日本語版より)

これについては昨日も『慰安婦合意TF、韓国メディアの「逆切れ」』のなかで触れた通りなので繰り返しませんが、要するに、今回のTFの結果を踏まえ、日本政府が何かしてくれなければ困る、というものでしょう。

が、北朝鮮による核開発危機が間近なリスクとして迫っているのに、この国のメディアはいったいどうなっているのでしょうか?

微妙に論調を変える韓国メディア

ハンギョレ新聞は韓国国内の代表的な「左派メディア」であるとされ、論調がやや過激となることは仕方がないのかもしれません。

ただ、それ以外の韓国メディアを眺めてみると、慰安婦合意を巡っては「破棄すべき」の一本槍ではなく、慰安婦合意の破棄、変更を巡っての「慎重論」も出ているようです。

<慰安婦TF発表>韓国メディア、合意過程を叱責…破棄には慎重論も(2017年12月28日10時45分付 中央日報日本語版より)

中央日報によると、韓国国内では釜山日報が「慰安婦合意を叱責」する立場から社説を掲載したほか、京郷新聞は「韓日慰安婦問題の合意は、屈辱的な合意内容と非民主的な過程から見ては直ちに破棄するのがよい」と主張しているそうです。

しかし、同じ韓国メディアである世界日報は「国家間の合意の破棄には慎重でなければならない」、ソウル経済新聞は「精緻で緻密な外交戦略が必要だ」などと述べ、いずれも慰安婦合意破棄には慎重姿勢を見せているとのことです。

一方、朝鮮日報は次の社説で、「確かに慰安婦問題は重要だ。しかしもし2年前の合意を破棄し、再交渉を求めれば、韓日関係は完全に破綻するだろう」と述べ、慰安婦合意破棄に慎重姿勢を示しています。

【社説】韓日慰安婦合意、瑕疵に劣らず意義も大きかった(2017/12/28 10:11付 朝鮮日報より)

朝鮮日報の社説は、韓国メディアの中では、比較的バランスが取れている方でしょう。

ただ、この問題を巡っては、韓国国内のメディアの論調もバラバラで、「どうすれば良いのか、正直戸惑っている」というのが実情でしょう。

開いた口がふさがらない東亜日報社説「日韓関係はどうなってもよい」

こうした中、私がさまざまな韓国メディアの社説を横断的に眺めてみて、一番呆れたのは、次の『東亜日報』の社説です。

文大統領「韓日合意は重大な欠陥」…安倍首相「合意1ミリも動かない」(2017/12/29 11:17付 東亜日報日本語版より)

東亜日報は比較的、保守系のメディアだといわれているようですが、リンク先の社説を読むと、日本政府を糾弾する内容となっており、その意味では先ほど紹介したハンギョレ新聞と論調がそっくりです。

東亜日報の主張の要点を私の文責で要約すると、次のとおりです(ただし、一部、意味が通りにくい部分を私の責任で改変しています)。

  • 慰安婦合意TFの発表は外交の裏合意を明らかにしたという意味で、国家間の信頼を傷つけた面はある
  • しかし、慰安婦問題の加害者である日本の慰安婦合意TFに対する反応はオーバーだ
  • 慰安婦問題は韓国としては敏感な傷であることを日本は理解し、日韓関係の未来のためにも罪の意識を感じなければならない
  • 10億円で全て終わった話と突き放し、慰安婦合意TFに対して日韓関係に悪影響があると詰め寄るのは大きな過ちだ

正直、東亜日報は韓国メディアの中でも比較的まともな論調の新聞だと思っていたので、この社説には驚き、呆れてしまいました。日本政府が韓国政府に対し、慰安婦合意を少しでも動かすことを決して許さないという姿勢を見せたことに対し、東亜日報は感情的に反発しているのです。

そして、「開いた口がふさがらない」という表現がぴったり来るのが、次の下りです。

北朝鮮問題の解決で日米韓の協力が重要ということを分からないわけではない。ただでさえ高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)問題で中韓関係が冷え込んでいるところに韓日関係まで悪化することは国益に役立たない。そのためTFの発表も慎重だったのは事実だ。韓国政府のこのような事情を分からないはずのない日本政府は、必要なら再び韓国側と膝を突き合わせて合意を補完する方向を検討すべきだった。平昌五輪の不参加まで云々し傲慢な態度に出ることは、韓国国民の傷に塩を塗りつける行為だ。日本が韓日関係がどうなってもいいという態度に出るなら、韓国が執着する必要はない。

要するに、日本は加害者だから、韓国の事情を忖度して、多少のことは大目に見ろ、という姿勢です。

私は東亜日報の社説の執筆者に、こう言いかえしたい気持ちでいっぱいです。

「韓国こそ日韓関係を破壊してでも慰安婦合意を動かそうというのであれば、日本は韓国との関係に執着する必要はない」、と。

忖度外交からの脱却

「日本は配慮すべきだ」

ただ、この東亜日報の論調を読んでいると、韓国の「保守派」の本質を垣間見ることができるのも事実です。

それは、「日本政府は韓国政府の苦しい立場に配慮すべきだ」、とする一貫した主張です。

そのロジックは、こうです。

  • 日本の政治家が過去の歴史問題で「妄言」をする
  • 韓国国内の保守派・親日派が困った立場に追いやられる
  • 日韓友好に障害が生じる

そして、日本側の政治家も、韓国に対して無用な配慮をしてきたという歴史があります。あるいは、日韓友好に名を借りた、単なる事なかれ主義と言っても良いでしょう。

そうした「事なかれ主義」の典型的な政治家とは、「政界風見鶏」とも揶揄されたこともある、中曽根康弘元首相です。

1986年、中曽根政権下で文部大臣に任命された藤尾正行元文部大臣は、就任直後に

日韓併合は合意の上になされたものであり、日本だけでなく韓国にも責任がある

などと発言。韓国の反発を恐れた中曽根首相が、藤尾文部大臣を罷免した事件です。

私は中曽根元首相を巡っては、行政改革で顕著な業績を上げた人物でもありますが、それと同時に、中韓に配慮して靖国参拝を見送るなど、日本の外交にさまざまな禍根を残した人物でもあると考えています。

そして、中曽根元首相に代表される、日本国内の(自称)「穏健派」と呼ばれる保守政治家が、こうした中韓に配慮するために、言動を自制して来たというのも、また事実です。

東亜日報社説は「対韓配慮型」を前提としたもの

私がいつも申し上げているとおり、わが国には韓国とどう付き合うかを巡って、だいたい次の6つの考え方があります(図表)。

図表 日韓関係の6類型
カテゴリ分類概要
日韓友好①対等な日韓関係日韓両国は対等な主権国家同士であり、友誼を深め、手を取り合って将来に向けてともに発展していくべきだ
②対韓配慮型関係①と同様、日韓両国は対等な関係だとする前提に立つが、必要に応じて、歴史問題等で韓国に譲るところは譲り、特別な配慮をすべきだ
③対韓追随型関係韓国は日本に対して「正しい歴史認識」を求めているが、日本は韓国に対する加害者であり、被害者が「もう良い」というまで謝り続けるべきだ
日韓非友好④韓国放置論韓国は日本に対していくつもの無理難題を突き付けてくるが、それらの不当な要求を無視し、敢えて日韓関係の修復は先送りにすべきだ
⑤日韓断交論韓国は日本にとって理不尽な要求ばかり突き付けてくる国であり、いっそのこと断交してしまうべきだ
⑥誅韓論日本は韓国という国と関わらないだけでなく、むしろ韓国という国を積極的に滅亡させるべきだ

(【出所】著者作成)

この①~⑥の類型は、私が賛同して書いているわけではありません。あくまでも、日本に存在する考え方を私がまとめただけの話です。

東亜日報の社説にあった考え方は、明らかにこのうちの②に対応するものでしょう。また、ハンギョレ新聞の考え方は、③に近いかもしれません。

つまり、敢えて乱暴に決めつけるならば、韓国国内の保守派に対応する考え方が②、韓国国内の左派に対応する考え方が③なのです。

これに対し、私自身が理想と考えるのは、もちろん①です。韓国がいつまでも過去にこだわることをやめ、日本とともに未来に向けて発展する意思を示すのであれば、日本としても韓国と「価値を共有する友好国」として、仲良くお付き合いして行けば良いと思います。しかし、②や③のように、日本が韓国に対して配慮し続けることを前提とした外交関係など、不健全であり、両国のためになりません。

そして、韓国国内で①に対応した考え方がない以上、日本としても①の関係を韓国との間で築くことはできません。

このことを、しっかりと理解すべきでしょう。

安倍総理「1ミリ」発言の真意とは?

では、日本政府は韓国との関係をどうしていきたいのでしょうか?

首相「1ミリも動かず」 日本側、見直し応じぬ構え(2017/12/28付 日本経済新聞朝刊より)

日本経済新聞電子版は一昨日、安倍晋三総理大臣が「周辺」に対し、日韓慰安婦合意は「1ミリも動かない」と指摘していると報じています。

この「1ミリ」発言は首相官邸ウェブサイトからは確認できませんが、実際に河野外相や菅官房長官らの談話からも、安倍政権は一貫して、日韓慰安婦合意を巡る一切の追加措置に応じない方針を示していると見てよいでしょう。

では、その真意はどこにあるのでしょうか?

菅官房長官は「粘り強く合意の着実な実施を求める」と繰り返していますが、韓国政府が合意を履行する意思も能力もないことは、もはやだれが見ても明らかでしょう。

先ほどの東亜日報の「悲痛な叫び」にも近い社説を眺めていると、韓国側の保守派の間で、日本が配慮してくれなければ本当に日韓関係が終わってしまうという危機感が存在することは間違いありません。

これを今年流行した用語で言えば、「忖度(そんたく)」とでも言えば良いでしょうか?

そして、今後の韓国側では、安倍総理が1ミリでも動けば勝利、となるに違いありません。ついでに申し上げれば、朝日新聞あたりは今後、「安倍政権は韓国に配慮し、慰安婦合意の再交渉に応じるべきだ」と主張するでしょう。

しかし、ここで安倍政権が、それこそ1ミリでも動けば、せっかく正常化しつつある日韓関係が、再び「韓国に配慮する外交」に後退しかねません。

その意味で、安倍総理の「1ミリ発言」には、「2015年12月の慰安婦合意が韓国に対する最後の配慮だった」という、強い意志を感じるのです。

日韓断交論は極端にしても…

ここからは、敢えて私の主観で安倍政権の方針を「忖度」してみたいと思います。

おそらく安倍政権は、韓国との関係を、「価値を共有する運命共同体」から「単なる隣国」に格下げしようとしているのではないでしょうか?

もちろん、日韓両国の往来も増えていますし、日韓両国間の投資・貿易などの関係も深化しているため、単純に「日韓断交」などはできません。しかし、韓国が慰安婦合意を動かして、再び日本に対して配慮を求めたならば、日本側では官民挙げて、「もうこんな国とは付き合えない」とばかりに、韓国疲れが出て来ることは間違いないでしょう。

そして、そのヒントとなるのが、河野太郎外相の、次の発言です。

日韓合意は、両政府間の合意であるとともに、国際社会からも高く評価されたものです。今般の報告書には、韓国政府の日韓合意についての立場は含まれていませんが、日本政府としては、韓国政府が同報告書に基づいて、既に実施に移されている合意を変更しようとするのであれば、日韓関係がマネージ不能となり、断じて受け入れられません。日本政府としては、韓国政府が合意を「最終的かつ不可逆的」なものとして引き続き着実に実施するよう、韓国側に対し、強く求めます。」(※下線部は引用者による加工)

つまり、河野外相の発言からは、現在の日韓関係は「マネージ(管理)」する対象であり、裏を返せば「無条件の友好関係」にはない、ということが透けて見えるのです。

では、河野外相が「マネージ不能となる」と表現した状態が発生すれば、日韓関係はどうなるのでしょうか?

おそらく、少なくとも安倍政権が存続する間は、日本政府が韓国政府をまともに相手にしなくなることは間違いありません。

安倍政権は韓国を追い込んでいる?

大使の一時帰国措置?是非発動して欲しい

もっと言うならば、安倍政権は韓国が慰安婦合意を守れないことを見透かしている節があります。

現在の文在寅政権は、いわば、反日で自縄自縛状態となってしまっていて、慰安婦合意を守れば国内からの猛反発を招き、場合によっては再びロウソクデモが発生し、政権の座から引きずりおろされかねません。その一方で、慰安婦合意を再交渉しようとするならば、日本との関係を決定的に損ねることになるでしょう。

先ほどの東亜日報の社説風にいうならば、韓国政府の事情を分かっていながら、日本政府はわざと韓国政府を追い込んでいるようにも見えるのです。

そして、こうした見方は、あながち間違っているとはいえません。安倍政権は韓国に対してひたすら「日韓合意の着実な履行」を求め続けていますが、これは韓国国民と日本政府との間で板挟みになっている韓国政府・文在寅政権を、結果的に追い込んでいるからです。

そういえば昨日も、こんな記事がありました。

<慰安婦TF発表>日本で「駐韓大使帰国論」浮上(2017年12月29日13時38分付 中央日報日本語版より)

中央日報によると、「日本政府内で駐韓大使を(再び)一時帰国させる案が浮上したと読売新聞が報じた」としています(※ただし読売新聞電子版では、その記事は確認できません)。

大使の一時帰国措置自体は、ただちに「日韓断交」などにつながるものではありませんが、それでもこの措置が再び発動されれば、文在寅政権下で日韓関係が決定的に悪化したことの象徴として、文在寅政権に心理的圧迫を加えることはできるでしょう。

安倍政権の「真の狙い」とは?

ただ、単純に相手を追い込むだけではだめであり、何事も、「落としどころ」を考えておかねばなりません。

では、安倍政権が韓国に対して強硬姿勢を取る狙いは、いったい何でしょうか?慰安婦合意を履行させるためだけでしょうか?

私は違うと思います。そして、おそらく、安倍政権の真の狙いは、東アジア秩序全体の再構築にあると見ています。

韓国は前任の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権時代に、中国への猛烈な擦り寄りと米中二股外交を繰り広げ、米国の不興を買いました。そして、文在寅政権では米韓離間が加速しており、遅かれ早かれ韓国は、中国の属国になるのか、北朝鮮に赤化統一されるかのいずれかでしょう。

それに、韓国側の事情により日韓関係が破断されれば、自動的に米韓同盟も破棄され、必然的に韓国は「レッド・チーム」とならざるを得ません。

もちろん、いまこの瞬間、韓国が「レッド・チーム」になってしまうと、安倍政権としても困ることは事実です。しかし、長い目で見て、味方をすぐに裏切るような国に、同盟国・友好国としての資格はありません。そこで、韓国が日本の友好国・同盟国でなくても困らないよう、東アジア外交、いや東アジア秩序全体を再構築するのが、安倍政権の真の狙いなのではないでしょうか?

私のこうした見方が正しければ、おそらく、安倍政権は来年以降も、東アジア新秩序に向けた布石を着々と打つことでしょう。そして、そのときにもはや日韓関係は「単なる隣国関係」に格下げされ、かつ、日中関係の従属変数に過ぎなくなるのです。

それが安倍政権による真の狙いなのだとしたら、私は安倍政権の日韓関係に関する姿勢を高く評価したいと思うのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. ヨイトマケ より:

     邪推すれば、安倍政権が対韓国で一切譲歩しない事が予想されたうえに、政治勢力的にもそれが可能であったからこそ、魔女裁判を使ってでも弱体化しておきたかった人たちがいるのでしょう。
    あのタイミングで解散総選挙は想定外だったでしょうが。
     とにかく日本政府としては以降は原則論を押し通せばいいはず。米国がおかしな事を言い出さない限りは、ですが。

  2. 埼玉県民 より:

    毎日の更新ありがとうございます。
    また以前投稿させていただいたマウンティング論に戻りますが、
    バカ犬の群には対等という関係はありませんので、①~③は彼らの上位(愚兄)を前提としたものです。
    あたり前のように、国力的にも文化的のも全く劣位であることは、世界はもちろんバカ犬にも明確なので
    絶えずマウンティングを仕掛けて、地位の確認をしたくなるのです。 キーセンパーティが好きなのか裏金をもらったのか、大勲位は美青年と楽しい時間を過ごしたのかわかりませんが、冷戦下では保守系も子供のパンチと見て、元の飼い主として大目にみていただけなのです。 総連の手先だった左派は当然のように半島が上位でご主人様です。 アメリカも同様に現飼い主としてバカ犬のアマガミを大目に見てくれていました。 独島エビも現ご主人様への地位確認アピールです。 対中国同様に自身が劣位であることを自覚すれば関係は安定します。 今回のTF報告では、マウンティングを仕掛けたものの、蹴り返されて、バカ犬がパニック(火病)に陥ったようです。 バカ犬は、犬に例えるとあまりにも忠誠心なさに、現飼い主と元飼い主に見捨てられて、三跪九叩頭しないとエサをくれない、5000年間使え続けた元々の飼い主のところに戻るしかないようです。 最近は三不九叩頭でしょうか。 バカ犬が対日劣位を認識するまで、パニックと中途半端なマウンティング仕掛け続きます。 日本はいくら正しいバカ犬のしつけ方であっても中国人のような動物虐待はできないので、完全服従するまでエサを一切やらないことです。 恭順してきてエサをやる場合も慰安婦合意の米国立会いのように、万座の中で股をくぐらせる必要があります。 国内向けにごまかしができないように韓国内でも生中継させて脳内勝利できないようにしておかないといけません。

  3. 関澤 より:

    ご指摘の通り、自由と繁栄の弧、ダイヤモンド構想の一環なのでしょう。韓国が一角足りえるかの踏み絵に、日韓合意を提示したと。国民の名誉、国益と比較して少な過ぎる利益ですが。アメリカの干渉でしょうか。

  4. きゃん’t⇔R より:

    いつも楽しみに拝読しております。
    日韓合意は、履行しても地獄、見直しても地獄。韓国は操舵不能の船に見えます。船と言えば、韓国軍は英国のクイーンエリザベス級の空母保有を検討しているそうですが、仮想敵国は北朝鮮ではなく、竹島紛争を睨んだ日本だそうです。健全な国交など不可能ではないでしょうか。そもそも慰安婦問題自体、エビデンスに基づかない虚構な訳ですし。今後の日本政府の動きに注目します。

  5. 憂国の志士 より:

    …閑話休題…
    ほんの爪の先ほどのことにでも、褒められると浮かれるのが韓国の国民性だが、中央日報に面白い記事を見つけました。

    <米誌で「今年のバランサー」賞に文大統領>
    http://japanese.joins.com/article/036/237036.html?servcode=200&sectcode=200&cloc=jp|main|top_news

    対米、対中、対日、と難題続きの文大統領がバランサー賞を受賞、なのだが、何のことはない、皮肉たっぷりの中傷風刺がこの賞の中身らしい。

    ツー・トラックだの、バランサーだの、二股だの、何をやっても旨くいかず、結局はやはり民衆迎合に向かざるを得ない無力さを、文大統領が一番痛感し、苦り切っている内心が垣間見える。

  6. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。年末のお忙しい中、更新していただいて、本当に楽しみにしてます。
    < 隣の蛮国が大変なことになってますね。最近の動きみてると、勝手に転んでいるようで余裕で観察してます。日本国に対して侮日し、反日しながら一方的に友邦を名乗って、タカっていた韓国は、仮想敵国からモノホンの正面敵に格上げになりました。但し一時的ですが。慰安婦問題のTFなどという無駄なあがきをして、非公開も約束破ってバラし、自国の非公開部分のチョンボは朴元大統領に押し付ける。形勢不利とみるや文大統領は、事後策を練り破棄に持っていく手を考えている。真正の敵国確定です。ま、所詮日本国が全力を上げる相手ではありませんが、不規則な行動をすることがあり、首根っこを押さえておく必要がありますね。
    < 韓国の新聞報道をみると、
    保守派=親日派。困った時に日本は助けて当然、お互い助け合いだ(オマエラに助けて貰ったことはない)。
    左派=反日、親北、従中。日本は昔酷い事をしたので、半万年謝り続けろ。中国より日本がとにかく嫌い。
    こんな感じかなと今回の報道で思いました。特にハンギョレ、東亜日報の極左ぶり。東亜は自が出た。しかし合意破棄や再交渉に慎重姿勢を見せる新聞社もあります。
    < 新宿会計士様の日韓関係の6類型ですが、①は私にはありえません。理由は友好国ではないからです。ここまで慰安婦合意問題をこじらせると、二度と言わせないよう、誅韓論、滅亡せよ!です。具体的には❶駐韓日本大使、領事の召還、危急時対応に最少限のみ残す❷ビザ免除プログラムの短縮または中断❸五輪安倍首相不参加❹五輪選手団不参加ーーとりあえず今日はこのぐらいにしといたるわ!
    < 今回の一件で米国も呆れたことでしょう。とにかく韓国は合意履行を早くしろ!
    < さて、アジア、中でも東南アジア諸国の中で、やはり日本一国だけが異質なんでしょうか。別に見下しているわけではないが、見渡す限り蛮国。失礼ながら日本国だけがあらゆる面で洗練されている、民度が高い、西欧化も良くも悪くも進んでいる。貧富の差が少ない。公共物を大切にする。この日本を中心として、安倍首相は東アジア秩序の再構築を考えているようです。その手段として、日、米、台、比、尼、インドネシア、越南、ミャンマー、印、豪、NZらで手を結び、『自由で開かれたインド太平洋戦略』の輪を強固にして欲しいものです。
    < そうなると日本の正面敵は中国になる。中、韓、北、(露)、(東南アジアで1〜2国)、 (欧州、アフリカで呼応する国もあるかも)。チーム分けが決まったら戦うだけ。何も武器に依らなくとも、経済戦争が激しくなりそうです。
    < 長々と失礼いたしました。

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