太陽光発電には総量規制が必要だ
そろそろ太陽光発電施設には「総量規制」が必要です。電力の安定供給にまったく役立たないばかりか、国民に決して安くない再エネ賦課金の負担を強いていて、それでいて環境や景観にも悪いのですから。また、現在の技術だと電力は貯められません。作り過ぎた電力は「捨てる」しかないのです。これは太陽光発電自体の欠陥そのものです。
目次
太陽光×原子力〇
当ウェブサイトにおいて、ここのところ頻繁に取り上げている話題のひとつが、太陽光発電と原子力発電です。
といっても、当ウェブサイトにて主張したいことはいたって単純で、太陽光発電は「高くて効率も悪いし、不安定だし、環境にも良くないうえに危険だ」、というものです。これに対し、原子力発電は「安くて効率も良く安定的に電源を生み出し、きちんと運転すれば安全であり、環境への影響も限定的である」、といえます。
もちろん、原子力発電の場合、いったん水蒸気爆発などの事故が発生してしまうと、最悪の場合、放射能汚染物質が環境にばら撒かれてしまいますし、いわゆる「核のゴミ」も将来的に解決されなければならない問題のひとつであることは間違いありません。
しかし、社会全体では一部の左派メディアの影響でしょうか、こうした原子力発電の「問題点」ばかりが過度に強調されるきらいがありますが、原子力に問題があるからといって、太陽光に問題がない、という話にはなりません。むしろ、太陽光発電は「電力を安く安定的に供給する」という観点からは、百害あって一利なし、です。
判断が遅すぎる「阿蘇のメガソーラー規制強化」
これについては『国民民主・榛葉氏「再エネ推進はもうやめた方が良い」』でも議論したばかりですが、同じく太陽光発電に関連し、3日付でこんな記事が公表されていたのを発見してしまいました。
阿蘇の景観覆うパネル、メガソーラー続々…環境省が規制強化へ
―――2024/04/03 14:52付 読売新聞オンラインより
これは、「世界有数のカルデラが生み出した特徴的な眺望で知られ、「阿蘇くじゅう国立公園」も広がる熊本県の阿蘇地域一帯」に、大規模な太陽光発電施設が続々と出現している、とする話題です。
読売新聞が取り上げるよりも以前から、阿蘇周辺のメガソーラーはネット上でかなり問題となっていたものですが、読売新聞の記事ではこう書かれています。
「全国の国立公園でも急増しており、環境省は開発に一定の歯止めをかけなければ景観に悪影響を及ぼす恐れがあると判断。同公園については今年度中に区域を拡張するとともに、規制も強化したい考えだ」。
正直、判断が遅すぎます。
これに関連し、先日の『宮城県で施行された「再エネ地域共生促進税」の考え方』では宮城県で0.5ヘクタール以上の森林を切り開くなどして再エネ施設を作ろうとする場合に営業利益の2割を徴収する法定外普通税が始まった、とする話題も取り上げています。
太陽光発電には「総量規制」が必要だ
全国的にメガソーラーなどが問題化しているなかで、改めてメガソーラーには総量規制が必要です(ちなみにこの「総量規制」という表現は、Xの下記ポストから着想を得ています)。
メガソーラーをどれだけ作ってもベースロード電源にはならず、夏の昼間は電気をどんどん捨てるだけです。夜は役に立たないし、冬の雪国では全然役に立たない。
メガソーラーは総量規制するほうがいい。
— あ〜る菊池誠(反緊縮)公式 (@kikumaco) April 4, 2024
ちなみに「ベースロード電源」「ミドル電源」「ピーク電源」については『【総論】電力系統の維持に適さない太陽光発電の問題点』あたりもご参照ください。
ただ、これに関連し、X(旧ツイッター)上では、こんな趣旨の主張が見られるのも事実です。
- たくさん発電して貯めておけば良い
- 宇宙空間で太陽光発電を行い、マイクロ波で地上に送電すれば良い
- たとえばビルのガラスに太陽電池を組み込む方法もある
…。
正直、こうした発想自体、「(現在の技術では)電気は貯められない」という特性を理解していない素人発想としか思えませんし、また、そのような主張をする人たちは、「ベースロード電源」や「安定電源」などの概念を理解していないと言わざるを得ません。、
太陽光vs原子力の総括表
これについては毎回指摘するのが疲れるので、今回からは太陽光と原子力について、「比較のための総括表」を作ってみました(図表)。
図表 太陽光発電vs原子力発電
比較項目 | 太陽光 | 原子力 |
効率の良さ | 非常に悪い | 非常に良い |
発電コスト | 非常に高い | 非常に安い |
日中の発電量 | 非常に不安定 | 非常に安定的 |
送電網への負荷 | 極めて高い | 極めて低い |
発電時の地球温暖化ガス | 排出しない | 排出しない |
その他の留意点 | 火災が頻発しているほか、大規模な環境破壊も社会問題化 | いったん事故が起きれば影響は深刻。核のゴミ問題も未解決 |
(【出所】当ウェブサイト作成)
これは、発電効率の良さやコスト、日中の発電量、送電網への負荷などの観点から作成した対照表です。
太陽光発電のメリットといえば、発電時に地球温暖化ガスを排出しない、といったくらいであり、それ以外は原子力と比べて欠点が多々あります。
「効率の良さ」や「発電コスト」でいえば、太陽光発電は原子力に完敗します。
(緯度や気温、その日の天気などにもよりますが)一般に太陽光発電施設の出力は1ヘクタールあたり500kW程度に過ぎず、しかも夜間はまったく発電しないという特徴もあるため、日本の自然環境・気象条件では、「利用率」は10%からせいぜい15%程度に留まるようです。
日本の年間発電量は1兆kWh少々ですが、これをすべて太陽光で賄おうと思えば、逆算して少なくとも約152万ヘクタール、すなわち約1.5万平方キロメートルの面積が必要です。これは、日本の国土(総務省統計局によると37万7975㎢だそうです)のうちの4%ほどに相当します。
太陽光発電は電力系統を「破壊」することもある?
そのうえ無視できないのが、電力系統への悪影響です。
私たちが使っている電力は直流ではなく交流であり、周波数が東日本で50ヘルツ、西日本で60ヘルツと決められています。この周波数が狂うと、日本各地で電気機器が誤作動を起こすかもしれませんし、最悪の場合壊れたり、事故が起きたりするかもしれません。
したがって、電力系統を維持するためには、それこそ24時間・365日、電力の需要と供給を監視し、そのバランスを取るようにしなければなりません。
資源エネルギー庁ウェブサイトに掲載されている『電力バランスゲーム~町に電気をとどけよう~』というページから貼られているゲームをやっていただければ、その難しさの一端がわかるかもしれません。
この点、太陽光発電などがなかった(あるいは無視し得るくらいには影響が小さかった)時代だと、需給バランスはおもに電力の「需要側」だけを見ていれば良かったのです。水力、原子力などのベースロード電源は安定的に発電し続けるため、需要動向を見て、火力発電所などを動かしたり止めたりすればよかったからです。
ところが、現在では太陽光発電や風力発電など「発電量が読めない発電手段」の割合が高まってしまっているがために、需給バランスを取るためには電力の「需要側」だけでなく、「供給側」も継続的に監視しなければなりません。
太陽光の発電量は季節・時間・緯度だけでなく、その日の天気や気温などで変動するからです。
その意味では、太陽光発電は電力系統を「破壊」しているようなものだ、とすら言えるのです。
電気?今の技術じゃ貯められませんよ?
もっとも、そうなると必ず出てくる反論が、「それじゃあ、日中にたくさん発電して貯めておけば良いじゃないか」、です。
これについては、「現在の技術力では電力を『効率的に』貯めることが難しい」、が答えです。厳密にいえば蓄電自体は不可能ではありませんが、蓄電ロスで多大な電力が失われるなど、効率は非常に悪くなります。
もちろん、もしも将来、「夢の超電導技術」なるものが実用化され、発電したらほぼ100%、そのまま蓄電でき、ロス率ゼロで世界中に送電できるようになれば、「電力のすべてを太陽光で賄う」、といった構想も実現に向けて動き出すかもしれません。
- 「サハラ砂漠の4分の1にパネルを敷き詰めて発電して蓄電し、世界中に送電する」。
- 「地球の赤道上空をぐるりと取り囲むよう、宇宙空間にパネルを並べ、マイクロウェーブで地上に送電する」。
しかし、これらの構想、実現すれば良いかもしれませんが、現時点においては残念ながら、いずれも夢物語のようなものです。
私たちが暮らすこの現実世界はSFの世界ではありません。私たちが現実の世界に生きる現実の人類である以上、とりあえず現時点のエネルギーの問題は、私たちがすでに持っている技術を駆使して解決しなければならないのです。
そうなると、「社会全体で存在して良い太陽光発電施設には限りがある」という事実に、私たちはそろそろ向き合わねばなりません。
世の中に太陽光発電施設が増え過ぎると、たとえば日中に太陽光発電所が発電「し過ぎる」ことで、送電容量をオーバーしたり、電力系統の需給が崩れたりします。そして、これを防ぐために、やむなく電力を「捨て」なければならないといった事態も頻発します(『これだけある!太陽光発電の問題』等参照)。
膨大な再エネ賦課金を一般家庭からくまなく徴収し、しこたま太陽光パネルを敷き詰めて景観を損ね、環境を破壊し、挙句の果てに電力を「捨てる」わけですから、日本のこの電力政策、いったい何がやりたいのかわかりません。
その意味で、再エネ賦課金制度は原発停止と並んで、間違いなく民主党政権の負の遺産であり、そして民主党から政権を奪還して10年以上が経過する自民党政権の怠慢(あるいは特定の議員集団の利権)の証拠でもあります。
改憲と並び喫緊の課題…「以読制毒」も?
このあたり、岸田文雄・現首相は、たとえば対韓外交などでは某山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士から舌鋒鋭く批判されているようですが、少なくとも電力政策に関しては、菅義偉総理大臣の時代と比べて「マトモ」であることは間違いないと思われます。
いずれにせよ、もう一刻の猶予もありません。再エネ賦課金という問題を抱えた制度そのものの是正に加え、再エネ関連施設の総量規制、原子力発電所の再稼働・新増設の推進を加速させなければなりません。
榛葉賀津也・国民民主党幹事長も指摘する通り、電力を含めたエネルギー供給は国家の安全保障の根幹でもありますので、自民党「裏金」問題にけじめがついたタイミングで、岸田内閣には是非とも電力政策の見直しを急いでいただきたいところです。
もちろん、憲法改正も大変重要な政策課題ですが、個人的には改憲と並行して進めなければならないほどに優先順位が高い政策課題のひとつが、この太陽光発電の総量規制だと考えている次第です。
なお、あくまでも個人的な見解ですが、「会見と並んで優先順位が高い政策課題」といえば、ほかにも「財務省改革」や「NHK受信料利権解体」なども挙げられると思うのですが、いっそのこと「毒を以て毒を制す」、を行っても良いかもしれません。
増税が大好きな財務省には、下記Xポストにもあるとおり、是非とも「ソーラーパネル取得税」「ソーラーパネル管理税」「ソーラーパネル輸送税」「ソーラーパネル廃棄税」などを創設していただきたいところです。
財務官僚「ソーラーパネル取得税、ソーラーパネル管理税、ソーラーパネル輸送税、ソーラーパネル廃棄税を作りましょう!」←これなら大多数の日本国民は喜ぶでしょう。
— ディエゴ元帥 (@WxblocO4KiyZKaO) April 4, 2024
わりと良いアイデアだと思うのですが、いかがでしょうか?
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
バイデン民主党政権と道連れになって岸田首相は早晩退陣すると予測します。
会計士さまには太陽光発電について整理してくれて感謝します。
私の住む所の近くで数年前に工場が廃業した後の跡地にソーラーパネルが並びました。
100人以上雇用していたようですが、苦労して工場を経営するより楽して利益を出せるのでしょうね。
儲かる仕組みがある限りは太陽光発電への参入が減ることはないと思います。
今後は太陽光発電の負の側面をもっと周知していかなければいけないと痛感しました。
>北海道の釧路湿原や三重県の伊勢志摩などの国立公園一帯でも、大規模な太陽光発電所の建設が相次ぐ
うわぁぁぁ
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/988440/
https://www.htb.co.jp/news/archives_25323.html
太陽光パネルの新規設置は全面禁止でよいと思う
>正直、こうした発想自体、「(現在の技術では)電気は貯められない」という特性を理解していない素人発想としか思えません
このような文章は「技術者」を貶める可能性がある 控えていただいたい
・たくさん発電して貯めておけば良い
エネルギーミックスにとって(ロスがあっても)必要な技術のひとつ
・宇宙空間で太陽光発電を行い、マイクロ波で地上に送電すれば良い
2050年の実用化にむけて邁進中
・たとえばビルのガラスに太陽電池を組み込む方法もある
コストの問題はあるが既に実用化されている
停滞している技術もあるが技術革新は日進月歩
「無知」の一言で片付けるのはいかがなものかと思う
>このような文章は「技術者」を貶める可能性がある 控えていただいたい<
↑に対するブログ主の返答↓
https://shinjukuacc.com/20240405-05/
以下引用
「素人発想に基づく太陽光発電の闇こそ追及すべき」
(※余談ですが、「太陽光発電で電気をたくさん作って貯めておけば良い」「宇宙空間で太陽光発電しマイクロウェーブ送電すれば良い」などとする、現在の技術では実現が難しい、まだ実現していないことを実用化しろと主張するいい加減で杜撰な素人発想からは、いい加減脱却したいところです。)
パワーアップしとるwww
>このような文章は「技術者」を貶める可能性がある 控えていただいたい
「技術」は「技術者」のものではない。技術について、自分の意見や感想をいうことは自由。
それよりも、あちこち漁って技術情報を集めて、それを少々理解出来たからと言って、自分が優秀な技術屋の仲間になったつもりにならない方が良い。
本物の技術者は、技術の限界を知っているし、その限界を明瞭に認識するからこそ、開発の方向性を常に模索するんですよ。
技術者は謙虚。
こんな普通の内容に目くじら立てる方は、最も、技術者の発想から遠い。
これは、ひとつ上の方へのレスでした。
自然エネについての危惧
1,太陽光パネルの環境汚染
20年経過後適切に処分されるのか。海外オーナーは逃げてしまうのでは
重金属汚染が山野で起きた場合の影響は大きい。水源が汚染される
彼らの言い訳に日本人は絶対かなわない。
運転している今強制的に徴収すること。集めたら何があっても返さないこと
2,風力発電
山を切り開いた場所の山道は崩れやすく長い年月の維持は困難
運転終了後の対策はされているのか? 流れ出した土砂の費用はどこに請求するのか
*逃げ得を許さない
どうせ詐欺師に悪用されるし太陽光発電自体を規制するようになると予想します、10年以内に。
だってエネルギーの無駄ですもの。バイオ燃料の火力発電なり内燃機関の方が余程合理的です
総量規制は既に九州電力において実施済み正確には事前に決められた接続容量が一杯になっております。また本来原子力発電の夜間余剰を蓄えるための揚水発電を太陽光発電に流用しております。
三浦瑠璃の夫が逮捕されたのも太陽光発電に関連してだっけ?