違法民泊問題と観光客の急増
最近、マス・メディアの話題ばかりが続いて来ましたので、本日は少し趣向を変えて、「違法民泊問題」のアップデートを行っておきたいと思います。
目次
規制緩和という掛け声
私は「金融規制の専門家」を名乗っていますが、当ウェブサイトを開始して以来、「規制」という連想から、金融に限らず、さまざまな規制を調べています。とくに、最近だと、文部科学省が法律を無視し、獣医学部の新設を拒んできたという違法な行政が問題となっていますが(※このあたりはマス・メディアが一斉に無視しているようですが)、この「規制」については、実に奥が深い論点です。
もちろん、日本には様々な規制があり、前川喜平・前文科省事務次官が青山繁晴参議院議員に徹底論破された、文科省による「大学新設規制」という不合理なものも存在します。ただ、規制とは絶対悪ではありません。中には必要な規制も存在します。
朝日新聞あたりは「規制緩和」というテーマが大好きですが(※その割には前川喜平事件については無視していますが)、「規制緩和」という掛け声が先行し、必要な規制まで取っ払うとしたら、それはそれで本末転倒です。
規制といえば、昨日の「日経ビジネスオンライン」に、民間の運送サービスであるUberなどの影響で、米国・サンフランシスコでは渋滞が社会問題化しているとの記事が掲載されています。
サンフランシスコの渋滞の原因はUberやLyft?(2017/07/15付 日経ビジネスオンラインより)
これはこれで興味深い論点です。規制というものは、単純に緩和すれば良いというものではない、ということがよくわかるからです。
違法民泊問題・アップデート
本日は、規制の中でもとくに私が以前から追いかけている、「違法民泊問題」について、アップデートを行っておきたいと思います。
なお、以前の民泊に関する記事としては、『違法民泊の実態調査』、『民泊を巡る議論の整理』あたりもご参照ください。
違法民泊問題は解決せず
私は東京都新宿区内のマンションに家族で暮らしていて、約2年前に設立した会社の事務所も同じマンションの別の一室に設けています。ちなみに、私が居住し、勤務しているこのマンションは、ファミリータイプ(40~80平米程度の物件)と、ワンルームタイプ(15~25平米程度の物件)が混在していて、自宅はファミリータイプ、会社はワンルームタイプの物件です。
特に自宅として使っている物件については、家族で暮らすには少々手狭ではあります。しかし、このマンションは新宿の繁華街からも近く、非常に便利であり、これに加えて繁華街から近い割には閑静で、周囲の住環境も良好です。また、築30年以上が経過するにもかかわらず、建物の管理状態は良好で、人当たりの良い管理人さんがこまめに掃除をして下さっています。このため、私はこのマンションを非常に気に入っています。
ただ、最近になって深刻な問題が出て来ています。それは、一部の所有者が、物件違法な民泊に供していることです。「違法民泊」とは、ホテル業などの許可も得ていないくせに、自分が所有する部屋を外国人旅行客などに有料で貸し出す行為です。一昨年夏の時点で、こうした違法民泊物件は、管理人さんが把握しているだけでも5件はあったそうです。
こうした状況を問題視し、一昨年の管理組合の総会では、マンションの規約を改訂し、「シェアハウス」や「違法民泊」などの行為が禁止されました。これとあわせて、違法民泊物件については所有者に直接の注意喚起を行い、5件のうち3件については、民泊営業を停止し、いずれも物件自体が第三者に譲渡されました。
しかし、残り2件については、現時点でもなお、違法民泊の経営が続いているようです。私の自宅がある階と、そのひとつ上の階にある物件が、問題の違法民泊物件です。一昨日は中国語と思しき外国語を喋る3~4人集団が、私の自宅の階にある狭いワンルームの一室に入って行きました。
私は当初、こうした外国人旅行客については、目撃の都度、管理人さんに通報していました。しかし、実は、管理人さん自身も、「何月何日何時ごろ、何号室に何人の人が宿泊していたようだ」、といった情報を把握しているそうです。管理人さんによると、管理組合は現在、違法民泊の実態を調査中であり、証拠を集めている最中なのだとか。管理組合としては、近いうちに当局に通報するなどして、違法民泊物件の強制排除ができるかどうかなどを検討しているようです。
違法民泊の問題点
では、この「違法民泊」、いったい何が問題なのでしょうか?
真っ先に考えられるのは、不特定多数の人が出入りすることによるマンションの治安の悪化です。とくに、外国人観光客が新宿で深夜まで遊んで、真夜中に大騒ぎしながら部屋に戻ってくるなどの問題は、私の居住するマンションでも、かなり昔から発生しています。
また、どこの誰ともわからぬ人たちが日常的に出入りしているわけですから、麻薬の密売、違法売春を含めた犯罪が行われていたとしても、警察当局としては犯人を特定することが極端に困難になります。
ホテルだと、ロビーのフロントに従業員がいますし、宿泊者名簿を備え付けています。通常、外国人が宿泊する際には、ホテルのフロントでパスポートの提示を求めるため、「どこの誰が宿泊しているかわからない」という状況は生じ辛いです(もちろん、犯罪者がホテルに泊まるときに、偽造パスポートを使って身分を偽る可能性は否定できませんが…)。
しかし、違法民泊物件だと、そもそも宿泊者名簿を備えておらず、何か事件・事故があったときに、何かと困るのです。
違法民泊物件が蔓延る条件とは?
では、どういう場合に違法民泊が蔓延るのでしょうか?
私の考えでは、条件は2つあります。1つ目は「場所が便利であること」、2つ目は「匿名性が高いこと」、です。
私が居住するマンションの場合、新宿の繁華街から近い場所にあり、1つ目の条件については満たされています。しかし、先ほど申し上げた通り、ファミリー層も居住しているため、2つ目の条件、つまり「住民の匿名性が高い」という点についてはクリアしていません。当マンションには全部で120室ほどあり、うち30室がファミリータイプ、残り90室がワンルームタイプですが、ファミリータイプの物件の場合、オーナーが直接、マンションに居住しているケースが大部分です。このため、結果としてマンション全体で管理が行き届いているという側面もあるのかもしれません。
しかし、東京都心にありがちなのが、「ワンルーム主体のマンション」です。東京には単身者が多く、たとえば、「地方から就職するために単身で上京した若い人が結婚するまで居住するのに適した物件」の供給は豊富です。つまり、ワンルームマンションとはもともと、「永住用ではない物件」であり、住民が頻繁に入れ替わるマンションである、と言い換えてもよいでしょう。
当然、住民同士、お互いに顔を知らないというケースも多く、匿名性は圧倒的に高くなります。余談ですが、ワンルームマンションにどんな問題点があり、東京都内で今後、規制がどのように強化されるのかについては、外部のウェブサイトによくまとまった記事もありますので、興味がある方はご参照ください。
ワンルームマンションはこれから減っていくのか、建築規制と市場の動きを考える(2014年 05月18日 12時05分付 ホームズHPより)
観光客の急増と違法民泊
東京都内のワンルームマンションの中には、とくに「繁華街から近くて便利な場所」にある、「匿名性の高いワンルーム物件」に、違法民泊に供される物件の数が相当に増えているようであり、酷い場合には、こうした状態が事実上、野放しとなっています。
こうした中、最近、違法民泊が必要となる事情が、外国人観光客の急増でしょう。
日本政府観光局(JNTO)が公表する『統計データ』によると、外国人観光客の人数はうなぎ上りです。ただし、季節変動もあり、毎月の訪日観光客数を単純に比較しても分かり辛いため、ここでは季節変動を調整したグラフを作成してみましょう(図表1)。
図表1 毎月の訪日観光客数推移(季節調整後、単位:千人)
(【出所】JNTO統計データより著者作成。季節調整後の訪日観光客数とは、「その月に終了する12か月分のデータを12で割った数値」を意味する)
データが存在する2003年以降で見て、最近の訪日者数は、まさに「うなぎ上り」です。ニュースで「中国人の爆買い」というイメージがあるためか、多くの方々は「観光客が増えているといっても中国人観光客だろ?」と単純に考えてしまう方も多いようですが、実際には韓国人と台湾人の観光客が急増していることが、グラフからは確認できると思います。
そして、中国人の場合は、日本への入国ビザが下りる条件が、厳格に定められています(図表2)。
図表2 中国人に対する訪日ビザ
区分 | 概要 | 備考 |
---|---|---|
団体観光ビザ | 中国の関連法令に基づく「団体観光」の形式をとり、滞在期間は15日以内 | 「団体観光ビザ」の場合、添乗員なしの自由行動は認められない |
個人観光一次ビザ | 団体観光の形式をとらない「一次ビザ」(ビザ一枚につき1回しか入国できないビザ)。滞在期間は15日または30日以内 | 事前に旅行日程を作成して中国の旅行会社を通じてビザを申請する |
沖縄県数次ビザ/東北三県数次ビザ | 1回目に沖縄県や東北三県で1泊以上するなどの要件を満たした場合に発給される、何度でも日本に入国できるビザ。有効期間3年、1回の滞在期間は30日以内 | 1回目の訪問のみ旅行会社を通じてビザを申請すれば2回目以降は旅行会社に旅行手配を依頼する必要はない。発給対象者は十分な経済力を有する者とその家族などに限られる |
相当な高所得者用数次ビザ | 有効期間5年、1回の滞在期間90日以内の数次ビザ | 1回目だけ旅行会社を通じてビザを申請すれば2回目以降は旅行会社に旅行手配を依頼する必要はない |
(【出所】外務省ウェブサイトより著者作成)
このため、中国人観光客が、こうした違法民泊物件に大挙して宿泊するということは、考え辛いでしょう。ということは、こうした違法民泊物件のメインのユーザーは、韓国人や台湾人、あるいは欧米人など、最近、訪日者が急増していて、しかも入国ビザが免除されている国の人々ではないかとの仮説が成り立つのです。
観光客の急増も問題なのか?
私は日本が「観光立国」を目指すという方向性自体には賛成したいと思います。当然、観光客として多くの外国人が日本を訪問し、日本を好きになって帰って行ってくれると、本国でも「日本旅行の想い出」を語ってくれるでしょう。その意味で、私も外国人観光客の姿を見掛けたら、できるだけ親切にしてあげるようにしています。
ただ、東京・新宿で眺める限り、あきらかに外国人観光客に対する宿泊需要に、ホテルの供給が追い付いていない実情もあります。今のペースで観光客が増え続けると、東京五輪が開催される2020年には東京を初めとする日本中のホテルがパンクしてしまうのではないでしょうか?(※なお、ホテル供給量と観光客数の関係について、信頼できる統計が存在するかどうかについては、現在私自身が調査中です。)
おそらく、違法民泊物件がなくならない大きな理由は、ホテル供給の絶対数が足りないことに加え、とくに東京の場合、匿名性が高いワンルームマンションが繁華街から近い便利な場所に、大量に存在するという事情もあるのでしょう。
いずれにせよ、「違法民泊」は、本来ならばジャーナリストの皆さんにこそ、様々な角度から取材して欲しい社会問題の1つです。しかし、現在のマス・メディアは、事実関係を故意に捻じ曲げて、「もり・かけ問題」で安倍政権に対する倒閣運動に必死になっているらしく、ジャーナリストにこのあたりの分析を期待することはナンセンスといえるかもしれません。
そこで、私はこの問題について、今後も継続的に追いかけてみたいと思います。どうか引き続きご期待ください。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。
ツイート @新宿会計士をフォロー
読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
コメントを残す
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
なるほど、面白い論点ですね。民泊って規制緩和という掛け声しか聞かないのですが、別の視点から見るとそういう問題があるのがよくわかりました。ですが、せっかくの力作大変申し訳ないのですが、やはり私たち読者としては、新宿会計士さんにはもっとマスゴミの問題を糾弾してほしいとも思います。新宿会計士さんのツイッターでは時事通信とか、朝日新聞の記事に突っ込みを入れておられますが、私たち一般読者からすれば、新聞やテレビが変更報道を続けることに対して漠たる不安があって、それに専門家のお立場からアドバイスを頂きたいのです。もちろん、このブログは新宿会計士さんの持ち物で、どんな話題を提供するかは新宿会計士さんのご自由ですが、マスゴミのこと、韓国のこと、中国のこと、AIIBのこと、もっともっと知りたいことがたくさんあるのです。記事の内容をリクエストするのはおこがましいし失礼だとわかっているのですが、どうか新宿会計士さんには世直しをお願いしたいと思います。
いつも拝読させていただいてます。新宿会計士様の住まわれる新宿と環境が違うので、どちらがどうとか一概に言えませんが、マイホームを購入する時、私はマンションの場合、「できるだけ、床面積、スペースが色んなタイプがある所はやめた方がいい」とアドバイスしてくれた方が複数いたので、そのようにしました。
その理由は例えば70平米3LDK、80平米4LDKの2タイプ+その反転タイプぐらいはいいが、その中にワンルーム15平米があったり、40平米1LDKがあったりすると、片やファミリー層、片や単身住み、または高収入の独身者で、居住者間のバランスが悪くなります。うちは3LDKと4LDKだけなので、住んでいる人が、同じような境遇同士。つまり平均値をいうと夫サラリーマン30代後半〜60歳、妻専業主婦(子が大きくなるとパート勤め、子が1〜2人。夫が経営者、専門職の場合もあります)。つまり転出転入しても、隣近所普段話さない人でも、安心感があるのです。得体の知れないヘンな人が住んでない(でもないですが、非常に少ない)ため。全110世帯で、理事会も割とスムーズに行きます。また、ここ5年ほどの間に外国人が増えました。夫妻とも東南アジア(子供も)、または夫が日本人というケースが多い。グループで買い物に行くので、けたたましい(笑)。すぐ分かります。また白人の夫妻と子供もおられるし、在日の高齢夫婦もいます。
こちらは阪神大震災で旧型マンションがだいぶ倒壊、半壊したので、新型基準耐震構造のマンションが凄く増えました。ちなみに昭和56年建設までが旧基準。
単身用マンションはアクセスの良い駅前などに多いです。そちらは一人用向きに作られているし、同じ境遇の人が集中してるので、住みやすいでしょう。私どもの方でも中、台、韓の人が異様に増えてますが、正直いって小汚い、日本の若い人なら普通敬遠するようなアパートに、うつぼのように、重なって住んでるようです。コロコロ人が変わるのが不安ではないでしょうか。幸い、ウチの周りの10棟以上あるマンションには、そういうグループは集結していません。