首相、年内解散はしないとの「意向固める」=メディア
内閣支持率が低迷するなか、岸田首相は年内の解散総選挙を行わないことに決めた――。朝日新聞などは「政権幹部が明らかにした」として、そう報じました。この報道を、どう読むべきでしょうか。「選挙の数字だけ」で考えたら、このタイミングで解散総選挙をしないのは悪手ですが、岸田首相には何か狙いがあるのでしょうか?それとも…
目次
内閣支持率はたしかに低迷している
主要メディアの調査によると、岸田文雄内閣の支持率は低迷を続けている――。
これは、おそらくその通りでしょう。
当ウェブサイトで「定点観測」的にウォッチしている6つの内閣支持率(読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4社の調査、及び産経・FNN、日経・テレ東の2つの共同調査)で見ると、どれも支持率が不支持率を大きく下回っている状況にあります。
図表は、その最新状況を一覧にしたものです(※共同通信のものが2つ入っているため、欄は合計で7つあります)。
図表 内閣支持率(2023年10月・11月)
メディアと調査日 | 支持率(前回比) | 不支持率(前回比) |
時事通信(10/6~9) | 26.3%(▲1.7) | 46.3%(+2.3) |
朝日新聞(10/14~15) | 29.0%(▲8.0) | 60.0%(+7.0) |
読売新聞(10/13~15) | 34.0%(▲1.0) | 49.0%(▲1.0) |
共同通信(10/14~15) | 32.3%(▲7.5) | 52.5%(+12.8) |
産経・FNN(10/14~15) | 35.6%(▲3.3) | 59.6%(+3.5) |
日経・テレ東(10/27~28) | 33.0%(▲9.0) | 59.0%(+8.0) |
共同通信(11/3~5) | 28.3%(▲4.0) | 56.7%(+4.2) |
(【出所】各社報道をもとに著者作成)
常識的に考えれば、「いまこの瞬間、岸田文雄首相が解散総選挙に踏み切った場合、自民党は大敗を喫し、最悪、自民党が下野を余儀なくされる可能性がある」ように見えるのも当然のことでしょう。
選挙制度に照らし「自民党下野」は考え辛い
ただ、当ウェブサイトとしては、そうは考えません。
以前の『「立憲共産党で三つどもえ」なら自民に有利:解散好機』などを含め、これまでも繰り返し報告してきたとおり、衆議院議員選挙の仕組み上、基本的には第1党に対し、非常に有利な結果が出て来るからです。
衆議院は定数465議席のうち、小選挙区に6割超の289議席が配分されるのに対し、比例代表に配分されるのは4割弱の176議席に過ぎません。ということは、議席全体の6割が「ウィナー・テイクス・オール」の小選挙区で決定される、というわけです。
もちろん、各選挙区の議員が単純に政党支持率だけで決まるというものではないのですが、やはり最大政党に支持が集まりがちであり、とりわけ強い地盤を持っている議員は、開票速報が流れるやいなや「当確」となることも多いのが実情です。
また、「1位と2位の得票差が2万票以内だった選挙区」を「接戦(ボーダー選挙区)」と定義づけるならば、前回・2021年の事例でいえば、接戦だった選挙区は自民党が58議席、立憲民主党が41議席だったという事実を思い出しておく必要もあります。
小選挙区で当選した人数は自民党が187人に対し、立憲民主党は57人に過ぎなかったため、「ギリギリで当選した議員」の割合でいえば、自民党は31%であるのに対し、立憲民主党はじつに72%(!)にも達しています。
つまり、「ギリギリで当選していた議員」の割合が高かったのは、むしろ最大野党である立憲民主党の方だった、ということです。
小選挙区での当選者に占める「ボーダー議員」の人数と割合
- 自由民主党…187人→うち58人(31.02%)
- 立憲民主党…*57人→うち41人(71.93%)
(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』データをもとに著者作成。なお、「ボーダー議員」とは小選挙区当選者と2位での落選者の得票差が2万票以下だった議員をさす)
立憲民主党が政権を取る?ないない!
もちろん、自民党に対して逆風が吹いているというのは間違いないかもしれませんが、それと同時に、その逆風を立憲民主党が取り込んでいるという証拠はありません。
各メディアの調査で見ても、内閣支持率が低迷しているわりに、自民党に対する支持率は他党のそれと比べて数倍、というケースが多く、また、最大野党だったはずの立憲民主党も、政党支持率では第3政党である日本維新の会に抜かれることが増えているからです。
「メディアの世論調査が信頼できない」とおっしゃる方は、今年4月と10月の衆参補選の結果を見ていただくのが早いでしょう。
4月に5つ、10月に2つの選挙区でそれぞれ補選が行われましたが、立憲民主党系の議員が勝利したのは10月の参院徳島・高知合区のみであり、それ以外の6区では、自民党が5区を、維新が1区を、それぞれ制しています。
しかも、立憲民主党が勝った選挙区では、自民党の前職がパワハラで議員辞職したことに伴う補選であり、最初から自民党には逆風が吹いていたこと、立憲民主党側は社民党、国民民主党、日本共産党の3党が応援に回ったこと、などの事情があったことを忘れてはなりません。
こうした事実を踏まえると、立憲民主党が次回選挙で自民党に代わって大躍進できるのかどうかに関しては大いに疑問です。正直、「立憲民主党が政権を取る」というのは絵空事でしょう。
維新躍進?野党連合?どれも非現実的
この点、「大躍進」する可能性がある政党といえば、現実的には日本維新の会くらいしか見当たりませんが、その維新にしたって選挙準備が整っていません。
あるいは、「国民民主党が良い」、「れいわ新選組が良い」、「参政党が良い」、「NHK党が良い」、などと言い出す人もいるかもしれませんが、残念ながら衆議院議員総選挙では、少数政党がいきなり全選挙区で候補を立てて大政党に躍進する、といったことは難しいのが実情です。
敢えてひとつの可能性を呈示すると、第2政党である立憲民主党と第3政党である日本維新の会、そして国民民主党、社民党、れいわ新選組、参政党、日本共産党などが選挙協力でガッチリと手を組むことですが、日本共産党が入ってくる時点で、少なくとも維新と国民が野党連合に入る可能性はありません。
したがって、立憲民主党がグダグダ、日本維新の会の選挙準備が整っていないうちに選挙戦を仕掛ければ、自民党は2021年並みとまではいかないかもしれないものの、選挙のタイミングによっては単独過半数ラインを十分に上回る程度の勝利を収める可能性が高いのです。
そして、そうなる可能性は、選挙の実施が遅れれば遅れるほど低くなります。
維新が躍進する可能性が上昇するからです。
前回・2021年の時点で、維新はすでに地元・大阪府で、全18選挙区のうち15選挙区で勝利を収めており、次回選挙区では公明党の現職がいる3つの選挙区でも候補を立てるとする報道もありますし、東京、兵庫などいくつかの地域でも現職参議院議員を衆議院に「鞍替え」させるなどの予定もあります。
維新はさらに、自民党や立憲民主党から候補者の一本釣りをも画策しているようであり、新人発掘、鞍替え、地方議会議員からの転身、「一本釣り」などで有力候補者を揃える構えでしょう。
このタイミングで選挙をしないのは悪手?
日本維新の会が政党として信頼に足るかどうかは置いておくとして、また、「単なる数合わせじゃないか」という批判もあり得る、といった点についても留保するとして、選挙で議席数を積み増すこと「だけ」を意識するならば、これはこれで合理的な動き方です。
したがって、「民主党旋風」が吹き荒れた2009年の総選挙のときのような「維新旋風」が生じるとしても、維新の選挙準備がまだ整っていない今この瞬間に選挙を仕掛ければ、せいぜい立憲民主党が最大野党の地位から転落するくらいで済みますが、維新の選挙準備が進めば、そうもいっていられなくなるかもしれません。
このように考えると、このタイミングで選挙をしないのは、自民党にとってはむしろ悪手であるように見えます。
こうしたなかで9日、ちょっと気になる記事がありました。
年内の衆院解散見送り、首相が意向固める 支持率低迷おさまらない中
―――2023/11/09 03:00付 Yahoo!ニュースより【朝日新聞配信】
ここで引用しているのは朝日新聞のもので、記事タイトルでもわかりますが、「岸田首相が年内の衆院解散を見送る意向を固めた」、というものです(なお、引用していませんが、この記事以降、読売やNHKなどもこれと似た内容を報じているようです)。
「首相が~する意向を固めた」、というのは、日本のメディアではよく見かける表現ですが、冷静に考えると、日本語として明らかに変です。「意向を固める」というのは日本語的に見て「内心」の話だからです。そして、その内心を新聞記者がどうやって見抜くのか、なんだかよくわかりません。
記事にはいちおう、こう書かれています。
「内閣支持率が政権発足から最低水準に落ち込んでいる現状を踏まえ、当面は経済対策などに集中せざるをえないと判断。年明け以降に改めて解散の機会を探る。政権幹部が明らかにした」。
岸田首相が「政権幹部」に「意向を固めた」と伝達した、ということでしょうか。
誰がどう判断したのか、なんだかよくわかりません。
フェイント?冒頭解散の準備?
このあたり、たしかにネット空間で見かける保守系インフルエンサーらの意見を見ても、岸田首相の経済対策を批判するものは多く、低迷する内閣支持率は、ある程度、世論の実情と合致していることは間違いないでしょう。
ただ、内閣支持率と実際の選挙はまったくの別物です。
ひとつ考えられるシナリオは、「フェイント攻撃」のようなものかもしれません。わざと「解散総選挙は考えていない」と宣言することで油断させ、いきなり直前で解散総選挙を打つ、というシナリオです。個人的にはこの可能性は捨てきれないと思います。
また、岸田首相が解散総選挙を見送ったとする報道が事実だったとしても、そこには何か別の狙い(たとえば最大野党となり得る日本維新の会を巡る何らかのスキャンダルの事実を知っている、など)がある、とする考え方は成り立つかもしれません(それが万博なのか、IRなのかは知りませんが…)。
ただ、もしもこのタイミングで解散ができなければ、あとは年明けすぐの通常国会での冒頭解散、それを逃せば通常国会が終わる6月時点くらいしか考えられませんが、遅れれば遅れるほど解散のチャンスは減り、最悪、解散できないままで自民党総裁選を迎える、というシナリオが現実味を帯びてきます。
なお、戦後の冒頭解散は過去に4例あり、いずれも自民党が勝利しています。
佐藤栄作元首相の1966年12月の通常国会冒頭解散、中曽根康弘元首相の1986年6月の臨時国会冒頭解散、橋本龍太郎元首相の1996年9月の臨時国会冒頭解散、そして安倍晋三総理大臣の2017年9月の臨時国会冒頭解散、です。
とりわけ安倍総理の17年9月の解散では、最大野党だった民進党で代表だった村田蓮舫(現・齊藤蓮舫)氏が自身の二重国籍問題で辞任し、代わりに就任した前原誠司代表が民進党として衆院選の公認を出さないと宣言するなどの混乱が発生。
こうした敵失にも助けられる格好で、自民党が勝利を収めたのです(ちなみにこのときの混乱が立憲民主党と国民民主党に分裂するきっかけとなったのです)。
岸田首相が「フェイント攻撃」を考えているのか、「冒頭解散」を考えているのか、あるいは何も考えていないのかについてはわかりません。
そんな岸田首相の解散戦略は、果たして「敵失」に助けられるのでしょうか?それとも…。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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>この報道を、どう読むべきでしょうか。
選挙があるかないかに想いを馳せるきっかけになった・・・・かな?
というか、政権幹部が誰なのかもわかんないから、記事自体の価値は、「空飛ぶスパゲットモンスター様は『今年の解散総選挙はない』と仰っている」ってのと大差ないんじゃないかな?
まぁ、記者にとっては、政権から特別な情報を貰えてるって自慢になるし、情報を流す方はマスコミを動かせるってんで、当事者にとっては意味があるのかもだけど・・・・
あと、選挙の有無に色々と影響を受ける人は、別に予測をしたり、両面で作戦考えてるだろうと思うのです♪
追加です
記者も、エビデンスの提示できない情報をそのまま記事にするんじゃなんの芸もないなって思うのです♪
そういう情報自体には価値がなくても、新宿会計士様がやってくれてるような、分析をするきっかけとか、ストーリーの導入とかに使えば良いのにと思うのです♪
石橋を叩いて壊す
年内解散見送りが真であるならば、まさにこのことですな。
選挙を年内はやらない、、
選挙を年内はやれない、、
たった一文字入れ替わるだけで意味合いは全然変わる。
負ける公算が高まるのは来年の選挙、、理由は野党が、特に維新の会の選挙準備が進むから。以外には岸田のやらかしが起きるかもしれない。
なんせ、国民の声とは真逆を行く御人。もはや国民の幸せよりも権力を行使する
自分が大事という御人。この先に待っているのは、感謝の声ではなく、怨嗟の声だ。初めてだ。こんなに嫌われる総理大臣は!
・今の岸田が国民に支持されていないという認識は同意
・嫌われている総理に関しては、旧民主(鳩菅)もお忘れなく!
岸田文雄首相が嫌われる理由のひとつに、しばしば得意顔が報道写真に写し取られているのを見る人が敏感に感じ取っているからと当方は考えます。
かねてより、メインシナリオは、岸田首相が解散総選挙が出来ず、来年6月に退陣表明し、総裁選挙を経て、新総裁で10月解散、与党現状維持が65%、サブワンシナリオが、年内もしくは年明けに岸田首相がやぶれかぶれ解散に打って出て、与党は過半数ギリギリに敗退、岸田政権退陣が30%、サブツーシナリオが、例えば北朝鮮による新たな拉致日本人の解放とか劇的なイベントが来年あり、岸田内閣の支持率が回復、解散総選挙を経て、岸田再選、これが5%と申し上げてきました。
このうち、サブワンシナリオの可能性がなくなった、ということでしょう。ということは、メインシナリオが95%でしょうね。
一旦落ちた人気というものは、なかなか回復しません。地道に経済回復に努め、春闘での賃上げに努力したとしても、人気回復狙い、再選狙いと見透かされて、望み薄です。所詮、「総理の器でない男」です。
読売新聞では来年の総裁選寸前に支持率回復している予定で解散総選挙をやるとありますね。岸田政権に関しては読売はそれなりに信憑性あるので、夏頃まで選挙をやらない?
正直、立憲民主党は全く怖くないですけど、党の顔を消して野党統一候補ってされるとかなり厳しいと思います。選挙中は一言も立憲とか言わずに、開票速報になって、ありゃま立憲大躍進って国民を騙す戦術です。そこに気づいたので、立憲共産の共闘も揉めてたはずがあっさり決まってしまいましたね。
自民党ってマスコミよりも誰よりも選挙情勢分析は正確に出来ます。そこの判断は絶対で、やっぱり年内総選挙はないでしょう。
まあ、岸田さんの「周りの意見を聞く」が最悪の政治だってのがわからないといつまで経っても選挙は出来ないでしょうね。自民党で周りの意見なんて聞いちゃダメなんです。日本で政治家に近づく人はロクなこと考えてません。そういう輩の声が「周りの意見」なんですよ。
菅総理のように周りの意見は一切聞かず、周囲と摩擦を生みながらも、国民は何を望んでいるんだろうかと想像しながら政治をする。これが正しい道です。
給料が上がって俄然やる気が出ました
増税の実現まで粉骨砕身する覚悟です