私学利権?一部私学が外国人留学生獲得にご執心の理由

私立学校の闇といえば、やはり留学生問題と切っても切り離せません。これに関連し、産経系のメディア『zakzak』に先日、中国人留学生などの獲得にご執心の私立大学などの話題が取り上げられていました。執筆した奥窪優木氏によると、「日本語が一切できなくても博士号まで取得することが可能」、「博士論文まですべて中国語で提出可能」、といった説明がなされているケースもあるのだそうです。

私学振興助成法という問題点

以前の『私学助成法と文科省「大学認可利権」の見直しこそ急務』でも議論した、日本社会が抱える問題点のひとつが、文部科学省による大学許認可利権と私学振興助成法に基づく教育経費の補助、という論点です。

私立学校振興助成法第4条第1項

国は、大学又は高等専門学校を設置する学校法人に対し、当該学校における教育又は研究に係る経常的経費について、その二分の一以内を補助することができる。

私立学校振興助成法第9条

都道府県が、その区域内にある幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は幼保連携型認定こども園を設置する学校法人に対し、当該学校における教育に係る経常的経費について補助する場合には、国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、その一部を補助することができる。

まず、この条文自体が憲法に合致しているのか、検討が必要です。

というのも、日本国憲法第89条に、「公の支配に属しない…教育…の事業に対し」、公金等を支出してはならない、とする規定が設けられているからです。

日本国憲法第89条

公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

この条文を自然に読めば、この私学振興助成法第4条第1項や第9条などの規定は、明らかに憲法違反です。つまり、私学振興助成法自体が一種の「違憲立法」なのです。

教育経費の補助ならばやり方があるはず

このあたり、誤解を恐れずに申し上げるならば、個人的には私立学校に対する公費による補助という制度はあっても良いと考えていますし、むしろ国家戦略上、有望な研究者などに対しては惜しみなく公費を注ぎ込んでも良いくらいだと思います。

ただし、もしそれを実現しようと思うならば、法律の前に憲法を修正することが必要です。たとえば第89条に、次のような第2項を付け加えてはいかがでしょうか。

憲法改正私案(第89条に次の第2項を付け加える)

前項の規定は、私立学校のうち法律で定められた要件を満たすものには適用しない。なお、私立学校たる要件は、法律でこれを定める。

また、現在の私学振興助成法の規定と運用にも、やはり大きな問題があります。

規定では「教育経費の最大半額を補助することができる」とされていますが、基本的に法律に定める学校(大学、高校など)であれば、その多くが自動的に教育経費の半額の補助を受けているケースが多いのです。

そのなかには、俗に「Fラン」などと呼ばれる、決して教育レベルが高くない大学も含まれていますし、これらの「Fラン大学」のなかには外国人留学生を積極募集するなどして、学生数を無理やりに維持しているようなケースもあるのではないか、と疑われます。

中国人留学生獲得にご執心の私大

さて、こうしたなかで産経系のメディア『zakzak』に、こんな記事を発見しました。

留学生40万人計画編(1)〝財源〟として中国人留学生を確保する妖しき大学 岸田首相「我が国の宝」と危うい発想

―――2023/07/29 10:00付 zakzakより

執筆したのは奥窪優木(おぎくぼ・ゆうき)氏という人物ですが、短い記事ながら、現在の私学振興助成法や文科省の許認可利権の問題点を端的に指摘する良記事です。

奥窪氏によると、日本の在外公館で発給された「留学ビザ」総数は昨年1年間で17万1495件となり、そのうち中国が3分の1近くを占めているのだそうです。そのうえで、今年6月に中国・江蘇省で開催された「日本留学説明会」で、日本の某私立大学のスタッフがこんな説明をしたというのです。

うちであれば日本語が一切できなくても博士号まで取得することができ、その後は就労ビザや永住権許可も申請できる。博士論文まですべて中国語で提出可能」。

これが事実なのだとしたら、とんでもない話です。日本に留学にやって来るのに日本語(ないし英語)ではなく中国語で博士号が取れるというのはなかなか驚きます。

これに関して奥窪氏は、「この説明会には、某大学の創立者も直々に訪中して同席」していて、「留学生獲得に対する執心具合が垣間見られる」、などと指摘しますが、その続きがまた強烈です。

ちなみにこの大学はコロナ以前、3年間で約1400人もの留学生が所在不明となっているとして、批判を浴びた過去もあるいわくつきの学校法人である」。

しかも、問題はそれだけではありません。奥窪氏によると、「学生数の減少にあえぐ一部の私立大学」では「留学生の獲得でそれを補うというビジネスモデルが定番化しつつある」、というのです。

官僚にカネを握らせると腐敗する

おそらくその理由は、先ほども指摘した、教育経費の補助などの公金にあるのでしょう。

これこそ、私たち日本国民が納めた貴重な税金が、文部科学省によって浪費されているという証拠ではないでしょうか。なぜなら、文部科学省がこれらの大学の設立認可を取り消さない理由は、彼らが教育経費の采配権を失いたくないからではないからだ、と考えると、すっきりと整合するからです。

その意味では、昨日の『菅総理の置き土産「ふるさと納税」総務省が敵視の理由』でも指摘した、総務官僚が「ふるさと納税」を敵視する姿勢と相通じるものがあります。

あるいは「国のサイフ」を握る「総元締め」である財務省が、事実上の「税の亡者」と化している(『剰余金21兆円!税を「取り過ぎている」亡者・財務省』等参照)ようなものでしょうか。

官僚機構にカネを握らせたら、腐敗してしまうのかもしれません。

また、どこかのインテリジェンスのない政治家が、留学生を「国の宝」などと言い放ったという話を耳にしますが、「財政危機にある」とおっしゃるのならば、増税より前に、毎年数千億円の教育経費補助にメスを入れるのが筋ではないでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    こうしないと学校経営が回らないのでしょうね

    1. 某都民 より:

      であれば、そんな学校潰した方が日本国民のためになりますね。

  2. 匿名 より:

    留学生に否定的なコメントすると親の仇のように反論してくる早稲田の某教授・・・

  3. クロワッサン より:

    なぜか貧困調査員・前川喜平氏を思い出しました。

    副業で文科省の官僚をしていたような。

  4. まんさく より:

    日本は大学が多すぎる。大学はマネージメントクラスの人材を育成する場所なのだから、大学進学率が5割を超えるの言うのはいかれている。

    大学卒業して居酒屋の店長とか話を聞くと大学行く必要あった?って気がします。結局、大学は官僚の天下り先になるだけで、何の役にも立ってません。

    大卒は3割もいれば十分で、枠が3割しかなければ、無理して進学する人も居なくなります。教育費が出せないから子供を産まないと言う人も減るでしょう。

    優秀な学生には返済不要な奨学金を与えればいいし、大学に行かずに社会に出た優秀な人には業界毎の専門学校で再教育の機会を与えればいい。叩き上げから社長といった道を用意すれば社会も活性化すると思います。

  5. 7shi より:

    日本人の学生だけでは定員が満たせず、留学生によってなんとか経営が成り立っているような大学は、本来は潰れるべき大学なのだから、「ゾンビ大学」 とでも呼ぶべきですね。

    なお、外国人は日本の大学に合格しても、留学ビザが取れなければ入学できないんだから、ビザの審査を厳しくすれば、ゾンビ大学を潰すことはできます。政府が 「留学生40万人計画」 などやめて、留学ビザの審査は厳しくするように法務省と出入国在留管理庁に指示すれば、簡単に実行できます。

    1. 7shi より:

      日本では1983年に 「留学生10万人計画」 が策定され、外国人留学生の本格的な受け入れが始まりました。そして、この 「留学生を10万人受け入れる」 という目標は2003年に達成され、その後は留学ビザの審査が一気に厳しくなりました。すでに18歳人口の減少は始まっていたのに、文科省が大学の新設を認可しつづけていたため、全国でFラン大学やゾンビ大学が経営危機に陥りました。

      しかし2008年に、当時の福田康夫首相が施政方針演説で 「留学生30万人計画」 を発表し、再び留学ビザの審査が緩くなりました。そして今年、岸田首相が座長を務める 「教育未来創造会議」 の答申を受ける形で 「留学生40万人計画」 が発表され、現在に至ります。

      留学生30万人計画 – Wikipedia
      https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%95%99%E5%AD%A6%E7%94%9F30%E4%B8%87%E4%BA%BA%E8%A8%88%E7%94%BB

      日本人留学生目標50万人、外国人留学生受け入れは40万人に 教育未来創造会議2次提言 – 大学ジャーナルオンライン
      https://univ-journal.jp/221685/

      教育未来創造会議 参考資料集 資料2
      https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouikumirai/sozo_mirai_wg/dai9/siryou2.pdf

      このように留学ビザの審査は、その時々の国内事情によって厳しくなったり緩くなったりと、かなり恣意的に行われています。これは世界中どこの国も同じで、「欧米では最近、中国人の留学ビザ取得が難しくなっている」 といわれるのは、このためです。

      だからゾンビ大学を潰すには、留学ビザの審査を厳しくするだけでよく、法改正の必要もありません。しかし 「留学生は日本の宝」 という岸田首相は、それとは真逆の事をやっているのです。

  6. 匿名 より:

    憲法制定に尽力した金森徳次郎国務大臣によれば、憲法89条後段の趣旨は「慈善、教育もしくは博愛の美名に頼って公金を引き出す政治上の弊害」の防止であり、例外的に「国家の特別の意思」に基づくもの即ち「公の管理のもとに行われるもの」への公金支出は許される(「憲法遺言」『著作集Ⅰ』145頁)。

    なお、慈善事業を行う団体への公金支出、例えば今年から補助金化された東京都若年被害女性支援事業を行う団体への東京都の補助金支出は妥当か?

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